伊勢神宮の創建経緯|「常世の浪が打ち寄せる美しい国だから。」by天照大神

 

日本神話をもとに、神社の起源を辿ります。

神社の起源を日本神話に求める事で、一般的に知られている神社のイメージとは違った側面が見えてきますよ♪

今回は「伊勢神宮いせじんぐう」。伊勢神宮の起源に、日本神話に登場する天照大神が密接に関係しているお話をお届けします。

 

伊勢神宮の創建経緯|「常世の浪が打ち寄せる美しい国だから。」by天照大神|日本神話をもとに神社の起源を探る

伊勢神宮の創建経緯:伊勢の地に天照大神が鎮まった経緯

伊勢神宮の地は、古くから民間祭祀として「日神信仰」が行われていた地でした。

第11代 垂仁すいにん天皇 の御代に、それまで宮中で祀っていた天照大神あまてらすおおみかみは、当地で祭られるようになります。

理由は、宮中にいらっしゃるとあまりにも天照パワーが強すぎて、大変な事がいろいろ起こってしまったから。そう、実は「天照大神」はもともと宮中にいらっしゃったんですね。

それを、垂仁天皇の時代に、鎮座する土地を求めて、菟田(大和国)、近江国、美濃国などを巡り巡って、、、 最後に「天照大神」自ら「ココにする!」と言って決めたのが伊勢の地だったという訳。  

正史『日本書紀』にはその経緯が記載されています。

以下その部分を抽出します。

(垂仁天皇25年の条)

3月10日、 ~中略~ 倭姬命やまとひめのみことは大神を鎮座する場所を求めて、菟田うだ筱幡ささはたに至った。(筱は佐佐ささと言う。) 引き返して近江国おうみのくにへと入り、東の美濃みのを巡って、伊勢国いせのくにに至った。そのとき天照大神は倭姬命に言った。「この神風の伊勢国いせのくには、常世とこよの国からのなみが繰り返し繰り返し押しよせる国。大和のそばの国で、美しい国だ。この国にいようと思う。」そこで、大神の教えた通りにやしろを伊勢国に立てた。これにより斎宮いはいのみやが五十鈴川のほとりに興された。これを磯宮いそのみやという。すなわち、天照大神が初めて天より降りたった場所である。

原文:三月丁亥朔丙申、~中略~ 爰倭姬命、求鎭坐大神之處而詣菟田筱幡筱、此云佐佐、更還之入近江國、東廻美濃、到伊勢國。時、天照大神誨倭姬命曰「是神風伊勢國、則常世之浪重浪歸國也、傍國可怜國也。欲居是國。」故、隨大神教、其祠立於伊勢國。因興齋宮于五十鈴川上、是謂磯宮、則天照大神始自天降之處也。 (『日本書紀』垂仁天皇記より)

夫婦岩@伊勢市 この海の先に、常世の国があったと考えられていました。

と、五十鈴川の川上に「斎宮いはひのみや」を興てたとあり、これが「磯宮いそのみや」。これこそ創建の経緯であります。

このなかで、天照が仰った部分、

「この神風が吹く伊勢国は、理想郷から打ち寄せてくる波が幾重にも重なって次々に打ち寄せる国。宮中から遠く離れた国だけれど、とても美しい国だ。この国に居ることにしよう。」

原文:是神風伊勢國、則常世之浪重浪歸國也、傍國可怜國也。欲居是國。(この神風の伊勢国は、常世とこよなみ重浪しきなみ する国なり。傍国かたくに可怜うまし国なり。是の国に 居らむと欲ふ。)

という「天照大神」の教えがポイント。

この天照大神自身の教えに従って祠を創建した訳です。まずはココをチェック。

そして、五十鈴川のほとりには斎宮いはいのみやも興てました。これを「磯宮いそのみや」と言います。これが現在の伊勢神宮ですね。

上記垂仁条のポイントは3つ。

  • 天照大神が倭姫やまとひめと諸国を旅したとき、天照は「八咫鏡やたのかがみ」をご神体として巡っていたこと。
  • 伊勢が選ばれた理由が大事で、それは「伊勢国は、常世とこよの浪の重浪しきなみ する国で、美しい国」であること。
  • 斎宮のしきたりが始まったこと。

以下、詳細を。

1つ目。天照大神が倭姫やまとひめと諸国を旅したとき、天照は「八咫鏡やたのかがみ」をご神体として巡っていたこと。

この「八咫鏡やたのかがみ」は、「三種の神器」の一つであり、そもそもは、天孫降臨において天照から「瓊瓊杵尊ににぎのみこと」に授けられた経緯あり。ざっくり言うと、瓊瓊杵尊ににぎのみことに授けられた宝鏡は、その後、神武天皇に引き継がれ、神武東征を通じて大和へ、そしてそのまま宮中にあったという訳。

2つ目。伊勢が選ばれた理由が大事で、それは「伊勢国は、常世とこよの浪の重浪しきなみ する国で、美しい国」であること。

意味は、「常世とこよの浪が幾重にも重なって次々に打ち寄せる国」、それが「伊勢」だという事。つまり、この伊勢の地が常世とこよと直結していることを意味しています。突然ですが、、、

常世とこよ」とは、古代人が夢想した「神仙郷」で、不老長寿の理想郷。ちなみに、神武東征神話でもその設定が登場。
なんと!古代神話体系において、紀伊半島の東岸、海の向こうに、理想郷があると信じられていた訳なんです!⇒「熊野灘のおすすめ観光スポット|日本神話的熊野灘の位置づけと要チェック観光スポットをまとめてご紹介!

なので、
「常世の浪(とこよ のなみ」とは、
「常世の郷から打ち寄せて来る波」の事であり、それが伊勢の地が選ばれた理由になっている事になる訳です。古代において、三重県に隣接する海域の向こうに、そうした理想郷が設定されてたとか、すっごい神話ロマンですよね!

3つ目。斎宮のしきたりが始まったこと。

斎宮いはいのみや」とは、書紀では「宮」として伝えますが、いつしか「祭主(斎王)」としての意味も持つようになっていきます。要は、それまで天皇自身がお祭りしていた天照大神を、斎宮が代わってお祭りする、という事。

同じ垂仁天皇条に、「天皇、倭姫命を以って御杖みつえとして、天照大神に貢奉たてまつりたまふ」とあり、これ以降、天皇の代替わり毎に置かれ、「天照大神の御杖代みつえしろ(神の意を受ける依代よりしろ)」として伊勢神宮に奉仕するように。スゲー。

初代斎宮はもちろん「倭姫命やまとひめのみこと」。ちなみに、「日本武尊やまとたけるのみこと」は、東征の途上、この地を拝して倭姫命から「草薙剣くさなぎのつるぎ」を授けられてます。現在も、この「斎宮」の制度は引き継がれていて、今上天皇のお姉さんである池田厚子さんが「斎宮」を務めておられます。結構ディープな伝統であります。

以上、3点、是非チェックされてください。

なので、以上をまとめて、
先ほどの天照の言葉を再度確認。ついでにもう少し細かく訳出すると、

「この神風が吹く伊勢国は、理想郷から打ち寄せてくる波が幾重にも重なって次々に打ち寄せる国。宮中から遠く離れた国だけれど、とても美しい国だ。この国に居ることにしよう。」

といった意味になります。

神風が吹き、理想郷から打ち寄せる浪がおしよせる美しい国。それが伊勢の地だったという訳で。確かに、伊勢の地は、時間の流れ方がとても穏やかで温かい感じがします。

三重県に隣接する海の向こうに常世の国がある、、、もう、なんかスゴイ神話ロマン♥

 

伊勢神宮の宮域林は約5500ヘクタールもの広さ!

神宮が所有している森林を「神宮宮域林」といいますが、なんと約5500ヘクタールもあります。

ま、森全部作った訳ではないですが。最高神が「ココが良い」って仰る訳で、それはもう、皆さん必死で造ったのでしょう。

でも、5500ヘクタールって。。。

東京の畳は1.55㎡だから約3500万枚分

東京ドームは46,755㎡ですから約1300個分

東京ディズニーランドは510,000㎡なので約100個分

流石でございます「天照大神」。

「ココが良い!」って仰るので、みんなで造ったその広さ東京ドーム1300個分。。。

ちなみに、宮域林は五十鈴川の水源である神路山、島路山、高倉山の3山からなりますが、

たしかに、この辺りの山々は古代からの空気をそのまま残しているようで、時間の流れ方が違ったように感じます。

なので、伊勢神宮をお参りするときは、こうした経緯も踏まえて参拝されると良いと思います。

 

まとめ

伊勢神宮の創建経緯を日本神話的視点から眺めてみましたが、いかがでしたでしょうか?

伊勢は 天照大神が「常世の浪の重浪帰する国で可怜し国だからココに鎮座しよう!」ということで決まった場所。

ここから、現在に至るまでずーっと引き継がれているわけで、後代における発展の仕方も非常に面白いですよね。

個人的には、「とこよのなみの しきなみ よする くに。かたくにの うましくになり。」という日本語は覚えておきたいところ。三重県=常世国と直結する場所と合わせてチェックです。

 

伊勢神宮(内宮&外宮)はコチラで詳しくまとめてます!是非。

 

・住所:三重県伊勢市宇治館町1

公式サイトはコチラ!

 

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
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