「丹生川上神社(上社)」は奈良県吉野郡川上村にある神社。
こちら、丹生川上神社の3社あるうちの1社で、水神を祭る由緒ただしき神社であります。
古代、天井には井戸があり、その井戸から湧き出る水が「雨」として地上に降り注ぐという伝承があり。その「水=雨」を祭り「祈雨・止雨」の神社として朝廷の篤い崇敬を集めてきた超重要パワースポットです。
場所は、大滝ダムを眼下に見下ろす山の上。ここからの眺望はただただ素晴らしいの一言。水の浄化イメージと相まって、とても清々しい気持ちになれます。
今回は、奈良時代から祈雨・止雨の神社として朝廷から篤い信仰を集めていた水神社「丹生川上神社(上社)」をご紹介します。
丹生川上神社(上社)|水神「高龗大神」を祭る天空の社!大滝ダムを眼下に見はるかす絶景が大変素晴らしい神社
目次
水にまつわる信仰の背景
古代、天から降り落ちる水には神聖な力が宿るとされていました。
丹生川上神社は、水神の宗社、つまり水に関わる神社の総本山として、古代より「水」を祭り「祈雨・止雨」を司る神社として朝廷の篤い崇敬を集めてきました。
- 「祈雨」とは、日照り続きのときの雨乞い(あまごい)のこと。
- 「止雨」とは、雨乞いの逆。長雨のときに、雨が止むようにお祈りすること。
五穀豊穣と直結する水、そして雨。
丹生川上神社は、その「出」と「止」のコントロールをお祭りしていたわけで、めちゃんこ重要な位置づけという訳です。
なお、祈雨には黒馬を、止雨には白馬(又は赤馬)を朝廷が献上していました。
- 雨乞いに黒馬というのは、黒=雨雲、というところから。
- 逆に、長雨が止むように白馬というのは、白雲≒青空、から。
当社の理解にはまず、こうした古代の水にまつわる信仰があったことを是非チェックされてください。
丹生川上神社(上社)の場所
奈良県吉野郡川上村の大字迫。
例えば、奈良県の橿原からだと、県道37号線、または国道169号線経由で向かいます。
途中、「河原屋」の交差点で37号も169号も合流し、伊勢街道である国道169号線を通ってアプローチする形。
▲国道169号線のビュー。ほんと、山の中です。。。一本道なのでどんどん進みましょう。
▲大滝郵便局のところ、大きくカーブを曲がったところのビュー。左手は吉野川。奥にあるのが大滝ダムです。神秘的な深山の風。
▲吉野川の上流にあたるので巨岩がゴロゴロしております。激しい流れです。
▲さらに進むと、、、大滝ダムが近づいてきました! 巨大なダムです!迫力は写真の2~3倍増しで。
▲トンネルを抜けてしばらく進むと、川上村役場があり、その先の交差点を左折するのビュー。「丹生川上神社(上社)」へは、ここからぐっと急な坂道を登っていきます。
登る登る、、、
っと、やっと見えてきました! 天空の社、「丹生川上神社(上社)」であります!!!!!
▲目の前に山。同じ高さに山! 丹生川上神社(上社)がどんだけ高いところにあるかお分かりいただけるかと思います。
▲堂々たる石鳥居。ご祭神である「高龗大神」が掲げられています。
山にへばりつくように建っています。たくさんの石段を登った先に、「丹生川上神社(上社)」本殿が御鎮座。
丹生川上神社(上社)の創建経緯
「丹生川上神社」は、とても独特な歴史を持ちます。
簡単に言うと「失われた神社」であり、「ホンモノはどこだ?論争」が起こった経緯を持ちます。
文献には古代、朝廷より祈雨・止雨の社として絶大な信仰をあつめていた「丹生川上神社」が記載されているのですが、長い歴史の中で、ホントの場所が分からなくなり、「自分の所がホンモノです!」と主張する3社が登場。論争の末、丹生川上神社(上社、中社、下社)の3社体制となり、都合、中社が「丹生川上神社」を代表する形に落ち着いております。
本エントリは、その中で、上社をご紹介しているという次第。
以下、古代文献をさかのぼり、その特異な歴史を時系列でたどってみます。
奈良時代を通じて、黒毛馬の奉納が10度、白馬の奉納が3度に及ぶほど、丹生川上神社に対する篤い信仰がありました。
763年(天平宝字7年)、淳仁天皇の条で歴史上はじめて「丹生川上」が登場します。
「幣帛を四畿内の群神に奉らしむ。其の丹生河上の神には黒毛の馬を加ふ。旱すればなり」『続日本紀』
旱(日照り)が続いたので、幣帛を近畿内の神々に奉ったと。中でも「丹生河上の神」には黒毛の馬を加えたと記録されてます。
これが歴史上の初見。これ以降、旱には黒馬を、霖雨には白馬を奉ることが慣例となります。
平安時代には、『延喜式』の神名列記では「丹生川上神社、名神大」として位置づけ。つまり格付け上位の名神の中でも最高ランク。
奈良・平安の各時代にわたり、祈雨・止雨の雨師の神として朝廷の篤い信仰・尊崇を受け、名神大社に列格されるなど、極めて重要な位置を占めてきた歴史を持つんですね。
ところが、中世以降は、衰微の一途をたどり、ついにはその所在すら不明となるに至ります。
このあたりから本物はどこだ論争が始まってくる次第。
・近世には、『延喜式』式内社の所在に光。名神大社の丹生川上神社に現在の「下社」を比定。
・明治に入ると、下社から現在の「上社」に改められます。
・ですが、大正4年(1915年)に森口奈良吉が『丹生川上神社考』を著し、当時の「蟻通神社」を「丹生川上神社」と結論付けたことにより、この学説を裏付ける調査結果も得たことを受け、大正11年(1922年)社名を「蟻通神社」から「丹生川上神社(中社)」に改名。「下社」「上社」に対して「中社」としたうえで、3社合わせて「官幣大社 丹生川上神社」と改称されます。
・戦後、昭和27年(1952年)官制廃止により、3社はそれぞれの社名をもって独立、現在に至ります。
そのうえで、上社に関しては、
当社境内地は、昭和三十四年の伊勢湾台風による大滝ダム建設に伴い水没のやむなきこととなり、天下万民の幸福のため、現在地に平成十年三月にご遷座しました。(神社説明文より
とのことで、平成10年に現在の地に遷座された次第。
と、
まとめると、
- 奈良・平安にわたり、祈雨・止雨の神として朝廷の篤い信仰・尊崇を受け、名神大社に列格されるなど、極めて重要な位置づけだった事。
- ところが、中世以降は、衰微の一途をたどり、ついにはその所在すら不明に。
- 近年に入ってからいろいろな紆余曲折(下社→上社→中社)を経て、現在の「3社体制・中社が代表」という形式に落ち着いた。
- そのなかで、上社は大滝ダム建設に伴い元の社殿は水没。平成10年3月、現在地にご遷座した。
という次第です。
ただ、当社について、一言覚えておいていただきたいのは、「雨乞いの神社」であること。
くどいようですが!
祈雨には黒馬を、止雨には白馬(又は赤馬)を献じられるほど朝廷から重視され、雨乞い・雨止めの奉幣祈願がなされた由緒ある神社であることは是非チェックされてください。
▲こちら、馬。創建経緯から、なぜあるのか・どんな意味なのか、もうお分かりですよね。
丹生川上神社(上社)のご祭神
御祭神:「高龗大神」
相殿神:大山祇神、大雷神
御利益:五穀豊穣、(水を通じた)病気平癒や健康長寿、運気向上
▲「自祓大麻」が設置されてますので、自分でお祓いをして清めましょう。
御末社
本殿に向かって左手。御末社があります。写真右手奥から左へ順番に、、、
山之神社:大山祇神
水神社:弥津波能売神
恵比須社:大国主神、事代主神
愛宕社:火武須毘神
丹生川上神社(上社)境内のアレコレ
▲樹齢約600年の御神木の杉。巨大な樹幹であります。ご神殿の御用材として菖神社から頂戴したとのことです。菖神社はどこにあったのか不明。。。
▲御放流台。平成26年11月16日に開催された「全国豊かな海づくり大会~やまと~」にて、奈良県の魚に指定中の「アマゴ」の稚魚と「アユ」を放流したときに使用した台。天皇皇后両陛下参加だったそうで、往時を偲ぶ品であります。
平安時代の御本殿基壇跡
県立橿原考古学研究所による元境内地の発掘調査の結果、本殿基壇の直下から数期にわたる神社関連遺構が検出され、奈良時代後半から平安時代前期頃に祭場として意識され、平安末期から鎌倉初頭には社殿が建立され、その後造替を繰り返して現代までに奉祭され続けてきたことが明らかにされました。
「延喜式」に名が見える古社の全面的発掘は初めてのことで、神社・社殿建築の歴史・展開を考えるうえで貴重な事例とされています。(神社説明文より
との事で、こうした祭場跡の発掘等も上社的にこっちがホンモノといった主張を支えていたようにも思います。
丹生川上神社(上社)からの素晴らしいパノラマ
▲境内の角地にある「元宮遥拝所」です。ココから素晴らしいパノラマビューを見ることができます。
眼下に広がる大滝ダム、そして深い山。素晴らしい景色、まさに絶景であります!!!
まとめ
丹生川上神社(上社)
奈良県吉野郡川上村にある神社で、丹生川上神社の3社あるうちの1社。
古代、天井には井戸があり、その井戸から湧き出る水が「雨」として地上に降り注ぐという伝承があり。その「水=雨」を祭り「祈雨・止雨」の神社として朝廷の篤い崇敬を集めてきた超重要パワースポットです。
場所は、大滝ダムを眼下に見下ろす山の上。ここからの眺望はただただ素晴らしいの一言。水の浄化イメージと相まって、とても清々しい気持ちになれます。是非、ご参拝されてください。
ちなみに、祈雨・止雨については、こちらで詳しくまとめられていますので、是非。
水の信仰の歴史と概要まとめ|水の信仰や神様について、その歴史と全国の主な事例をまとめてみました
場所:吉野郡川上村大字迫869−1
奈良県橿原市から車で1時間くらい。伊勢街道の国道169号線を進みます。
駐車場あり
トイレあり
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