日本の原点「日本神話」から学ぼう!
ということで、唐突に始まった「日本神話で磨くビジネススキル」シリーズ。これを読めば、あなたも神レベルのビジネスパーソンに変身可能だ。
第一回目は「交渉術」について取り上げる。
「交渉術」。今やビジネスには欠かせない必須スキルと言えよう。昨今では『ハー〇ード流交渉術』といった書籍が話題になっているらしい。なんでも超一流の交渉術が学べるとか。気になるのは確かだが、少なくとも私はハー〇ードではないし、ましてや欧米でもない。
私にある、いや、私たちにあるのは「日本神話」だ。ここから学ばずしてどこから学ぶというのか?
ではさっそくお届けしよう。
日本神話で磨くビジネススキル|神レベルの交渉術編
目次
ケーススタディ「国譲り神話」
本件、日本の正史である『日本書紀』からお届けする。
さて、あなたは日本神話における、「国譲り神話」を御存知だろうか?
天孫「瓊瓊杵尊」の降臨に先だち、高天原から国の支配権委譲を求める「使者」が派遣され、「大己貴神(大国主命)」と交渉、最終的に交渉は妥結し大己貴神は国を天孫に譲る神話である。
これはまさに、現代における商談や交渉となんら変わるところは無い。
プレーヤーを整理しておこう。
高天原側:天孫「瓊瓊杵尊」を地上に降臨させ、地上の支配統治を完了させたい。
地上 側:大国主命としては苦労して造り上げた国であり、自分の物という認識が強い。譲れと言われて簡単に呑める話ではない。
なお、今回、高天原側の使者としては「経津主神と武甕槌神」の2神が交渉役として派遣されている。
あなたを「高天原側」とした場合、「地上側」とどのような交渉をするだろうか?どのような条件を提示するか?考えてもらいたい。
考えていただいただろうか?
その上で、以下読み進めてもらいたい。
「国譲り神話」から学ぶ神レベルの交渉術
結論から言おう。忙しいビジネスパーソンは常にPREPだ。
日本神話的考え方・ルールは以下5点に集約される。
①交渉は2人以上で行う。1人では決して臨まない事。
②交渉に入る前の事前準備が重要。決して相手から下に見られないよう、むしろ「手ごわい相手」と思わせるような言動・立ち居振る舞いを徹底する事。
③実際の交渉の場においては、自分の主張はハッキリ伝える事。ただし、相手を否定せず、相手の存在を認めつつ、お互いが良い形でパートナーシップを組める方法も提示・模索する事。
④タフな交渉が予想される場合、相手にとって思いがけないような大きな条件を提示する事。交渉はあくまで一発勝負、この場で決められるよう破格の条件を気前よく提示する事。
⑤相手に考えさせる時間と猶予を与える事。ただし、それでも相手が譲歩しない場合、最後は相撲で勝敗を決める事。
それぞれ事例をもとに見ていこう。
①交渉は2人以上で行う。1人では決して臨まない事。
今回の交渉では「経津主神と武甕槌神」の2神が交渉役として派遣されている。
これは基本の「き」だ。交渉においては、決して一人で臨んではいけない。交渉には「ツッコミ役」と「調整役」の2つの役割が必要だ。これを一人で行う事は非常に難しい。分担し効率的に相手からの合意を引き出そう。
神でさえ分担しているのだ。私たちもパートナーを信じて分担しよう。
②交渉に入る前の事前準備が重要。決して相手から下に見られないように、むしろ「手ごわい相手」と思わせるような言動・立ち居振る舞いを徹底する事。
何の準備もなく交渉に入ってはいけない。
今回、「経津主神と武甕槌神」の2神は、交渉の場である「出雲の国の五十田狭の小汀※」に降ってきて、「十握の剣」を抜き、逆さまに大地に突き立てて、その剣の切っ先に胡坐をかいて坐り、問うた。
素晴らしい導入である。
交渉の場に到着するやいなや、剣を逆さまに突き立てその切っ先にあぐらをかく。
切っ先にあぐらをかくのだ。
相手にとってみれば、そんな立ち居振る舞いを見た瞬間「これは手ごわい相手だ」と心の底から思わずにはいられない((((;゚Д゚)))ガクブルものである。
これによって以後の交渉を有利に進める事が可能となる。ファーストインプレッションの大切さをこれほど分かりやすく教えてくれる例は他にないだろう。
③実際の交渉の場においては、自分の主張はハッキリ伝える事。ただし、相手を否定せず、相手の存在を認めつつ、お互いが良い形でパートナーシップを組める方法も提示・模索する事。
交渉においては曖昧な提示を行ってはならない。自分たちの主張はそれはそれでハッキリと伝えよう。
今回の交渉においては、高天原側の思惑はそのまま通し、国を譲るか否かの二者択一を迫る。
これは、相手の否定ではない。自分の主張はそれはそれでハッキリと伝えているということだ。しかし、同時に、Win-Winの関係になるような方法の提示も行っている。
「皇孫が『現世の政事を司る』事とする一方、大己貴神には、『幽界の神事を司る』ということではどうか?」と。
要は、棲み分け、分治提案である。こうする事で、互いの利害は衝突せず共存共栄が図れるようになるという訳だ。
主張しない日本人と言われて久しいが、少なくとも神話の時代に於いてはそういった事は無かったのである。私たちはもっと学ぶべきだ。
④タフな交渉が予想される場合、相手にとって思いがけないような大きな条件を提示する事。交渉はあくまで一発勝負、この場で決められるよう破格の条件を気前よく提示する事。
交渉にタフネスは避けて通れない。しかしそこから逃げない事が重要である。
そして、先手をとって一気に畳みかける手法はもっと重要だ。あくまで一発勝負、この場で合意できなければ決裂を覚悟せねばならない。
その意味で、交渉におけるメインの内容に付随して、「思いがけない大きな条件」を提示する方法が効果的である。
例えば、交渉相手に、住むべき家を造ってあげたり、田畑の提供、海で遊ぶための船の提供等々が考えられる。
とくに、住む家は大事だ。建築技術の粋を集め、最大規模の家を造営してあげるといい。
実際、高皇彦霊尊は、大己貴神に対して巨大な「天日隅宮」、つまり「出雲大社」の建造を提示している。
これに対し、大己貴神は、「かくも懇切でございます。どうして従わないことがありましょうか。」と、むしろ感謝しながら合意をしている。
私たちも大いに参考になる事例だろう。
⑤相手に考えさせる時間と猶予を与える事。ただし、それでも相手が譲歩しない場合は、最後は相撲で勝敗を決める事。
相撲は、最後の手段と考えてほしい。
ただし、相手には「いざ」となればふんどしで相撲をとりますけど( ゚Д゚)ナニカ? といった威嚇は大切だ。
そもそも、「日本神話的ビジネスパーソン」は決して争いは好まない。和を尊び、常に話し合いによって解決する道を選ぶべきだ。
しかし、どうしても相手が譲らない場合もあると思う。
その時は、まずは考える時間、他の人に相談する猶予を与えていただきたい。
それはかえってあなたの余裕と懐の深さとして相手に伝わり、相手をして恐縮させるようになるだろう。実際、交渉役の2神は大己貴神に対して、しばし考え相談する猶予を与えている。
それでも、どうしても決まらなければ潔く「ふんどし」を撒いて、「相撲」で決するようにしよう。これについては詳細の説明はしない。感じ取ってほしい。
以上5点の考え方と実践方法を、具体的な事例をもとに説明した。いかがだっただろうか。
より詳しく知りたければ『日本書紀』巻2の第九段を参照されたい。あと『古事記』も。
まとめ
日本神話で磨くビジネススキル|神レベルの交渉術編
唐突に始まった本シリーズ、「日本神話で磨くビジネススキル」。いかがだっただろうか。
どんな交渉においても、事前準備と導入が重要であることを日本神話は教えてくれる。
事前準備とは人選であり導入の組み立てである。交渉における上流工程で失敗すると下流で取り戻すのは至難の業。だからこそしっかり準備を徹底するようにしておきたい。
これで皆さんも、今日から「日本神話的ビジネスパーソン」として最高のパフォーマンスを発揮できるようになるはずだ。
本稿をもとに、皆さんが交渉術をアップさせ結果を出していかれることを心からお祈り申し上げる。
追伸:企業の人事担当者様へ
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