於母陀流神おもだるのかみ|顔つきが整って美しいと称える神!神世七代の第六代として成った双神で、充足円満な成人であることを表象する神

於母陀流神

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

於母陀流神おもだるのかみ

『古事記』では、天地初発に神世七代の六代目、男女ペアの男神として「於母陀流神おもだるのかみ」を伝えます。

『日本書紀』では「面足おもだる尊」として登場。

本エントリでは、「於母陀流神おもだるのかみ」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。

 

本記事の独自性

  • 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
  • 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
  • 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです

 

於母陀流神おもだるのかみ|顔つきが整って美しいと称える神!神世七代の第六代として成った双神で、充足円満な成人であることを表象する神

於母陀流神とは?その名義

於母陀流神おもだるのかみ」= 顔つきが整って美しいと称える神

『古事記』では、神世七代の六代目、男女ペアである双神たぐへるかみの男神として「於母陀流神おもだるのかみ」を伝えます。

「於母」は、「面(顔つき)」の意。

「陀流」は、「足る」で、ここでは「整っている」の意。

直前に成った「意富斗能地神おほとのぢのかみ」と「いも 大斗乃辨神おほとのべのかみ」により、外と内を隔てる戸が造立され、男女神が互いに称え合う。

男神が女神に対して「於母陀流おもだる(あなたの容貌は整って美しい)」と褒め称え、女神が「阿夜訶志古泥(まあ何と恐れ多いこと)」と畏まることで、お互いに充足円満な成人であることを表象。(成人であるってところは特に重要。成人してないと結婚できませんから!)

ということで、

於母陀流神おもだるのかみ」=「面」+「足りている(整っている)」+「神」= 顔つきが整って美しいと称える神

 

於母陀流神活動と位置づけ

於母陀流神おもだるのかみ」が登場するのは、『古事記』上巻、天地初発の神話。以下のように伝えてます。

 次に、成った神の名は、宇比地邇神うひぢにのかみ。次に、いも 須比智邇神すひちにのかみ。次に、角杙神つのぐひのかみ。次に、いも 活杙神いくぐひのかみ(二柱)。次に、意富斗能地神おほとのぢのかみ。次にいも 大斗乃辨神おほとのべのかみ次に、於母陀流神おもだるのかみ次に、いも 阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ。次に、伊耶那岐神いざなきのかみ。次に、いも 伊耶那美神いざなみのかみ

 かみくだりの、国之常立神くにのとこたちのかみより下、伊耶那美神いざなみのかみより前を、あわせて神世七代かみよななよという。上の二柱の独神ひとりがみは、おのおのも一代という。次にたぐへる十柱とはしらの神は、おのおのも二柱ふたはしらの神を合わせて一代という。

次成神名、宇比地邇神、次妹須比智邇去神此二神名以音、次角杙神、次妹活杙神二柱、次意富斗能地神、次妹大斗乃辨神此二神名亦以音、次於母陀流神、次妹阿夜訶志古泥神此二神名皆以音、次伊邪那岐神、次妹伊邪那美神。此二神名亦以音如上。

上件、自國之常立神以下伊邪那美神以前、幷稱神世七代。上二柱獨神、各云一代。次雙十神、各合二神云一代也。 (『古事記』上巻より一部抜粋)

古事記 天地開闢

ということで。

まず、天地開闢に誕生する神々を整理するとこんな感じ。

『古事記』天地開闢で誕生した神々

▲「於母陀流神おもだるのかみ」は、天地開闢のはじめに誕生した神世七代の六代目、男女ペア(双神たぐへるかみ)の男神として伝えてます。

ポイント2つ。

独神ひとりがみ」が身を隠すことで「双神たぐへるかみ」が世界を形づくっていく道筋をつけた

於母陀流神おもだるのかみ」は双神たぐへるかみ」として位置づけられてるんですが、忘れてはいけないのが、これより前に誕生した独神ひとりがみ」からの流れ。

独神ひとりがみ」はすべて身を隠すのですが、コレ、『古事記』独特の表現で、「双神たぐへるかみ」に彼らの活躍する世界を譲り、自らは立ち退くことをいいます。

言い方を変えると、独神ひとりがみ」が身を隠すことで「双神たぐへるかみ」が世界を形づくっていくことに道筋をつけた、てことで

於母陀流神おもだるのかみ」と「阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ」という双神たぐへるかみ」の誕生にはこうした背景があること、しっかりチェック。

次!

②神世七代の神名を通じて、世界が次々に具体的な形をとって展開するさまを表象している

そして、双神たぐへるかみ」が世界を形づくっていくこと、その具体的な表れは「神世七代」の神名を通じて表現されます。

神世七代の神名の要点をまとめると、以下になります。

  神名 表象するもの
第一代 国常立 天の常立神に続き、それと対応して成る国の恒常的確立(予祝)
第二代 豊雲野 地上世界に豊かな雲のわき立つ野が出現したこと、地上世界の豊穣(予祝)
第三代 宇比地&須比地 天→国、雲野→泥砂という対応に即した、地上世界の土台
第四代 角杙&活杙 土台としての大地に標識となる杙を打ち込む
第五代 意富斗&大斗乃 打ち込んだところに(外と内を隔てる)戸(門)を造立
第六代 於母陀&阿夜訶 男と女をそれぞれ「面足おもたる」「あやかしこね」と称える
第七代 伊耶那岐&伊耶那美 男と女とが互いに誘いあう

これ、ホントによくできた神名になっていて。

表象しているのは、神の世に、新しく世界が次々に具体的な形をとって展開するさまであり、以下のような物語展開。

  1. 先ずは、国(国土)が恒久的に(永久に)確立することを予祝
  2. その国(国土)に、豊穣を約束する「雲のわき立つ野」が出現することを予祝
  3. そのうえで双神により具体的な表れとして、大地の土台ができ、そこに標識となる杙を打ち込み、戸を造立する
  4. そして、男女の神により、互いにまっとき性を具有することを称えあい、誘い合う、、

ステキですね。ゾクゾクします。日本的な、極めて日本的な世界創生の物語。。。

そして、最後に誕生した伊耶那岐神と伊耶那美神が結婚し、国生み、神生みを導く、、、壮大な構想をもとにつくられてる。そこへ向けて、充足円満な成人であることを表象する神として「於母陀流神おもだるのかみ」が登場してるんですね。(成人であるってところは特に重要。成人してないと結婚できませんから!)

 

於母陀流神始祖とする氏族

無し

 

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より 一部分かりやすく現代風修正

於母陀流神登場箇所

『古事記』上: 於母陀流神、阿夜訶志古泥神

古事記 天地開闢

『日本書紀』神代上: 面足尊、惶根尊、吾屋惶根尊

『日本書紀』第二段

 

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
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