『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。
今回は
「久久能智神(句句迺馳)」
伊耶那岐命と伊耶那美命の二柱の神が生んだ「木の精霊」として、『古事記』上巻、神生み神話で登場。『日本書紀』では「句句迺馳」として伝えます。
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
久久能智神くくのちのかみ・句句迺馳くくのち|木の精霊・神!大八嶋国における自然物の生起プロセスで誕生し、風神の存在を木々の揺らぎによってそれと知らせる
目次
久久能智神とは?その名義
「久久能智神」= 木の精霊・神
伊耶那岐命と伊耶那美命が生んだ「木の精霊」。もともとの言葉のつくり的には、木の精霊。『古事記』的に「神」を後付けし、神化してます。
「久々」は、大きく2つ説アリ。
①「茎」の意
「上つ毛野 佐野の茎立ち 折りはやし 我れは待たむゑ 来とし来ずとも(可美都氣野 左野乃九久多知 乎里波夜志 安礼波麻多牟恵 許登之許受登母)」(巻14-3406)にある、「茎立(九久多知・くくたち)」から、茎の意。
他にも、「伎波都久の岡の茎韮我れ摘めど籠にも満たなふ背なと摘まさね(伎波都久乃 乎加能久君美良 和礼都賣杼 故尓毛美多奈布 西奈等都麻佐祢)」(巻14-3444)にある、「茎韮(久君美良・くくみら)」など。
②「木木」の古形・・・木を「く」というのは「木の物(くだもの)」の「く」と同じとする。『日本書紀』神代でも、「木の祖句句廼馳」「木神等は名を句句迺馳と言う」ともある。
「智」は「精霊」の意で、「大蛇(をろち)」や「雷(いかづち)」の「ち」と同じ。ちなみに、「海神(わたつみ)」 や 「山神(やまつみ)」の「み」(神霊)より神格が低い。
久久能智神が登場する日本神話
「久久能智神」が登場するのは、『古事記』上巻、神生み神話。以下のように伝えてます。
次に風の神、名は志那都比古神を生み、次に木の神、名は久久能智神を生み、次に山の神、名は大山津見神を生み、次に野の神、名は鹿屋野比売神を生んだ。またの名は野椎神という。(志那都比古神より野椎に至るまで、幷せて四神ぞ)。
次生風神・名志那都比古神(此神名以音)、次生木神・名久久能智神(此神名以音)、次生山神・名大山上津見神、次生野神・名鹿屋野比賣神、亦名謂野椎神。自志那都比古神至野椎、幷四神。 (引用:『古事記』上巻の神生みより一部抜粋)
ということで。
系譜は以下の通り。
▲「久久能智神」は、大事忍男神から始まる10柱の神々のあとに誕生。あくまで、伊耶那岐命と伊耶那美命の2神が生んだ神として。
大八嶋国に生起する自然現象のような神だったのが、段階的に、より具体的な自然物を表すようになっていくプロセスで誕生。さらに、「(志那都比古神より野椎に至るまで、幷せて四神ぞ)。」とあり、ひとつのカタマリとして位置づけられてる。
ポイント2つ。
①『古事記』ならではの、壮大なストーリーらしきものあり!
実は、ココで誕生する4神には、『古事記』的なストーリーらしきものがあって。。
最初の風神は、大八嶋国を生んだ後だからこそ何もない状態、きっと生まれたての神々と朝霧が立ちこめてるだけの状態で、それを吹き払った気息が化して神(志那都比古神)となったイメージ。 そして、木の神(久久能智神)は、風神の存在を、木々の揺らぎによってそれと知らせるもの。 さらに、山の神(大山津見神)は、山林、豊かに木々の繁る山だから、国土が豊かに成長しているさまを表象。 最後に、野の神(鹿屋野比賣神(野椎神))は、山・野・原という大地を構成する3つの場の中間地帯。このあと、葦原中国の葦原が生まれることを予定する。そしてきっとそこには人間の姿も・・・
そのために、風、木、山、野という4柱の神が誕生してる。修理固成のための壮大なストーリーをチェック。
次!
②『日本書紀』をベースに作られてる??比較すると分かりやすい!
「久久能智神」誕生のシーンは、実は、『日本書紀』第五段〔一書6〕の冒頭部分と同じになってます。参考として以下。
その後に、伊奘諾尊は、「私が生んだ国は朝霧だけがかすんで立ちこめ満ちていることよ。」と言った。そこで吹き払った気が化して神となった。名を級長戸辺命と言う。また級長津彦命と言う。これが、風の神である。また飢えた時に子を生んだ。名を倉稲魂命と言う。また、海神等を生んだ。名を少童命と言う。山神等は名を山祇と言い、水門神等は名を速秋津日命と言い、木神等は名を句句迺馳と言い、土神は名を埴安神と言う。その後に、悉くありとあらゆるものを生んだ。(引用:『日本書紀』巻第一(神代上)第五段〔一書6〕より)
ということで。
『日本書紀』をベースに『古事記』風にアレンジされてるんです。
ポイントは、いずれの神も、大八嶋国に必要な神であり、それは、将来的には「瑞穂の国」になっていくために必要な神として生んでる、ってこと。
なんせ神生みという重要局面ですから。これからの神話展開につながる神が選ばれてる、ってことでチェックです。
久久能智神を始祖とする氏族
なし
参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。
「久久能智神」が登場する日本神話はコチラ!
「久久能智神」をお祭りする神社
● 公智神社 久々智氏族が木の祖神久久能智神(句句廼馳神)を氏神として奉祀!
住所:兵庫県西宮市山口町下山口3丁目14−30
● 志等美神社 伊勢神宮豊受大神宮の摂社!
住所:三重県伊勢市辻久留1丁目13
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