日本の正史である『日本書紀』をもとに、
日本神話が伝えるメッセージを読み解きます。
第3回目は「天地開闢」の続き。『日本書紀』第一段の内容を、複数回に分けてお届けしています。
日本神話的には、天と地ができた後に神が生まれる件
の続きです。
その清陽なるものは、薄靡きて天になり、重濁なるものは、淹滞りて地になるに至りて、精妙の合搏すること易く、重濁の凝竭すること難し。故、天先づ成りて地後に定まる。然して後に、神聖其の中に生れり。
・「薄靡」は薄くたなびくの意。
・「淹滞」は「凝滞」と同じ、停滞する意。
・「精妙」は、清く澄んだ気の意。
・「合搏」は「合専」と同義。「搏」は一か所に集まるの意。
・「凝竭」は「凝固」「凝結」の意。「竭」は「尽きる」の意。
訳出:
その中の、『清く明るいもの』が薄くたなびいて『天』となり、『重く濁ったもの』がよどみ滞って地となるに及んでは、その妙なるものは集まりやすく、重く濁ったものは凝り固まりにくい。これは原理に則った現象であり、だから、まず『天』ができあがり、その後で『地』が定まったのである。そうして『天』と『地』が成り立った後に、その天地の中に『神』が生まれた。
いかがでしょうか?
少し難しくなってきましたが、以下、簡単に説明します。
一言で言うと、
「天と地ができあがってから、その間に神が生まれた」
という事です。
「天と地ができあがった」のは、
- 混沌の中で兆しを含んでいたが、
- やがて清く明るいものが薄くたなびいて天となり、
- 重く濁ったものがよどみ滞って地となった、から
また、その理由を
「妙なるものは集まりやすく、重く濁ったものは凝り固まりにくい」から。
と説明しているのです。
とても合理的に組み立てられていると思いませんか?
注目は、その「順番」です。
例えば、本シリーズ①で触れた「聖書」とは真逆です。
「聖書」では、まず「神」があって、その後、神が天地を創造する順番。
「日本神話」では、まず「混沌」があって、天地ができて、その後、神が生まれる順番。
「神」が先ではなく、「天地(自然)」が先。
自然があってこそ神が生まれる、宿る、ということですね。「八百万の神々」にもつながります。
このように、人知では計り知れない「自然」や「世界」についての認識や考え方、捉え方が、特に西洋とは全く逆である事、ここにも日本人独特の世界観や価値観が表れていると言えます。
- はじまりの起点を示すところは曖昧に、
- でも、その後の天地生成と神の過程は理由をもって合理的に組み立てられている。
是非覚えておきたいポイントです。
「天先づ成りて地後に定まる。然して後に、神聖其の中に生れり。」
この言葉、天地開闢の順番は是非チェックしておきましょう。
まとめ
天先づ成りて地後に定まる。然して後に、神聖其の中に生れり。
- もとはといえば、「混沌」があって、でもその中に「兆すもの」があったからこそ天地生成へつながります。
- 「兆し」の中から、「清なるもの」が天へ、「重く濁ったもの」が地へ展開し天地ができました。
- 天地ができて、そのあと、天地の間に神が生まれた、という順番に日本人ならではの世界観・価値観が投影されています。
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