分かる!神武東征神話|神武の生い立ち|天照大神の第五世代 子孫(来孫・らいそん))であり、海神の孫でもある件

 神武東征神話を分かりやすく解説するシリーズ

今回は第1回目。神武の「生い立ち」にかかわる神話をお届けします。

日本神話.comでは、天地開闢てんちかいびゃくから橿原即位までを「日本神話」として定義しています。

2016年は神武天皇が亡くなってから2600年の記念年でした。当サイトとしては、せっかくなので思想性とかは排除し、純粋に物語を楽しむという目的で今後掲載していこうと思います。

なんせ
日本の建国神話であり、
日本最古の英雄譚
であります。これを知らずして日本も神話も語れない!

なお、神武東征神話は、『日本書紀』と『古事記』の2つの書物に書かれており、大筋は同じながら細かいところで微妙に違う神話を伝えてます。

本シリーズでは、その中で、日本の正史である『日本書紀』をもとに解説していきます。

 

神武の生い立ち|天照大神の第五世代 子孫(来孫・らいそん))であり、海神の孫でもある件

『日本書紀』巻三「神武紀」

これからご紹介していく「神武東征神話」は、『日本書紀』の巻三、「神武紀」と呼ばれる部分に伝えられてます。

『日本書紀』自体は、全部で30巻もある膨大な歴史書。詳細コチラで⇒「『日本書紀』と『古事記』の違いに見る「日本神話」の豊かさとか奥ゆかしさとか

で、その3巻目に「神武東征神話」が記載されていて、「神武紀」と呼ばれてる訳です。

そんな巻三「神武紀」は、神武の生い立ち説明からスタート。背景には、天孫降臨てんそんこうりんからこのかた179万有余年の年月が経過しているという設定あり。

巻二までは、時間概念が無かったのが、ココで初めて時間の記載が登場するのが重要ポイント。

で、後の「神武天皇」は、天照大神からみて「第五世代子孫」として登場。名前は「彦火火出見ひこほほでみ。当サイトでは「生前の名前」を使用してお届け。

天照→おしほみみ①→ににぎ②→やまさち③→ふきあえず④→彦火火出見⑤

の順。現代では、5番目の孫を「来孫(らいそん)」と呼びますが、コレに相当する訳です。

系図詳細は、コチラ。

神武家系図

父が「鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみこと」、母が「玉依姫たまよりひめ」。で、4人兄弟の末っ子として誕生した訳ですね。

祖父は「山幸やまさち(天孫)」であり、祖母も母も「海神の娘」という設定。
系譜をたどると
神武が天照大神の子孫であり、海神の子孫でもある事
が分かります。

これは後の東征と建国の正当性を出すところに繋がっていくので要チェック。

ということで、以下さっそくお届けします。

訳出にあたっては、なるべく原文の意味を損なわないように配慮しました。一方で、読みやすさや分かりやすさも重視したつもりです。是非ご参考にされてください。

 

神武の生い立ち

神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、「彦火火出見」ひこほほでみいみなとし[1]、「彦波激武鸕鷀草葺不合尊ひこなぎさたけ うがやふきあえずの みこと[2]」の4番目の子として生まれた。母は「玉依姫たまよりひめ」で、海神の娘「豊玉姫とよたまひめ」の妹である。

彦火火出見ひこほほでみ」は生まれついて聡明で、何事にも屈しない強い心を持っていた。十五歳で皇太子となり、さらにちょうじて、日向の国の「吾田邑あたむら」の「吾平津媛あひらつ ひめ」を娶って妃とし、「手研耳命たぎしみみ のみこと」を生んだ[4]

注釈

[1]いみな」とは、生前の名前であり、崩御後はその名を忌むため使われます。

[2]父の「うがやふきあえず」は、山幸が、海神の娘である「豊玉姫とよたまひめ」を娶って生まれた子。ちなみに、長兄は「五瀬命いつせのみこと」、次兄は「稲飯命いなひ のみこと」。三兄は「三毛入野命みけいりの のみこと」。

[4]男が生んだ、という設定。系譜の形式によるもの。

※本文中の画像は、橿原神宮で公開中の「神武天皇御東征絵巻」より。

原文

神日本磐余彥天皇、諱彥火火出見、彥波瀲武鸕鷀草葺不合尊第四子也。母曰玉依姬、海童之少女也。天皇生而明達、意礭如也、年十五立爲太子。長而娶日向國吾田邑吾平津媛、爲妃、生手硏耳命。

『日本書紀』巻三 神武紀より

 

まとめ

神武の生い立ち

『日本書紀』巻三に記載されている「神武紀」の冒頭部分、いかがでしたでしょうか?

生い立ちで設定されている内容は、いろいろな意味が込められています。「なんでそんな設定になってるのか?」を考えていくことは、古代神話のロマンとあわさってめっちゃ魅力的ですよね。

さて、ポイントをいくつかまとめておきます。系譜を再度確認。

神武家系図

「彦火火出見」の名に込められた意味

まず、名前について。

実は神武のいみな彦火火出見ひこほほでみ」という名前は、祖父である「山幸彦やまさちひこ」の名前「彦火火出見尊ひこほほでみのみこと」と同じです。「山幸」は天孫として降臨し西偏を統治した「瓊瓊杵尊ににぎのみこと」の子ですね。

ここから、神武は、瓊瓊杵尊ににぎのみこと」の子である「山幸」と同じ名前をつけることで、「瓊瓊杵の子(子孫)」としても自らを位置づけたことが分かります。

また、本シリーズ第二回目にお伝えしますが、神武は「瓊瓊杵尊ににぎのみこと」を「我天祖わがてんそ」として位置づけてたりします。

これはつまり、

「彦火火出見」という名は、
東征や橿原即位の正当化と権威づけを狙った名前
だという事。まずはこの点をチェック。

時間が導入された意味

次に、時間(寿命)について。

系譜は以下の通りでした。

天照→おしほみみ①→ににぎ②→やまさち③→ふきあえず④→彦火火出見⑤
(本人→子①→孫②→ひ孫③→玄孫やしゃご④→来孫らいそん⑤ (現在の子孫呼称))

で、天照大神からみて「第五世代子孫(来孫らいそん)」にあたる彦火火出見ひこほほでみ

コチラ、天照子孫の第五世代にあたる「ニュージェネレーション」。何が新しいって、「時間軸」を持っていること。寿命を持っていることですね。

初です。寿命持ち。

神武紀以前の神話には「時間概念」が無く、「継起性」でもって物語が展開してきました。

継起性とは「つぎから次へと物事が続いて発生する事」。ココには何年何月といった時間は存在しません。

日本神話の最初の言葉も「古」という言葉から始まっている通り、遥か昔の話であって「いつ」という時間は存在しないのです。詳しくはコチラで⇒「日本神話が伝える天地開闢|一番最初の言葉「古」から始まる世界のはじまりのお話

そんな状態から、神武紀以降は時間が導入されるようになります。詳細は本シリーズ2回目以降に出てきますので、チェックされてください。

冒頭で触れた通り、神武東征神話の背景には、天孫降臨てんそんこうりんからこのかた179万有余年の年月が経過しているという設定があり、

これはつまり、天孫降臨からこのかた179万有余年の間に、時間を獲得した、とも言えて。

ま、このあたり、こちらのエントリで詳しく触れてますので是非⇒「十干・十二支を使った暦日と神武東征神話|暦の最初は「甲寅」。そして「辛酉」の年には革命が起きると考えた件|分かる!神武東征神話 No.24

とにもかくにも、神武東征神話から時間概念が導入され、それにより天照の子孫である神武も寿命を獲得した、つまり「人」としての生命を生きるようになった、ということをチェックしておきましょう。

後半の物語展開へつながる布石

最後に、細かい所で2つ。

  • 「天照大神の子孫である!」という設定は、東征神話後半で重要な意味を持つようになります。特に熊野以降の天照救援等。ここではその布石としての意味があることをおさえておきましょう。
  • 「海神の孫でもある」という設定も、後半で兄達が相次いでいなくなってしまうところに繋がっていきます。ここでその理由が語られていて、後で「なるほど」と腹に落ちる仕掛けになってます。

なので、しっかり覚えておいてください。

 

以上、まとめると、

神武の生い立ちのポイント

  • 神武の生前の名前「彦火火出見ひこほほでみ」は、東征理由や建国即位の「正当化と権威づけ」を狙った名前である事。
  • 神武東征神話から「時間概念」が導入され、それにより天照の子孫である神武も寿命を獲得した、つまり「人」としての生命を生きるようになった事。
  • 「天照大神の子孫である!」という設定や、「海神の孫でもある!」といった設定は、東征神話の後半で重要な意味を持つようになること。ここではその布石としての意味がある事。

ということで、是非チェックされてください。

さて、

神武東征神話の冒頭部分、「神武の生い立ち」を本文と解釈含めお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介したのは、ほんの一部なのですが、深堀すると、いろいろなオモシロ設定があって、非常に奥ゆかしい神話になっていることが分かると思います。

本シリーズは、こんな感じで、しっかりとした学術成果をもとに「日本神話がオモシロい!」をお届けしていきたいと思ってます。今後の展開も是非ご期待くださいませ!最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

つづきはコチラ!いよいよ東征発議!

東征発議と旅立ち|東征の動機とか意義とか建国の決意とかをアツく語った件|分かる!神武東征神話No.2

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目次はコチラ!

神武東征神話を丸ごと解説!ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

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こんにちは、さるたひこです!読んでいただきありがとうございます。「日本神話をこよなく愛するナビゲーター」として日本神話関連情報、題して「日本神話がおもしろい!」を発信していきます。どうぞよろしくお願いします。ちなみに、ネーミングは、天孫降臨の折、瓊瓊杵尊を道案内した国津神「猿田彦命」にあやからせていただいてます。ただ、神様の名前をそのまま使うのは畏れ多いので「さるたびこ」の「び」を「ひ」に変えております。