金刀比羅宮|航海安全ご利益「金毘羅さん」!金刀比羅宮を日本神話とあわせて全部まとめてご紹介!

 

金刀比羅宮ことひらぐう」は、香川県仲多度郡琴平町にある神社。

ご祭神は、大国主神の魂である「大物主神」。その神話的背景から、「金刀比羅宮ことひらぐう」は農業殖産、漁業航海安全を中心に、医薬、技芸など幅広いご利益で厚い信仰をあつめています。

本殿は、琴平山(象頭山)の中腹、有名な785段(奥社の厳魂神社まで含めると1368段!)の石段を登った先に鎮座。ここからの讃岐平野は素晴らしい眺め。

今回は、「こんぴらさん」として親しまれる大物主神を祭る神社「金刀比羅宮ことひらぐう」をご紹介します。

 

金刀比羅宮|農業殖産、漁業航海安全を中心に、医薬、技芸など幅広いご利益で厚い信仰をあつめる「こんぴらさん」は785段の石段を登った先、琴平山(象頭山)の中腹に鎮座中。

ご祭神「大物主神」にまつわる日本神話

当サイトならではの日本神話をディープにご紹介。まずは神話を理解してリアルな現場をチェック。

金刀比羅宮ことひらぐう」とその御祭神に関連するのは日本神話にある「国造り神話」です。

国造り神話の舞台は出雲であり、大国主がメインで活躍しますが、実は、その中に「金刀比羅宮ことひらぐう」のご祭神=大物主神に関わる伝承があるのです!

日本神話自体は『日本書紀』『古事記』に記載されてます。今回はその中から、正史『日本書紀』から以下ご紹介。

大国主は『日本書紀』では、一貫して「大己貴神おおあなむちのかみ」として登場。以下、概要を。

始め、「大己貴神おおあなむちのかみ(=大国主命おおくにぬしのみこと)」は「少彦名命すくなびこなのみこと」と協力して国造りをしていました。数々の困難を克服し天下を経営。人・家畜の病気の治療法や、鳥獣・昆虫の災害を祓い除く方法も定めます。

ところが、途中で「少彦名命すくなびこなのみこと」は「常世の国」へ行ってしまい、以後、「大己貴神おおあなむちのかみ」は自力で国造りを進めることになります。

出雲の国にたどり着いたとき、「大己貴神おおあなむちのかみ」は「国を平定したのは私一人だ。でも、私と一緒に天下を治める者はいるだろうか?」と、「興言ことあげ」をします。

その時、神々しい光が海を照らし、こつ然と浮かんでくる神があった。曰く、「私がいたからこそ、あなたは国を平定するという偉大な事を成し遂げられたのだ。」と言います。

大己貴神おおあなむちのかみ」が素性を訪ねたところ、「私は、あなたの幸魂さきみたま奇魂くしみたまだ。」と。これが大物主大神です。

大己貴神は納得。そして「どこに住みたいか?」と聞くと「三諸山みもろのやま(三輪山)に住みたい。」と言うので、さっそく宮を造営した。これが大神神社であります。

 ※幸魂さきみたま奇魂くしみたま・・・神の持つ霊魂。神様の場合、必ず「みたま」と敬語を付けて言います。

『日本書紀』より概要まとめ

▲大国主を祭る出雲大社にある像。手前の「大己貴神おおあなむちのかみ(=大国主)」の像の先、波の上に金色の珠がありますが、これが「大国主の魂」=大物主なんですね。国造り神話の超重要シーンであります。

ま、

いろいろツッコミどころ満載な神話ですが、要は、

  • 多くの苦難を伴う「国造り」をたった1神で進めることになった大己貴神が、「協力者はいないか?」と独りごちた時に現れた神(大物主大神)は、意外にも自分の「幸魂さきみたま奇魂くしみたま=魂」であった。
  • 「国造り」は1人で行っているのではない、自分の「魂」という協力者が常にあることを教えられ、気付きを得た。
  • だから自分の「幸魂・奇魂=魂」が住みたいと言ってるところに住まわせてあげた、それが大三輪神社(現:大神神社)。

という話。

ん?大神神社?

そうなんです、大物主神の鎮まる地は、奈良県にある大神神社なんですが、なぜか大物主神、はるばる香川までやって来たことがあるそうで。。。本件、後ほど創建経緯のところで解説します。

 

当社のポイント①大国主の幸魂・奇魂=大物主神!

  • 金刀比羅宮とその御祭神に関連するのは、日本神話の「国造り神話」。主役は大国主。
  • 独りで国造りを行っていた大国主の前に現れたのが「大国主の幸魂・奇魂」であり、これが御祭神の「大物主神」。
  • なので、現在の航海安全ご利益の前に、そもそも国土形成・地鎮系のご利益属性を持つ神様であることをチェック!

 

金刀比羅宮の創建経緯

さて、日本神話背景をゲットしたあとは、当社の創建経緯をチェックです。

社伝曰く、

古伝によれば、大物主神は、瀬戸内海の海水が深く湾入し潮が常に山麓を洗う湾奥に横たわる良き碇泊所であったこの琴平山に行宮を営まれ、表日本経営の本拠地と定めて、中国、四国、九州の統治をされたといわれています。その行宮跡に大神様を奉斎したと伝えられています。

鬱蒼とした樹林に囲まれた琴平山の各所には、今も往古の遺跡と思われる場所があり、境内のそこかしこに大神様のご偉業が偲ばれます。(神社説明文より引用)

との事で、

大物主神、なんと奈良から香川までやってきて宮を営み、中国・四国・九州の統治をされた、という次第!

確かに、人代、大物主神は白蛇にになって美しい姫のもとへ夜な夜な通うという出張好きの神様でして。。。足を延ばして当地までこられてもオカシクはない???

詳細コチラで⇒「大神神社|開運厄除けの超絶ご利益あり!大国主の魂(幸魂・奇魂)が鎮まる三輪山は国造り神話で有名な大国主の神威を表象する地鎮&開運系パワースポットです。

その後、

初め、大物主神を祀(まつ)り、往古は〝琴平神社〟と称しました。

中古、本地垂迹説ほんちすいじゃくせつの影響を受け、〝金毘羅大権現こんぴらだいごんげん〟と改称し、永万元年(1165)に相殿に崇徳天皇を合祀しました。

その後、明治元年(1868)に神仏混淆しんぶつこんこうが廃止されて元の神社にかえり、同年7月に宮号を仰せられて〝金刀比羅宮〟と改称し、現在に至っています。(神社説明文より)

とのことで、

神社としてスタートしながら、神仏習合で真言宗の「象頭山松尾寺金光院」となり、大物主は「象頭山ぞうずさん金毘羅大権現」と呼ばれていた次第。明治の神仏分離までこれが続きました。

象頭山ぞうずさん金毘羅大権現」とは、本地垂迹ほんじすいじゃく思想のもとで、神が「権現ごんげん」と呼ばれるようになった時の名前。

本地垂迹ほんじすいじゃく」とは、仏教が全国展開&興隆した時代に発生した「神仏習合しゅうごう思想」の一つ。日本の八百万の神々は、実は様々な仏が化身として、この地に現れた「権現ごんげん」である、と。

本体である仏や菩薩が「本地ほんじ」、仮に神となって現われることが「垂迹すいじゃく」。二つ合わせて「本地垂迹ほんじすいじゃく」。そして、仮に現れた神のことを「権現ごんげん」という訳です。

もともと在地にあった神様や自然崇拝の対象が、仏教的体系の中に組み込まれてしまうという恐るべき思想。信仰していた神様が、ある日、実はそれは仏さまが化身として現れたんだよ、こっちが本元だよって言われるのって、、、汗

流石に無理筋なので、新しい名前を生み出して融合させたわけで、それが「権現ごんげん」。そんなこんなで奈良時代の末期になると、全国各地で権現が登場するようになりました。

で、奈良の三輪山から出張してきた大物主神、いつしか「象頭山ぞうずさん金毘羅大権現」と名称を変え、明治以降、やっと神に戻ったという経緯。いろいろありました。

ま、いずれにしても、日本神話的背景を理解された読者の皆さんならお分かりの通り、

大物主=国造り神話を背景に持つ神様、だからこそ、中国・四国・九州の統治=瀬戸内エリアの守護神として位置づけられ、そんな背景から、海運・漁業系の皆さんから航海安全ご利益の信仰を集めるようになった経緯ということですね。

 

当社のポイント②大物主神は、神仏習合のもとで「象頭山ぞうずさん金毘羅大権現」へ変貌

  • 奈良から出張してきた大物主。中国、四国、九州の統治用に、当地「琴平山」に宮を建設。
  • その後、神仏習合によって「象頭山ぞうずさん金毘羅大権現」へ名称変更、神社もお寺に変貌。明治になって神仏分離により、ようやく神社に復帰。現在は元通りの大物主としてお祭り中。ホントいろいろありました。
  • 国造り神話を背景に持つ神様だからこそ、中国・四国・九州の統治=瀬戸内を中心とするエリアの守護神として位置づけられ、そんな背景から、海運・漁業系の皆さんから航海安全ご利益の信仰を集めるようになった経緯をチェック!

 

金刀比羅宮への階段

さて、日本神話と創建経緯をゲットしたあとは、いよいよリアルな現場をチェックです。

金刀比羅宮は、香川県仲多度郡なかたどぐん琴平町にあります。

中国・四国・九州の統治用としては、やや東に位置するものの、便利な場所と言えなくもない、、、?

本殿は、琴平山(象頭山ぞうずさん)の中腹、有名な785段(奥社である厳魂神社まで含めると1368段!)の石段を登った先にあり。この階段が曲者くせもので、足腰に自信が無いとクリア困難な難関であります。大物主、三輪山といい琴平山(象頭山ぞうずさん)といい、相当「山」好きな神様であります。

登る時のマインドを先にチェック。

高く長い石段は人生と同じ。あわてず、ゆっくりと登りましょう。「しあわせさん。こんぴらさん。」こんぴらさまは、いつも、みんなのしあわせをお祈りしています。(神社ポスターより)

とのことで。これ、途中でくじけそうになった時に是非。

と、

この先、約800段の階段は、だらだら長くなるのでコチラでまとめてお届け⇒「金刀比羅宮の階段(石段)|日本最大の参詣階段!琴平山(象頭山)の中腹、本宮まで785段の全部をご紹介!

 

本稿では一気に、石段652段付近、通称「御前四段坂」へ参ります!

金刀比羅宮の境内

こちら、本殿へ続く最後の階段の様子。

▲深い木々に囲まれた石段を登りながら日々の穢れが落ちていくような心地がします。琴平山(象頭山ぞうずさん)の中腹にある本殿まであと少し。

そして、

階段を登りきったところ(石段785段)、正面にどーんと鎮座されてるのがコチラ!ご本宮!!!

キタ━(゚∀゚)━! 大物主であります!!!

 

ご祭神とご利益

御祭神:大物主大神おおものぬしのおおかみ

相神:崇徳すとく天皇

御利益:航海安全、農・工・商業など全ての産業開発、方除(ほうよけ)、治病、禁厭(まじない)、造酒、製薬、交通、縁結び、、、 世の中の幸福を増進する御利益全般、つまり、人間生活全般の守護神として。

特に、日本神話の「大物主神おおものぬしがみ=国造りの神様(大国主)の魂」というところから、国土開拓、農業振興、地鎮系のご利益が超絶。日本神話的背景から、その超絶パワー度合いは筋金入り。流石でございます、大物主。

参拝は「二拝二拍手一拝」で、 「祓へ給へ 清め給へ 守り給へ 幸へ給へ」とお祈りください。

 

金刀比羅宮の大物主は、航海安全ご利益で特に企業の皆さんから絶大な信仰を集めておりますが、その証がコチラ!

絵馬殿

本殿を正面に左手、絵馬殿があります。企業の皆さんから奉納された絵馬の他、いくつかの船が展示されてます。

▲船舶業を中心に、製造業などもあって、多彩。社業発展祈願と合わせて奉納されております。

冒頭でも触れましたが、

ご祭神の大物主神、日本神話的には鎮まった地は、奈良県にある大神神社なんですが、はるばる香川まで出張され、中国・四国・九州の統治=瀬戸内を中心とするエリアの守護神として位置づけられるようになり、そんな背景から、海運・漁業系の皆さんから航海安全ご利益の信仰を集めるようになった結果がこうした奉納の数々ということで、、、その展開が非常にオモシロいですよね。

 

睦魂神社

ご祭神:大国主神、少彦名神

ご利益:国土経営、病気平癒(医薬)

冒頭でも触れた通り、国造りを行い、天下を経営したのが、大国主。で、大国主神の魂が大物主であります。その意味で、金刀比羅宮のご祭神の祖神様である大国主を祭る当社は超重要な位置づけ。

始め、「大国主命おおくにぬしのみこと」と協力して国造りをしていた「少彦名命すくなびこなのみこと」とあわせて祀っております。人・家畜の病気の治療法や、鳥獣・昆虫の災害を祓い除く方法も定めたところから、医薬系のご利益は絶大。本殿と合わせて必須のチェックポイント!

 

三穂津姫社

ご祭神:三穂津姫(大物主のお后)

ご利益:縁結び、夫婦和合

大国主が天孫に国を譲り、幽界に退いた後、高皇産霊尊が大物主神(大国主の奇魂・和魂)に対し「吾が娘の三穂津姫を妻とし、八十万神を率いて永遠に皇孫のためにお護りせよ」としたお姫様、つまり大物主のお后を祭ります。先ほどの睦魂神社と合わせて、必須のチェックポイントです。

なお、

本宮と三穂津姫社を結ぶ回廊があったりして、、、南渡殿です。

▲美しい回廊です。

 

嚴島神社

ご祭神:市寸嶋姫尊いちきしまひめのみこと

ご利益:商売繁盛、招福開運、音楽福徳

宮島にある厳島神社のご祭神と同じ。九州の宗像の神様、市杵嶋姫いちきしまひめを祭ります。ココでは「市寸嶋姫」とう表記。もともと境外にあった社だったのが、明治31年(1898)にこの地に迎えられました。

 

厳魂神社(奥社)への道

本殿に向かって右手奥、厳魂神社(奥社)へ向かう道があります。

 

厳魂神社(奥社)へは、さらに583段の石段があり、距離にして約1kmほど。奥社まで行けば石段の数は全部で1368段。ご祭神は、金刀比羅本教の教祖である「厳魂彦命」。

この日は、時間と体力の余裕がなく、次回へ持ち越しとさせていただきました。お時間があれば是非。

 

金刀比羅宮本殿からの眺め

本殿を正面に見て右手、讃岐平野を眺められるナイススポットあり。

 

▲素晴らしい景色です!約800段の階段をのぼってきた甲斐がありました。。。讃岐平野を一望。平野の先には、もちろん瀬戸内海と瀬戸大橋です。大物主、こんなビューを毎日ご覧になっているわけですね。

 

当社のポイント③石段785段を登った御本宮の周辺には、大物主と関連するご祭神が祭られてます!

  • 御本宮の周辺の神社は、一言でいうと「大物主ファミリーの皆さん」が。
  • 御本宮は、ご祭神「大物主神」。その左手、睦魂神社には大物主(魂)の本体である「大国主神」。そして三穂津姫社には大物主の后である「三穂津姫神」。まずはこの3社は鉄板でチェック。
  • 大物主神=航海安全の神としての信仰は、絵馬殿にある奉納絵馬の数々をチェック。特に、企業の皆さんからの奉納がスゴイ。
  • その他、奥社には金刀比羅教の教祖「厳魂彦命」が。ここも時間があればチェックです。あとは、素晴らしい讃岐平野の景色をご堪能ください!

 

帰り道、、、

そうです、来た道は必ず戻らねばなりません。。。涙

 

まとめ

金刀比羅宮ことひらぐう

香川県仲多度郡琴平町にある神社。

ご祭神は、大国主神の和魂神である大物主神。その神話的背景から、農業殖産、漁業航海安全を中心に、医薬、技芸など幅広いご利益で厚い信仰をあつめています。

金刀比羅宮とその御祭神に関連するのは、日本神話の「国造り神話」。主役は大国主。

独りで国造りを行っていた大国主の前に現れたのが「大国主の幸魂・奇魂」であり、これが御祭神の「大物主神」。なので、現在の航海安全ご利益の前に、そもそも国土形成・地鎮系のご利益属性を持つ神様であることをチェックです!

御本宮の周辺の神社は、一言でいうと「大物主ファミリーの皆さん」が。

御本宮は、ご祭神「大物主神」。その左手、睦魂神社には大物主(魂)の本体である「大国主神」。そして三穂津姫社には大物主の后である「三穂津姫神」。まずはこの3社は鉄板でチェック。

大物主神=航海安全の神としての信仰は、絵馬殿にある奉納絵馬の数々を是非。特に、企業の皆さんからの奉納がスゴイ。

琴平山(象頭山)の中腹からゲットできる讃岐平野の素晴らしい眺めとあわせてチェックされてください。

 

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住所:香川県仲多度郡琴平町892−1

御本宮御扉開・御扉閉時刻

4月〜9月:御扉開 午前6時、御扉閉 午後6時

10月〜3月:御扉開 午前6時、御扉閉 午後5時

※山登りのようなものなので、時間にゆとりをもって参拝されてください。

駐車場あり トイレあり

神社のHPはコチラで!

 

神社好きな皆さまへ。当サイトおススメ神社の皆さん!



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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
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