常世の国とは?海上遥か彼方にある理想郷!日本神話的「常世國」を徹底解説!

神話世界で登場する「常世國」は2箇所。

国造り神話と建国神話。登場神は、少彦名神と三毛入野命。

ついでに、おまけとして、歴史時代ですが天照大神の伊勢神宮創始伝承もお届けします。

まずは神話世界から2つ。

『日本書紀』第八段〔一書6〕:国造り神話の中で伝える常世郷

大己貴神が少彦名命と力を合せて国作りの業を終えた後、少彦名命は「熊野の御碕」に行き、そこから」常世郷」に渡ったと伝えます。

 その後、少彦名命は熊野の岬まで行き至ったところで、遂に常世郷とこよのさとってしまった。またこれとは別に、淡嶋あはのしまに至って、粟の茎をよじ登れば、弾かれて常世郷に渡り至ったという。

 其後少彦名命行至熊野之御碕。遂適於常世郷矣。亦曰。至淡嶋、而縁粟茎者。則弾渡而至常世郷矣。

先にポイントとなる語句解説を。

「熊野之御碕」は、和歌山県熊野灘周辺にある岬。

淡嶋。この島を鳥取県米子市の上粟島や下粟島とする説(『釈紀』所引『伯耆風土記』)もあるのですが、日本海や瀬戸内海周辺で探すことができ、どれがどこと、比定できないようです。

ということで、

和歌山県熊野灘にある「熊野之御碕」から「常世郷」に往ったと。なので、常世の國は熊野灘からさに海上方面に往ったところにあるってことですね。

『古事記』上巻の記述も、国を作り固めた後で少彦名神は常世の国に渡ったとあります。

 

『日本書紀』神武紀:建国神話の中で伝える常世郷

三毛入野命は神武天皇の兄。神武天皇は四人兄弟。三毛入野命は三男であります。で、東征に従軍していたのですが、熊野灘で暴風雨に遭い、嘆きごとを言いながら常世郷に往く、、、

三兄の「三毛入野命みけいりののみこと」 もまた、「我が母と姨とは共に海神である。それなのにどうして波濤を立てて溺らせるのか。」と恨み言を言い、波の先を踏んで常世とこよの郷に往ってしまった。

三毛入野命、亦恨之曰「我母及姨並是海神。何爲起波瀾、以灌溺乎。」則蹈浪秀而往乎常世鄕矣。

暴風雨の中で往ってしまう訳で、その方向はやはり海上、太平洋方面になります。

『古事記』では何も伝えず上巻末尾の鵜草葺不合命の子を並べたところに、御毛沼命は波の穂を跳みて常世の国に渡ったとだけ伝えてます。

以上が、神代における常世の國の記述。なんか見えてきましたね。

おまけとして、以下。

『日本書紀』巻六 垂仁天皇条:天照大神の伊勢選択の理由

垂仁天皇条において、天照大神が伊勢の地を選んだ理由として、

この神風の伊勢国は、常世の浪の 重浪しきなみ する国なり。傍国の 可怜うまし国なり。是の国に 居らむと欲ふ。

「この神風が吹く伊勢国は、理想郷から打ち寄せてくる波が幾重にも重なって次々に打ち寄せる国。宮中から遠く離れた国だけれど、とても美しい国だ。この国に居ることにしよう。」

と伝えます。

「(伊勢は)常世とこよの浪が幾重にも重なって次々に打ち寄せる国だ」と。「常世とこよの浪」とは、「常世の郷から打ち寄せて来る波」。

ということで、

伊勢の国は、そんな理想郷からの波がおしよせる美しい国、だからここに住みます、と宣言した天照大神。コレも同じ場所を指してますよね。

 

日本神話的「常世の國」の場所

これまでご紹介した3つの伝承から、日本神話的「常世の國」がどこにあるのか?考えてみます。

  • 少彦名命は「熊野の御碕=和歌山県熊野灘周辺の岬」まで行き至ったところで、常世郷とこよのさとってしまった。
  • 三兄の「三毛入野命みけいりののみこと」 は熊野周辺で暴風雨に遭遇、なんでやねんと恨み言を言いつつ、波の先を踏んで常世とこよの国に往ってしまった。
  • 伊勢国=三重県は、常世國からの波が押し寄せる所。

すべて、紀伊半島の南東、熊野灘より海上遙か彼方を指していることが分かりますよね。

ということで、コチラ!

距離的には往復10年かかるらしいので、相当遠いイメージで。「非時香菓ときじくのかくのみ」、食べてみたいなー

 

まとめ

常世国とは、海上遥か彼方にある理想郷。

日本神話に登場する異界の一つで、不老長寿を象徴。日本神話的には、多分、現在の三重県熊野灘のはるか向こう。

日本神話的には、

  • 常世國は海上の絶域はるかなるくににあり、多くの波を越え、さらに弱水よわのみづという特殊ゾーンを渡る必要がある。
  • 神仙ひじりの「秘區かくれたるくに」であって、フツーの人が行けるような場所じゃない。
  • 往復で10年かかる、遠いだけかもしれんけど、もしかすると流れる時間速度も違うかも
  • 不老長寿をもたらす「非時香菓ときじくのかくのみ」がある。
  • 伊勢の海岸には、この常世國から波が押し寄せている。。。

ということで、

そんな世界感を是非チェックです。

 

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さるたひこ

日本神話ナビゲーター / 日本神話研究家 / 日本神話講演家

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他