伊勢神宮のご祭神は「天照大神」。
一般的には太陽神の象徴とか、皇室の祖先神といった感じで紹介されますが、その誕生経緯をご存知の方は少ないと思います。
今回は、当サイトならではの『日本書紀』『古事記』に伝える日本神話をもとに、伊勢神宮のご祭神「天照大神」の誕生経緯をディープにご紹介したいと思います。
伊勢神宮のご祭神|日本神話で伝える伊勢神宮のご祭神「天照大神」誕生経緯をディープにご紹介!
目次
日本神話で伝える天照大神誕生経緯
ご祭神の「天照大神」は、日本神話でその誕生経緯が伝えられてます。
今回ご紹介する天照誕生経緯は、『日本書紀』では「第五段」に、『古事記』では「上巻」に記載。以下、2つを比べながら、天照大神の御神威もあわせてチェック!
『日本書紀』で伝える天照誕生経緯
正史『日本書紀』、天照誕生が描かれているのは神代紀の「第五段」。
第五段のテーマは「天照大神、月夜見尊、素戔嗚尊の3貴神誕生」です。
ちなみに、第五段は、神代紀において最も異伝が多い段で。本伝とはべつに、全部で11の別伝をもつ難解な箇所。「天照大神」も、「日神」とか「大日孁貴」といった別の神名を伝えます。今回は、第五段の本伝からお届け。
その性質というか、特質がポイントです。
(伊奘諾と伊奘冉は)次に海を生んだ。次に川を生んだ。次に山を生んだ。次に木の祖、句句廼馳を生んだ。次に草の祖草野姫を生んだ。そして、伊奘諾尊と伊奘冉尊は相談した。
「我々はすでに大八洲国と山川草木を生んだ。どうして天下の主者を生まないでいられようか」
そこで、一緒に「日神」をお生みになった。「大日孁貴」と申す(一書に、「天照大神」という。一書に「天照大日孁尊」という)。この御子は輝くこと明るく美しく、天地四方の隅々まで照り輝いた。
そこで二柱の神は喜び、「わが子は数多くいるけれど、まだこのように神秘的で霊妙な御子はいなかった。長くこの国に留めるべきではない。速やかに天上に送って、天界の政事を授けるべきだ。」と仰せられた。
この時、天地はまだ遠く離れていなかった。そこで、天の御柱をつたって天上にお上げ申し上げた。
原文:次生海。次生川。次生山。次生木祖句句廼馳。次生草祖草野姫。既而伊奘諾尊。伊奘冉尊共議曰。吾已生大八洲国及山川草木。何不生天下之主者歟。於是共生日神。号大日孁貴。〈大日孁貴。此云於保比屡咩能武智。孁音力丁反。一書云。天照大神。一書云。天照大日孁尊。〉此子光華明彩。照徹於六合之内。故二神喜曰。吾息雖多。未有若此霊異之児。不宜久留此国。自当早送于天、而授以天上之事。是時天地相去未遠。故以天柱、挙於天上也。 『日本書紀』第五段 本伝
ここでは、「日神」として、本文には「大日孁貴」という神名で、注によって「天照大神」という神名を伝えます。「大・日孁・貴」は、美称の「大」、「日る女」、尊貴な存在の「貴」で、太陽である女性を意味。
ポイント3つ。
- もともと伊奘諾(♂)・伊奘冉(♀)の2神は「天下の主者=地上世界の統治者」を生む予定だった。
- が、生まれた子は「輝くこと明るく美しく、天地四方の隅々まで照り輝いた。」とあるように、生まれながらにして照り輝く非常に尊貴な形で生まれた。
- そこで、2神は、世界の隅々までその光で照らす性質ゆえに、天上に送り「天界の統治者」として任命した。
以上、3点は是非チェックしておいてください。この部分が高天原の統治者=最高神としての位置づけの根拠になってます。
『古事記』で伝える天照誕生経緯
次に、『古事記』。
『記』では黄泉の国から還ってきた伊耶那岐命が禊祓いをしたところからの伝承。場所は、「筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原」です。
ここに、左の御目を洗いたまふ時に成りませる神の名は、天照大御神。次に、右の御目を洗いたまふ時に成りませる神の名は、月読命。次に、御鼻を洗いたまふ時に成りませる神の名は、建速須佐之男命。 ~中略~ この時に、伊耶那岐命いたく歓喜びて詔らししく、
「あは子生み生みて、生みの終に三柱の貴き子を得たり」
とのらして、すなはちその御頸珠の玉の緒も、ゆらに取りゆらかして、天照大御神に賜ひて詔らししく、「なが命は、高天原を知らせ」と事依さして賜ひき。
~中略~ 次に、月読命に詔らししく、「なが命は、夜の食す国を知らせ」と事依さして賜ひき。次に、建速須佐之男命に詔らししく、「なが命は、海原を知らせ」と事依さして賜ひき。 『古事記』上巻
『古事記』版をまとめると、
- 場所:筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原
- 行為:禊除を行ない洗う
- 発生場所:左目=天照、右目=月読、鼻=須佐之男
- 統治領域:天照=高天原、月読=夜の食す国、素戔嗚=海原
となります。『日本書紀』の本伝には無い「別の伝承」として、誕生経緯を伝えてるわけですね。
ポイントは、
- 禊祓の中で、左目を洗うことで天照大御神が誕生し、高天原を統治するように任命した。
- 『日本書紀』の第五段(本伝)とは違い、天照の輝く性質や特質は伝えていない。
このあたりをチェックされてください。
補足として、『古事記』で伝える誕生経緯については、実は、『日本書紀』第五段(一書の第六)で同じような伝承があったりします。が、詳しくは別稿で。
まとめ
伊勢神宮の御祭神「天照大神」
日本神話的誕生経緯をチェックしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
『日本書紀』では、「この御子は輝くこと明るく美しく、天地四方の隅々まで照り輝いた。」と伝えるように、生まれながらにして照り輝く非常に尊貴な形で生まれました。また、世界の隅々までその光で照らす性質ゆえに、天上に送り天界の統治者として任命されました。
『古事記』では、禊祓の中で、左目を洗うことで天照大御神が誕生し、高天原を統治するように任命。『日本書紀』とは違い、天照の輝く性質や特質は伝えていません。
これらの2つの文献から見えてくるのは、天照の性質や特質であったり、最高神としての位置づけの高さです。ココ、とても重要なポイントなので是非チェックされてください。
伊勢神宮についてはコチラで詳しく⇒「伊勢神宮(皇大神宮・内宮)|伊勢神宮を日本神話から紐解く!伊勢神宮の魅力を全部まとめてご紹介!」
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