『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。
今回は
「大事忍男神」
伊耶那岐命と伊耶那美命による国生みのあと、神生みへ突入するのですが、その最初に生んだ神として、『古事記』上巻、神生み神話で登場。
本エントリでは、「大事忍男神」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
大事忍男神おおことおしをのかみ|これから神を生みなす大いなる事業を成す威力のある神。神生みの一番最初に誕生した言表的位置づけの神
目次
大事忍男神の名義
「大事忍男神」 = これから神を生みなす大いなる事業を成す威力のある神
『古事記』では、伊耶那岐命と伊耶那美命による国生みのあとに神生みへ突入。その最初に、さーこれから神を生みなす大いなる事業を成すぞーということで誕生した神として「大事忍男神」を伝えます。
「大事」は、大きなこと。ココでは、これから神生みが始まることの意。
「忍」は、「押えつける」意から、威力あるものの美称に変化。
ということで
「大事忍男神」=「大きなこと」+「威力のある」+「男の神」= これから神を生みなす大いなる事業を成す威力のある神 |
で、
神生みの最初に、これからのときに、この神が誕生しているのは、神の行動特性「言表と行為」をもとにしてるから。詳しくはコチラ↓で。
背景にあるのは、言霊信仰。言葉そのものに霊力が宿っているという考え方で、ある言葉を口に出すとその内容が実現するということ。
「大事忍男神」には、これから神生みという大事業を成していくぞー!という宣言、そしてそれが実際に行われる、カタチになっていくぞー!という意味が込められてます。
大事忍男神が登場する日本神話:『古事記』編
「大事忍男神」が登場するのは、『古事記』上巻、神生み神話。以下のように伝えてます。
既に国を生み竟へて、更に神を生んだ。ゆえに、生んだ神の名は、大事忍男神。次に石土毘古神を生み、次に石巣比売神を生み、次に大戸日別神を生み、次に天之吹男神を生み、次に大屋毘古神を生み、次に風木津別之忍男神を生み、次に海の神、名は大綿津見神を生み、次に水戸神、名は速秋津日子神、次に妹速秋津比売神を生んだ。(大事忍男神より秋津比賣神に至るまで、幷せて十神ぞ。)
既生國竟、更生神。故、生神名、大事忍男神、次生石土毘古神訓(石云伊波、亦毘古二字以音。下效此也)、次生石巢比賣神、次生大戸日別神、次生天之吹上男神、次生大屋毘古神、次生風木津別之忍男神(訓風云加邪、訓木以音)、次生海神、名大綿津見神、次生水戸神、名速秋津日子神、次妹速秋津比賣神。自大事忍男神至秋津比賣神、幷十神。 (引用:『古事記』上巻の神生みより一部抜粋)
ということで。
国生みが終わり、さらに神生みへ突入。その最初に誕生した神が「大事忍男神」。
系譜は以下の通り。
▲神生みの最初に誕生する10柱の神々は一つのカタマリ。大八嶋国の土台、そこに生起する自然物、自然現象の表象と考えられます。
ちなみに、、、
本文、「既に国を生み竟へて、更に神を生んだ。」とありますが、ココ、結構重要で。もとはと言えば、天神による「この、漂っている国を修理め固め成せ」という指令からの国生み。
「修理固成」、ふよふよ状態の未成熟な国を整えて固めなさい、と。「修理」=整えること、「固成」=固めること。
で、
単に、国を(形状的に)整え固めるだけなら、大八嶋国を生むだけでよかったはず。続けて神生みする必要はありません。
ですが、二神は国生みの後、当然のように神生みする訳です。てことは、やはり、「修理固成」とは、形状変化以上の意味、つまり、ただよへる国を「瑞穂の国」へ仕上げていく意味を込めてる、そうした広がりをもって解釈する必要があって。
神々を生み、それこそ土や風や野や食物の神を生むことで「瑞穂の国」に仕上げていく土壌をつくろうとしてる、ってこと。今、まさにその時であり、その最初に、さーこれから神を生みなす大いなる事業を成すぞということで誕生してるのが「大事忍男神」なんですね。
大事忍男神が登場する日本神話:『日本書紀』編
『日本書紀』では登場しません。『古事記』特有の神です。
大事忍男神を始祖とする氏族
なし
参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。
「大事忍男神」が登場する日本神話はコチラ!
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