日本神話が伝える天地開闢|一番最初の言葉「古」から始まる世界のはじまりのお話

 

日本の正史である『日本書紀』をもとに、

日本神話が伝えるメッセージを読み解きます。

 第一回目は「天地開闢てんちかいびゃく」。『日本書紀』第一段の内容を、複数回に分けてお届けします。

 

日本神話が伝える天地開闢|一番最初の言葉「古」から始まる世界のはじまりのお話

 日本神話は以下の言葉から始まります。

いにしへ天地あめつち いまわかれず、陰陽めを わかれず。

読み
陰陽(めを)・・・『淮南子』天文訓では、「万物を生む2つの気であり、天地の間の精気が集まって生まれた」とされます。 

訳出:

「昔々、天と地がまだ分れず、いんようも分れていなかった。」

 

ご存知でした?

 一番最初の言葉は、「いにしへ」という言葉から始まっているのです。

 

日本昔話。その最初は、いつも「昔むかし、あるところに・・・」と始まります。

実は、その起源は日本神話にあったのです!

 

Σ(゚□゚ノ)ノエー!

 

でも、ここで言う「いにしへ」は、「昔むかし~」でイメージされるよりも「遥か昔」。

それは、例えば宇宙の「始まり」と言われているビッグバンと同じくらい、気の遠くなるような昔の事。

物質のはじまる、根源的な原初の昔。

 

 

注目は、その定義の仕方です。

 

「古」という言葉で「天地開闢」を表現する考え方には、

「点と直線」で表現されるような時間の概念がありません。

 

私たち現代人が考える一般的な時間の概念とは、

例えば、自分が生まれた年月日という「点」があって、そこから今まで時間が流れている、といった直線的なものです。

 

でも、日本神話は「世界の始まりの点」を定義しません。

点を定義しないという事は、時間を直線的に考える事もしないという事です。

 

例えば、中国の古代文献である『文選』巻三四「七啓八首(第一章)」には、

「夫太極之初、渾沌未分」という記述があります。

中国古代には「太極」という「一番最初」であり「はじまり」の点(状態)を表す言葉と概念があるのです。

 

ちなみに、聖書ではどうでしょうか?

 『旧約聖書』創世記、最初の言葉は、「はじめに神は天と地とを創造された。」とあります。

「はじめに」という表現は、時間の流れにおける起点が存在するという事。

その時(時点)に「神が天と地とを創造された」と規定しているのです。

 

ところが、日本神話にはありません。

あくまで「昔むかし~」という形。

このように、日本神話の世界観は非常に独特なのです。

 

 「いにしへ天地あめつちいまわかれず、陰陽めをわかれず。」

是非、覚えておきたい言葉ですね。

 

まとめ

「古、天地未だ剖れず、陰陽分れず。」

日本神話の最初の言葉は「古」。世界の始まりを「昔むかし~」で表現しています。

世界の始まりを、「昔むかし~」という曖昧とも言える形で表現する感性、世界観は日本独特のものです。

天と地の要素、陰と陽の要素があって、それらが混沌としている状態のときを指して、単に「古」と定義するだけで良しとしているところに、日本ならではの価値観・世界観が凝縮されていると言えます。

 

続きはコチラ!

『日本書紀』天地開闢まとめはコチラ!

『日本書紀』第一段

 

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
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