神武天皇の家系図|天照大神の第五世代直系子孫(来孫)であり、海神、山神、高皇産霊神の子孫でもある件

神武東征神話1

 

正史『日本書紀にほんしょき』をもとに、
最新の文献学的学術成果も取り入れながら、どこよりも分かりやすい解説をお届けします。

今回からは、

神武東征神話じんむとうせいしんわ」。

日本書紀にほんしょき』巻第三、「神武紀じんむき」と呼ばれるまきから、シリーズ形式で詳しく解説。 

日本書紀にほんしょき』巻第三では、一巻まるごと使って「神武じんむ天皇」による日本の建国譚けんこくたんを伝えてます。

日本の建国神話であり、
日本最古の英雄譚えいゆうたんでもある。

単なる歴史書としてではなく、ドラマ性あふれる構成になっていて、物語としても充分楽しめる。

多大な試練と苦難を経ての日本建国。一人の英雄がビジョンを実現していく、そのプロセスをたっぷり堪能あれ。

現代の私たちにも多くの学びをもらえる内容。日本神話から学ぶ。日本の神髄が、日本の心がココにあります。

 

神武天皇の家系図|天照大神の第五世代直系子孫(来孫)であり、海神、山神、高皇産霊神の子孫でもある件

神武天皇の家系図を伝える『日本書紀』巻三「神武紀」とは?

これからご紹介していく「神武東征神話じんむとうせいしんわ」は、日本書紀にほんしょき』の巻三、「神武紀じんむき」と呼ばれる部分に伝えられてます。

日本書紀にほんしょき』自体は、全部で30巻もある膨大な歴史書。

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で、その3巻目が「神武紀じんむき」と呼ばれ、いわゆる「神武東征神話じんむとうせいしんわ」を伝えてます。

今回は、その冒頭から、

神武じんむ天皇の家系図

について、生い立ちも含めて解説。

日本神話.comでは、「天地開闢てんちかいびゃくから橿原かしはら即位まで」を「日本神話」として位置づけてます。当サイトとしては、政治性とか宗教性とかは排除し、純粋に「物語を楽しむ」スタンスで掲載。

なんせ

日本の建国神話であり、日本最古の英雄譚えいゆうたん

であります。

これを知らずして日本も神話も語れない!m9( ゚Д゚) メーン! 

ということで、

まずは「神武紀じんむき」冒頭の概要を。

神武紀じんむきは、神武じんむの生い立ちからスタート。

正式名、天皇として即位してからの名称は神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと

神武天皇

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もとの名前は「彦火火出見ほほでみ

天照大神あまてらすおおかみからみて「第五世代子孫」として登場。

天照あまてらす→おしほみみ①→ににぎ②→ほほでみ(やまさち)③→ふきあえず④→ほほでみ(神武じんむ)⑤、の順。現代では、5番目の孫を「来孫らいそん」と呼びますが、コレに相当する訳です。

家系図詳細は、コチラ。

神武天皇の系統図

す、スゴイ家系図、、、

天照大神あまてらすおおかみから始まり、高皇産霊神たかみむすひのかみ、山の神、海の神、はては三輪山みわやまの神まで登場。。。(;゚д゚)ゴクリ

神武じんむ天皇こと「彦火火出見ほほでみ尊」は、父が「鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみこと」、母が海神うみのかみの次女「玉依姫たまよりひめ」。4人兄弟の末っ子として誕生。

ちょっと系図をさかのぼると、、祖父は「彦火火出見ほほでみ尊(山幸やまさち彦)」で、あれ?同じ名前??コレ、秘密はのちほど。 で、祖母も「海神うみのかみの娘」。もっと辿ると、ひいおばあちゃんは「山神やまのかみの娘」。さらに、ひいひいおばあちゃんは「高皇産霊神たかみむすひのかみの娘」。。。

神武じんむ天皇の家系図をたどると、、

神武じんむ天皇が、天照大神あまてらすおおかみの直系子孫であり、海神うみのかみ山神やまのかみ高皇産霊神たかみむすひのかみの子孫でもある!

ってことが分かります。

すごくない?コレ、、、

父系を辿っていくと天照大神あまてらすおおかみにつながり、
母系を辿っていくと海の神、山の神、高皇産霊神たかみむすひのかみにつながっていく、、、

どんなロイヤルファミリーやねん、、、

コレ、つまり、

天照大神あまてらすおおかみの末裔にして、海と山、双方の支配神の血を引き継ぎ、地上の支配者としての神の力と正当性とを体現する。まさに東征とうせいの主人公としてふさわしい出自、、ってことですね(;゚д゚)ゴクリゴクリ

ということで、

以下さっそくお届け。訳出にあたっては、なるべく原文の意味を損なわないように配慮しました。一方で、読みやすさや分かりやすさも重視したつもりです。是非ご参考にされてください。

 

神武天皇の家系図、生い立ち『日本書紀』巻三「神武紀」

神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、「彦火火出見ひこほほでみ」をいみなとし[1]彦波激武鸕鷀草葺不合尊ひこなぎさたけ うがやふきあえずの みことの4番目の子である。母は玉依姫たまよりひめで、海神の娘である。

 火火出見ほほでみは生まれついて聡明で、何事にも屈しない強い心を持っていた。十五歳で皇太子となり、さらにちょうじて、日向国の吾田邑あたむら吾平津媛あひらつ ひめめとって妃とし、手研耳命たぎしみみ のみことを生んだ[2]

注釈
[1]いみな」とは、生前の名前であり、崩御ほうぎょ後はその名をむため使われます。
[2] 男が生んだ、という設定。古代における系譜の形式によるもの。
※原文中の「天皇」という言葉は、即位前であるため、生前の名前であり東征とうせいの権威付けを狙った名前「彦火火出見」に変換。

神日本磐余彥天皇、諱彥火火出見、彥波瀲武鸕鷀草葺不合尊第四子也。母曰玉依姬、海童之少女也。天皇生而明達、意礭如也、年十五立爲太子。長而娶日向國吾田邑吾平津媛、爲妃、生手硏耳命。 (『日本書紀』巻三 神武紀より)

神武天皇

▲橿原神宮で公開中の「神武天皇御一代記御絵巻」から。

 

神武天皇の家系図、生い立ち解説

神武紀じんむきの冒頭、「神武じんむ天皇の家系図、生い立ち」で設定されてる内容は、非常に重要な意味が込められてます。

「なんでそんな設定になってるのか?」を考えていくことは、古代神話のロマンとあわさってスゴい魅力的ですよね。

以下、本文をもとにポイントをチェックです。

  • 神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、「彦火火出見ひこほほでみ」をいみなとし、
  • 原文: 神日本磐余彥天皇、諱彥火火出見、

神武じんむ天皇を主語とする神武紀じんむきのはじまり。まさに、神武じんむ神武じんむによる神武じんむのための伝承、といった感じ。

いみな」とは、生前の名前であり、崩御ほうぎょ後はその名をむため使われます。つまり、神武じんむ天皇は、生前は、あるいはもともとは「彦火火出見ひこほほでみ」という名前。「彦」は男に対する美称なので、実際は「火火出見ほほでみ」。

天皇になってから「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」と称するようになったってこと。

ポイント2点。

  1. 神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、のち事績伝承じせきでんしょうにちなむ名称。
  2. 生前の名前は「彦火火出見ひこほほでみ」。祖父と同じにすることで権威付けや正統性を狙った名前。

まず1つ目。

①「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、のち事績伝承じせきでんしょうにちなむ名称。

こちら、実は、2つ意味があって。神武紀じんむき後半の大和やまと攻略の重要シーン + エンディングの国見くにみシーンとリンクされていて、要は、冒頭と末尾がつながるように設計されてます。

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つまり、

最初はなんだか良く分からなかった「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」という言葉が、その名の意味が、神武紀じんむきを読み進め、その建国プロセスやドラマを理解することで、最後にはら落ちするような仕掛けになってる、って事。

神武紀じんむきの最後に行って、もう一度最初に戻った時に、

あ~、なるほどな~(、、、深々と噛みしめながら「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」を理解する)

ってなる。

具体的には、

  • 「日本」は、神代じんだい伊奘諾尊いざなきのみことがこの国を名付けたことによる ←スゴイ
  • 磐余いわれ」は、あふれるほどの敵軍を撃破したことによる ←めちゃスゴイ
  • そんな名前を冠してる神武じんむ天皇は、めちゃめちゃスゴイ

となる。

確かに、神代じんだい、国生みで伊奘諾尊いざなきのみこと伊奘冉尊いざなみのみことの二神が生んだ「大八洲国おおやしまぐに」、その最初は「大日本豊秋津洲おほやまととよあきづしま(日本、日本では耶麻騰やまとという。以下すべてこれにならえ)」でしたよね。注を施してまで「日本」を「やまと」と読めと、、

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そして、確かに、「磐余いわれ」では敵軍、めっちゃいっぱいいたっけな。。。それを蹴散らしたんだもんな。。

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スゴイよやっぱ、、、そんな名前を冠してる神武じんむ天皇はめちゃめちゃスゴイよ。。

って。コレ、

狙いは「権威付け」。

あの、日本の国土たる「大八洲国おおやしまぐに」を創った伊奘諾尊いざなきのみことが名付け予祝よしゅくした「日本」という名前を冠するなんて!あの、あふれるほどの敵軍を撃破した「磐余いわれ」にちなむ名前を冠するなんて!!スゴすぎる!!!

ということで、1つ目のポイント、

冒頭の、「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、のち事績伝承じせきでんしょうにちなむ名称であり、権威付けはもちろんのこと、神武紀じんむきのエンディングとリンクされてる事によって「二度おいしい仕掛け」が設定されてる。

まずチェック。

次!

②生前の名前は「彦火火出見ほほでみ」。祖父と同じにすることで権威付けや正統性を狙った名前

神武じんむ天皇の家系図を再度確認。

神武天皇の系統図2

で、

「彦火火出見ほほでみ」という名前は、
祖父である「山幸彦やまさちひこ」の名前「彦火火出見ほほでみ尊」と同じ!

ここから、言えるのは、

神武じんむは、瓊瓊杵尊ににぎのみこと」の子であった「彦火火出見ほほでみ尊(山幸やまさち彦)」と同じ名前をつけることで、自らを瓊瓊杵ににぎの子」として位置づけた、って事です。

瓊瓊杵ににぎの子として、自らを位置づけようとした。

、、って、なんで?

それがめっちゃ重要なポイントで。

つまり、神武じんむにとって「瓊瓊杵尊ににぎのみこと」はめちゃめっちゃ重要な神であったということ。

その重要さは、

瓊瓊杵尊ににぎのみこと天孫降臨てんそんこうりんした経緯

に遡ります。

少し掘り下げます。

日本書紀にほんしょき』巻二 第九段 一書第1から重要部分を引用。天孫てんそんとして降臨する瓊瓊杵尊ににぎのみことに対して、天照大神あまてらすおおかみ神勅しんちょくを下す場面。

そして(天照大神は)皇孫(瓊瓊杵尊)に勅して、葦原千五百秋之瑞穂國あしはらのちいほあきのみつほのくには、我が子孫が君主たるべき地である。汝、皇孫よ、行って治めなさい。さあ、行きなさい。天祚あまつひつぎの栄えることは、天地とともに窮まることがないであろう。」と仰った。 (『日本書紀』巻二 第九段 〔一書1〕より一部抜粋)

と。

有名な「天壌無窮てんじょうむきゅう神勅しんちょく」と呼ばれる箇所ですね。

ココでのポイントは、

  • 天照大神あまてらすおおかみが、自らちょくを下していること
  • この地上世界(葦原中国あしはらのなかつくに)の統治者は、天照大神あまてらすおおかみの子孫であること
  • その統治は、天祚あまつひつぎ(=皇位)は、永遠に続くことを予定していること

の3つ。

つまり、

瓊瓊杵尊ににぎのみことは、天照大神あまてらすおおかみより直々じきじきに、葦原中国あしはらのなかつくにの統治者として任命された

ってこと。コレ、めちゃくちゃ重要なポイント。

で、実際に降臨し、西偏せいへんの地ではありましたが統治を行い、山の神の娘と結婚し子供をつくった、、いわば、地上世界に初めて足場をつくった、土台をつくった、それが「瓊瓊杵尊ににぎのみことで。

本シリーズ第二回目「東征発議とうせいほつぎ」にお伝えしますが、だからこそ、神武じんむは「瓊瓊杵尊ににぎのみこと」を「我天祖わがてんそ」として位置づける訳で。スゴイよね、この瓊瓊杵ににぎリスペクト。

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神武じんむにとっての理想が瓊瓊杵ににぎであり、その瓊瓊杵に「直接つながる形」をつくりたかった。

それが、瓊瓊杵ににぎの子である「山幸やまさち彦」の名、「彦火火出見ほほでみ」だった、という訳です。

言い方を変えると、

「彦火火出見ほほでみ」という名は、東征とうせい橿原かしはら即位(建国)の正当化と権威づけを狙った名前

とも言えて。

誰も成しえなかったことをやろうとする訳で。そら、相応の理由とか根拠とかを持っとかないとね。周りもそれで納得。

ということで、冒頭部分のポイントをまとめると、

  • 冒頭の、「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、のち事績伝承じせきでんしょうにちなむ名称であり、権威付けはもちろんのこと、神武紀じんむきのエンディングとリンクされてる事によって「二度おいしい仕掛け」が設定されてる。
  • 生前の名前は「彦火火出見ひこほほでみ」。神武じんむにとっての理想が瓊瓊杵ににぎであり、その瓊瓊杵に「直接つながる形」をつくりたかった。そのために、祖父と同じ名前にすることで、東征とうせいにおける権威付けや正統性を狙った。

以上の2点。しっかりチェック。

次!

  • 彦波激武鸕鷀草葺不合尊ひこなぎさたけ うがやふきあえずの みこと」の4番目の子である。母は「玉依姫たまよりひめ」で、海神うみのかみの娘である。
  • 原文: 彥波瀲武鸕鷀草葺不合尊第四子也。母曰玉依姬、海童之少女也。

→ポイント3つ。

  1. ぶっ飛びすぎの父母の素性!??父はワニの子、母はワニだった!??
  2. 天照大神あまてらすおおかみの子孫である!」という設定は、東征とうせい神話中盤以降で重要な意味を持つようになる。
  3. 「オカンは海神うみのかみの娘」という設定も、中盤の重要イベントと繋がってくる。

1つ目。

①ぶっ飛びすぎの父母の素性!??父はワニの子、母はワニだった!??

父、鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみこと山幸やまさち海神うみのかみの娘である豊玉姫とよたまひめをめとって生まれた子。

神代紀じんだいきでは、鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみことの出産にあたり、以下伝承を伝えてます。

豊玉姫とよたまひめ海神うみのかみの宮から陸に出て、なぎさに産屋うぶやを建ててもらったが、鸕鷀の羽で屋根を葺き終わらないうちに出産が迫り、豊玉姫とよたまひめは出産を見るなと夫に禁を課す(見るなの禁忌)。しかし、夫はそれを破って見ると、豊玉姫とよたまひめ八尋やひろ(尋は両手を左右に広げた時の両手先の間の距離)の大鰐おおわにとなって出産の苦しみに悶えていた。豊玉姫とよたまひめはその姿を見られたことを恥じて、産んだ子をかやに包んで海辺に捨て、海に帰ってしまう。。。

屋根が葺き終わらないうちに出産したことで、子の名を「鸕鷀草葺不合うがやふきあえず」と言う訳ですね。

なお、「わに」は古名でさめ類のこと。神武の母は海神うみのかみの娘(長女)で、正体は八尋やひろ大鰐おおわにだったと、、、((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

ちなみに、、古事記こじきでは、因幡いなば素兎しろうさぎの皮を、このワニがはいだと伝えてます。

そして!後日談として、、、

豊玉姫とよたまひめは、自分に代えて妹である玉依姫たまよりひめを遣わし、「鸕鷀草葺不合うがやふきあえず」の養育に当たらせます。で、なんと、鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみことが成長した後、鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみことは養育してくれたおば玉依姫たまよりひめと結婚して四男が生まれる。、、その末弟が神武じんむという系譜。

つまり、。

玉依姫たまよりひめ海神うみのかみの娘(次女)ですから、当然、その正体は八尋やひろ大鰐おおわにと想定され、、、大鰐一家?まー、なんというか、スゴイというかなんというか、、

コレも、

海の支配神の血を引き継いでいるってことが重要で、山の神の子孫であることも含めて、神の力をバックグラウンドとし地上の支配者としての正当性を体現するための設定、ってことです。

非常に練りに練られた神話になっております。まさに東征とうせいの主人公としてふさわしい出自ってやつですね!

次!

②「天照大神あまてらすおおかみの子孫である!」という設定は、東征とうせい神話中盤以降で重要な意味を持つようになる

父のお話から少し系譜をさかのぼって再確認。

天照あまてらす→おしほみみ①→ににぎ②→やまさち③→ふきあえず④→神武じんむ
(本人→子①→孫②→ひ孫③→玄孫やしゃご④→来孫らいそん⑤ (現在の子孫呼称))

で、天照大神あまてらすおおかみからみて「第五世代子孫(来孫らいそん)」にあたる神武じんむ

天照大神あまてらすおおかみの子孫である!」という設定は、東征とうせい神話中盤以降で、めっちゃ重要な意味を持つようになります。

具体的にはコチラ。

孔舎衛坂激戦、敗退

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  • なぜ近畿上陸した初戦で敗退してしまうのか?
  • なぜわざわざ紀伊半島きいはんとうを南下し熊野くまのから入るルートを選んだのか?
  • 危機的状況に陥ったとき、なぜ天照大神あまてらすおおかみの救援が得られたのか?

など、

神武東征神話じんむとうせいしんわの展開を大きく左右するイベントの発生理由が、この「生い立ち」に隠されてるんです。コレしっかりチェック。

詳細はシリーズ中盤以降で。

ココではまずは天照大神あまてらすおおかみの子孫である!」という設定が大事なんだ。ということを覚えておいてください。

3つ目。

③「オカンは海神うみのかみの娘」という設定も、中盤の重要イベントと繋がってくる

②同様に、「オカンは海神うみのかみの娘、つまり、神武じんむ兄弟は海神うみのかみの孫でもある」という設定も、後半でお兄さん達がいなくなってしまうところに繋がっていきます。分かってないと、なんで???ってなる。

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ということで、

「生い立ち=天照大神あまてらすおおかみの子孫&海の神の孫である」は後半の神話展開につながる、または、神話展開を支える根拠になっていく。コレ、しっかりチェックです。

次!

  • 彦火火出見ひこほほでみは生まれついて聡明で、何事にも屈しない強い心を持っていた。十五歳で皇太子となり、さらにちょうじて、日向ひむかの国の吾田邑あたむら吾平津媛あひらつ ひめめとって妃とし、手研耳命たぎしみみ のみことを生んだ。
  • 原文: 天皇生而明達、意礭如也、年十五立爲太子。長而娶日向國吾田邑吾平津媛、爲妃、生手硏耳命。

→15歳で皇太子となり、奥さんももらって子供もいたようです。最後の「手研耳命たぎしみみ のみことを生んだ。」という設定は、古代における系譜の形式によるもの。

2点。

  1. 末っ子ながら皇太子になるのは「末子成功譚」の話型がベースだから
  2. 奥さんをもらったのは、日向ひむかの支配者の娘をめとることで支配権の正当性を打ち出すねらい

1つ目。

①末っ子ながら皇太子になるのは「末子成功譚」の話型がベースだから

4人兄弟の末っ子だったのですが、お兄さんたちを差し置いての皇太子。コレ、理由は、生まれながらにして英明、意志堅固だったから。

原文「生而明達、意礭如也」。生まれながらにして英明、聡明。意志が「礭」。「かく」とは、水が石に激しくあたるさま。また、その音の形容。かたくしっかりして揺るがないさま。確かなさま。意志堅固。さらっと言ってるけど、結構スゴイ。

このように、末弟が活躍し後継者となる物語を「末子成功譚」と言い、古い伝承のパターン、話型であります。

たとえば、八十神やそがみ大国主神おおくにぬしのかみ海幸うみさち山幸やまさち、天皇時代では、景行けいこう天皇の皇子大和武尊やまとたけるのみこととその兄、允恭いんぎょう天皇の第五皇子、雄略ゆうりゃく天皇が対立候補を一掃して即位した例などあり。また、昔話にも「梨とり兄弟」や「三匹の子豚」もその例だったりします。

似たところで、

兄の邪悪・劣弱、弟の善良・優強」という古代兄弟譚の話型もあり。東征とうせい神話の後半でも、「兄猾えうかし」と「弟猾おとうかし」、「兄磯城えしき」と「弟磯城おとしき」など典型的な兄弟譚の話型が登場。こちらもご参考に。

次!

②奥さんをもらったのは、日向ひむかの支配者の娘をめとることで支配権の正当性を打ち出すねらい

日向ひむかの国の「吾田邑あたむら」の「吾平津媛あひらつ ひめ」をめとって妃とし、「手研耳命たぎしみみ のみこと」を生んだ。」とあり、東征とうせい前に地元で奥さんをもらってたようです。。

神武じんむが最初に妃とした「吾平津媛あひらつひめ」については、2点まずチェック。

  1. 海幸うみさち山幸やまさちの伝承(神代紀じんだいき第十段本伝)で、山幸やまさちに降服した海幸うみさちの末裔を「吾田君小橋あたのきみのおはし」と伝えていること。
  2. 神代紀じんだいき最後の伝承(第十一段)が、神武じんむの父、鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみことを埋葬した陵墓りょうぼ日向ひむか吾平山上陵あひらのやまのうえのみささぎと伝えていること。

で、

この「吾田あた」と「吾平あひら」をとって「吾田邑あたむら吾平津媛あひらつひめ」とした次第。

要は、こうすることで神武じんむは、この地の支配者の娘をめとったものとした訳です。これも、地元支配権の正当性を打ち出す狙いから。

ちなみに、、、吾平津媛あひらつひめですが、、身分は「」にとどまっております。。正妃せいひではございません。

一方、神武じんむ東征とうせい成就後、広く貴族たちの女子を求め、大変な美人と評判の大三輪神おおみわのかみ(又曰はく事代主神ことしろぬしのかみ)の娘、媛蹈鞴五十鈴媛命ひめたたらいすずひめのみことめとって「正妃せいひ」とし、即位後は「皇后こうごう」に立てております。。対応格差がスゴい、、

東征とうせい以前から長い間、苦楽を共にしてきた吾平津媛あひらつひめについては一切語らず、、。ちなみに神武じんむ崩御ほうぎょ後、吾平津媛あひらつひめの産んだ「手研耳命たぎしみみ のみこと」は謀反をおこし、討伐されることに、、、これはこれで歴史の時代の人間ドラマ。。。

 

まとめ

神武天皇の家系図

神武東征神話じんむとうせいしんわ」から、冒頭部分、神武じんむ天皇の家系図について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介したのは、一部なのですが、深堀りすると、いろいろなオモシロ設定があって、しかもそれが神の時代からつながってたりして、非常に奥ゆかしい神話になってることが分かります。

最後に改めて、神武じんむの家系図をチェック。

祖父は「彦火火出見ほほでみ尊(山幸やまさち彦)」で同じ名前。で、母も祖母も「海神うみのかみの娘」。もっと辿ると、ひいおばあちゃんは「山神やまのかみの娘」。さらに、ひいひいおばあちゃんは「高皇産霊神たかみむすひのかみの娘」。。。と、まースゴい。

神武天皇の系統図3

神武じんむ天皇は、天照大神あまてらすおおかみの直系子孫であり、高皇産霊神たかみむすひのかみ山神やまのかみ海神うみのかみの子孫でもある!

ってこと。このヤバさ、スゴさをしっかりチェック。

父系を辿っていくと天照大神あまてらすおおかみにつながり、
母系を辿っていくと高皇産霊神たかみむすひのかみや山の神、海の神につながっていく、、、

特に、高皇産霊神たかみむすひのかみについては、第二回目でお届けする「東征発議とうせいほつぎ」で、「我が天神あまつかみ高皇産霊尊たかみむすひのみこと」と語るように、かなり重要な位置づけになってます。コレも天孫降臨てんそんこうりんが関連。天孫降臨てんそんこうりんでは高皇産霊神たかみむすひのかみがプロデューサー的役割で活躍したことを踏まえてます。

さらに、東征とうせい神話後半で皇后こうごうを立てるのですが、これがまた、、三輪山みわやまの神(又曰く、事代主神ことしろぬしのかみ)の娘、、、ロイヤルにロイヤルを重ねて超絶ロイヤル。

『日本書紀』 巻第三(神武紀)

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こちらも狙いとしては、東征とうせいや建国即位の正当化と権威付けとしてチェックです。

その他、今回のポイントは以下の通り。

  1. 冒頭の、「神日本磐余彦天皇かんやまと いわれひこ の すめらみこと」は、のち事績伝承じせきでんしょうにちなむ名称であり、権威付けはもちろんのこと、神武紀じんむきのエンディングとリンクされてる事によって「二度おいしい仕掛け」が設定されてる。
  2. 生前の名前は「彦火火出見ひこほほでみ」。神武じんむにとっての理想が瓊瓊杵ににぎであり、その瓊瓊杵に「直接つながる形」をつくりたかった。そのために、祖父と同じ名前にすることで、東征とうせいにおける権威付けや正統性を狙った。
  3. ぶっ飛びすぎの父母の素性!??父はワニの子、母はワニだった!??
  4. 天照大神あまてらすおおかみの子孫である!」という設定は、東征とうせい神話中盤以降で重要な意味を持つようになる。
  5. 「オカンは海神うみのかみの娘」という設定も、中盤の重要イベントと繋がってくる。
  6. 家系図をたどると、超絶ロイヤルファミリーである。
  7. 末っ子ながら皇太子になるのは「末子成功譚」の話型がベースだから。
  8. 奥さんをもらったのは、日向ひむかの支配者の娘をめとることで支配権の正当性を打ち出すねらい。

以上、振り返りも含めてチェックされてください。

本シリーズは、こんな感じで、しっかりとした学術成果をもとに「日本神話がオモシロい!」をお届けしてまいります。今後の展開も是非ご期待くださいませ!最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

神話をもって旅に出よう!

神武東征神話じんむとうせいしんわのもう一つの楽しみ方、それが伝承地を巡る旅です。以下いくつかご紹介!

皇子原神社おうじばるじんじゃ 神武じんむ天皇が誕生したとされる地

皇子原神社

皇子原神社|神武天皇誕生の地!日本建国への道はココから始まった•••そんな神話ロマンに浸って至福の時を過ごす

07/18/2022

神社後背の「産婆石」の付近で誕生したという伝承あり。神武じんむの母「玉依姫たまよりひめ」が神武じんむ天皇を出産した産屋うぶや跡とも伝わってます。

 

御池みいけ「皇子港」 神武じんむ天皇が幼少期に水辺で遊んでいたと伝わる地。

 

狭野神社さのじんじゃ 神武じんむ天皇が幼少を過ごしたとされる地。

御祭神:神日本磐余彦天皇かんやまといわれひこのすめらみこと神武じんむ天皇)を主祭神、吾平津姫命あひらつひめのみこと天津彦火瓊瓊杵尊あまつひこほのににぎのみこと木花開耶姫命このはなさくやひめのみこと彦火々出見尊ひこほほでみのみこと豊玉姫尊とよたまひめのみこと鸕鶿草葺不合尊うがやふきあえずのみこと玉依姫命たまよりひめのみことを配祀。
社名は神武じんむ天皇の幼名「狭野尊さののみこと」にちなみます。コレ『日本書紀にほんしょき』第十一段〔一書1〕から。

 

皇宮神社こうぐうじんじゃ 神武じんむ天皇が東征とうせいまえに住んでいたとされる地。

御祭神:神日本磐余彦天皇かんやまといわれひこのすめらみこと手耳研命たぎしみみのみこと吾平津姫命あひらつひめのみこと渟名川耳命ぬなかわみみのみこと
宮崎の宮の皇居跡とされてます。

 

宮崎神宮みやざきじんぐう 神武じんむ天皇が東遷以前に宮を営んだとされる地。

御祭神:主祭神は神日本磐余彦尊かんやまといわれひこのみこと、神鸕鷀草葺不合尊うがやふきあえずのみこと玉依姫命たまよりひめのみことを配祀

 

つづきはコチラで!東征発議とうせほつぎ!さー出発だ!

東征発議と旅立ち

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【保存版】神武東征神話を丸ごと解説!東征ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

01/13/2016

本記事監修:(一社)日本神話協会理事長、佛教大学名誉教授 榎本福寿氏
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)、他

 

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神武東征神話1

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他