天の道は単独で変化する。だから純粋な男神となった件|日本神話が伝える天地開闢 No.5

葦の芽

 

日本の正史である『日本書紀』をもとに、日本神話が伝えるメッセージを読み解きます。

第5回目は「天地開闢てんちかいびゃく」の続き。

『日本書紀』第一段の内容を、複数回に分けてお届けしています。今回で第一段の本伝は終了です。

 

天の道は単独で変化する。だから純粋な男神となった件

葦の芽

葦のような形のものが神に化為る(なる)。コレ、国常立尊と申す件|日本神話が伝える天地開闢 No.4

01/05/2016

の続きです。

引用:

国常立尊くにのとこたちのみことと号す。次に国狭槌尊くにのさつちのみこと。次に豊斟渟尊とよくむぬのみこと。凡て三神みつはしらのかみなり。乾道けんどう ひとす。ゆえに此の純男ひたをす。

号国常立尊。次国狭槌尊。次豊斟渟尊。凡三神矣。乾道独化。所以、成此純男。

読み
国常立尊(くにのとこたちのみこと)・・・国土がずっと存立する表象(一説)
国狭槌尊(くにのさつちのみこと)・・・国の初期の土、つまり若々しい土地の表象(一説)
豊斟渟尊(とよくむぬのみこと)・・・豊かに汲む水のある沼の表象(一説)
三神(みつはしらのかみ)・・・神様を数える時は「はしら・柱」という量詞を使う。
乾道(けんどう)・・・天の道、陽の道の意。陰陽の結合によらず、陽の道のみで男神が生まれたことを言う。

訳出:

(最初に生まれた神を)国常立尊くにのとこたちのみことと言う。次に国狭槌尊くにのさつちのみこと。さらに豊斟渟尊とよくむぬのみこと。あわせて三柱みつはしらのかみの神。天の道は、単独で変化する。なのでこの「純男ひたを」、つまり「男女のつい」ではない「純粋な男神だんしん」となった。

 

いかがでしょうか?

 

ポイントは2つ。

  1. 「3神」の誕生、つまり「3」という数字は聖数である事
  2. 「純男」、つまり「純粋な男性神」は「尊卑先後の序」という原理原則に基づいて誕生したという事

以下詳細を見ていきます。

 

①「3」という聖数観念

「3」という数字は中国古代の「聖数観念」によるものです。奇数は「陽数」であり、偶数は「陰数」。誕生する神は「3神でなければならない理由」があったという訳です。

 

②「尊卑先後の序」という原理原則

女性の皆さんはあくまで参考と言うか、古代の考え方としてご理解いただければと思います。決して「野郎最高!」という意味ではありませんので。

ココで大事なのは「優先順位の考え方」であり、「原理原則に基づいて物語が構成されている」という事を記載したいだけです。誤解なきようにお願いします。

さて、

本件、なぜ、わざわざ「最初に生まれた神様が純粋な男だ」という事をいう必要があるのか?という事です。

まずは背景から。

天地開闢シリーズを読み解いていただけると分かりますが、日本神話の冒頭部分は「やけに説明くさい」ですよね。

「清なるものは集まりやすくて、濁ったものは凝り固まりにくい。だから最初に天ができてその後で地が定まった」とか、別に言わなくてもと思う箇所です。そして今説明している部分も。わざわざ「こうだから、こう」と理由を説明しています。

これは、明らかに「伝えたい事」があるからだと考えられます。

「伝えたい事」とは、天地開闢、世界創生、神々の誕生には「原理原則がある」という事です。

この「原理原則」の事を尊卑先後の序そんぴせんご の じょといいます。

一言で言うと「優先順位があるよ」「序列・順番・秩序があるよ」と。

尊貴なるものは卑なるものよりも優れている、という考え方であり、日本神話を読み解く上で大前提となるものです。

 

先ほどの、天地創生の順番もそうです。

  • まず天が先、地が後。

そしてここも。

  • まず純粋な男性神誕生が先、男女対の神は後。

という訳です。

男女対の神様とは、以後にでてくる神様たちの事で、有名なのは「伊奘諾尊いざなきのみこと(♂)・伊奘冉尊いざなみのみこと(♀)」ですね。

 

「物事には優先順位がある」。

「物事には原理原則がある」。

私たちに引き寄せて考えると、そういう事になるかと思います。

※くれぐれも、男が優先されるべき、という話ではありません。あくまで世界を構成する原理の話です。

 

以上のような背景があるからこそ、ここでは

「天の道は、単独で変化する。なのでこの「純男」、つまり「男女のつい」ではない純粋な男神となった。」

という説明臭い個所があるという訳です。

 

乾道けんどう」とは「天の道、陽の道」の事。陰陽の「陽」の意味。

どうやら、この「乾道」というのは単独で変化するようです。「陽」は単独で変化するから「男」になったと。

つまり、「純粋な男性神が最初に誕生した」ことを伝えるために、持ちだしてきた考え方ということですね。

 

以上をまとめると、

最初に生まれた「3神」は「純粋な男性神」であり、それは「尊卑先後の序」という原理原則に基づいて誕生した事を伝えている。

という読み解きになります。

 

意外にも、日本神話はロジック系です。

天地開闢、天地創生、神々の誕生を、原理原則に基づく合理的な理由をもって説明しているのです。

本シリーズ①でお伝えしましたが、最初の入口は曖昧に。でも、その後の物語展開は非常にロジカルであり説明臭い。非常におもしろい構成となっています。

 

乾道けんどう ひとす」

原理原則があるという意味で、是非チェックしておきたい言葉です。

 

まとめ

天の道は単独で変化する。

日本神話は「尊卑先後の序」という原理原則に基づいて構成されている。それは、優先順位の考え方そのもの。

「3神」の誕生、つまり「3」という数字は聖数である事、最初の神様は「純粋な男性神」である事も原理原則に基づいているという事を伝えています。

 

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    参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他