日本の原点「日本神話」から学ぼう!
ということで、唐突に始まった「日本神話で磨くビジネススキル」シリーズ。これを読めば、あなたも神レベルのビジネスパーソンに変身可能だ。
第2回目は「動機づけ」について取り上げる。
「動機づけ」。今や部下をもつビジネスパーソンには欠かせない必須スキルと言えよう。昨今では『ア〇ラー流動機づけ法』といった書籍が話題になっているらしい。なんでも超一流の心理学による動機づけ理論が学べるとか。気になるのは確かだが、少なくとも私はア〇ラーではないし、ましてや欧米でもない。
私にある、いや、私たちにあるのは「日本神話」だ。ここから学ばずしてどこから学ぶというのか?
ではさっそくお届けしよう。
日本神話で磨くビジネススキル|神レベルの動機づけ編~「神武東征神話」から学ぶリーダーのビジョン提示術~
目次
ケーススタディ「神武東征神話」
本件、日本の正史である『日本書紀』からお届けする。
さて、あなたは日本神話における「神武東征神話」を御存知だろうか?
初代天皇として即位した「神武天皇」が、九州の日向を出発し、幾多の困難を経て、現在の橿原神宮で即位するまでを描く「日本建国神話」である。
詳しくはこちらを参照されたい。
ちなみに神武天皇の正式名称は「神日本磐余彦天皇」と言う。
名前が長い?
かんやまといわれひこのすめらみこと。
であれば「彦火火出見」で結構だ。即位前の熱きリーダー時代の呼び名である。敬称略。
彦火火出見が、東征の果てに橿原で「天皇」として即位して以来ずっと、日本という国が続いている。数千年にもわたって同じ王朝が現代まで続いている例は世界でも類がない。激しく奥ゆかしい歴史を持つ国「日本」。その礎を築いたのが彦火火出見というリーダーだったのだ。
ちなみに、当サイトでは神代からこの橿原即位までを「神話の時代」と定義している。そんなことはいいか。
「神武東征神話」自体は『日本書紀』の「神武紀」に詳しい。
彼が、どのように日本という「国」を設立したのか?その際、どのように部下を統率したのか?
その言動を探る事で、神レベルの統率術を修得する事が可能という訳だ。
まず確認してもらいたいのは、彦火火出見が出発した地である。
日向。
つまり、現在の「宮崎」である。
「神武東征神話」とは、つまり、宮崎出身の(誤解を恐れずに言えば)田舎者が、国の中心を目指して東へ向かう一大プロジェクトだったのだ。
この「宮崎出身の中年男(45歳)」は、なんと幾多の困難と約6年もの歳月を経て、国家設立という偉業を成し遂げるのである。
夢のある話ではないだろうか?
みなさんも本稿を通じて、人生に対して激しく奮起されることを期待したい。
プレーヤーを整理しておこう。
・彦火火出見:後に橿原神宮で「神武天皇」として即位する。東征決意の時、御年45歳。
・諸皇子:その他もろもろの部下
さて、以上を踏まえて1つ質問をしたい。
あなたが何かを成し遂げようとするとき、部下に対してどのように語り、どのように動機づけをするだろうか?
考えていただいただろうか?
その上で、以下読み進めてもらいたい。
「神武東征神話」に学ぶ神レベルの「動機づけ術」~ビジョンの提示~
結論から言おう。忙しいビジネスパーソンは常にPREPだ。
日本神話的考え方・ルールは以下3点に集約される。
①経緯と現状認識を先に説明する事。
②得られるベネフィットを提示しながらビジョンを具体的に示す事。
③自己の直感をもとに、Iメッセージで話をする事。
それぞれ事例をもとに見ていこう。
①経緯と現状認識を説明する事。
彦火火出見が諸皇子らに東征を発議する内容をそのまま抜粋する。
「天祖が天から降ってからこのかた今日まで、一百七十九万二千四百七十余年が過ぎた。しかしながら、遠く邈(はる)かな地は、なお未だ王沢※に霑(うるお)っていない。その結果、邑には君が有り、村には長がいて、各自が領界を分け、それで互いにしのぎを削り合って争う始末である。」
※王沢(おうたく)・・・王の徳のもたらす恵み
いかがだろうか。
彦火火出見はいきなり「東征して国を建てよう」とは言わない。まず、経緯を踏まえた「現状認識」を明確にするのである。
私たちは得てして「経緯」や「現状認識」が抜けてしまう。話の中で主語が抜けてしまうのと同じ症状だ。聞いている側は、何の話をしているのか分からなくなってしまう。自分は分かっているつもりでも、部下や他者は分かっていない。上司やリーダーが「分かっているだろう」で端折ってしまい、伝わらなくなってしまうのだ。
一方、彦火火出見は分かっている。
部下に動機づけをするとき、ここぞ!という時は特に、経緯を踏まえた現状認識を共有するところからスタートする。この日本神話的原理原則を徹底して部下に伝えているのである。
②得られるベネフィットを提示しながらビジョンを具体的に示す事。
こちらも、上記の経緯の説明の後の部分をそのまま抜粋する。
「私が思うに、其の土地は必ず大業を恢弘 し、天下に光宅するに足るはずである。きっとそこが世界の中心であろう。必ずそこへ行き、都としよう。」
※大業(たいぎょう)・・・帝王の仕事
※恢弘(かいこう) ・・・広げて大きくする事
※光宅(こうたく) ・・・聖徳が遠くまで表れる事
いかがだろうか。
簡約すると、「その地(橿原)は、帝王の仕事を広げ、天下に王の徳が遠く届くにふさわしい場所だと私は思う。かの地こそが世界の中心だろう。必ずたどり着き、都とするぞ!」といった感じだろう。
都をつくる、つまり国を建てるビジョンを説明する内容としては、非常に具体的ではないだろうか?かつ、その事で得られるベネフィットを存分に伝えている。単に「国を建てたい」だけではない。
私たちはともすれば自己中心的な発言に終始してしまう。「自分がこうしたいから、こうする」だけの説明。思い入れや熱が入れば入るほど自分のことばかり。結果、部下の心は揺さぶられず、行動につながらない。
彦火火出見は分かっている。
部下に動機づけをするときは、得られるベネフィットを提示しながらビジョンを具体的に示している。「国の中心へ行き都をつくる」というビジョンと合わせて、「帝王の仕事を広げ、天下に王の徳が遠く届く」、つまり「王の徳によって人々が幸せになれる」というベネフィットも伝えているのである。私たちも大いに参考になる事例だろう。
③自己の直感をもとに、Iメッセージで話をする事。
上記①②で抜粋した、彦火火出見の言葉の随所に「何かしら確信めいたもの」を感じなかっただろうか?「潤っていない」、「天下に光宅するに足るはずである」といった言い回しや、そもそも「橿原の地を世界(国)の中心」だと言うところ、彦火火出見は「分かっている」感じが伝わってくる。
そう、彦火火出見は「分かっている」のだ。
この東征の意義、王の徳により人々が幸せになる事、そしてこの東征というプロジェクトが成功する事。「リーダーは見えないものを見る」と言われる。彦火火出見はまさに「東征の成功」を見ていたし、その先に「人々の幸せ」を見ていたのだ。それは直感の世界であり、直感が生む確信なのだろう。「ブレないリーダー像」のお手本のような存在である。
また、それを、「私が思うに~」と、主語を「私」において伝えることで、その効果を増幅させている。コーチングの世界で言われる「Iメッセージ」。直感をもとにIメッセージで伝える事で、部下の心を強く揺さぶったのである。
以上、3点の考え方と実践方法を、具体的な事例をもとに説明したが、いかがだっただろうか。
より詳しく知りたければ『日本書紀』の神武紀を参照されたい。
まとめ
日本神話で磨くビジネススキル|神レベルの動機づけ編~
日本神話で磨くビジネススキル~神レベルの動機づけ編~、いかがだっただろうか。
リーダーにはここぞという時、率いる部下たちを動機づけ鼓舞するスキルが求められる。神武東征神話における彦火火出見の東征発議はその重要性と効果を教えてくれる。
再度まとめておこう。
- 経緯と現状認識を先に説明する事。
- 得られるベネフィットを提示しながらビジョンを具体的に示す事。
- 自己の直感をもとに、Iメッセージで話をする事。
以上3点、しっかりチェックしていただきたい。
これによって、成し遂げるべきビジョンの成功確度が飛躍的に高まる事は間違いないだろう。本稿をもとに、皆さんが部下を動機づけチームとして結果を出していかれることを心からお祈り申し上げる。
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