日本の正史である『日本書紀』をもとに、日本神話が伝えるメッセージを読み解きます。
第4回目は「天地開闢」の続き。
『日本書紀』第一段〔本伝〕の内容を、複数回に分けてお届けしてます。
葦の芽ような形のモノが神に化為る(なる)。コレ、国常立尊と申す
前回の続き。
天地の中に 一物 生れり。状 葦牙 の如く、便ち 神に 化為る。国常立尊 と号す。
天地之中生一物。状如葦牙。便化為神。号国常立尊。 (『日本書紀』巻一(神代紀)第一段〔本伝〕より一部抜粋)
・化為る・・・あるものが変じて他のものになる。
・葦・・・イネ科の多年草。日本を「豊葦原国(とよあしはら)」とも表現。平安時代ごろまでは「あし」と読んでいたが、「あし=悪し」を連想させる事から「ヨシ」と呼ばれるようになる。
訳出:
天地の中に一つの物が生まれた。それは萌え出づる葦の芽のような形だった。そして、変化して神と成った。この神を「国常立尊」と言う。
いかがでしょうか?
最初の神「国常立尊」が誕生する様子。
ポイントは、「タイミング」「場所」「方法」の3つです。
「神」は
- 天地が生まれた後に(タイミング)
- 天地の間で(場所)
- 葦の芽のような形から変化して誕生した(方法)
という事。
①タイミング
本シリーズ③でも触れましたが、まず天地ができてから神が誕生する順番です。欧米系の「最初に神ありき」とは順番が逆。絶対神が世界を創生するということではなく、世界の誕生のなかで神も生まれる。神さえも世界や自然の一部といった考え方です。
②場所
天地の中、つまり間に神が誕生します。中空に浮いている状態イメージ。
③方法
神は、まず一つの「物」として、「葦の芽の形」をして生まれるのです。それが神に化す。化為る。これを「化成」と言います。化けて成るイメージ。
注目は、この「化成」という考え方です。
「化す」というのは「運動」です。つまり、神は完全な状態から生まれる訳ではなく、不完全な状態から生まれ「変化して」神になっていくという事。
「神様」というと、最初から最後まで「全知全能」や「完璧な存在」といったイメージがありますが、日本神話が伝える「神様」はそうではありません。最初は不完全な状態から生まれますし、西欧的な「全知全能」といった完璧さは持ち合わせていません。
自然から誕生する神のイメージ。
だからこそ、完璧ではない神。それは完璧ではない自然、刻々と変化していく自然の現れなのだと思います。
「神に化為る」
この言葉、古代日本の人々が描いていた世界観や価値観と合わせて是非チェックです。
葦の芽ような形のモノが神に化為る(なる)。コレ、国常立尊と申す まとめ
神に化為る
天地ができてから神が誕生する順番。天地の中、つまり「間」に神が誕生します。
神は、まず一つの「物(もの)」として、「葦の芽の形」をして生まれ、神へと化成します。
不完全な状態から「神」へと変化するところに、日本神話独特の世界観が表れています。
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