神様の服装・装身具|日本神話的神様ファッション事情の全て

神様の服装:日本神話

 

日本神話に登場する、重要ワード、重要エピソードをディープに掘り下げる「日本神話解説シリーズ」。

今回は、

神様の服装・装身具

について、日本神話の現場からご紹介。

気になりません?

神様の装身具。それ、どんな感じなん?て。

そんな素朴な疑問にお答えします。

本エントリでは日本神話的神様の装身具を全部まとめてご紹介。これで神様ファッション事情の全部がだいたい分かります!

 

神様の服装・装身具|日本神話的神様ファッション事情の全て

日本神話的神様ファッション事情の概要

大きく、普段着と戦闘着の2種類があるようです。

  • 普段着・・・『日本書紀にほんしょき』巻一(神代上)第五段〔一書6〕
  • 戦闘着・・・『日本書紀にほんしょき』巻一(神代上)第六段〔本伝〕

の2つ。

今回は、普段着についてお届けします。

 

日本神話的神様ファッション事情の現場

日本神話において、ファッション関連伝承が一番最初に登場するのが、『日本書紀にほんしょき』巻一第五段〔一書6〕。

愛する妻に会いに黄泉よみへ行った伊奘諾いざなきでしたが、伊奘冉いざなみから課された見るなの禁を破り伊奘冉いざなみ爆ギレ。この世へ逃げ帰る途中で、泉津平坂よもつひらさかで、着用していたものを脱ぎ散らかしていく展開に。

日本書紀にほんしょき』巻一第五段〔一書6〕

その時、伊奘冉尊は恨んで「どうして約束を守らず私に恥をかかせたのか。」と言い、泉津醜女よもつしこめ(一説では泉津日狭女よもつひさめと言う)八人を遣わし、追い留めようとした。ゆえに、伊奘諾尊は剣を抜き、後ろ手に振りながら逃げた。さらに、黒い蔓草つるくさの頭飾りを投げた。これがたちまち葡萄ぶどうと成った。醜女しこめはこれを見て採って食べた。食べ終えると、更に追った。伊奘諾尊はまた湯津爪櫛ゆつつまぐしを投げた。たちまち竹の子に成った。醜女はまたも、これを抜いて食べた。

 - 中略 ー

そこで「これよりは出て来るな。」と言って、さっとを投げた。これを岐神ふなとのかみと言う。またを投げた。これを長道磐神ながちわのかみと言う。また、を投げた。これを煩神わずらいのかみと言う。また、はかまを投げた。これを開齧神あきぐひのかみと言う。また、くつを投げた。これを道敷神ちしきのかみと言う。

●詳細解説→ 『日本書紀』巻第一(神代上)第五段 一書第6 ~人間モデル神登場による新たな展開~

と。

  • 逃げるために装身具を投げた
  • 死の世界と断絶するために衣服を投げた

という内容。

たぶん、、、

衣服投げた時点でほぼマッパ。

多分。。

で、

ココで、伊奘諾尊いざなきのみことが投げに投げたグッズたちは以下の通りです。

  • 黒い蔓草つるくさの頭飾り
  • 湯津爪櫛ゆつつまぐし
  • はかま
  • くつ

と、いうことで、

コレ、実は『日本書紀にほんしょき』『古事記こじき』が編纂へんさんされた当時、天武てんむ持統朝じとうちょうのころの服飾をほぼ踏襲。神話的には、神様が着用してるので人間も着用してる、という建て付けですが、、、

イメージがコチラ。

▲日本服飾史HP(https://costume.iz2.or.jp/costume/8.html)から「天武・持統朝文官朝服」を引用

うん、
帯、衣、はかまくつとかは、だいたいこんなイメージなんじゃない?

結構よく見るコチラ

天瓊を以て滄海を探るの図(小林永濯・画、明治時代)

うん、やっぱ、帯、衣、はかまとかは、だいたいこんなイメージかと。。

おかしいのは、くつをはいてないってこと。と、黒い蔓草つるくさの頭飾りとか湯津爪櫛ゆつつまぐしとかも描いておいてほしかった。。。

 

神様ファッション製造の現場

そんな神様ファッション事情なんですが、実は神様たちがいらっしゃる高天原たかあまのはらには、製造工場的な建物があったりします。

第七段〔本伝〕では、誓約うけいに勝った素戔嗚尊すさのおのみことが勝ちさび状態に入り、天照大神あまてらすおおかみ機織殿はたどのを破壊する神話を伝えます。

日本書紀にほんしょき』巻一第七段〔本伝〕

こうした後、素戔嗚尊の仕業は全く手がつけられないほどになった。たとえば、天照大神は天狭田あめのさなだ長田ながたを自らの田としていたが、素戔嗚尊は春に重ね蒔きをしたり、また畔(あぜ)を壊したりした。秋には天のまだら毛の馬を田の中に放ち、また天照大神の新嘗にひなへの行事を見て、新宮にひなへのみやに糞をした。

 また、天照大神が神聖な衣を織るために清浄な機屋はたやにいるのを見て、天のまだら毛の馬の皮を剥いで、御殿の屋根に穴を開けて投げ入れた。すると、天照大神は仰天してで体を傷つけてしまった。そういうわけで激怒し、天石窟あめのいはやに入って磐戸いはとを閉じて籠った。そのため国中が常に暗闇となり、昼夜の区別もつかなくなった。 (『日本書紀』第七段〔本伝〕より一部抜粋)

ここから、

神様は「機屋」で織られた服を着ていると推測される次第。

また、同じ第七段の異伝では、機織はたおり職人とも言うべき神様がいらっしゃることも伺えます。

こうした後稚日女尊わかひるめのみことが清浄な機屋はたやにいて神聖な衣を織っていると、素戔嗚尊がこれを見て、天のまだら毛の馬の皮を逆さに剥いで、御殿の中に投げ入れた。稚日女尊は驚いて機から転げ、持っていたによって体を傷つけ、亡くなってしまった。 (『日本書紀』第七段〔一書1〕より一部抜粋)

と。

このように、高天原では服をつくる専用の工場的なものがあり、なんなら専門の職人さん的な神がいるんですね。

 

まとめ

神様の装身具。ファッション。

をテーマにお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?

神の服装は、少なくとも、

  • 黒い蔓草つるくさの頭飾り
  • 湯津爪櫛ゆつつまぐし
  • はかま
  • くつ

と、いうことで、実は『日本書紀にほんしょき』『古事記こじき』が編纂へんさんされた当時、天武てんむ持統朝じとうちょうのころの服飾をほぼ踏襲していること、チェックです。

ちょっとした豆知識的なものになれば幸いです。本エントリは今後、本論の解説の進行に沿って順次更新してまいります。

続きはこちら!

 

参考文献

『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
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