コチラの投稿で、「墨坂神社」について参拝レポを掲載しましたが、
墨坂神社の由来について、説明札には
「崇神天皇の御代に国中に疫病が蔓延したため、赤盾・赤矛を幣帛(へいはく)として祭ったことによる」
幣帛(へいはく)・・・祭祀において神に奉献・お供えする「神饌以外のもの」の総称。特に、御幣・幣束・幣物。
とあります。しかし、実は違うのではないかという意義を申しあげるでござるの件、超マニアックな所でご紹介します。以下、興味ある方限定で。
結論と考察手順
目次
結論:疫病蔓延と墨坂神社祭祀は「直接」関係ありません。祭祀の目的は、あくまで「大和の平安・無事を守護する固めの神として祭る事」です。
以下考察します。
まずは、『日本書紀』崇神天皇紀より
説明の順番(経緯)は3つのステップ。
①国内に疫病が蔓延したので大物主神を祭って鎮める
②改めてお祭りし、宴を催して疫病の件は完了
③その後、足場を固め(大和の平安を祈願)、拡大(教化)へ
要は、墨坂神社祭祀は上記③にあたるものであり、疫病とは関係ない、というのが本稿の言いたい事です。マニアックですね。
以下詳細を説明します。
①国内に疫病が蔓延したので大物主神を祭って鎮める
崇神天皇の時代、国中に疫病が蔓延しますが、崇神7年11月に大物主大神・大国魂神を祀って鎮めたことにより、国内は平安を取戻します。五穀は豊かに実り、人々は豊かになります。良かったですね。
②改めてお祭りし、宴を催して疫病の件は完了
翌年8年12月、改めて崇神天皇が三輪神社で大物主神祭祀を行い、その宮に宴を催します。この時歌った内容がとても有名。
「君臣唱和」。繁栄を謳歌する意味で、臣下が歌った内容を受けて天皇が返答します。
大臣たち→崇神天皇(誘いの歌):
「味酒 三輪の殿の 朝門にも 出でて行かな 三輪の殿門を」
(うまさけ みわのとのの あさとにも いでてゆかな みわのとのとを)
「一晩中、酒宴をして、三輪の社殿の朝に開く戸口を通って帰っていこうじゃないか」
崇神天皇→大臣たち(誘いを受ける歌):
「味酒 三輪の殿の 朝門にも 押し開かね 三輪の殿門を」
(うまさけ みわのとのの あさとにも おしひらかね みわのとのとを)
「一晩中、酒宴をして、三輪の社殿の朝になってから押し開いてお帰りなさい」
要は、「君臣唱和」で歌われた内容を通じて、「大物主神が鎮まりお祭りをよろこんで受けた」ということを暗示する訳です。なので「以後、祟りは起らない」という事。
前年からのお祭りと、このお祭り+宴を通じて、疫病の蔓延を引き起こした大物主を鎮める儀式は完結しているのです。
なので、神社の説明札に記載されていた
「崇神天皇の御代に国中に疫病が蔓延したため、赤盾・赤矛を幣帛として祭ったことによる」というのは関係が無いという事。実際、幣帛として祭る話はこの翌年以降です。
③その後、足場を固め(大和の平安を祈願)、拡大(教化)へ
崇神9年3月
天皇の夢に神人が現れ「赤盾を8枚、赤矛を8竿をもって墨坂の神を祀れ。又、黒盾8枚、黒矛8竿をもって大坂神を祀れ」と教え覚した。そこで翌4月16日にこの夢の教えに従い、墨坂神、大坂神を祀った。とあります。
ここで大事なのは、
①疫病蔓延という国の混乱が収まったので、大和の境を固め、いよいよ拡大へ舵を切るという事。
②武器を幣帛として供え、大和の東限と北限に坐す神、つまり境界線にある神を祀り鎮める事は、大和の平安・無事を守護する「防塞の神」としてお祭りしているという事。です。
翌年、崇神10年
こちらも有名ですが、「四道将軍」を派遣します。四道(北陸、東海、西道、丹波)。大和の中心は鎮まった、だからこそ天皇統治を全国へ広げる目的で将軍を派遣する訳です。
ちなみに、当時の「統治」の考え方も重要です。
一言で言うと、「教化する」という事。つまり、「教え、文化に浴させる、導く」という意味。
「統治」とは、「天皇の文化や王化に浴させる事」であり、
統治にあたっては、先に討伐・戦争があるわけではありません。
まず、教化します。それでも従わない場合は討伐する。この順番と考え方が重要です。
それは、「若し、教(のり)を受けざる者あらば、すなわち兵(いくさ)を挙げて討て」という言葉で表現されています。
このように、崇神天皇の時代は、
混乱から収束。足場を固めて拡大へ。大きな転換が行われた時代だったのです。
墨坂神社はそうした背景の中で、邪霊や祟り神などの侵入から大和を守る「固めの神」として祭祀を受けたという事です。
マニアックですみません。。。ホントだからなんなのという感じですよね。汗
まとめ
- 崇神天皇の時代は、混乱から収束。足場を固めて拡大へ。大きな転換が行われた時代。
- 墨坂神社はそうした背景のなかで「固めの神」として祭祀を受けた神社。
- 祭祀の目的は、あくまで「大和の平安・無事を守護する固めの神として祭る事」。
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