筑紫日向小戸橘之檍原とは?伊奘諾尊が三貴神を生んだ聖地「筑紫の日向の小戸の橘の檍原」を徹底解説!

筑紫日向小戸橘之檍原

 

筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」とは、黄泉よみから帰還した伊奘諾尊いざなきのみことが、黄泉のけがれを落とすために禊祓みそぎはらえをした地。

このみそぎを通じて、日本神話のメインプレイヤーともいうべき、天照大神、月読尊、素戔嗚尊が誕生します。

実は、日本神話的には、この地は

祭祀の場。聖地。

として位置づけられており、非常に重要な意味を持たせてます。

今回は、そんな「筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」について、文献学アプローチから徹底解説でお届けします。

 

筑紫日向小戸橘之檍原とは?伊奘諾尊が禊祓で三貴神を生んだ聖地「筑紫の日向の小戸の橘の檍原」を徹底解説!

筑紫日向小戸橘之檍原が登場する場面

筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」は、

『日本書紀』神代上 巻1の第五段〔一書6〕に登場。

〔一書6〕は、死の世界である「黄泉よみ」を伝える書。

火神「軻遇突智かぐつち」により焼かれ死んだ伊奘冉尊いざなみのみことを追って、黄泉へ行く伊奘諾尊。

黄泉で「見るなの禁」を破り伊奘冉尊の正体を見てしまう伊奘諾尊。驚き慌てて帰り、泉津平坂よもつひらさかで絶縁宣言。

その後、登場するのが「筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」。

以下、その現場。

 伊奘諾尊は黄泉から辛うじて逃げ帰り、そこで後悔して「私は今しがた何とも嫌な見る目もひどいけがらわしい所に行ってしまっていたものだ。だから我が身についたけがれを洗い去ろう。」と言い、そこで筑紫つくし日向ひむか小戸をどたちばな檍原あはぎはらに至り、禊祓みそぎはらえをした(身のけがれを祓い除いた)。

 こういう次第で、身の穢れをすすごうとして、否定的な言いたてをきっぱりとして「上の瀬は流れが速すぎる。下の瀬はゆるやかすぎる。」と言い、そこで中の瀬ですすいだ。これによって神を生んだ。名を八十枉津日神やそまがつひのかみと言う。次にその神のまがっているのを直そうとして神を生んだ。名を神直日神かむなおひのかみと言う。次に大直日神おほなほひのかみ

 また海の底に沈んで濯いだ。これによって神を生んだ。名を底津少童命そこつわたつみのみことと言う。次に底筒男命そこつつのおのみこと。また潮の中に潜ってすすいだ。これに因って神を生んだ。名を中津少童命なかつわたつみのみことと言う。次に中筒男命なかつつのおのみこと。また潮の上に浮いて濯いだ。これに因って神を生んだ。名を表津少童命うわつわたつみのみことと言う。次に表筒男命うわつつのおのみこと。これらを合わせて九柱の神である。~中略~

 そうして後に左の眼を洗った。これによって神を生んだ。名を天照大神あまてらすおおみかみと言う。また右の眼を洗った。これに因って神を生んだ。名を月読尊つくよみのみことと言う。また鼻を洗った。これに因って神を生んだ。名を素戔嗚尊すさのおのみことと言う。合わせて三柱の神である。 (『日本書紀』巻一(神代上)第五段〔一書6〕より一部抜粋)

●詳細解説はコチラ→ 『日本書紀』巻第一(神代上)第五段 一書第6 ~人間モデル神登場による新たな展開~

流れとしては、

  • 黄泉の穢れを落とすために禊祓みそぎはらえを行う
  • 禊祓では、伊奘諾尊は慎重に場所を選んでいる
  • 最初に瀬、次に海。いずれも濯ぎにより神が誕生
  • 最後に、天照大神、月読尊、素戔嗚尊が誕生する

と言った形。

ポイントは、

「死の穢れ」と対極にある「禊祓」。
その浄化の極みで誕生する神々、中でも三貴神は超重要。

海で濯いだ時に誕生した神は、住吉大社の御祭神ですし、三貴神は日本神話のメインプレイヤーとして様々な活動を展開します。

●必読→ 住吉大社のご利益とは?航海安全で有名ですが、日本神話的には穢祓い・厄除けご利益が超絶です。

特に、天照大神は高天原の最高神。

日本神話世界のトップに君臨する神が誕生してる訳ですから、この場面、そして「筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」が持つ意味は非常に重要!

まずは、「筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」がどういう場面で登場するのか、重要感と合わせてチェックです。

 

筑紫日向小戸橘之檍原、大事なのはやっぱり「檍原」

登場シーンがチェックできたところで、

ココからは、「筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」がどんな意味を持つのか、詳細を読み解いていきます。

で、

そもそもですが、この

筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら

という言葉、

修飾語が多すぎて、よー分からんくない?

筑紫の日向の小戸の橘の檍原

って、、、

この、よー分からんイメージを作ってる原因は「修飾語の多さ」。どんだけ盛り込みたいんよ。。。

そう、

修飾語の多さ=盛り込みたい想いの強さ、なんで、気持ちは分かるんですが、、、

てことで、まずは要素分解して整理してみます。

コチラ。

筑紫日向小戸橘之檍原

ということで、

①~④の修飾語、そして最後の「檍原あはぎはら」。といった構図をチェック。

要は、、

檍原なんだよ

ってこと、これが言いたい。あはぎの原っぱ。

なので、、

まずは「檍原あはぎはら」の意味をチェック。そのうえで、修飾語を一つ一つ解説していきます。

以下、

檍原あはぎはら」について、「あはぎ」と「原」に分けて必要以上に突っ込んで解説。

1.「あはぎ」の意味

まずは「あはぎ」から。

コレ、国内文献では、平安時代の初め(892年)、僧の昌住しょうじゅうが作った日本最古の字書(漢和辞典)『新撰字鏡』に登場。この「木部」のところに、

橿は、檍の別名で、万年木である。(橿、一名檍、万年木) 『新撰字鏡』より

とあり、古代においては、

あはぎ」とは「橿」の別名であり、万年木として位置づけられていた

ことが分かります。

万年木とは何万年も生きる木。つまり、不死・永遠の命のイメージを持つ。

一方、

海外の漢籍に目を転ずると、中国最古の詩集『詩経』の「山有樞さんいうおう」(唐風)と題する詩の一節に、

山にかう有り、さはちう有り (「山有樞さんいうおう」より)

とあり、

漢の毛萇もうちょうによる注解(毛伝)が「ちうあはぎなり」と注しています。

「毛伝」によれば、山の木材の「こう(ぬるで、山樗さんちょ)」に対して、沢(湿地、湖沼)の木材に杻があり、これを「檍」と言う、と伝えてます。「国君財貨有れども用ふること能はず、山隰の自ら其の材を用ふること能はざるが如し」。

要は、

  • 山の木材・・・こう(ぬるで、山樗さんちょ
  • 沢(湿地、湖沼)の木材・・・ちうあはぎ

てことで、

檍って、湿地帯の木なんす。

コレ、もちろん、「小戸」と密接に関連する言葉ですよね。水と関係する場所、植物が選ばれてる。すべて、禊をコンセプトにした一貫性のある設定。

さらに、唐の注釈(孔疏)では、この木の葉が億万茂って枯れないことから「万歳」と名付け、さらに「弓・弩(矢や石をバネ仕掛けで射る弓)」の材料にすると説明しています。

以上、古代漢籍文献の説明を総合すると、

ちうあはぎ)」とは、

  • 湿地あるいは湖沼に生える
  • 葉を繁茂させて枯れないことから「万年木」「万歳」という異名をもっている
  • 幹はまっすぐではなく、枝も強くしなる性質を持つため、弓や弩に使う

という木であることが分かります。

あはぎ」、なんとなく使われてる訳ではなく、徹底的に選び抜かれてる言葉だってことが分かりますよね。日本神話編纂チームの知的レベルがハンパない、、、

と言うことで、

そもそもの「あはぎ」の持つ意味、その原義をチェック。

その上で、以下、日本神話的な意味を補足解説。

2点。

あはぎ」は万年木。つまり、不死・永遠の命→パワーの永続性を意味

あはぎ」は、万年木。

「万年」てことは、永遠性(永遠の命、不死にもつながる)の意味を持つ木、ってこと。

転じて、パワーの永続性、と言う意味も。そのための「あはぎ」。

あはぎ」は、破魔矢・魔除けのように、邪や魔を撃退する(祓う)

あはぎ」は、弓・の材料として使われていた。

弓は、武器として威力を発揮=軍事力の象徴である一方で、魔除けの道具としての意味あり。神社の「破魔矢」が代表的な例。魔除け、邪や魔を撃退する(祓う)意味。

つまり、黄泉の穢れを除去する(撃退する)禊祓みそぎはらいに相応ふさわしい場所としての意味を持たせてる。そのための「あはぎ」。

以上の①と②を合わせて、

あはぎ」には、魔や邪を撃退するパワーの永続性、なんなら、未来永劫この地は魔除けパワースポットである、って意味を込めている

って、この時点でムキムキな感じが出てます、、いや、だって、禊祓の地、三貴神誕生の地ですから!!!

続けて「原」。

2.「原」の意味

コチラも2つ。

① 「原」は、天子の住む宮都を造営できる広大かつ尊い場所

原は、平らで広大な土地のこと。天子の住む宮都を造営できる広大な原っぱ。

天武天皇即位の「飛鳥浄御原宮」、その後の「藤原宮」など、古代、原には宮を造営。「高天原」も同様の考え方。

つまり、天子の住むに相応しい非常に尊い場所、それが原。

② 「檍原」は「橿原」に繋がる聖地

天照大神誕生の地=檍原

神武天皇即位の地=橿原。

つまり、橿原での日本建国、天皇即位のルーツが「檍原」と言うことであり、これにより、天皇即位の正統性や権威付けが強められるようになっている。

以上、①②を合わせて、整理すると、、

檍原あはぎはら」とは、永遠の命を象徴する万年木であり魔除けの象徴でもある「ちうあはぎ)」が葉を茂らせ枝を縦横に曲がりくねらせながら茂った広大な湿地。その尊さ、神聖さは超絶!

と、言った感じで、まー濃厚なメッセージ。

もうちょっと神話的にまとめると、

あはぎ原」とは、魔や邪を撃退する永続的なパワーを持つ広く尊い場所であり、橿原での日本建国、天皇即位のルーツとなる場所である。

ということで、どんだけ盛り込んでますのん。。。

でも、やっぱり、、

檍原あはぎはらなんだよ。

特に、橿原での天皇即位・日本建国へ繋げてるのって超重要。

  • 天照大神誕生の地=檍原
  • 神武天皇即位の地=橿原

そらそうだ、皇室の先祖である天照大神誕生の聖地でもあるわけで。檍原。これと、皇室創始の地をつなげてこそ正統性やら権威づけやらが達成されるわけですよね。

コレをしっかり押さえていただいた上で、以下、修飾語含めて全体の解説をお届けします。

 

筑紫日向小戸橘之檍原とは「祭祀の場」

檍原あはぎはら」の中核的な意味が理解できたところで、ココからは修飾語含めた全体の意味をチェックしていきましょう。

全体のコンセプト的なところで一言でまとめると、、、

「筑紫日向小戸橘之檍原」は、

祭祀の場。聖地。

コレ。

伊奘諾尊が禊祓いをするわけなので、「祭祀」というキーワードは絶対に外すことはできません。

で、

ココでの「祭祀の場」的な要件は、

  1. 日の出の方角に直接向いてる事
  2. 常緑&万年木の生える「原」である事
  3. 浄化用の水(淡水、海水)と流れがある事

の3つに集約されます。それを踏まえて修飾語をチェック。

まずは、

①~④の修飾語を確認です。

①筑紫(国)=九州は、天祖誕生の地&天孫降臨の地

「筑紫」とは、そもそもは、国生みで登場した「大八洲国おほやしまぐに」の一つとして登場。

●必読→ 『日本書紀』巻第一(神代上)第四段 本伝 ~聖婚、洲国生み~

はじめ「しま」として誕生しながら、八つの洲で一括化され「大八洲国」という「国」になった経緯あり。これにより、自動的に、その元々の構成要素であった八つの洲も、国と呼ばれるのに相応しい状態になってる。

なので、ここでは「筑紫」としか書いてないのですが、内容としては、「筑紫国」であり「筑紫国の~」「筑紫国にある~」といった意味になります。

筑紫、今で言う九州のことなんですが、なぜここで九州が登場するのか?不思議ですよね。

コレ、考えられる理由としては、

「天祖・天照大神が誕生した地」と
「天孫が降臨し統治を開始した地」を
同じにするため。そのための仕掛け。

ってこと。

『日本書紀』第五段〔一書6〕で、筑紫の「檍原あはぎはら」禊祓いで誕生するのが天照大神。一方、『日本書紀』第九段で天孫降臨するのも筑紫。

つまり、「天祖である天照大神が誕生した地」と「天孫が降臨し最初に統治を開始した地」が同じ場所で設定されてる。

ま、

天孫にとっては、初めて降臨する地、なんだけど、実は、天祖が誕生した地なのであれば、そんな怖がらずに降りて来られますよね。なんと言うか、、、一族発生の地、ルーツの地。これであれば初めての地でも失敗しなさそうだし。。。的な神話的理由づけ。

そして、これは、後の神武東征神話へ繋がる構図でもあって。

東征、つまり「国ぎ」を予定してるってことなんす。ま、コレはこれで話が長くなるので別エントリで詳しく。

と言うことで、1つ目。筑紫の・・檍原あはぎはら。まずチェック。

次!

②日向=日の出の方角に直接向いてるところ

日向ひむか」は固有名詞として。つまり地名として使われてます。

なので、

あえて「日向」という地名を選び、そこに象徴的な意味を込めた、

と考えるのが○。

ちなみに、「日向」については、

  • 「朝日の射す所」(日本古典文学大系頭注)
  • 「朝日のさす東向き、の意か。」(新編日本古典文学全集頭注)

といった説明をされる事が多いのですが、、、

コレ、それっぽさはあるんだけど、何を根拠に「朝日の射す所」と言ってるのか不明確で。当サイトとしては、しっかりした文献根拠をもとに「日向」を解説。

それが、コチラ。

「景行天皇 十七年 三月条」の一節。「日向」の地名起源と位置付けられる内容が伝えられてます。

 子湯県こゆのあがた(現在の宮崎県児湯郡・西都市)に行き、丹裳小野にものおの(地名だが未詳)でしばらく滞在した。そのとき、東を望んで、左右のお付きの者に言った。「この国は真っ直ぐに日の出る方に向いている。」 それで、その国を「日向ひむか」という。

幸子湯県、遊于丹裳小野。時 東望之 謂左右曰 是国 也 直向於日出方。故 号其国 曰 日向也。 (『日本書紀』「景行天皇十七年三月条」より抜粋)

つまり、

「日向」とは、「東望」して「直向 於日出 方」という場所ってこと。

日向=日の出る方角に直接向いてる

てのが原義であり、この、東に向いてる感、日の出方向に直接向いてる感が大事なんですね。

禊祓の場所ですから。今、まさに上りつつある日の出の方角に向かって禊をする、、、神聖な儀式を行う場所としてピッタリな地名選択です。

と言うことで、2つ目。筑紫の日向の・・・檍原あはぎはら。チェックです。

次!

 

③小戸=水の流れが狭まったところ=浄化にちょうど良い水の流れがある

筑紫、日向、と地名が続いてきましたが、③「小戸」は地名に非ず。普通名詞で、意味は「狭まった水の出入口」のこと。

コレ、よく「河口付近」といった訳を当てられますが、実は、「小戸」単体では「河口付近」の意味にはなりません。

ポイントは、

水の流れと対応することで初めて(海へ流れ出る)河口付近という意味が出てくる

ってこと。水の流れ大事。

実際の用例として以下、小戸と瀬のコンビネーションをご紹介。

『万葉集』から。2例。

しらゆふなつみ山高み白木綿花に落ちたぎつ菜摘の川門見れど飽かぬかも(9・一七三六)

そほりゐ大瀧を過ぎて菜摘に傍居て清き川瀬を見るがさやけさ(9・一七三七)

あまのがはいづく天漢河門八十有り何にか君がみ船を吾が待ち居らむ(10・二〇八二)

秋風の吹きにし日より天漢に出で立ちて待つと告げこそ(10・二〇八三)

と、いずれも、

「川門+瀬」、「河門+瀬」のセット表現になってます。

で、

今回の「小戸」も、この後で登場する「瀬」と「海」の水表現とセットで解釈されることで、ようやく「川が海に流れ込む河口付近の戸が小さいところ=狭まったところ」という意味になる。

コレ、言葉の運用のお話。まずチェック。

で、

もっと言うと、

なんで「小戸」なの?

というのが大事で。

これはつまり、

ココでないとみそぎができないから。

という事でチェック。

程よい水の流れが必要で。

大戸=(河口付近の)大きく広がった所、だと水の流れが無いのと同じで、禊による穢れの除去ができない、という話。

それに対して、小戸であれば、ちょうど良い水の流れがある。どちらかというと、「水の流れ」を伝えるべく、あえて「小」という字を使ってる。てことなんす。

ちなみに、、

実際、伊奘諾尊が禊をするのが、瀬(川)と海の2箇所。

一覧整理すると以下。

便濯之於中瀬 淡水 流れ 「上・中・下」(瀬) 八十柾津日神、神直日神、大直日神
又沈濯於海底~又潜濯於潮中~又浮濯於潮上~ 海水 深さ 「底・中・上」(海) 底津少童命 次底筒男命 
中津少童命 次中筒男命
表津少童命 次表筒男命

と、

まー良くできてます。

  • 瀬・・・淡水・・・流れ・・・上・中・下
  • 海・・・海水・・・深さ・・・底・中・上

フレームをもとに設定されてる。

死の穢れを身に付着してしまったわけで、清浄の極みに到るには2段階ステップが必要だったんすね。

  • 瀬の流れがある・・・汚穢除去→汚れの除去
  • 海の深さがある・・・更清浄化→さらなる浄化

流れから深さへ。落としてから浄化。段階を追ってキレイになる私。

そのための特別な場所が「小戸」。水の流れ、そして川(瀬)と海、しっかりチェックです。

と言うことで、筑紫の日向の禊に相応しい水の流れのある・・・・檍原あはぎはら

次!

④橘=永遠に照り輝き続けるスーパー果実

「橘」は、そもそもはミカン。ここでは地名、固有名詞としてチェック。

まず、『万葉集』から「橘」が地名として使用されてる例をご紹介。

No.179

橘の嶋の宮には 飽かねかも 佐田の岡辺に 侍宿とのゐしに行く

橘の島の御殿では もの足りないと思うから 佐田の岡辺の御陵へも お仕えしに行くのでしょうか

→草壁皇子への哀惜の情が尽きないことを詠む。「橘」は奈良県高市郡明日香村橘。現在は飛鳥川の西岸となってるのですが、当時は東岸。しかも鳥庄あたりまで広く含めたエリアだったようです。

なので、

先ほどの「日向」と同様、まず伝えたいメッセージに相応ふさわしい地名選択、からの、象徴的な意味を込めるパターンとしてチェック。

象徴的な意味はコチラ。

同じく『万葉集』から2首。

No.4063 常世物とこよもの この橘の いや照りに 吾大皇わごおほきみは 今も見るごと 

→ 常世の国の物であるこの橘の ますます照り輝く姿のように 吾が大君は今も見る通りますます お栄ください

No.4064 大皇おほきみは 常磐ときはにまさむ 橘の 殿の橘 ひた照りにして 

→ 大君は常磐のように不変でいらっしゃいますでしょう 橘家の御殿の橘の実も ひたすらに照り輝いているように

と。

そのオレンジ色の「実」は照り輝く太陽を、照り輝く象徴として運用されてるのが分かりますよね。さらに、付け加えると、「葉」は常緑=落ちない・枯れない=永遠・不死を表象。

なので、
橘自体は、神話的には、永遠に照り輝き続けるスーパー果実として位置付けられてる。
もとはと言えば、常世国の「非時香菓ときじくのかくのこのみ」。

●必読→ 非時香菓(ときじくのかくのみ)|常世の国に生えるという不老長寿の実が奈良に!?田道間守が持ち帰った伝説の非時香菓(橘)を近鉄電車の傍で確認した!

ということで、

橘には、「永遠に照り輝き続ける~」といった意味が込められてるって事でチェック。

まとめると、、、

  1. 筑紫(国)=九州は、天祖誕生の地&天孫降臨の地
  2. 日向=日の出の方角に直接向いてるところ
  3. 小戸=水の流れが狭まったところ=浄化にちょうど良い水の流れがある
  4. 橘之=永遠に照り輝き続けるスーパー果実

といった修飾語、、、

からの、、

檍原あはぎはら」!

つなげてみようか。

(のちの天孫降臨の地になる)筑紫国の、日の出の方角に直接向いている、ちょうど良い水の流れのある狭まった所の、永遠に輝き続ける、、、

檍原あはぎはら」!

と、ようやっとココまで来た、、、涙

以上のいろんなアレコレを含めた、「筑紫日向小戸橘之檍原」の全体のコンセプトは、

祭祀の場。聖地。

コレ。

伊奘諾尊が禊祓いをするわけなので、やはり「祭祀」というキーワードは絶対に外すことはできません。

で、

たくさんの修飾語も、「祭祀の場」的な要件である、

  1. 日の出の方角に直接向いてる事
  2. 常緑&万年木の生える「原」である事
  3. 浄化用の水(淡水、海水)と流れがある事

の3つに集約されるように設定されてます。

そして、

この聖地な感じを承けて、、、日本建国の地「橿原」へ繋げてる。ココ、激しく重要。

橿原=日本の建国の地。天皇として政治や祭祀を行う場所。ですから。

檍原と橿原を比較してみる。

檍原あはぎはら 橿原かしはら
浄化祭祀 政治祭祀
天上支配する天照大神の生誕地 地上支配する天皇の誕生地

先ほどご紹介した日本最古の字書(漢和辞典)『新撰字鏡』。ここで、「橿、一名檍、万年木(橿は、檍の別名で、万年木である)」と記されてましたよね。

つまり、

檍原と橿原は、同じ植物=同じ意味をもとに、「祭祀」や「生誕の地」と言ったテーマが設定されてる、ってこと。

そこに込めている想い・願いは、
永続性や魔除けパワー

そして、

特に、「橿原」については、読み方は違えど同じ植物漢字を使用することで、

日本建国、天皇即位のルーツが「檍原」にあること、
それにより橿原における天皇即位の正統性や権威付けが強められることを狙ってる、

ってこと、是非チェック。

檍原が橿原へ繋がる「わたり」として位置づけられるんですね。

盛り込みすぎ。、、ま、結論はソコなんです。

 

まとめ

筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら

黄泉から帰還した伊奘諾尊が、
黄泉の穢れ汚れを落とすために禊祓をした地。

この禊を通じて、
日本神話のメインプレイヤーともいうべき、天照大神、月読尊、素戔嗚尊が誕生。

日本神話的には、この地は

祭祀の場。聖地。

として位置づけられており、
非常に重要な意味を持たせてます。

ですが、修飾語が多すぎて、よー分からんワードでもあって。

修飾語の多さ=盛り込みたい想いの強さ、
なんで、編纂チームの想いを受け止めつつ、要素分解して解釈していくのが〇。

ということで、

①~④の修飾語、そして最後の「檍原あはぎはら」。といった構図でチェック。

  1. 筑紫(国)=九州は、天祖誕生の地&天孫降臨の地
  2. 日向=日の出の方角に直接向いてるところ
  3. 小戸=水の流れが狭まったところ=浄化にちょうど良い水の流れがある
  4. 橘之=永遠に照り輝き続けるスーパー果実

ということで、

(のちの天孫降臨の地になる)筑紫国の、日の出の方角に直接向いている、ちょうど良い水の流れのある狭まった所の、永遠に輝き続ける「檍原あはぎはら」。

さらに、「檍原あはぎはら」自体にも、

  1. あはぎは、弓に使われていた木。弓は軍事力の象徴である一方で、破魔矢・魔除けのように、邪や魔を撃退する(祓う)意味あり。つまり、黄泉の穢れを除去する(撃退する)禊祓みそぎはらいに相応ふさわしい場所としての意味を持たせてる。そのためのあはぎ
  2. あはぎは、万年木。万年=永遠性(永遠の命、不死にもつながる)の意味を持つ木。つまり、魔や邪を撃退するパワーの永続性、未来永劫この地は魔除けパワースポットである意。
  3. 原は、平らで広大な土地のこと。天子の住む宮都を造営できる広大な原っぱ。天武天皇即位の「飛鳥浄御原宮」、その後の「藤原宮」など、古代、原には宮を造営。「高天原」も同様の考え方。非常に尊い場所、それが原。
  4. 「檍原」は「橿原」に繋がる聖地である。天照大神誕生の地=檍原、神武天皇即位の地=橿原。つまり橿原での日本建国、天皇即位のルーツが「檍原」である。これにより、いよいよ天皇即位の正統性や権威付けが強められる。

ということもチェック。

全部まとめると

(のちの天孫降臨の地になる)筑紫国の、日の出の方角に直接向いている、ちょうど良い水の流れのある狭まった所の、永遠に輝き続ける「檍原あはぎはら」。邪や魔を撃退する(祓う)のに相応しい魔除けパワースポットとして永遠にあり続ける尊い原っぱ。そしてそれは後代、橿原へと引き継がれていく、、、

以上、マシマシ全部載せ丼の完成でした。

 

筑紫日向小戸橘之檍原つくしのひむかのおどのたちばなのあはぎはら」が登場する日本神話解説はコチラ!必読です!

『日本書紀』巻第一(神代上)第五段 一書第6 ~人間モデル神登場による新たな展開~

12/11/2020

 

神話にちなむ伝承地、神社

神話をもって旅に出よう!

今回ご紹介した神話にちなむスポットはコチラです!

日向国 小戸神社

瀬=現在の大淀川に比定する説あり。小戸神社はその意味で、バッチリな場所にある神社です。

住所:宮崎県宮崎市鶴島3-93

一方で、
福岡県に求める説もあったり。その代表格がコチラ。公式HP無し!

小戸大神宮

住所:福岡県福岡市西区小戸2丁目

神話ロマンを感じる旅へ!レッツゴー!

 

本シリーズの目次はコチラ!

日本書紀の目的と編纂方法|神代から歴史へ直通!それアリ??『日本書紀』の目的と編纂方法に隠されたヒミツを徹底解説!

05/06/2019

日本神話とは

天地開闢

天地開闢とは? 日本神話が伝える天地開闢を日本書紀や古事記から徹底解説!

01/07/2016

ついでに日本の建国神話もチェック!

【保存版】神武東征神話を丸ごと解説!ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

01/13/2016
神武東征神話1

神武天皇の家系図|分かる!神武東征神話|天照大神の第五世代 子孫(来孫)であり、海神の孫でもある件

01/20/2016

参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)

【中古】 日本書紀 史注(巻第1) /山田宗睦(著者) 【中古】afb
筑紫日向小戸橘之檍原

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他