高天原(たかあまのはら)とは? 天照大神が世界を統治する至高の場!天の原からさらに高みにある高天原を分かりやすく解説!

高天原

 

日本神話に登場する、重要ワード、重要エピソードをディープに掘り下げる「日本神話解説シリーズ」。

今回は、

高天原

です。

コレ、天にある広大な原っぱ「天原あまのはら」から、一段と高みにある非常に尊い原っぱのこと。

高い + てんの + 原 = 高天原たかあまのはら

「原」は、実は非常に尊い言葉で、古代、例えば「飛鳥浄御原宮」や「藤原宮」など、天子の住む宮都を建てられるくらい広大で肥沃な土地を言います。「原っぱ」とかって、バカにしちゃダメ。

「高天原」のポイントは、

世界を統治する最高神「天照大神」の君臨する場所として位置づけられている、って事。それだけ尊い。

ただ、、「高天原たかあまのはら」が実際どういう場所なのか?については、実は、『日本書紀』や『古事記』には具体的な記述はありません。、

何も伝えないまま、『古事記』では造化三神が「高天原」に成りまし、のちに、天照大御神あまてらすおおかみが統治することになる、といった感じ。『日本書紀』においても同じような伝承になってます。

なので、「高天原」について理解するには、様々な文献や用例と合わせてチェックする必要があります。

今回は、そんな不思議空間「高天原」について、『日本書紀』や『古事記』といった文献をもとに、どこよりも分かりやすく解説していきます。

 

高天原(たかあまのはら)とは? 天照大神が世界を統治する至高の場!天の原からさらに高みにある高天原を分かりやすく解説!

「高天原」とは? 『日本書紀』や『古事記』での初出伝承

まずは、「高天原」初登場の現場をチェック。どのように登場してるか?を確認することで、「高天原」の奥ゆかしい雰囲気をつかんでいただければと。

最初に『日本書紀』からお届け。なんせ、日本の歴史書、正史ですから。国の歴史書に「高天原」が登場するなんて、、なんて奥ゆかしい国なんだ!日本!

『日本書紀』巻一(神代上)第一段 一書4

ある書はこう伝えている。天地が初めて分かれ、初めに倶に生まれた(双生の)神がいた。名を国常立尊と言う。次に国狭槌尊。またこうも伝えている。高天原たかあまのはらに生まれた神の名は、天御中主尊あまのみなかぬしのみことと言う。次に高皇産霊尊たかみむすひのみこと。次に神皇産霊尊かむみむすひのみこと

一書曰、天地初判、始有倶生之神。号国常立尊。次国狭槌尊。又曰、高天原所生神名、曰天御中主尊。次高皇産霊尊。次神皇産霊尊。 (『日本書紀』巻一(神代上)第一段〔一書4〕より一部抜粋)

『日本書紀』第一段

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ということで、

ポイントは、

  • 『日本書紀』における初登場は、第一段〔一書4〕。第一段の〔本伝〕に対する4つめの〔異伝〕で。さらに、、後半「又曰はく」という異伝の中で「高天原たかあまのはら」が登場。つまり、異伝のなかの異伝として登場してる。
  • 異伝的には、開闢かいびゃくの初めには「高天原」があった模様。。
  • 実は、「又曰はく」の後は『古事記』と同じ内容。『古事記』的至高神である「造化三神」が誕生した非常に尊い場として位置づけられてる。

てことで。異伝異伝すみません、、

「高天原」は、実は、かなり本流じゃないところでひっそり初登場してる、ってこと。コレ、まずチェック。

しかも、オモロー!なのは

『日本書紀』巻一(神代上)第一段〔一書4〕の「又曰はく」以降が、『古事記』の冒頭表現と同じになってる。実は。なので、早速『古事記』のほうもチェックしてみましょう。

『古事記』上巻

天地初めておこりし時に、高天たかあま原にりませる神の名は、天之御中主あめのみなかぬし神。次に、高御産巣日たかみむすひ神。次に、神産巣日かみむすひ神。此の三柱みつはしらの神は、みな独神ひとりがみと成りまして、身を隠したまひき。

天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神。次高御產巢日神、次神產巢日神。此三柱神者、並獨神成坐而、隱身也。 (『古事記』上巻より一部抜粋)

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ということで、

同じですよね。

  • 『日本書紀』:またこうも伝えている。高天原たかあまのはらに生まれた神の名は、天御中主尊あまのみなかぬしのみことと言う。次に高皇産霊尊たかみむすひのみこと。次に神皇産霊尊かむみむすひのみこと
  • 『古事記』: 天地初めておこりし時に、高天原たかあまのはらりませる神の名は、天之御中主あめのみなかぬし神。次に、高御産巣日たかみむすひ神。次に、神産巣日かみむすひ神。

『古事記』の方は、異伝的位置づけではなく、本文の中で「高天原」を伝えてます。

実はコレ、記紀先後論争に発展するディープな箇所だったりします。。『日本書紀』が『古事記』をとりこんだのか、『日本書紀』をもとに『古事記』をつくったのか、、、話がそれるので詳細は別エントリで。

いずれにしても、ポイントは、

高天原とは、天地開闢の最初から存在し、非常に尊貴な神々が誕生した、めちゃくちゃ尊い場所である

てこと。コレ、しっかりチェック。

『日本書紀』、『古事記』いずれも、高天原の最初の登場は、尊い神が誕生した尊い場所なんだってことに集中・特化してる、とにかくそんな位置づけがされてれば良し!的な感じなんですね。

 

高天原の統治者:天照大神が統治する場所になった経緯

さて、そんなこんなで誕生した「高天原」ですが、次に登場するのは高天原の統治者を任命するシーン。

『日本書紀』では、高天原誕生からしばらくは、統治者不在の状態が続きます。第一段〔一書4〕の「又曰はく」以降に誕生した三神も、生まれた、と伝えるだけで、高天原の統治者ではありません。

『古事記』は特に分かりやすくて、「造化三神」である「天之御中主あめのみなかぬし神、高御産巣日たかみむすひ神、神産巣日かみむすひ」は、誕生してすぐに身を隠してしまう訳です。

身を隠す=不在になる? なので、なんなら高天原は誰もいない状態???

と、、そんなところへ、ある日、統治者任命の「勅命」が下されることになります。

それが、『日本書紀』第五段〔一書6〕。日本神話で有名な、黄泉往来譚よみおうらいたんを伝える巻です。

黄泉から還ってきた伊奘諾尊が、死のけがれを祓うために「檍原あはぎはら」でみそぎをします。そのみそぎのなかで誕生するのが天照大神、月読尊、素戔嗚尊。で、伊奘諾尊はこれら三貴神に、統治領域を任命する。

その現場がコチラ。

 そうして後に(伊奘諾尊いざなきのみことは)左の眼を洗った。これによって神を生んだ。名を天照大神あまてらすおおみかみと言う。また右の眼を洗った。これに因って神を生んだ。名を月読尊つくよみのみことと言う。また鼻を洗った。これに因って神を生んだ。名を素戔嗚尊すさのおのみことと言う。合わせて三柱の神である。

 こういう次第で、伊奘諾尊は三柱の御子に命じて「天照大神は、高天原たかあまのはらを治めなさい。月読尊は、青海原の潮が幾重にも重なっているところを治めなさい。素戔嗚尊は天下あまのしたを治めなさい。」と言った。

 然後 洗左眼 因以生神 號曰天照大神 復洗右眼 因以生神 號曰月讀尊 復洗鼻 因以生神 號曰素戔嗚尊 凡三神矣 已而伊奘諾尊 勅任三子曰 天照大神者 可以治高天原也 月讀尊者 可以治滄海原潮 之八百重也 素戔嗚尊者 可以治天下也  (『日本書紀』巻第一(神代上)第五段 一書6より一部抜粋)

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ということで、

ポイントは、

伊奘諾尊は「勅任」によって命じてる

てことで、、「勅任」とは律令用語。つまり、古代の法律用語。天子だけが発する事のできる絶対服従命令。

『日本書紀』では、第一段〔一書4〕で登場してから第五段〔一書6〕まで、「高天原」については一切伝えておりません。その間、神代七代が誕生し、伊奘諾尊・伊奘冉尊の国生み、神生み、万物生みがありと、、、数々の神イベントが発生。で、いよいよ、天や地の統治者を誰にするか、というシーンになって再登場してる次第。

ちなみに、『古事記』も同様の伝承になってます。該当箇所が以下。

 伊耶那伎命いざなきのみことは、いた歓喜よろこんで「は子を生み生みて、生みのはてに三柱の貴い子を得た。」と仰せになって、即ち、御頚珠みくびたまの玉のがゆれ動き珠がふれあってさやかな音をたてるばかりに手に取って揺らせて天照大御神に授けて、詔して「汝命いましみことは、高天原たかまのはらを支配しなさい。」とご委任なされた。 (『古事記』上巻より一部抜粋)

ということで、

『古事記』でも同様に、伊耶那岐命が「詔勅」により高天原支配を命じてます。

いずれも、禊祓により誕生した天照大神(天照大御神)に対して、伊奘諾尊(伊耶那岐命)が「勅任・詔勅」により統治を命じてる、ってことで。

特に重要なのは、勅任・詔勅。コレ、天子だけが発することのできる絶対命令な訳で、つまり、高天原任命には自ずと「統治」という概念が組み込まれてる、ってことで。もっというと、任命された天照大神は世界を統治する役割が与えられてる、その根拠になってる、ってこと。コレ、超重要事項であります。

この時点で、高天原とは統治者(天子のイメージ)のおわす場所となり、それゆえに非常に尊い場所であるということになる訳です。そうなると、俄然、初登場のふわっとした感じも分かるような気がしてくる。。?? 尊い場所というのはよく分からなくていいんです。描けば描くほど、記述すればするほど、現実味が出てきて尊貴さが目減りする感じに。。。ゆえに、ひっそりと誕生し、その代わり、そこで誕生する神々の尊貴さをもって高天原の尊さを担保してる、とも言える訳ですね。

まとめます。

『日本書紀』『古事記』いずれも、伊奘諾尊(伊耶那岐命)が、「勅任・詔勅」によって、天照大神を高天原の統治者として任命してる。勅任・詔勅の発動により、その後の天照大神統治の根拠としている。コレ、しっかりチェック。

高天原

高天原と地上世界(葦原中国)との関係

  • 「高天原」誕生経緯
  • 「高天原」統治者誕生経緯

が確認できたところで、3めのポイント。

「高天原」が地上世界である「葦原中国」とどういう関係にあるのか?をチェック。

結論から言うと、

「高天原」と「葦原中国」とは一体的につながってる。

まずは『日本書紀』から。

天照大神と素戔嗚尊の誓約儀式により、素戔嗚尊は自分が潔白であるという結果が出たことで勝ちさび状態へ。高天原で天照大神が営んでいた田んぼを破壊したり、新嘗を行う社殿に糞をまきちらしたり、斎服殿いみはたどのに馬投げ込んだり、、、無双モード突入。ここから有名な天石窟あまのいはや神話につながっていきます。以下。

この時、天照大神は驚愕して、織り機ので身を傷つけてしまった。これによって激怒し、そこで天石窟あまのいはやに入り、磐戸いはとを閉じて籠もってしまった。それゆえ、この世界中が常闇とこやみ(はてしなく続く闇)となり、昼と夜の交代も分からなくなってしまった。 ~中略~ この時、天照大神はこれを聞いて「私がこのごろ石窟いはやを閉じて籠もっている以上、豊葦原中国とよあしはらのなかつくには必ず長く続く夜であるのに、どうして天鈿女命はこのように大笑いして楽しんでいるのだろうか。」 (『日本書紀』巻一(神代上)第七段〔本伝〕より一部抜粋)

ということで。

ポイント2つ。

  • 天石窟あまのいはやに入り、磐戸いはとを閉じて籠もってしまった。それゆえ、この世界中が常闇とこやみとなり、昼と夜の交代も分からなくなってしまった」とあるように、高天原にいた天照大神が天石窟あまのいはやに籠ると世界が真っ暗になってしまった。つまり、高天原と地上(葦原中国)はつながっている。
  • 「私がこのごろ石窟いはやを閉じて籠もっている以上、豊葦原中国とよあしはらのなかつくには必ず長く続く夜であるのに、」とあるように、天照大神も自分が籠れば地上(葦原中国)は真っ暗になることが分かっている。

てことで。ま、ツッコミどころはいろいろありますが、、ココから言えるのは、

「高天原」と「葦原中国」とは一体的につながっている

ということ。そして、だからこそ、

天照大神の統治が「高天原」のみならず世界の隅々に及んでいる

というロジックになる。コレ、激しく重要重要。

伊奘諾尊の勅任段階では、単に、命令で統治者としただけなんですが、続く天石窟あまのいはや神話によって、実際に、統治者がいなくなることで世界が暗闇になる、つまり、高天原統治者の行動が世界に影響を及ぼすことを伝えてる訳ですね。これにより、高天原と世界はつながっている、天照大神の統治が世界に及んでいるてことになる訳です。

尚、『古事記』も同様の神話を伝えてます。

ゆえに、ここに天照大御神見畏みかしこみ(恐れ)て、天の石屋戸いはやとを開いてその中にお籠りした。ここ高天原たかまのはらは皆暗く、葦原中国あしはらのなかつくにことごとく闇に包まれた。これに因り常夜とこよが続いた。そうしてよろづの神の苦しむおとなひ狹蝿さばへのようにうるさく満ち、万のわざはひがことごとくおこった。 (『古事記』上巻より一部抜粋)

同じく、「須佐之男命すさのおのみこと」の乱暴な行為によって、天照大御神が「天の石屋いわや」に隠れてしまうと、「高天の原みな暗く、葦原中国あしはらのなつくにことごとくくらし」と伝えますね。

まとめます。

『日本書紀』『古事記』いずれも、天石窟あまのいはや(天石屋いわや)神話を通じて、統治者がいなくなることで世界が暗闇になる、つまり、統治者の行動が世界に影響を及ぼすことを伝えてる。これにより、高天原と世界はつながっている、天照大神の統治が世界に及んでいる、てことになる。

天岩戸神社

▲奈良県橿原市の天香久山の南にある天岩戸神社

 

「高天原」の世界観 宮があり田んぼがあり養蚕所もある

  • 「高天原」誕生経緯
  • 「高天原」統治者誕生経緯
  • 「高天原」と地上(葦原中国)の関係

が確認できたところで、4めのポイント。

「高天原」って、実際どんな感じなの?どんなところなの?を解説。

結論から言うと、

高天原は、天照大神が都を造営して世界を統治するに相応ふさわしい場所。そのために、相応しいものが用意されている。

代表的なところでは、

  1. 田んぼ
  2. 養蚕所・機織り殿

の3つ。コレ、神話世界では、「統治用3点セット」というべき、絶対に外しちゃいけない重要事項。

まずは神話をチェック。先ほどの素戔嗚尊の勝ちさびモードから。

天照大神は天狭田あまのさだ長田ながた御田みたとしていたが、その時、素戔嗚尊が春にはその御田のすでに種子を播いた上にさらに種子を播き、「重播種子」は、ここでは「璽枳磨枳しきまき」と云う。しかもまたそのあぜを壊しなどする。秋には、天斑駒あまのふちこまを放ち、稲の実る田の中に伏せさせ、また天照大神が新嘗にひなへ(新穀を神に供えかつ食する祭祀)をする時を見計らっては、新造した宮(新嘗を行う殿舎)にこっそりくそを放ちかける。また天照大神がまさに神衣かむみそを織って斎服殿いみはたどの(機を織る神聖な殿舎)に居るのを看ると、天斑駒の皮をぎ、その殿おほとのいらか穿うがって投げ込んだ。 (『日本書紀』巻一(神代上)第七段〔本伝〕より一部抜粋)

ということで。

確かに、

  • 御田みた天狭田あまのさだ長田ながた
  • 新嘗にひなへ用の宮
  • 斎服殿いみはたどの

の3つがあることが分かります。

ココから、以下2点。

  1. 天照大神も、田んぼを営み、養蚕を業として行っていた
  2. 地上を統治する天皇が「宮」や「宮殿」を居所とするように、天照大神にもそれに相当する居所があることが想定されている

ということで、まずは、田んぼと養蚕について。

①天照大神も、田んぼを営み、養蚕を業として行っていた

先ほどの素戔嗚尊の勝ちさびモードの他にも、こんな伝承もあります、てことで、『日本書紀』第五段からお届け。五穀誕生経緯を伝える神話です。

(天照大神は)稲は水田の種とした。またそこで農耕の民の長を定めた。その稲を、民に先んじ自ら耕し、天狭田あまのさなだ長田ながたに植えた。すると秋には垂れた稲穂は、握り拳八つほどの大きさにたわむほどの豊作であり、たいへん喜ばしいものであった。また、蚕は口の中に繭を含み、糸を引くことができた。これにより、民に先んじて自ら桑の葉を採り蚕に与えた。養蚕の道が拓けたのである。

天熊人悉取持去而奉進之。于時天照大神喜之曰。是物者則顕見蒼生可食而活之也。乃以粟・稗・麦・豆為陸田種子。以稲為水田種子。又因定天邑君。即以其稲種、始殖于天狭田及長田。其秋垂穎八握莫莫然。甚快也。又口裏含繭。便得抽糸。自此始有養蚕之道焉。 (『日本書紀』巻一(神代上)第五段〔一書11〕より一部抜粋)

『日本書紀』第五段一書11

『日本書紀』巻第一(神代上)第五段〔一書11〕 天照大神の天上統治と農業開始

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ということで。

高天原では、稲作と養蚕が行われてることが分かります。もう、この時点で地上世界の天皇とバシバシ重なってくる訳です。一応、日本神話的には、天照大神が高天原で行っているから、その系統を継ぐ天皇も地上で同じことをやってる、というてい(体裁)。

皇居に水田が?!その場所は?天皇が自ら稲を育てる「親耕」を、日本神話から紐解いてみる

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このあたりになると神話の時代から継承されてる、、という気の遠くなるような奥ゆかしい世界になってきます。。すべては高天原から始まった。。。

次!

②地上を支配する天皇が「宮」や「宮殿」を居所とするように、天照大神にもそれに相当する居所があることが想定されている

補足として解説。まず、改めて、大前提として、

天皇と天照大神は、統治領域のイメージとして、葦原中国と高天原で重ねられていた

この点をチェック。

天皇が地上世界(葦原中国)の統治を、天照大神が高天原で世界の統治を、それぞれ同じような形で行っていた、ってこと。

天皇は、宮に住んでいるわけで、当然、天照大神も宮を居所としてる、という話。コレ、拠り所としては「唐律」があります。「十悪」の「謀大逆」の疏議に説く次の一節がそれ。

宮は、天に紫微宮があり、人君はこれに則る。居住するところは、ゆえに宮という。 (原文:宮者、天有 紫微宮 、人君則之。所居之処、故曰宮。) 「十悪」「謀大逆」の疏議より

人君の「宮」を、天の「紫微宮しびきゅう」にのっとるものとしてます

紫微宮しびきゅう」は「紫宮」ともいい、星座の名。なおかつ、そこを天帝や天子の居所とみなす考え・思想がありました。

「紫宮垣十五星、其西蕃七、東蕃八、在 北斗北 。一曰 紫微 。大帝之座也。天子之常居也。」(『晋書』「天文志上」)

と。

紫微宮=天帝や天子の居所

天にまず紫微宮があり、それに人君の宮が則る。この関係は、天上を支配する天照大神と、地上を支配する天皇との居所をめぐる関係にそのまま当てはまるわけですね。

天照大神、結構スゴい宮殿に住んでいたと思われます。高天原にそびえたつ統治者のための宮殿、非常にきらびやかな宮だったのでしょう。

まとめます。

高天原は、天照大神が都を造営して世界を統治するに相応ふさわしい場所。そのために、御田みた天狭田あまのさだ長田ながた)、新嘗にひなへ用の宮、斎服殿などがあった。さらに、天照大神用に、高天原にそびえたつ統治者のための宮殿、非常にきらびやかな宮もあったに違ない。

これ、どこまでも広がる神話ロマン。

 

「高天原」の元ネタ「天原」

最後に、「高天原」の元ネタとなる言葉について補足解説。

元ネタ、それは、、

天原あまのはら

古代、「天原あまのはら」という言葉は、「天空の広大な広がり」を表す言葉として使われていました。

つまり、「天原」がまずあって、そこよりさらに高いところ、尊い場所、といったニュアンスを加えたのが「高天原」って事です。

日本神話伝承をもとに再現すると、こんな感じになっていたと想定されます。

高天原の位置

●参考:→天之瓊矛/天沼矛|矛で嶋を成す?国生みで二神が使用した特殊な矛「天之瓊矛/天沼矛」を徹底解説!

●参考:→天浮橋とは? 天にあって下界全体が見渡せる橋

ということで、

まずは「天原あまのはら」の用例をチェックしてみましょう。古代人の世界観を是非。

『万葉集』にいくつか例あり。以下。

天の原 降りけ見れば 天の川 霧立ちわたる 君は来ぬらし (天原  振放見者  天漢  霧立渡  公者来良志 (2068番))

 

天の原 雲なき よひにぬばたまの 宵度よわたる月の 入らまく惜しも (天原  雲無夕尓  烏玉乃  宵度月乃  入巻ね毛(1712番))

 

天の原 富士の柴山 この暗の 時ゆつりなば 逢はずかもあらむ (安麻乃波良 不自能之婆夜麻 己能久礼能 等伎由都利奈波 阿波受可母安良牟(3355番))

ということで。

天原あまのはら」、けっこう浸透してた言葉だったようで。

ちなみに、古代では、

  • 「原」は「広く平らなところ」
  • 「野」は「山裾のゆるい傾斜地」

をそれぞれ指していました。

なので、「天野」といった例は無く、天原あまのはら」が天空の広大な広がりを表す言葉として使われていたわけです。

尚、

「地上」の「原(はら)」には川が流れ、こうしたところにしばしば都を造営しています。

『万葉集』には、久迩(京都府相楽郡加茂町から木津町山城町にまたがる地域)の新京を讃めた長歌あり。

(前略) あなあはれ 布当ふたぎ、 いと貴大宮たふとおほみやところ、 うべしこそ我が大君は、 君ながら 聞かしたまひて、 さす竹の大宮 ここと定めけらしも(1050番)

広大な原に木津川が流れる場所、まさに都造営にふさわしい場所だったのでしょう。尚、この「久迩京」は、天平16年2月、難波遷都に伴い、未完成のまま荒墟こうきょと化します、。。

要は、

都造営にふさわしい広大な「原(はら)」を、天空に想定したのが「天原」という訳で、その広がりやイメージをつかむことが重要

そこに「高」をつけているので、「高い」「天原」。つまり、

「天原」という広大な天空の広がりをもとに、それより一段と高い領域として設定してる。それが「高天原」なんですね。

そしてそこは、まさに、

世界を統治する至尊神が都を造営して統治するに相応しい場所。このイメージをしっかりチェック。

ちなみに、「高天原」には「安の河」も流れていますし、八百万神やほろよづかみが集い神事も行います。いわば、古代人の理想的な世界像をぎゅっと凝縮した場、それが「高天原」。とも言えますね。

 

高天原伝承地

そんな高天原ですが、なんと私たちが暮らすこの地上に、伝承地があるんです!そんなバカな!?

場所は、我らの奈良。日本神話編纂の地。日本発祥の地であります。以下、2か所ご紹介!

● 高天原史跡

〒639-2336 奈良県御所市高天350

 

● 高天原(阿紀神社旧社地)

〒633-2165 奈良県宇陀市大宇陀中庄143

 

是非、現地へ!そこではみんなが天照大神になれるってよ、、、??

 

まとめ

「高天の原」

  • 「高天原」誕生経緯
  • 「高天原」統治者誕生経緯
  • 「高天原」と地上世界との関係
  • 「高天原」ってどんなところ?

を中心にお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

「高天原」と「葦原中国」とは一体的につながっていて、それゆえに、天照大御神の統治が高天の原のみならず世界の隅々に及んでいるという話。

実際の場所的なところは、「天原の、さらに高い場所・領域」といったイメージで。

「天原」という広大な天空の広がりをもとに、それより一段と高い領域として位置づけてますし、そこには、都(=世界の主者が住む場所)を造営して統治するに相応しい場所である、といった意味も込められてるんですね。

 

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他