『古事記』本文より「天地開闢」の語訳とポイント|天に五柱の別天つ神、地に七代の神々出現。神名を連ねる手法で天地初発を物語る。

 

『古事記』より現代語訳とポイントをお届けします。今回は「天地開闢てんちかいびゃく」。

天地の初発から次々に神が誕生し、神世七代かみよななよまで続く『古事記』版「天地創生神話」であります。

 

『古事記』本文より「天地開闢」の語訳とポイント|天に五柱の別天つ神、地に七代の神々出現。神名を連ねる手法で天地初発を物語る。

位置づけとして、 上中下と全3巻ある『古事記』の上巻本文がここから始まります。

天に5柱の「別天つ神ことあまつかみ」、地には7代の神々の出現を、神名を連ねる手法で物語っています。

当サイトとしては、是非、正史『日本書紀』と比較しながら読み進めていただきたいド━(゚Д゚)━ン!! 

コチラ!

日本神話を読み解く|天地開闢まとめ 『日本書紀』第一段本伝からポイントをわかりやすくまとめました(語訳付き)

2016.01.07

『日本書紀』の方は、天地開闢に始まる神々の誕生を、陰陽や易といった原理的思想をもとに物語っています。

特に、本伝に多くの異伝を併載、列挙して、神話を多面的・多角的に伝えようとしているところがポイントです。

天地開闢、神々の誕生も、本伝と異伝(一書)の計7種類の伝承が共存しながら、ああだこうだと多様な世界を繰り広げているわけです。

それに対して、

『古事記』はどちらかというと、神々の誕生と紹介に注力している感じです。

異伝など存在せず、あっても本文を説明するための「注」にすぎません。

本文は終始一貫して統一的な世界を構築しています。書紀のようにああだこうだと言わない分、洗練された「物語」として完成度も高いと言えます。

 

『古事記』上巻「天地開闢」別天神五柱~神世七代

現代語訳

天地初めておこりし時に、高天たかあまの原にりませる神の名は、天之御中主あめのみなかぬしの神。次に、高御産巣日たかみむすひの神。次に、神産巣日かみむすひの神。此の三柱みつはしらの神は、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。

次に、国がわかく、浮ける脂のごとくして、海月クラゲなすただよへる時に、葦牙あしかびのごとく萌えあがる物によりて成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅うましあしかびひこぢの神。次に、天之常立あめのとこたちの神。此の二柱ふたはしらの神も、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。

かみくだりの五柱の神は、別天ことあまつ神ぞ。

次に、成りませる神の名は、国之常立くにのとこたちの神。次に、豊雲野とよくものの神。此の二柱の神も、独神ひとりがみと成りまして、身を隱したまひき。

次に成りませる神の名は、宇比地邇うひぢにの神。次に、いも 須比智邇すひちにの神。次に、角杙つのぐひの神。次に、いも 活杙いくぐひの神(二柱)。次に、意富斗能地おほとのぢの神。次にいも 大斗乃辨おほとのべの神。次に、於母陀流おもだるの神。次に、いも 阿夜上訶志古泥あやかしこねの神。次に、伊邪那岐いざなきの神。次に、いも 伊邪那美いざなみの神。

かみくだりの、国之常立くにのとこたちの神より下、伊邪那美いざなみの神より前を、あはせて神世七代かみよななよという。(上の二柱の独神ひとりがみは、おのおのも一代という。次にたぐへる十柱とはしらの神は、おのおのも二柱ふたはしらの神を合わせて一代という)

※「いも」は女性の意味。なので「妹」の接頭語がついていない神名が男性神ということになります。

 

原文

天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神。次高御產巢日神、次神產巢日神。此三柱神者、並獨神成坐而、隱身也。

次、國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時、如葦牙、因萌騰之物而成神名、宇摩志阿斯訶備比古遲神、次天之常立神。此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也。

上件五柱神者、別天神。

次成神名、國之常立神、次豐雲上野神。此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也。

次成神名、宇比地邇上神、次妹須比智邇去神、次角杙神、次妹活杙神二柱、次意富斗能地神、次妹大斗乃辨神、次於母陀流神、次妹阿夜上訶志古泥神、次伊邪那岐神、次妹伊邪那美神。

上件、自國之常立神以下伊邪那美神以前、幷稱神世七代。上二柱獨神、各云一代。次雙十神、各合二神云一代也。

『古事記』上巻より一部分かりやすく修正

 

読み解きポイント

誕生する神々を整理するとこんな感じです。

%e7%a5%9e%e6%a7%98%e4%b8%80%e8%a6%a7

国之常立くにのとこたちの神、豊雲野とよくものの神の2神は「神世七代」の最初の2代ですが、独神という点が3代以下と異なります。

造化三神ぞうかさんしん」「別天神ことあまつかみ」「独神ひとりがみ」「神世七代かみよななよ」についてはコチラで解説しています。

⇒「造化三神|天と地ができたその原初の時に、高天原に成りました三柱の神神。あとに誕生する神神に、彼らが活躍する世界を譲り、自らは立ち退く立場を取る奥ゆかしすぎる神神。

⇒「別天神(ことあまつかみ)|神世七代に先立って特別に誕生した5柱の神々。

⇒「独神(ひとりがみ)|単独で誕生し、男女の対偶神「双神」と対応する神。双神が生みなしたこの世界と神々とに関わり、その活躍を導き助力する存在

⇒「神世七代|別天神の後に成った七代12柱の神々。神の世に、新しく世界が次々に具体的な形をとって展開するさまを表象。

個別神々の意味合いは以下の通りです。 

造化三神&別天つ神

⇒「天之御中主神|高天の原の神聖な中央に位置する主君。天地初発の時に高天の原に化成した最初の神

⇒「高御産巣日神|造化三神の一柱で、天之御中主神に次いで二番目に化成した独神で別天つ神。「産霊」ならびに「産日」の霊能を発動。

⇒「神産巣日神|造化三神の一柱で3番目に高天の原に化成した独神。生命体の蘇生復活を掌る至上神。

別天つ神

⇒「宇摩志阿斯訶備比古遅神|国土浮漂のとき、葦芽のように勢いよく芽生え伸びてゆくものを、神の依代として化成した独神で、身を隠していた別天つ神

⇒「天之常立神|国土浮漂のとき、葦芽に依って化成した独神

神世七代

⇒「国之常立神|国土神として最初に化成し、独神として身を隠す神世七代の第一代

⇒「豊雲野神|国土神として化成し独神で身を隠している神世七代の第二代

⇒「宇比地邇神と須比智邇神|国土神として化成し、男女一対の神で神世七代の第三代。土地を鎮めるための盛土の神格化

⇒「角杙神と活杙神|国土神として化成した神世七代の第四代。村落や家屋の境界をなす男女一対の棒杙の神格化

⇒「意富斗能地神と大斗乃弁神|国土神として化成し神世七代の第五代。 門口などに立てられていた具象的な神像に対する命名。

⇒「於母陀流神と阿夜訶志古泥神|国土神として成り、男女対偶神として神世七代の第六代に数えられる。生産豊穣の霊能を表象。

⇒「伊邪那岐神と伊邪那美神|国土神として成った神世七代の第七代。男女媾合による生産豊穣の表象。結婚し国生みと神生みの大事業をなす日本神話の中心的神々。

 

まとめ

天地の初発から次々に神が誕生し、神世七代まで続く『古事記』版「天地創生神話」。

位置づけとして、 上中下と全3巻ある『古事記』の上巻本文がここから始まります。

天に5柱の別天つ神、地には七代の神々の出現を、神名を連ねる手法で物語っています。

『日本書紀』の方は、天地開闢に始まる神々の誕生を、陰陽や易といった原理的思想をもとに物語っています。

特に、本伝に多くの異伝を併載、列挙して、神話を多面的・多角的に伝えようとしているところがポイントです。

それに対して、

『古事記』はどちらかというと、神々の誕生と紹介に注力している感じです。

異伝など存在せず、あっても本文を説明するための「注」にすぎません。

本文は終始一貫して統一的な世界を構築しています。書紀のようにああだこうだと言わない分、洗練された「物語」として完成度も高いと言えます。

当サイトとしては、是非『日本書紀』と比較しながら読み進めていただければと思います。

天地開闢のよりディープなお話は別稿で詳しく取り上げます。お楽しみに!

 

コチラも是非。おススメ関連エントリー

『日本書紀』と『古事記』の違いに見る「日本神話」の豊かさとか奥ゆかしさとか

2016.01.08

神武東征神話を丸ごと解説!ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

2016.01.13

日本神話好きな皆さまへ。当サイトおススメ神社の皆さん!

伊勢神宮(皇大神宮・内宮)|伊勢神宮を日本神話から紐解く!伊勢神宮の魅力を全部まとめてご紹介!

2016.09.28

出雲大社|幽世統治の超絶パワースポット出雲大社をまとめてご紹介!

2016.10.23

橿原神宮|日本建国の地!日本神話から入る橿原神宮の魅力をまとめてご紹介!

2016.01.18

厳島神社|世界文化遺産!美しく荘厳なパワースポットの厳島神社をまとめてご紹介!

2016.05.06

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

さるたひこ

こんにちは、さるたひこです!読んでいただきありがとうございます。「日本神話をこよなく愛するナビゲーター」として日本神話関連情報、題して「日本神話がおもしろい!」を発信していきます。どうぞよろしくお願いします。ちなみに、ネーミングは、天孫降臨の折、瓊瓊杵尊を道案内した国津神「猿田彦命」にあやからせていただいてます。ただ、神様の名前をそのまま使うのは畏れ多いので「さるたびこ」の「び」を「ひ」に変えております。