月夜見尊・月弓尊・月読尊とは?潮だったり夜だったりを司る神!日本神話をもとに月夜見尊・月読尊を分かりやすく解説します。

月夜見尊 月弓尊 月読尊

 

月夜見尊・月弓尊・月読尊とは?潮だったり夜だったりを司る神!日本神話をもとに月夜見尊・月読尊を分かりやすく解説します。

『日本書紀』第五段 現代語訳

〔本伝〕天下之主者生み(神生み)

 次に海を生んだ。次に川を生む。次に山を生む。次に木のおや句句廼馳くくのちを生む。次に草の祖、草野姫かやのひめを生む。またの名を野槌のつちと言う。

 そして伊奘諾尊・伊奘冉尊は共にはかり、「我々はすでに大八洲国おほやしまぐにをはじめ山川草木さんせんそうもくまで生んでいる。どうして地上世界の統治者を生まないでいようか。」と言った。

 そこで、共に日神ひのかみを生む。名を大日孁貴おほひるめのむちと言う。(大日孁貴、ここでは於保比屢咩能武智おほひるめのむちと言う。孁は、音は力丁りょくていかへしである。ある書には、天照大神あまてらすおほかみと言う。ある書には、天照大日孁尊あまてらすおほひるめのみことと言う。)このは、光り輝くこと明るく色とりどりで、世界の内を隅々まで照らした。それで、二柱ふたはしらの神は喜び「我々の子供は多いけれども、まだこのように霊妙不可思議な子はいない。長くこの国に留め置くのはよくない。すぐに天に送り、天上の事を授けるべきだ。」と言った。この時は、天と地がまだたがいに遠く離れていなかった。それで天柱あまのみはしらを使って、天上に送り挙げたのである。

 次に、月神つきのかみを生んだ。(ある書には、月弓尊つくゆみのみこと月夜見尊つくよみのみこと月読尊つくよみのみことと言う。)その光りの色どりは日神に次ぐものであった。日神とならべて天上を治めさせるのがよいとして、また天に送った。

 

〔一書1〕御寓之珍子生み

 ある書はこう伝えている。伊奘諾尊いざなぎのみことが「私は天下を統治する優れて貴い子を生もうと思う。」と言い、左の手で白銅鏡ますみのかがみを持つと、そこから化し出る神があった。これを大日孁尊と言う。右手に白銅鏡を持つと、また化し出る神があった。これを、月弓尊と言う。また首を廻らせて見たその瞬間に、化す神があった。これを、素戔嗚尊と言う。

 先に化し出た大日孁尊および月弓尊は、ともに性質が明るく麗しかった。それゆえ、伊奘諾尊は両神に天地を照らし治めさせた。

 

伊奘諾尊は黄泉から辛うじて逃げ帰り、そこで後悔して「私は今しがた何とも嫌な見る目もひどいけがらわしい所に行ってしまっていたものだ。だから我が身についたけがれを洗い去ろう。」と言い、そこで筑紫つくし日向ひむか小戸をどたちばな檍原あはぎはらに至り、禊祓みそぎはらえをした(身のけがれを祓い除いた)。

 こういう次第で、身の穢れをすすごうとして、否定的な言いたてをきっぱりとして「上の瀬は流れが速すぎる。下の瀬はゆるやかすぎる。」と言い、そこで中の瀬ですすいだ。これによって神を生んだ。名を八十枉津日神やそまがつひのかみと言う。次にその神のまがっているのを直そうとして神を生んだ。名を神直日神かむなおひのかみと言う。次に大直日神おほなほひのかみ

 また海の底に沈んで濯いだ。これによって神を生んだ。名を底津少童命そこつわたつみのみことと言う。次に底筒男命そこつつのおのみこと。また潮の中に潜ってすすいだ。これに因って神を生んだ。名を中津少童命なかつわたつみのみことと言う。次に中筒男命なかつつのおのみこと。また潮の上に浮いて濯いだ。これに因って神を生んだ。名を表津少童命うわつわたつみのみことと言う。次に表筒男命うわつつのおのみこと。これらを合わせて九柱の神である。その中の底筒男命・中筒男命・表筒男命は、これが住吉大神すみのえのおおかみである。底津少童命そこつわたつみのみこと中津少童命なかつわたつみのみこと表津少童命うわつわたつみのみことは、安曇連あずみのむらじらが祭る神である。

 そうして後に左の眼を洗った。これによって神を生んだ。名を天照大神あまてらすおおみかみと言う。また右の眼を洗った。これに因って神を生んだ。名を月読尊つくよみのみことと言う。また鼻を洗った。これに因って神を生んだ。名を素戔嗚尊すさのおのみことと言う。合わせて三柱の神である。

 こういう次第で、伊奘諾尊は三柱の御子に命じて「天照大神は、高天原たかあまのはらを治めよ。月読尊は、青海原の潮が幾重にも重なっているところを治めなさい。素戔嗚尊は天下あまのしたを治めなさい。」と言った。

 

〔一書11〕天照大神の天上統治と農業開始

 ある書はこう伝えている。伊奘諾尊は、三柱みはしらの子それぞれに「天照大神は、高天原を治めよ。月夜見尊は、日と並んで天を治めよ。素戔嗚尊は、海原を治めよ。」と勅任した。

 こうしてすでに天照大神は天上にあり、月夜見尊に対して「葦原中国に保食神うけもちのかみがいると聞く。月夜見尊よ、そこに行き様子をうかがってきなさい。」と言った。

 月夜見尊がその勅命を受けて降り、保食神うけもちのかみのもとに到ると、保食神はさっそく首を巡めぐらし、国に向かえば口から飯を出し、また海に向かえば大小さまざまな魚を口から出し、また山に向かえば大小さまざま獣を口から出した。それらのありとあらゆる品物を備え、数え切れないほどたくさんの机に積み上げて饗応した。この時、月夜見尊は怒りをあらわにして、「なんと汚らわしい、卑しい。口から吐いた物なんかを、敢えて私に喰わせてよいはずはないだろう。」と言い、剣を抜いて打ち殺した。

 そうして後に復命して詳しくこの事を報告した。この時、天照大神は激怒し、「汝は悪い神だ。もう顔など見たくもない。」と言った。こうして、天照大神は月夜見尊と、日と夜と時を隔てて住んだ。

 

 



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
さるたひこ

日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。
『日本書紀』や『古事記』をもとに、最新の文献学的学術情報を踏まえて、どこよりも分かりやすく&ディープな日本神話の解釈方法をお届けしています。
これまでの「日本神話って分かりにくい。。。」といったイメージを払拭し、「日本神話ってオモシロい!」「こんなスゴイ神話が日本にあったんだ」と感じていただける内容を目指してます。
日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
豊かで多彩な日本神話の世界へ。是非一度、足を踏み入れてみてください。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
error: Content is protected !!