『古事記』天地開闢|原文と現代語訳、解説!神名を連ねる手法で天地開闢を物語る。

古事記 天地開闢

 

多彩で豊かな日本神話にほんしんわの世界へようこそ!

日本最古の書『古事記』をもとに、
最新の学術成果も取り入れながら、どこよりも分かりやすい解説をお届けします。

今回は、『古事記』上巻から、

「天地開闢」。

天地の初発から次々に神が誕生し、神世七代かみよななよまで続く『古事記』版「天地創生神話」を徹底解説。

概要で全体像をつかみ、ポイント把握してから本文へ。最後に、解説をお届けしてまとめ。

現代の私たちにも多くの学びをもらえる内容。日本神話から学ぶ。日本の神髄がここにあります。それでは行ってみましょう!

 

『古事記』の天地開闢|原文、語訳とポイント解説!神名を連ねる手法で天地初発を物語る。

『古事記』の「天地開闢」のポイント

『古事記』版天地開闢。

上巻・中巻・下巻と、全部で3巻ある『古事記』の「上巻」本文がここから始まる。。

天に5柱の「別天つ神ことあまつかみ」、地には7代の「神世七代」という神々の出現を、神名を連ねる手法で物語ります。

当サイトとしては、是非、

正史『日本書紀』と比較しながら、読み進めていただきたいド━(゚Д゚)━ン!!

その方が、『古事記』の注力しているポイントがとっても分かりやすくなる。激しくおススメ。コチラ!

『日本書紀』第一段

『日本書紀』巻第一(神代上)第一段 本伝 ~天地開闢と三柱の神の化生~

04/15/2018

『日本書紀』の方は、天地開闢に始まる神々の誕生を、陰陽や易といった原理的思想をもとに物語ってます。

そして、「本伝」のほかにも多くの「異伝」を併載、列挙して、神話を多面的・多角的に伝えようとしてる。ココがポイント

本伝と異伝(一書)の計7種類の伝承が共存しながら、ああだこうだと多様な世界を繰り広げているわけですね。

それに対して、

『古事記』は本文は一つ。終始一貫して統一的な世界を構築してる。異伝など存在せず、あっても本文を説明するための「注」にすぎません。

書紀のようにああだこうだと言わない分、洗練された「物語」として完成度も高いと言えます。

そして、今回のテーマ「天地開闢」については、

『古事記』は、神々の誕生と、その尊貴さを示すことに注力してる。

もう、コレだけ分かってくれればそれでいいんだよと言わんばかりの、格付け(カテゴリ分け)の嵐であります。

と。

こういうことも、『日本書紀』との比較のなかで初めて分かる。何度も言いますが、『日本書紀』との比較を通じて『古事記』を解釈するのが激しくおススメ!

ということで、早速、現場をチェックです。

 

『古事記』上巻「天地開闢」別天神五柱~神世七代

 天地初めておこりし時に、高天たかあまの原にりませる神の名は、天之御中主あめのみなかぬしの神。次に、高御産巣日たかみむすひの神。次に、神産巣日かみむすひの神。此の三柱みつはしらの神は、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。

 次に、国がわかく、浮ける脂のごとくして、海月クラゲなすただよへる時に、葦牙あしかびのごとく萌えあがる物によりて成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅うましあしかびひこぢの神。次に、天之常立あめのとこたちの神。此の二柱ふたはしらの神も、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。

 かみくだりの五柱の神は、別天ことあまつ神ぞ。

 次に成りませる神の名は、国之常立くにのとこたちの神。次に、豊雲野とよくものの神。此の二柱の神も、独神ひとりがみと成りまして、身を隱したまひき。

次に成りませる神の名は、宇比地邇うひぢにの神。次に、いも 須比智邇すひちにの神。次に、角杙つのぐひの神。次に、いも 活杙いくぐひの神(二柱)。次に、意富斗能地おほとのぢの神。次にいも 大斗乃辨おほとのべの神。次に、於母陀流おもだるの神。次に、いも 阿夜上訶志古泥あやかしこねの神。次に、伊邪那岐いざなきの神。次に、いも 伊邪那美いざなみの神。

かみくだりの、国之常立くにのとこたちの神より下、伊邪那美いざなみの神より前を、あはせて神世七代かみよななよという。(上の二柱の独神ひとりがみは、おのおのも一代という。次にたぐへる十柱とはしらの神は、おのおのも二柱ふたはしらの神を合わせて一代という。)

天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神。次高御產巢日神、次神產巢日神。此三柱神者、並獨神成坐而、隱身也。 次、國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時、如葦牙、因萌騰之物而成神名、宇摩志阿斯訶備比古遲神、次天之常立神。此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也。 上件五柱神者、別天神。

次成神名、國之常立神、次豐雲上野神。此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也。 次成神名、宇比地邇上神、次妹須比智邇去神、次角杙神、次妹活杙神二柱、次意富斗能地神、次妹大斗乃辨神、次於母陀流神、次妹阿夜上訶志古泥神、次伊邪那岐神、次妹伊邪那美神。 上件、自國之常立神以下伊邪那美神以前、幷稱神世七代。上二柱獨神、各云一代。次雙十神、各合二神云一代也。 (『古事記』上巻より一部分かりやすく修正)

歴史書編纂中

 

『古事記』上巻「天地開闢」読み解きポイント

『古事記』版天地開闢、いかがでしたでしょうか?

物語が一本なので、非常に分かりやすいですよね。「物語」として洗練されており、完成度が高い。

ただ、、単線なので、なんでそうなってるのか?みたいなところが分かりにくい。

例えば、冒頭の「天地初めておこりし時に、、」というところ、

コレ、天と地が初めてできた時のことを伝えてる、、、くらいしか言いようがない。比較するものがないと、そうなってしまいがちなんです。

そこで登場するのが、『日本書紀』。

先ほど触れたとおり、『古事記』は『日本書紀』との比較を通じて解釈すると、注力ポイントがめっちゃ分かりやすくなる。

天と地ができた時のことを伝えてる、くらいしか言いようがない、という所も、

『日本書紀』では天と地ができる前の状態から描いている、てことは、『古事記』はその部分は端折られてる。つまり、重要感をおいてないんだな、つまり、天地の形成プロセスより、神々の誕生の方が伝えたいんだな、と、『古事記』独自の、『古事記』ならではの注力ポイントが分かるようになってくるんです。ツウとしては、こういう楽しみ方がオススメ。

てことで、以下そんなテイストで解説を。

  • 天地初めておこりし時に、高天たかあまの原にりませる神の名は、天之御中主あめのみなかぬしの神。次に、高御産巣日たかみむすひの神。次に、神産巣日かみむすひの神。此の三柱みつはしらの神は、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。
  • 原文: 天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神。次高御產巢日神、次神產巢日神。此三柱神者、並獨神成坐而、隱身也。

→ 『古事記』版の天地開闢。。厳かな雰囲気を感じて。

ポイント4つ。

  1. 『古事記』は、天と地が誕生するところから始まってる。
  2. 『古事記』は、高天原という至高の場がすでに用意されている。
  3. 『古事記』は、造化三神とよばれる神が誕生している。
  4. 最初に誕生した三神は、独神。そしてすぐに身を隠す。

てことで、

まずは1つめ。

①『古事記』は、天と地が誕生するところから始まってる。

コレ、結構重要なポイントで。天と地ありきの天地開闢。

なんであるの?とか、どうやって誕生したの?っていう質問は受け付けておりません。「天地初めておこりし時に」とあるように、天と地ができたところからのスタート。

さて、これに対して、『日本書紀』では、その前の段階の「混沌」から始まり、陽の気が天へ、陰の気が地へ、、といった天地の形成プロセスを伝えてます。

参考までに、『日本書紀』の冒頭がコチラ。

昔々、天と地がまだ分れず、陰と陽も分れていなかった。混沌として、まるで鶏の卵のようであり、ほの暗くぼんやりとして、事象が芽生えようとする兆しを内に含んでいた。

その中の清く明るいものが薄くたなびいて天となり、重く濁ったものがよどみ滞って地となるに及んでは、その軽やかで妙なるものは集まりやすく、重く濁ったものは凝り固まりにくい。だから、まず天ができあがり、その後で地が定まったのである。

そうして天と地が成り立った後に、その天地の中に神が生まれた。 『日本書紀』第一段〈本伝〉より冒頭部分抜粋)

ね?

全然違いますよね? スゴイ、、説明臭いというか、理論ガチガチというか。。。これが『日本書紀』の世界。

一方の『古事記』は、こういう天地の形成プロセスは省かれてる。

天地初めておこりし時に、高天たかあまの原にりませる神の名は~

と、天地ありき。なんなら高天原ありきで伝えてる訳です。

このことから、

『古事記』的には、そんな世界の生成過程や陰陽理論がどうのよりも、天地が初めてできたときの高天原に生まれた神のほうを伝えたい、ということが分かります。

コレ、『日本書紀』と比較することで初めて浮かび上がってくる。比較によって『古事記』の独自性とか、『古事記』が注力したいポイントが見えてくるんですね。

続けます。

②『古事記』は、高天原という至高の場がすでに用意されている。

コレも、超重要ポイント。

すでにあるんすよ、高天原。

どうやってできたのか?なんて関係ないんす。あるんす、高天原。

●詳細はコチラ→ 高天原(たかあまのはら)とは? 天の原からさらに上、世界を統治する至尊神の君臨する場所

ポイントは、

高天原とは、天地開闢の最初から存在し、
非常に尊貴な神々が誕生した、めちゃくちゃ尊い場所である

ってこと。

誕生経緯や理由はいいから!とにかくコレだけ理解してくれればそれでいいの! とでも言わんばかりの『古事記』。

ちなみに、、

「高天原」に通ずるものとして、「あまはら」という言葉があります。コレを補足として解説。

『万葉集』に例あり。

天の原 降りけ見れば 天の川 霧立ちわたる 君は来ぬらし 

天原  振放見者  天漢  霧立渡  公者来良志 (2068番)

他にも、

天の原 雲なき よひにぬばたまの 宵度よわたる月の 入らまく惜しも(1712番)」、「天の原 富士の柴山 この暗の 時ゆつりなば 逢はずかもあらむ(3355番)」、などの用例あり。

いずれも、

「天の原」が、天空の広大な広がりを表す言葉として使われてます。

そして、「原」についても補足解説。

地上の「原(はら)」には川が流れ、こうしたところには天子の住む都が造営されます。

『万葉集』には、久迩(京都府相楽郡加茂町から木津町山城町にまたがる地域)の新京を讃めた長歌があります。

(前略) あなあはれ 布当ふたぎ、 いと貴大宮たふとおほみやところ、 うべしこそ我が大君は、 君ながら 聞かしたまひて、 さす竹の大宮 ここと定めけらしも(1050番)

広大な原に木津川が流れる場所、まさに都造営にふさわしい場所だったことが伺えます。

これらを総合すると、、、

要は、

都造営にふさわしい広大な「原」を、天空に想定したのが「天の原」。その広がりや尊いイメージをつかむことが重要!

ってこと。

さらに! そこに「高」をつけているので、「高い」「天の原」。

つまり、

高天原とは、「天の原」という広大な天空の広がりをもとに、それより一段と高い領域として、非常に尊い場所として設定されてる

ってこと。

そしてそこは、

至尊神が都を造営して世界を統治するに相応しい場所

ってことで。この、「場の尊さ」が非常に重要なので、しっかりチェック。

ちなみに、「高天の原」には「安の河」も流れていますし、八百万神やほろよづかみが集い神事も行います。

いわば、古代人の理想的な世界像をぎゅっと凝縮した場、それが「高天の原」。とも言えますね。

次!

③『古事記』は、造化三神とよばれる神が誕生している。

『古事記』は、天地が初めてできたときの高天原に生まれた神を伝えたい、ということで。さっそく誕生する神が「造化三神」。

コレ、元は、『古事記』の「序文」に記載されております。

序文とは、『古事記』の概要をまとめた箇所。本文の前、冒頭部分にあり。

そこから「造化三神ぞうかさんしん」を抜粋します。

天と地が初めて分かれて、三神が最初に出現した神であり、男女両性がここに開かれ、伊邪那岐・伊邪那美神が万物の祖となった。乾坤けんこん初めて分かれて、参神造化さんしんぞうかはじめとなり、陰陽ここに開けて、二霊群品のおやとなりき。) 『古事記』序文より一部抜粋

と。

「乾坤」とは、天と地のこと。「陰陽」とは、男女の両性のこと。「群品」とは、万物のこと。

で、

一番大事なのは「造化」。

「造化」とは形づくられること。神の場合、「化す」という運動の中で造形物として成ることが設定されてます。他にも、「化成」「化生」と言った言葉が神の誕生に使用される。日本神話的な、特別な表現であります。

『日本書紀』では、このあたりは「葦の芽のような物から化す」と、より具体的に伝えてます。

●必読→ 『日本書紀』巻第一(神代上)第一段 本伝 ~天地開闢と三柱の神の化生~

うん、やっぱ違うよね。

ちなみに、、西洋をはじめ、外国の神様は最初から「ある」「(完全体として)存在する」ものとして描かれますが、日本の場合は違います。神様は最初から完璧な状態で生まれるのではなく、「化す」という運動のなかで、そのプロセスを通じて造形物として「成る」のです。コレ、「化ける」的な感じで、形を変え、姿を現すイメージ。コレ、重要なポイントなのでしっかりチェック。

ということで、造化三神ぞうかさんしん」というカテゴリ設定と、それが「最初に出現した、かなり尊い神」であることをチェック。

●詳しくはコチラ⇒「造化三神|天と地ができたその原初の時に、高天原に成りました三柱の神神。

そして、

誕生した神の詳細はコチラ↓で!

⇒「天之御中主神|高天の原の神聖な中央に位置する主君。天地初発の時に高天の原に化成した最初の神

⇒「高御産巣日神|造化三神の一柱で、天之御中主神に次いで二番目に化成した独神で別天つ神。「産霊」ならびに「産日」の霊能を発動。

⇒「神産巣日神|造化三神の一柱で3番目に高天の原に化成した独神。生命体の蘇生復活を掌る至上神。

三神のポイントは、関係性です。

一番大事なのは、やっぱり天之御中主神あめのみなかぬしのかみ

天、高天原の中央に主として座す神として、
同じく高天原に化成した高御産巣日神たかみむすひのかみ神産巣日神かみむすひのかみとのちょうど真ん中に当たる神として位置付けられます。

高御産巣日神たかみむすひのかみは高天原系の神の代表、一方の神産巣日神かみむすひのかみは出雲系の神の代表として、それぞれ活躍。『古事記』ではそういう設定になってる。

一方で、

高天原系と出雲系は対立的関係でもあり、とは言え、高天原系の神が出雲系の神を支配する関係でもあるので、それゆえに、両神を融和的に止揚する必要があります

この神話的要請に応える存在が、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ

この関係性が激しく重要なので、しっかりチェックされてください。

最後に、4つめ。

④最初に誕生した三神は、独神。そしてすぐに身を隠す。

ポイントは、

『古事記』では、「独神ひとりがみ」は、全て「隠身かくしみ」と組み合わせている

ってこと。「独神成坐而隠身也(独り神と成りまして、身を隠したまひき)」

まず、

独神ひとりがみ」とは、単独で誕生し、男女の対偶神を指す「双神たぐへるかみ」と対応する神のことを言います。

まず「独神ひとりがみ」が誕生し、続いてその後に「独神ひとりがみ」が誕生するという流れ・順番。

それを受けての、「身を隠す」という内容です。

「隠身」といえば、国譲りを迫られた大国主神が執った処身方法で。

天孫に国を譲り、わが身は表の世界から立ち退くこと。コレが「隠身」。

つまり、

独神ひとりがみ」として身を隠すとは、「双神たぐへるかみ」に彼らの活躍するこの世界を譲り、立ち退くことをいいます。

双神たぐへるかみ」の代表格は、伊邪那岐と伊邪那美神であります。まさに世界を創生する2神ですね。

この奥ゆかしいスタンスをチェック。

●詳細はコチラ⇒「独神(ひとりがみ)|単独で誕生し、男女の対偶神「双神」と対応する神。

『古事記』はやけに神カテゴリを作りたがる雰囲気あり。「造化三神」「別天神」などなど、、、

コレは、『古事記』がめざす「国内向けの、天皇家の歴史を伝える書物」という目的から。いろんな神様カテゴリをつくって、いろんな神様を当て込んで、いろんな豪族、氏族のご先祖様を位置付けてるんですね。

以上、4つ。

  1. 『古事記』は、天と地が誕生するところから始まってる。
  2. 『古事記』は、高天原という至高の場がすでに用意されている。
  3. 『古事記』は、造化三神とよばれる神が誕生している。
  4. 最初に誕生した三神は、独神。そしてすぐに身を隠す。

それぞれの意味あいと『古事記』が伝えようとしてるポイントをしっかりチェックです。

続けてどんどん行きます。

  •  次に、国がわかく、浮ける脂のごとくして、海月クラゲなすただよへる時に、葦牙あしかびのごとく萌えあがる物によりて成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅うましあしかびひこぢの神。次に、天之常立あめのとこたちの神。此の二柱ふたはしらの神も、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。
  •  原文 次、國稚如浮脂而久羅下那州多陀用幣流之時、如葦牙、因萌騰之物而成神名、宇摩志阿斯訶備比古遲神、次天之常立神。此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也。

造化三神のあとに続けて誕生する二神。

詳細はコチラで。

⇒「宇摩志阿斯訶備比古遅神|国土浮漂のとき、葦芽のように勢いよく芽生え伸びてゆくものを、神の依代として化成した独神で、身を隠していた別天つ神

⇒「天之常立神|国土浮漂のとき、葦芽に依って化成した独神

なんか、、尊いですよね。雰囲気からして。スゴイです。

で、大事なのは次のところ。

  •  かみくだりの五柱の神は、別天ことあまつ神ぞ。
  •  原文 上件五柱神者、別天神。

造化三神+二神=五神をまとめて「別天神」として位置づけてます。

意味合いとしては、尊いよと。ほかの神々とは違うよと、そういうための神様カテゴリ。

●詳細はコチラ⇒「別天神(ことあまつかみ)|神世七代に先立って特別に誕生した5柱の神々。

要は、

別天神とは、『日本書紀』で設定されてる「神世七代」に先立って、それよりも尊貴な神として位置づけたい。そのための神様カテゴリ。

ってこと。そんな『古事記』であります。

このあたりで、神様がごちゃごちゃになってくると思うので、いったん整理。

コチラ!

『古事記』天地開闢で誕生した神々

こ、コレ、、分かりやすい! しっかりチェック。

次!

  • 次に成りませる神の名は、国之常立くにのとこたちの神。次に、豊雲野とよくものの神。此の二柱の神も、独神ひとりがみと成りまして、身を隱したまひき。
  • 原文 次成神名、國之常立神、次豐雲上野神。此二柱神亦、獨神成坐而、隱身也。

ここまでの神様が独神。単独で誕生した尊い神という位置づけです。

神の詳細はコチラで。

⇒「国之常立神|国土神として最初に化成し、独神として身を隠す神世七代の第一代

⇒「豊雲野神|国土神として化成し独神で身を隠している神世七代の第二代

いずれも、独神として成り、すぐに身を隠す、つまり、この後に誕生する双神に活躍の場を譲る。非常に奥ゆかしいスタンスであります。

次!

  • 次に成りませる神の名は、宇比地邇うひぢにの神。次に、いも 須比智邇すひちにの神。次に、角杙つのぐひの神。次に、いも 活杙いくぐひの神(二柱)。次に、意富斗能地おほとのぢの神。次にいも 大斗乃辨おほとのべの神。次に、於母陀流おもだるの神。次に、いも 阿夜上訶志古泥あやかしこねの神。次に、伊邪那岐いざなきの神。次に、いも 伊邪那美いざなみの神。
  • 原文 次成神名、宇比地邇上神、次妹須比智邇去神、次角杙神、次妹活杙神二柱、次意富斗能地神、次妹大斗乃辨神、次於母陀流神、次妹阿夜上訶志古泥神、次伊邪那岐神、次妹伊邪那美神。 

いっぱい出てきました、、、男女ペアで誕生する神様たち。

いも」は女性の意味。なので「妹」の接頭語がついていない神名が男性神ということになります。

誕生した神様の詳細はコチラで。

⇒「宇比地邇神と須比智邇神|国土神として化成し、男女一対の神で神世七代の第三代。土地を鎮めるための盛土の神格化

⇒「角杙神と活杙神|国土神として化成した神世七代の第四代。村落や家屋の境界をなす男女一対の棒杙の神格化

⇒「意富斗能地神と大斗乃弁神|国土神として化成し神世七代の第五代。 門口などに立てられていた具象的な神像に対する命名。

⇒「於母陀流神と阿夜訶志古泥神|国土神として成り、男女対偶神として神世七代の第六代に数えられる。生産豊穣の霊能を表象。

⇒「伊邪那岐神と伊邪那美神|国土神として成った神世七代の第七代。男女媾合による生産豊穣の表象。結婚し国生みと神生みの大事業をなす日本神話の中心的神々。

まー、いっぱい。豊かな感じになってきました。

次!

  • かみくだりの、国之常立くにのとこたちの神より下、伊邪那美いざなみの神より前を、あはせて神世七代かみよななよという。(上の二柱の独神ひとりがみは、おのおのも一代という。次にたぐへる十柱とはしらの神は、おのおのも二柱ふたはしらの神を合わせて一代という。)
  • 上件、自國之常立神以下伊邪那美神以前、幷稱神世七代。上二柱獨神、各云一代。次雙十神、各合二神云一代也。

→5柱の「別天神ことあまつかみ」が誕生した後、続いて誕生する「独神ひとりがみ」2柱と、「双神」10柱の計12柱。

これらの神々の総称。「神世七代」という神様カテゴリ。

●必読⇒ 神世七代|別天神の後に成った七代12柱の神々

「神世七代」については、神名に注目。

コレ、実は、

世界が次から次へと形をとって展開するさま

を表象してると考えられるんです。新しく、次々に形作られていく様子を、神名が表現していると。

ただ、その意味については、様々な説があり、いまだに決着をみていません。

こんな感じ。

説① 説② 説③
1 国之常 国の恒常的確立 国土の根源 神々の生成の場としてのトコの出現
2 豊雲野 雲の覆う原野 原野の形成 神々の生成を具現化している二元的な場
3 宇比地&須比智 男女一対の盛土(地鎮) 土砂の発生 神の原質としての泥と砂
4 角杙&活杙 棒杙(境界の形成) 杙の打ち込み 現れ出ようとする最初の形
5 意富斗&大斗乃 門棒(住居の防塞) 居住の完成 男女神の性が形態として表面化したこと
6 淤母陀&阿夜訶 男根・女陰の神像(生産豊穣の霊能) 人体の完備・意識の発生 形態の完備を体と用の両面から言ったもの
7 伊邪那岐&伊邪那美 交歓の2面像(媾合生産) 夫婦の発生 完全体としての神の身体的出現の次第を表すもの

まーいろいろある訳です。

ただ、

その要点をまとめてみると以下になります。

神名 表象するもの
国常立 天の常立神に続き、それと対応して成る国の恒常的確立
豊雲野 地上世界に豊かな雲のわき立つ野が出現したこと、地上世界の豊穣
宇比地&須比地 天→国、雲野→泥砂という対応に即した、地上世界の土台
角杙&活杙 土台としての大地の、いまだ固定しない状態を固定する「力強く霊能をもつ杙」
意富斗&大斗乃 偉大な、男女両性の部位。「斗」は伊奘諾尊・伊奘冉尊の媾合こうごうをいう「美斗能麻具波比みとのまぐはい」の「斗」。
於母陀&阿夜訶 男女両性の出現に続き、その男と女をそれぞれ「面足おもたる」「あやかしこね」と称える
伊邪那岐&伊邪那美 男女が完備したあと、その男と女とが互いに結婚・国生みに向け誘いあう

これ、

ホントによくできた神名になっていて。

改めて、表象しているのは、神の世に、世界が次々に形づくられ展開するさまであり、以下のような物語展開。

  1. 先ずは、国(といっても、天に対応する世界の事。具体的な国は伊邪那岐と伊邪那美が生みます。)が確立し、
  2. そこに、豊穣を約束する「雲のわき立つ野」が出現。
  3. ここに、大地の土台ができ、これを力強い杙がしっかり固定します。
  4. そして、男女両性が登場し、互いにまっとき性を具有することを称えあう。

、、、

ステキですね。ゾクゾクします。

日本的な、極めて日本的な、世界創生の物語。

特に大きいのは、伊邪那岐&伊邪那美の誕生です。

この2柱の神が誕生する前は、国や野が誕生したり、土台とか杙とか、表象内容は外観・外見にとどまっているのですが、

伊邪那岐&伊邪那美の登場によって、男と女が互いに誘い合い、心を交わせ、お互いの存在を認め合うようになります。

これは、つまり、男女が一体化しようと声を掛け合っているという事。

ポイントはまさにここで。

要は、

日本神話的世界創生は「最終的に収斂しゅうれんしていく事」にあります。

一体のものとして収れんするのです。

国→野→土台→男と女の誕生、そして一体化。

男と女という、本来的にあい異なる性が、異なればこそ互いに誘いあって一体化しようとする本質的・根源的なありようを表象している。

こんな世界創生を描いているところが他にあるのでしょうか。

神の世の最後に、男女が互いに誘いあう本来的なあり方を表象する神が出現したことにより、神世七代という世界も完成をみる、とも言えて。

だからこそ、そのあとに、いよいよ具体的な国や神々が誕生していく流れが出来上がる訳ですね。

神世七代、その位置づけを全体の文脈から見るととても奥ゆかしい内容になっていることが分かります。ココの部分、是非チェックいただければと思います。

 

まとめ

天地の初発から次々に神が誕生し、神世七代まで続く『古事記』版「天地創生神話」。

いかでしたでしょうか?

天に5柱の「別天つ神ことあまつかみ」、地には7代の「神世七代」という神々の出現を、神名を連ねる手法で物語ってます。

『古事記』はどちらかというと、神々の誕生と紹介に注力している感じ。

本文は終始一貫して統一的な世界を構築しています。洗練された「物語」として完成度も高い。

一方、

『日本書紀』の方は、天地開闢に始まる神々の誕生を、陰陽や易といった原理的思想をもとに物語ってます。特に、本伝に多くの異伝を併載、列挙して、神話を多面的・多角的に伝えようとしているところがポイント。

当サイトとしては、是非『日本書紀』と比較しながら読み進めていただければと思います。そうすることで『古事記』の独自性や注力ポイントが見えてくる。コレ、激しくおススメです。

続けて、国生み神話です。コチラでどうぞ!

『古事記』国生み

『古事記』国生み原文と現代語訳と解説|伊邪那岐命と伊邪那美命の聖婚と大八嶋国誕生の物語

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コチラ必読!どこよりも分かりやすい日本神話解説!

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他