盧茲草葺不合尊とは?鵜羽で屋根を葺き終えないうちに誕生した神。日本神話をもとに盧茲草葺不合尊を分かりやすく解説します。
目次
『日本書紀』第十段 現代語訳
〔本伝〕
その後、豊玉姫は前の約束通り、その妹の玉依姫を連れて、波風に逆らって海辺にやって来て、産む時が迫ると、「私が産む時に、どうか見ないでください」と頼んだ。天孫が我慢できず、こっそり訪れて覗くと、豊玉姫は産もうとして龍に姿を変えていた。そして大いに恥じて、「もし私を辱しめることがなかったら、海と陸とは通じていて、永久に隔絶することはなかったでしょう。今すでに辱しめを受けました。どうして睦まじく心を通わせることができるでしょうか」と言って、草で子を包んで海辺に捨て、海への道を閉じてすぐに去った。
そこで、その子の名を彦波瀲武盧茲草葺不合尊と言う。
〔一書1〕
これより前、別れる時になり、豊玉姫は、「私はすでに身籠っています。波風の速い日に海辺を訪れますので、どうか私のために産屋を作って待っていてください」と丁寧に語った。その後、豊玉姫はやはりその言葉通りにやって来て、火火出見尊に、「私は今夜、子を産みます。どうか見ないでください」と申し上げた。火火出見尊はそれを聞かず、櫛に火を灯して覗いた。すると豊玉姫は八尋大熊鰐に姿を変え、もぞもぞと這い回っていた。そこで辱しめを受けたことを恨み、ただちに海の国に帰ったが、その妹の玉依姫を留めて子を育てさせた。
子の名を彦波瀲武盧茲草葺不合尊と呼ぶ理由は、その浜辺の産屋の屋根を、すべて鵜の羽を草のように用いて葺こうとしたのに、それが終わらないうちに子が生まれたため、そう名付けたのである。
〔一書3〕
これより前、豊玉姫は天孫に、「私はすでに妊娠しています。天孫の子を海の中で産むべきではないので、産む時には必ずあなたのところを訪れましょう。私のために海辺に産屋を作って待っていてくれることを願います」と申し上げた。そこで彦火火出見尊は国に帰ると、鵜の羽で屋根を葺いて産屋を作ったが、屋根を未だ葺き終えないうちに、豊玉姫が大亀に乗り、妹の玉依姫を連れ、海を照らしながらやって来た。すでに臨月を迎えていて、出産が目前に迫っていた。そこで葺き終えるのを待たずにただちに入り、天孫に、「私が産むのをどうか見ないでください」と丁寧に語った。天孫が内心その言葉を怪しみ、こっそりと覗くと、八尋熊鰐に姿を変えていた。しかも、天孫が覗いたことに気づいて深く恥じ、恨みを抱いた。
すでに子が生まれた後、天孫が訪れて、「子の名を何と名付ければよいだろうか」と尋ねると、「彦波瀲武盧茲草葺不合尊と名付けてください」と答えたが、そう言い終わると、海を渡ってただちに去ってしまった。
『日本書紀』第十一段 現代語訳
〔本伝〕
彦波瀲武盧茲草葺不合尊は、その姨の玉依姫を妃として、彦五瀬命を生んだ。次に稲飯命。次に三毛入野命。次に神日本磐余彦尊。併せて四人の男を生んだ。
しばらくして彦波瀲武盧茲草葺不合尊は西洲之宮で亡くなられた。そこで日向の吾平山上陵に埋葬した。
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