日本神話を読み解くにあたってのポイントを個別にまとめてお届けします。
今回は、「尊卑先後の序」。
コチラ、特に『日本書紀』の伝える日本神話を読み解くにあたって避けて通れない超重要テーマ。
この世界の創生当初から存在する原理的次序で、これが天→地→神という成りたちを導いた、というもの。
そんな内容をお届けします。是非チェックされてください。
- 日本神話研究の第一人者である榎本先生監修。確かな学術成果に基づく記事です
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
尊卑先後の序|日本神話を貫く超重要な原理原則!世界の創生当初から存在する原理的次序で、天→地→神という成りたちを導きます。荘子(外篇、天道第十三)
目次
尊卑先後の序とは?
「尊卑先後の序」とは、『荘子(外篇、天道第十三)』に伝える、「原理的順序」のこと。
ちょっとややこしいですが、
『荘子』は、紀元前の中国道教の思想家「荘子」さんの思想をまとめた書物の名前。
「荘子」さんは、紀元前300年前後に生きたお方で、「道教の始祖の一人」とされる偉ーい偉いお方です。
道教、、、
いつかどっかで教わった、、、社会の時間?
道教は、「中国の三大宗教」といわれる、儒教、仏教、道教、の一つ。で、荘子さんは、その始祖の一人とされてる訳で、超絶スゴイお方なんす。
で、
その思想は、哲学界隈では有名な「無為自然」という言葉に集約されます。
ものすごく簡単に言うと、自然のままに、あるがままに、、、
とにもかくにも俗世間を離れ、無為の世界に生きる、それこそが人間の自然であるといった感じの考え方で。
著書とされる『荘子』は、内篇7篇、外篇15篇、雑篇11篇もの構成。
全33篇ですよ、、、すごいボリュウミィ。どこが無為自然やねん、どんだけ語りたいねん、という感じですが。
それはさておき、
この『荘子』の中に、「尊卑先後の序」が登場。道教思想の根本理論。当時の最先端自然観、宇宙観といったところ。
以下、重要なところを抜粋。段落分けしてます。
人倫の関係から自然の運行の実例、そして、これらに先後や尊卑の順序があることを説いてます。
(一) 君先而臣従、父先而子従、兄先而弟従、長先而少従、男先而女従、夫先而婦従。
君主は先だち臣下は従い、父は先だち子は従い、兄は先だち弟は従い、年長者は先だち年少者は従い、男は先だち女は従い、夫は先だち妻は従うものである。
(二) 夫尊卑先後、天地之行也。故聖人取象焉。天尊地卑、神明之位也。春夏先、秋冬後、四時之序也。
このように、尊いものが先だち、卑しいものがあとに従うのは、天地の運行の法則にもとづくものである。だから 聖人もこの天地自然の法則にかたどって、人間社会の序列を定めたのである。天が尊く、地が卑しいのは、天地という霊妙なものにあらわれた自然の位階である。春夏が先だち、秋冬があとになるのは、四季にあらわれた順序である。万物の変化生成についてみても、植物の芽に曲直の形のちがいがあり、あるいはその生成の過程に盛衰の差別があるのは、すべて自然の変化の流れにもとづくものであり、自然の序列のあらわれである。
(三) 夫天地至神而有尊卑先後之序、而況人道乎。
このように、すぐれて霊妙な存在である天地にさえ、 尊卑先後の序がある、いわんや人倫の道においてをや。
出典:『荘子』(外篇、天道第十三)
内容を少し解説。
(一)は人倫の関係、(二)は自然の運行の実例を挙げ、これらに先後や尊卑の順序があることを説いてます。さらに、(三)で、天地至神でさえ尊卑先後の秩序があるんだから、まして人の道にはそれが当然、確固として存在することを説く流れ。
ま、現代の感覚からすると相当ぶっ飛びすぎですが、当時の、そして、道教という哲学世界での一つの考え方ということで置いといてください。ここでは、『荘子』ではそういう考え方を伝えてる、物事には順序があるんだね、というくらいで押さえていただければと思います。
ちなみに、こうした言説は、易を解説した権威ある文献『繋辞上伝』の冒頭に規定する「天尊地卑」に通じる考え方でもあって、当時の最先端自然観、それは宇宙論にも広がる壮大なスケールの理論体系なわけです。
日本神話を貫く「尊卑先後の序」
さて、
そんなこんなの「尊卑先後の序」。
古代日本人は、これを上手に使って、駆使して、神話の物語の中に理論体系として組み込んだ、というのをしっかりチェック。
そのまま使っても単なる真似でしかない訳で、日本独自に創意工夫。当サイトとして伝えたいのはまさにココで。私たち日本人にはそういうDNAというか、創意工夫の血というものがあるんじゃないかと思ったりします。
なんでこんなめんどくさい事を?分かりにくいことを?
だって、
『日本書紀』、日本の正史ですから、きちんとした理論体系を組み込んでおかないと説得力がないですよね。背景に「知ってるよ」というのがあるないでは、伝わり方、説得力、迫力が全然違うわけです。
こんなにすごい神話、歴史をもってるんだぜ日本、という自負を背負ってますから。
で、
まさにこの理論体系を、例えば、『日本書紀』神代紀の冒頭、第一段〔本伝〕に持ってくるわけです。最初にぶち込んでくるイメージ。
前半を締めくくる「天成而地後定」という言葉、これはまさに背景に「尊卑先後の序」という理論体系があるからこそ。同じく、第一段〔本伝〕後段の「乾道独化」も同様で。天の道は、その尊さゆえに、坤道、つまり地の道よりも先に、しかも単独で形を成す訳です。
『荘子』はじめ、当時の最先端宇宙論を知ってる人が読めば、「お、こいつ分かっとんやん♡」という反応になるわけで、見る目は変わりますよね。
リスペクトまではいかないまでも、少なくとも好印象ゲットの巻。
と、
「尊卑先後の序」は日本神話を貫く超重要理論のため、切り出してお届けしましたが、『日本書紀』は万事が万事、こんな調子なんです。
他にも歴史書、哲学書、法律、易といった膨大な知の体系をもって、そこに独自の創意工夫を入れながら日本の神話として物語を編んでいってます。
その事実を、その努力を、その創意工夫を、是非知っていただきたいと思います。
まとめ
「尊卑先後の序」
『日本書紀』の伝える日本神話を読み解くにあたって避けて通れない超重要テーマ。
この世界の創生当初から存在する原理的次序で、これが天→地→神という成りたちを導いた、というもの。
元ネタは、紀元前の思想家「荘子」さんの哲学をまとめた『荘子』。この外篇、天道第十三で、世界を天地を人倫をすべてに働いている「原理的順序」として登場します。道教思想の根本でもあります。
古代日本人は、これを上手に使って、駆使して、神話の物語の中に理論体系として組み込みました。
そのまま使っても単なる真似でしかない訳で、日本独自に創意工夫。ここを激しくチェックです。
知ってる人が読めば「お、こいつ分かっとんやん♡」という反応に。
『日本書紀』、日本の正史なんで、きちんとした理論体系を組み込んでおかないと説得力がない。背景に「知ってるよ」というのがあるないでは、伝わり方、説得力、迫力が全然違うわけです。
こんなにすごい神話、歴史をもってるんだぜ日本、という自負を背負ってるからこその創意工夫、是非チェックされてください。
『日本書紀』の読み解きシリーズです。コチラ、必ずチェックされてください↓
佛教大学名誉教授 日本神話協会理事長 榎本福寿
埼玉県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程国語学国文学(S53)。佛教大学助教授(S58)。中華人民共和国西安外国語学院(現西安外国語大学)文教専家(H1)。佛教大学教授(H6)。中華人民共和国北京大学高級訪問学者(H13)。東京大学大学院総合文化研究科私学研修員(H21)。主な書籍に『古代神話の文献学 神代を中心とした記紀の成りたち及び相関を読む』がある。『日本書紀』『古事記』を中心に上代文学における文献学的研究成果多数。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)
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日本神話編纂の現場!奈良にカマン!
紀元前300年に生きた荘子の説いた思想をもとに、日本書紀は書かれていないかと存じます。
もともと日本の紀元は(皇紀や神武紀元ともいわれる)、神武天皇が即位した年、紀元前660年でありました。
また、神武天皇を初代天皇として日本書紀が遺されておりますが、天照大神が70数代目にあたる我が国の君主であったように、大和民俗の歴史は古く縄文時代だけでも1万年以上あります。
ぜひ、古事記や日本書紀を書くために、稗田阿礼など携わった方々が何を参考にして我が国の歴史を書き残したのか。縄文時代の書物に一度目を通してください、荘子さんを超絶偉い方などと思わなくなるほど日本の先達の思想や大和言葉の素晴らしさに魂が震えることと存じます。
私も、さるたひこ様と同じく、アメノミナカヌシの分霊として今を生きる一人であり、歴史を紐解き、次代を生きる子どもたちに日本をもっと好きになって欲しいと願う一人であります。
志を忘れずに頑張りましょう!
さるたひこ様の御教えで、必ずこの国は良くなります!
≪…DNDというか、創意工夫…≫を、≪…神話の理論体系として組み込み…≫は、
「三種の神器」で数の言葉の自然数を創生できているコトに[気が付いた」。
この発展は、『幻のマスキングテープ』のDNA や 数の言葉の絵本。
絵本は、『もろはのつるぎ』がある。