天浮橋とは? 天にあって下界全体が見渡せる橋

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日本神話に登場する、重要ワード、重要エピソードをディープに掘り下げる「日本神話解説シリーズ」。

今回は、『日本書紀』をもとに

天浮橋あまのうきはし

をお届けします。

天浮橋あまのうきはしは、日本神話に伝える「天空てんくうに浮かぶ橋」のこと。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋で。ここから地上世界の様子がまー良く見えるらしい。

天と地をつなぐのは、神話的に言えば「みはしら」。第五段で「天柱あまのみはしら」として登場。天浮橋あまのうきはしはあくまで天上にある橋で、地上と繋がってるわけではありません。

今回は、そんな天浮橋あまのうきはしについて、文献学的アプローチをもとにディープに解説します。

 

天浮橋とは? 天にあって下界全体が見渡せる橋

天浮橋とは? 登場場面

まずは、天浮橋あまのうきはしとはどんな橋なのか?

その登場場面を『日本書紀』の現場からチェック。

登場するのは、2か所。以下、順にご紹介。

『日本書紀』巻第一(神代上)第四段〔本伝〕

 伊奘諾尊いざなきのみこと伊奘冉尊いざなみのみこと二柱ふたはしらの神は、天浮橋あまのうきはしの上に立って共にはかり、「この下の底に、きっと国があるはずだ。」と言った。そこで、天之瓊矛あまのぬほこを指し下ろして探ってみると海を獲た。そのほこの先から滴り落ちた潮が自然に凝り固まり、一つの嶋と成った。それを名付けて磤馭慮嶋おのごろしまといった。

 伊奘諾尊・伊奘冉尊、立於天浮橋之上、共計曰、底下豈無国歟。廼以天之瓊矛、指下而探之。是獲滄溟。其矛鋒滴瀝之潮、凝成一嶋。名之曰磤馭慮嶋。 (『日本書紀』巻第一(神代上)第四段 本伝より一部抜粋)

『日本書紀』第四段

『日本書紀』巻第一(神代上)第四段 本伝 ~聖婚、洲国生み~

05/26/2019

 

『日本書紀』巻第二(神代下)第九段〔一書1〕

この時、勝速日天忍穂耳尊かちはやひあめのおしほみみのみこと天浮橋あまのうきはしに立って見下ろし、「かの地はまだ平定されていない。こちらになびいていない頑強な国だ」と言って、再び還り登って、降りなかった理由を詳しく申し上げた。

是時勝速日天忍穂耳尊。立于天浮橋而臨睨之曰。彼地未平矣。不須也。頗傾也凶目杵之国歟。乃更還登。具陳不降之状。 (『日本書紀』巻第二(神代下)第九段〔一書1〕より一部抜粋)

ということで、

いずれの伝承も、エライ神が、天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋として登場してるのが分かります。

 

天浮橋あまのうきはし」=天にあって下界全体が見渡せる橋

日本神話に登場する2つのシーンから、天浮橋あまのうきはしをチェックできたところで、2つの伝承でんしょうに共通するところから、以下ポイント解説。2点。

天浮橋あまのうきはしは、天空に浮かぶ橋。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋

文字通り、「天空てんくうに浮く橋」ということで「天浮橋あまのうきはし」。天神あまつかみが、天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋のことです。あくまで天にあります。

天と地をつなぐのは、神話的に言えば「みはしら」で。第五段で「天柱あまのみはしら」として登場します。ココ一緒にしないでね。

天は、少なくとも二層構造になっていて。

  • 上層:高天原たかあまのはら
  • 下層:あまはら

天浮橋あまのうきはしは、高天原たかあまのはらからあまはらにかけて架かっていた橋と思われます。

根拠は、第九段〔一書1〕。

地上への降下にあたって、勝速日天忍穂耳尊かちはやひあめのおしほみみのみこと天浮橋あまのうきはしに立って見下ろしますが、葦原中国あしはらのなかつくにがまだ平定されていない=安全でない状態だとして、再びかえり登って報告をします。

かえり登って(原文:還登)」とあるわけで、橋からは上へ登る動きがともなうわけですね。

勝速日天忍穂耳尊かちはやひあめのおしほみみのみこと天照大神あまてらすおおかみの子として位置づけられているので、住んでいた場所は当然、高天原たかあまのはら

で、そこから地上へ降下するために、天浮橋あまのうきはしに行って地上を見下ろす。そしてかえろうとして登った訳ですね。つまり、天浮橋あまのうきはし高天原たかあまのはらからあまはらにかけて架かっていた可能性が高いと言う訳です。

天神あまつかみが地上へ降りてくる途中にある橋であり、より正確に言うと、高天原たかあまのはらからあまはらにかけて架かっている橋、というイメージ。

高天原の位置

▲成層圏を天原として考えると、高天原はそれより上、高度100km前後にあると想定され、従って、天浮橋も高度100kmから50kmくらいまでに架かっていた巨大な橋だったのではないかとロマンを広げてみました。

●参考:→天之瓊矛/天沼矛|矛で嶋を成す?国生みで二神が使用した特殊な矛「天之瓊矛/天沼矛」を徹底解説!

 

天浮橋あまのうきはしは、あくまで天空にあり、天神が天上から下界の様子を察知する場合のみ登場

天浮橋あまのうきはしからは、地上世界のことが良く分かるようです。

神話世界の考え方として、

とうといお方はまず、これから向かう先の状況が確認できるナイススポットに立つ!

というのがあります。とうといお方になにかあっては大変です。事前に、これから行くところについて察知する、というのは重要事項。そのために、天浮橋あまのうきはしが登場するんです。

このことから、天浮橋あまのうきはしからは地上世界のことが良く分かるようになっていることが分かります。これもしっかりチェック。

 

まとめ

天浮橋あまのうきはし

日本神話をもとに天浮橋あまのうきはしを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

天浮橋あまのうきはしは文字通り、「天空てんくうに浮かぶ橋」のこと。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋で。ここから地上世界の様子がまー良く見えるらしい。

ポイントは以下、

天浮橋あまのうきはしは、天空てんくうに浮かぶ橋。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋

天浮橋あまのうきはしは、あくまで天空てんくうにあり、天神あまつかみが天上から下界の様子を察知する場合のみ登場

以上しっかりチェックされてください。

 

神話を持って旅に出よう!

● 天浮橋伝承地:地上に天浮橋がある?!そんなバカな!??

江戸時代につくられたそうです。『淡路名所図会』や『淡路国名所図絵』にも採りあげられており、当時結構有名だったと推定されてござる。

 

天浮橋が登場するのはコチラ!

『日本書紀』第四段

『日本書紀』巻第一(神代上)第四段 本伝 ~聖婚、洲国生み~

05/26/2019

 

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他