丹生川上神社(中社)|水神を祭る水のパワースポット!祈雨・止雨の社としてスゴイ歴史をもつ丹生川上神社をご紹介

丹生川上神社@東吉野

 

丹生川上神社にうかわかみじんじゃ(中社)」は奈良県吉野郡東吉野村にある神社。

御祭神は「罔象女みつはのめ神」。古代、天上には井戸があり、その井戸から湧き出る水が「雨」として地上に降り注ぐという伝承があり、その「水(=雨)」を祭り、「祈雨きう止雨しうの社」として朝廷の篤い崇敬を集めてきた超重要パワースポットが丹生川上神社であります

丹生川上神社の周辺は、高見川や夢渕、東の滝など、まさに水のパワースポットにふさわしい美しい自然が。

今回は「水神宗社」、つまり「水の祖神様おやがみさまをお祭りする社」丹生川上神社をご紹介します。

 

丹生川上神社(中社)|水神を祭る水のパワースポット!祈雨・止雨の社としてスゴイ歴史をもつ丹生川上神社をご紹介

水にまつわる信仰の背景

古代、天から降り落ちる水には神聖な力が宿るとされていました。

天井に井戸があり、その井戸から湧き出る水が「雨」として地上に降り注ぐという伝承。というか「祝詞のりと」。

丹生川上神社は、そうした背景をもとに、水の宗社、つまり水に関わる神社の総本山として、古代より「水」を祭り、「祈雨きう止雨しうを司る社」として朝廷の篤い崇敬を集めてきました。

  • 祈雨きう」とは、日照り続きのときに、雨乞い(あまごい)のお祈りをすること。
  • 止雨しう」とは、長雨のときに、雨が止むようにお祈りすること。

五穀豊穣と直結する水、そして雨。

丹生川上神社は、その「出」と「止」のコントロールを担ってたわけで、めちゃんこ重要な位置づけという訳です。

なお、祈雨には黒馬を、止雨には白馬(又は赤馬)を朝廷が献上していました。

  • 雨乞いに黒馬というのは、黒=雨雲、というところから。
  • 逆に、長雨が止むように白馬というのは、白雲≒青空、から。

ちなみに、京都の貴船神社も同じ背景を持ちますが、貴船社は平安時代になってからのこと。それよりも昔、奈良時代から「祈雨きう止雨しうを司る社」と位置づけられていたのが丹生川上神社です。本家本元と言えばこっちなんですよね。

 

丹生川上神社の場所

丹生川上神社(中社)は、奈良県吉野郡東吉野村にあります。

宇陀市榛原から、166号線(榛原街道)→16号→220号で神社へ到着。およそ30分ほど。

このルート、神武東征神話でも神武が通ったと推定される道なので、神話ロマンと合わせてご通行ください。

途中には、これらの伝承地があります。

榛原からの道中には、宿場町もあり。

丹生川上神社 (5)

▲史跡(油屋) 藤堂藩 陣所跡 こちらを右手へ。その昔、熊野詣での参詣路だったようです。

 

丹生川上神社 (11)

▲220号線を進みます。東吉野村は、吉野の奥、山のなかにある村です。

 

丹生川上神社 (13)

▲見えてきました「丹生川上神社(中社)」。右側は、とっても綺麗な清流「高見川」であります。

 

丹生川上神社 (17)

▲めっちゃキレイ!とっても気持ちのいい場所ですねー。川原にも降りられます。

 

丹生川上神社 (15)

▲丹生川上神社の敷地内に広い駐車場あり。なんて清々しい空気なんだ!!!

 

丹生川上神社の創建経緯

丹生川上神社中社

「丹生川上神社」は、とても独特な歴史を持ちます。

簡単に言うと「失われた神社」であり、「ホンモノはどこだ?論争」が起こった経緯を持つ神社。

文献には、「丹生川上」という名前が記載されてるのですが、長い歴史の中で、ホントの場所が分からなくなり、「自分の所がホンモノです!」と主張する3社が登場。最終的に現在の「丹生川上神社(上社、中社、下社)3社体制」で、都合、中社が「丹生川上神社」を代表する形に落ち着いてます。

本エントリは、その中で、中社をご紹介しているという次第。

以下、古代文献をさかのぼり、その特異な歴史を時系列でたどってみます。

奈良時代:黒毛馬の奉納が10度、白馬の奉納が3度に及ぶほど朝廷の篤い信仰あり。

歴史上、初めて「丹生川上社」が登場するのは、763年(天平宝字7年)淳仁じゅんにん天皇のとき。

幣帛みてぐら四畿内しきないの群神に奉らしむ。其の丹生河上にふかはかみの神には黒毛の馬を加ふ。ひでりすればなり」(『続日本紀』)

この年、大和は旱(日照り)が続き、水不足の状態にありました。

そこで天皇みずから幣帛みてぐらを畿内の神々に奉ったのですが、なかでも「丹生河上の神」には幣帛みてぐらに黒毛の馬を加えて奉った次第。これが歴史上の初見。これ以降、旱には黒馬を、霖雨ながあめには白馬を奉ることが慣例となります。

②平安時代:『延喜式』「神名列記」の中で「丹生川上神社、名神大」と格付け。つまり、格付け上位の「名神」の中でも最高ランク(大)に位置づけられてました。

886年(仁和2年)光孝こうこう天皇代、このとき、止雨祈願がありましたが、祈願6社のうち、「山城の国」は賀茂上下、松尾、稲荷、大原野、貴布祢きぶねの5社で、丹生河上の1社だけが「大和の国」に所在。『日本三代実録』より。

つまり、都は「山城の国」の平安京に遷ったものの、丹生河上社は依然として重要視されてたって事ですね。

その他、ざざっと

927年(延長5年)醍醐天皇代 「丹生川上社、貴布祢きぶね社におのおの黒毛馬一疋を加ふ。自余じよの社には、庸布ようふ一段を加ふ。其の霖雨ながあめ止まざれば、祭料も亦同じ。但し、馬は白毛を用ゐよ。凡てみてぐらを丹生川上に奉らば、大和の社の神主、使にしたがひ社に向ひて奉れ」『延喜式』(巻三、臨時祭)

とか

818年(弘仁9年)「大和国吉野郡の雨師神に従五位下じゅうごゐげを授く、祈雨を以て也」『日本後記』第廿六巻 注記

とか!

895年(寛平7年)宇多天皇代 「大和国の丹生川上雨師神社のさかひの地を禁制すべき事」『太政官符(下級官庁への下達文書)』

とか!!

「人声を聞かざる深山吉野の丹生川上に我が宮柱みやはしらを立て、いつまつらば、天下のため甘雨よきあめを降らし霖雨あしきあめを止めむと。神のるに依りてくだんの社を造る」『名神本紀』より。

とか!!!

特に最後の名神本紀』、ここに神社創建の由来を伝えている訳です。

以上、

奈良・平安の各時代にわたり、

祈雨・止雨の「雨師の神」として朝廷の篤い信仰・尊崇を受け、名神大社に列格されるなど、極めて重要な位置づけだったことがわかります。

③その後、、、

中世以降は、衰微の一途をたどり、ついにはその所在すら不明になってしまいます。

再び復活したのは、近世になってから。まず現在の「下社」が「丹生川上神社」として比定。

明治になると現在の「上社」に改めたのですが、大正4年(1915年)に「森口奈良吉」が『丹生川上神社考』を著し、当時の「蟻通ありどほし神社」を「丹生川上神社」と結論付けたことによって、大正11年(1922年)社名が「蟻通神社」から「丹生川上神社(中社)」に改められました。

これに伴い、「下社」「上社」に対して「中社」としたうえで、3社合わせて「官幣大社丹生川上神社」と改称。

で、戦後、昭和27年(1952年)官制廃止により、3社はそれぞれの社名をもって独立、現在に至ります。

そのうえで、

官幣大社丹生川上神社としては一社であります。そこでこの神社(官幣大社丹生川上神社)の社務所を当社に移して、下社、上社を統括して祭務を行ってきましたが、戦後神社制度の変遷により今日では三社別々の神社となったが、当社は「丹生川上神社」と登記されています。

神社説明文より

とのことで、登記上「丹生川上神社」となっているのはコチラ、中社という訳です。

長くなりましたが、まとめると、

丹生川上神社の創建経緯とポイント

  • 奈良・平安にわたり、祈雨・止雨の神として朝廷の篤い信仰・尊崇を受け、名神大社に列格されるなど、極めて重要な位置づけだった。
  • ところが、中世以降は、衰微の一途をたどり、ついにはその所在すら不明に。
  • 近年に入ってからいろいろな紆余曲折(下社→上社→中社)を経て、現在の「3社体制・中社が代表」という形式に落ち着いた。

という次第。

ただ、丹生川上神社について、一言覚えておいていただきたいのは、

「(日本最古の)祈雨・止雨を司る社」であること。

くどいようですが!

祈雨には黒馬を、止雨には白馬を献じられるほど朝廷から重視され、
記録上、96度にわたって、雨乞い、雨止めの奉幣祈願がなされた由緒ある神社である

ことは是非チェックされてください。

 

丹生川上神社の境内

丹生川上神社 (23) 丹生川上神社 (24)

▲丹生川上神社の鳥居をくぐって、正面に拝殿があります。美しい佇まいですね。

 

丹生川上神社 (25) 丹生川上神社 (28)

▲手水舎は竜神です。願いが叶う柄杓。

 

丹生川上神社の御祭神と御利益

丹生川上神社 (30)

御祭神:罔象女神みづはのめのかみ

水の全てを司る神様。水利系の神、雨の神として信仰されてきました。

御利益:五穀豊穣、(水を通じた)病気平癒や健康長寿、古代において祈雨・止雨の御神威

 

丹生川上神社 (33)

▲祓串(はらいくし)が設置されてますので、自分でお祓いをして清めましょう。

 

丹生川上神社 (62)

▲こちら、黒馬と白馬。東電、関電が奉納しています。水の神様ですから。流石でございます。何度も申し上げますが、黒馬=雨雲の表象=雨乞い、白馬=青天の表象=長雨が止むように祈ること。要チェックです。

 

丹生川上神社 (119)

▲本殿。ちょっと見にくいですかね。。階段を上がったところの本殿にご祭神「罔象女」が祭られております。

 

宮司さんにご説明をいただきました

丹生川上神社 (68)

▲こちら、社務所。ここでいろいろお話を伺う機会があり、神武天皇のお話から「萬歳旛(ばんざいばん)」を見せて頂けることになりました。

 

丹生川上神社 (76)

▲こちら宮中からの勅使のかたをお迎えする部屋。

大正時代以降、この地が「丹生川上神社」として定められて以降、宮中の勅使さんがこの神社にもいらっしゃるようになったのかもですね←そこまでは聞けず推測。

その奥に秘宝が。。。

丹生川上神社 (71)

▲こちら「萬歳旛(ばんざいばん)」。神武天皇東征神話における、丹生川上での儀式で使われた「厳瓮(いつへ)」と浮き上がってきた魚が織り込まれてます。

こちら、宮中にあるものと対になっているらしく、とても貴重なものだそうです。

丹生川上神社 (72)

▲宮司の日下さん。丁寧なご説明ありがとうございました!

 

丹生川上神社 (77)

▲こちら、先ほどの勅使さんをお迎えする部屋の隣の部屋。

 

丹生川上神社 (74)

▲昔の丹生川上神社の絵。

 

丹生川上神社 (75)

▲地形は当時のまま。丹生川上神社を正面から。まだ「蟻通」という名前があったころ。右側の橋は今も残る「蟻通橋」です。

 

丹生川上神社 (79)

▲昔の様子。吉野杉です。目の前の川をせきとめ、水を貯め、堰を壊して一気に木を流していたそうです。ここから吉野川→紀の川を経て、大阪まで運んでいたとのこと。すごいですねー。

 

ということで、丹生川上だけに、神武天皇とか宮中とかいろいろ流石な要素がたくさんな神社でした。

 

その他の見どころ、、、

相生の杉

丹生川上神社 (41)

▲樹齢800年程の杉。2本寄り添って立つところから、夫婦円満、延命長寿の御加護があるとの事。

 

叶えの大杉

丹生川上神社 (60)

▲樹齢1000年程の杉。樹高51.5m、幹廻り7.1mとか。木の幹に両手を当て、心の願いを掛けるといいそうです。

丹生川上神社 (61) 丹生川上神社 (66)

 

丹生の真名井(清めのお水)

丹生川上神社 (55)

▲神社裏手の山を地下水源として、水が湧き出ています。。。霊験あらたかな聖水

 

木霊神社

丹生川上神社 (44)

▲素戔嗚尊の子供、五十猛命を祭る神社。和歌山市の本社からお迎えされたそうです。

 

丹生川上神社 (43)

 

そして、歩いて5分くらいのところにはこんな素敵な夢渕も。

夢渕 (21) 夢渕 (15)

▲この地域一帯が、水のパワーをビシビシ感じるかんじで、とても気持ちよかったです。

 

まとめ

丹生川上神社(中社)

丹生川上神社にうかわかみじんじゃ(中社)」は奈良県吉野郡東吉野村にある神社。

御祭神は「罔象女みつはのめ神」。古代、天上には井戸があり、その井戸から湧き出る水が「雨」として地上に降り注ぐという伝承があり、その「水(=雨)」を祭り、「祈雨きう止雨しうの社」として朝廷の篤い崇敬を集めてきた超重要パワースポットが丹生川上神社であります

丹生川上神社の周辺は、高見川や夢渕、東の滝など、まさに水のパワースポットにふさわしい美しい自然が。

実際、水のパワーを感じる神聖な場所という感じで、とても心地よかったです。キャンプ場もありますので、夏場とかみんなでレッツゴー。超オススメです。

 

丹生川上神社(中社)

場所:奈良県吉野郡東吉野村小968

奈良県宇陀市榛原から40分くらい。166号線(榛原街道)→16号→220号で神社へ到着です。

このルート、神武東征神話でも神武が通ったと推定される道なので、神話ロマンと合わせてご通行ください。

駐車場あり

トイレあり

丹生川上神社HPはこちらです

 

こちらの記事もどうぞ。オススメ関連エントリー

どこよりも分かりやすい日本神話解説シリーズはコチラ!

日本神話とは?多彩で豊かな神々の世界「日本神話」を分かりやすく徹底解説!

日本書紀 現代語訳
『古事記』現代語訳
天地開闢
国生み神話

日本神話編纂の現場!奈良にカマン!

飛鳥浄御原宮
藤原宮跡



1件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
さるたひこ

日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。
『日本書紀』や『古事記』をもとに、最新の文献学的学術情報を踏まえて、どこよりも分かりやすく&ディープな日本神話の解釈方法をお届けしています。
これまでの「日本神話って分かりにくい。。。」といったイメージを払拭し、「日本神話ってオモシロい!」「こんなスゴイ神話が日本にあったんだ」と感じていただける内容を目指してます。
日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
豊かで多彩な日本神話の世界へ。是非一度、足を踏み入れてみてください。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
error: Content is protected !!