波波迦の木 採取神事|大嘗祭用の斎田を決める「亀卜」に使用する神木採取の儀!神代から継承された奥ゆかしい神事の様子をご紹介!

 

2019年1月、奈良県橿原市にある天香山神社で「波波迦の木を採取する神事」が斎行されました。

天香山神社境内に自生する「波波迦の木」から枝を採取する神事で、

採取された枝は、宮内庁へ運ばれ、大嘗祭用の重要儀式に使用される、というモノ。

その重要儀式とは、「斎田点定さいでんてんていの儀」。

何がスゴいって、

神代で行われていた占いであること。

具体的には、「亀卜」と呼ばれる、亀の甲羅の割れ目から神意を占うという特別な卜占方法。

神の時代ですよ!

しかも、天岩屋戸神事にルーツのある神事!!

それが、ココ、奈良県橿原市にある天香山神社と繋がってるなんて!なんならその現場だなんて!スゴすぎです。

今回は、そんな超絶な「波波迦の木を採取する神事」の様子をたっぷりご紹介します。

奈良最高やで。

 

波波迦の木 採取神事|大嘗祭に供進される特別な稲を育てる斎田を決める「亀卜」に使用!神代から継承された奥ゆかしい神事の様子をご紹介!

波波迦の木を使った占い ~斎田点定の儀~

まずは、日本神話的背景から。

コレをチェックすれば、
これからご紹介する神事のスゴさが、その超絶な奥ゆかしさがご理解いただけるはず!

2019年は御代替りの年。

必読:御代替りとは?日本神話に根ざす御代替り(皇位継承)の全貌を徹底解説!

御代替りにあたってはホント、膨大な儀式がラインナップされてるのですが、

中でも重要なのが、大嘗祭。

必読:大嘗祭(だいじょうさい)とは?天皇一代につき一度だけ斎行!日本神話に根ざす大嘗祭の全貌を徹底解説!

で、この大嘗祭に向けた一連の儀式のなかに、

「斎田点定の儀」という儀式があります。

コレ、要は、

大嘗祭に供進する「特別な稲」を育てる田んぼを決める儀式

のことで。

ポイントは、その決め方にあります。

それが、

亀卜きぼく

と呼ばれる、特別な占い方法。

亀の甲羅、現代ではアオウミガメの甲羅が使われるのですが、この甲羅を焼いて、ヒビ割れの仕方によって田んぼを決める、つまり神意を占う、というモノ。

亀の甲羅

▲占い用に加工された亀の甲羅。産経新聞(https://www.sankei.com/life/news/190511/lif1905110028-n1.html)より。

で、

この甲羅を焼くために、つまり、甲羅にヒビを入れるために使われるのが「波波迦の木」という訳。

具体的には、手で持てるサイズに切られた波波迦の木の枝、その先っちょを忌火(清浄な火)で焼く。すると、先っちょが真っ赤に焼ける。この状態で甲羅に焼けた先端を押しつける、という内容。

先っちょを焼いて、押しつけて、を何度か繰り返すと、あるとき「ポクっ」てヒビが入る。このヒビ割れによって占いをするのです。

波波迦の木

▲天香山神社に伝わる「波波迦の木」の枝

この、

「亀卜」とよばれる特別な占いが「斎田点定の儀」で行われ、それによって、神聖な田んぼを決定する、定点する、という訳ですね。

定点される田んぼ、そのエリアは2箇所で、それぞれ「悠紀ゆき」「主基すき」と呼ばれます。

その上で、「悠紀」「主基」の両地方には、「斎田さいでん」という特別な田んぼが設定され、この斎田さいでん悠紀田ゆきでん主基田すきでん)で稲を植え育て、秋になって収穫された稲を大嘗祭に供納する流れ。

大嘗祭という特別な場ですから、特別な稲が必要で、そのために、特別な選び方をして決めてる訳ですね。

ちなみに、今回の大嘗祭用には、
斎田のうち東日本の「悠紀田ゆきでん」を栃木県に、西日本の「主基田すきでん」を京都府とすることが決まっております。

このほか、なんで「悠紀」「主基」なの?とか、古代ではどうだったの?とかオモシロポイントはコチラで↓

必読:大嘗祭(だいじょうさい)とは?天皇一代につき一度だけ斎行!日本神話に根ざす大嘗祭の全貌を徹底解説!

本エントリでは、神話の時代の占いをご紹介。

それがコチラ。

天岩屋あまのいはや神話に登場する神々の占い。素戔嗚尊の乱暴狼藉により、天照大御神は天岩屋戸に幽居。世界はことごとく闇に包まれます。そこで八百万の神々が集まって協議、神事を行い「天照大御神よ出てきておくれ大作戦」を実行します。その神事に登場するのが件の占い。

天兒屋命あめのこやねのみことは、布刀玉命ふとたまのみことを召して、天香山あまのかぐやま真男鹿まをしかの肩をそっくり抜いて、天香山の天波波架あまのははかを取って、占合うらないをさせた。 (『古事記』上巻より一部抜粋)

と。

ココでは、鹿の肩骨と天波波架あまのははかの木を使って占いをしていますよね。獣骨と木。方法は先ほどご紹介した内容と同じ(のはず)。

つまり、

  • 天香山神社に伝わる「波波迦の木」は、神代の重要神事に起源を持つもんのスゴい木
  • 大嘗祭用に定点の儀で行われる「亀卜きぼく」は、神代から受け継がれてきたもんのスゴい占い

ということで、ダブルでスゴい。

神の時代から継承されてきた手法を大嘗祭で使ってるなんて、、、壮大すぎです。神話と歴史が入り交じるロマン発生地帯、それが奈良にあり!

ということで、予備知識として、その重要感やスゴさとあわせてチェックです。

 

「波波迦の木を採取する神事」の様子

さて、ココカラは「波波迦ははかの木」を採取する神事の様子をたっぷりご紹介。

神事が行われたのは2019年1月13日@天香山神社

ちなみに、この神事を行う日も、天香山神社で行われた占いによって決定された経緯あり。天香山神社のご祭神は、神意を伺う占いの神「櫛眞命」ですから。なにかと占いな感じです。

必読:天香山神社|神意を伺う占いの神「櫛眞命」を祭る!天石屋戸神話で使われる波波迦の木が境内に生える?超絶神話ロマンスポット!

流れとしては、

波波迦ははかの木」の枝を伐採し宮中に運ぶ。

実は、昨年の段階で橿原神宮経由で天香山神社に連絡がはいり、いろんな準備を経て本日に至るという流れです。

波波迦ははかの木」採取神事の当日は晴れ。お天気に恵まれ、天香久山が美しい。ほんとゆったりとした山容ですよね。

 

▲いつもは静かな天香山神社の境内が、この日は人でいっぱい。

 

▲まずは記帳。緑の装束を着用されてるのは地元の区長さん。大嘗祭用の儀式ですから、村をあげてのお祭りじゃー!!!

 

▲こちらが「波波迦ははかの木」。

 

▲「波波迦ははかの木」に架けられた梯子。コレに登って枝を採取しようという試みであります。

 

▲境内奥にある拝殿前の様子。拝殿内は、宮司様はじめ神職の皆さんが右手、関係者の方々が左手に着座。

 

▲ほんと、たくさんの方々がご参列されてました。ワクワク、、、

 

▲報鼓奏笛、開辞、修祓之儀、降神之儀、献饌之儀、祝詞奏上などが進みます。

天香山神社の宮司様は、笛がお上手で、なんか毎度毎度ステキな感じなんですよね。

本殿前での一連の儀式が終わると、いよいよ「波波迦ははかの木」採取の儀!

▲神事の場を、本殿から「波波迦ははかの木」の前へ移動。

 

▲宮司様はじめ神職の皆さんが移動されてきました。

 

▲「波波迦ははかの木」を清め祓います。

 

▲採取役の方が二名、準備を始めます。

 

▲上り始めます。

 

▲見定めておいたであろうポイントに到着。枝の採取を開始。

 

からの、、、

採取成功!!!

こ、これは歴史的な瞬間なのではないだろうか、、、(゜Д゜)ワナワナ

てか、、、結構、採取したね。そんなに使うの???

 

▲採取した枝を、本殿へ。神前へお運び申し上げます。

 

▲拝殿裏手の様子。神前へ奉ります。

 

なんか、、、神々しい感じが勝手にしております。美しい。。。

 

ということで、神事自体は以上で終了。

あとは関係者の方々のご挨拶。

▲こちら、我らが橿原市長さん。

▲こちら大神神社の宮司さん。

▲最後はみんなで記念撮影。

ということで、「波波迦ははかの木」の採取神事は無事、滞りなく終了いたしました。

神前にお供えされた「波波迦ははかの木」の美しさがめっちゃ印象に残る神事でした。

 

帰り道。橿原神宮方面を望む。やっぱ奈良良いな~。神話と歴史と神事と宮司様はじめ地元の皆さんの想いと、、、いろんなロマンが交錯するステキな場所や。

 

まとめ

波波迦の木採取神事

2019年1月、奈良県橿原市にある天香山神社で斎行された「波波迦の木を採取する神事」。

神代の天岩屋あまのいはや神事に起源をもつ「波波迦の木」から枝を採取する神事で、

採取された枝は、宮内庁へ運ばれ、大嘗祭用の重要儀式「斎田点定の儀」に使用されます。

「亀卜」と呼ばれる、亀の甲羅の割れ目から神意を占うという特別な占いが行われ、甲羅にヒビを入れるために使われるのが「波波迦の木」なんです。

神の時代から継承された非常に由緒ある神事。その受け継がれてきた時間の長さや人々の想いを感じさせていただいた素晴らしいお祭りでした。

 

大嘗祭関連についてはコチラで!

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さるたひこ

日本神話ナビゲーター / 日本神話研究家 / 日本神話講演家

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他