志那都比古神しなつひこのかみ|気息を長く吹く風の神。大八嶋国における自然物の生起プロセスで誕生

志那都比古神

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

志那都比古神しなつひこのかみ

伊耶那岐命いざなきのみこと伊耶那美命いざなみのみことの二柱の神が生んだ「風の神」として、『古事記』上巻、神生み神話で登場。

 

志那都比古神しなつひこのかみ|気息を長く吹く風の神。大八嶋国における自然物の生起プロセスで誕生

志那都比古神しなつひこのかみとは?その名義

志那都比古神しなつひこのかみ」= 気息を長く吹く風の神

伊耶那岐命いざなきのみこと伊耶那美命いざなみのみことが生んだ「風の神」。

「志」は、「気息」また「風」の意。

「那」は、「長い」の意。『日本書紀』の神生みで登場する「級長津彦命しなつひこのみこと」の「長」がもとになってます。

「都」は、助詞。

「比古」は、『日本書紀』の「級長津彦命しなつひこのみこと」の「彦」をもとにした『古事記』的変字法。

ということで

志那都比古神しなつひこのかみ」=「気息」+「長い」+助詞+「彦」の変字による「比古」= 気息を長く吹く風の神

 

志那都比古神しなつひこのかみが登場する日本神話

志那都比古神しなつひこのかみ」が登場するのは、『古事記』上巻、神生み神話。以下のように伝えてます。

次に風の神、名は志那都比古神しなつひこのかみを生み、次に木の神、名は久久能智神くくのちのかみを生み、次に山の神、名は大山津見神おほやまつみのかみを生み、次に野の神、名は鹿屋野比売神かやのひめののかみを生んだ。またの名は野椎神のづちのかみという。(志那都比古神より野椎に至るまで、幷せて四神ぞ)。

次生風神・名志那都比古神(此神名以音)、次生木神・名久久能智神(此神名以音)、次生山神・名大山上津見神、次生野神・名鹿屋野比賣神、亦名謂野椎神。自志那都比古神至野椎、幷四神。 (引用:『古事記』上巻の神生みより一部抜粋)

『古事記』上巻神生み

『古事記』神生みの原文と現代語訳|神生みの果てに誕生する火神と伊耶那美の死

11/08/2021

系譜は以下の通り。

志那都比古神

▲「志那都比古神しなつひこのかみ」は、大事忍男神から始まる10柱の神々のあとに誕生。

大八嶋国に生起する自然現象のような神だったのが、段階的に、より具体的な自然物を表すようになっていくプロセスで生まれます。さらに、「(志那都比古神より野椎に至るまで、幷せて四神ぞ)。」とあり、ひとつのカタマリとして位置づけられてる。

ポイント2つ。

①『古事記こじき』ならではの、壮大なストーリーらしきものあり!

実は、ココで誕生する4神には、『古事記』的なストーリーらしきものがあって。。

最初の風神かぜのかみは、大八嶋国おおやしまくにを生んだ後だからこそ何もない状態、きっと生まれたての神々と朝霧が立ちこめてるだけの状態で、それを吹き払った気息が化して神(志那都比古神)となったイメージ。 そして、木の神(久久能智神)は、風神かぜのかみの存在を、木々の揺らぎによってそれと知らせるもの。 さらに、山の神(大山津見神)は、山林、豊かに木々の繁る山だから、国土が豊かに成長しているさまを表象。 最後に、野の神(鹿屋野比賣神(野椎神))は、山・野・原という大地を構成する3つの場の中間地帯。このあと、葦原中国あしはらのなかつくに葦原あしはらが生まれることを予定する。そしてきっとそこには人間の姿も・・・

そのために、風、木、山、野という4柱の神が誕生してる。修理固成のための壮大なストーリーをチェック。

次!

②やっぱり『日本書紀にほんしょき』と比較すると分かりやすい!

少し話が飛びますが、、、上記内容は、実は、『日本書紀にほんしょき』第五段〔一書6〕の冒頭部分、

伊奘諾尊いざなきのみこと伊奘冉尊いざなみのみことは共に大八洲国おほやしまぐにを産んだ。その後に、伊奘諾尊いざなきのみことは、「私が生んだ国は朝霧だけがかすんで立ちこめ満ちていることよ。」と言った。そこで吹き払った気が化して神となった。名を級長戸辺命しなとべのみことと言う。」の箇所がベースになってます。

『古事記』単体では解釈が難しいのですが、『日本書紀』を踏まえると、その比較によってイメージができるようになるんです。

その他にも、、

木の神=句句迺馳くくのち、山の神=山祇やまつみ(第五段〔一書6〕、そして、野の神=草野姫かやのひめ、またの名を野槌のつち(第五段〔本伝〕、というように『日本書紀にほんしょき』をベースに差異化、あるいは『古事記こじき』風にアレンジされてたりします。

ポイントは、いずれの神も、大八嶋国おおやしまくにに必要な神であり、それは、将来的には「瑞穂みずほの国」になっていくために必要な神として生んでる、ってこと。

なんせ神生みという重要局面ですから。これからの神話展開につながる神が選ばれてる、ってことでチェックです。

 

ちなみに、、、

せっかくなので、『日本書紀』で伝える風の神についても補足解説。

『日本書紀』で風の神が登場するのは、第五段〔一書6〕

ここでは、伊弉諾尊の吹き払った息が風神「級長戸辺命」となり、その別名を「級長津彦命」としてます。

その後に、伊奘諾尊は、「私が生んだ国は朝霧だけがかすんで立ちこめ満ちていることよ。」と言った。そこで吹き払った気が化して神となった。名を級長戸辺命しなとべのみことと言う。また級長津彦命しなつひこのみことと言う。(引用:『日本書紀』巻第一(神代上)第五段〔一書6〕より)

ということで。

『古事記』との違いは大きく3つ。

①伊奘諾尊の吹いた気から生まれた。

『日本書紀』では、「吹き払った気が化して神となった。」とあり、朝霧を吹き払ったのは伊奘諾尊なので、つまり、伊奘諾尊の吹いた気息から生まれたのが風の神としてます。風は、自然現象として生まれたのではなく、あくまで伊奘諾尊の気息から。この違い、しっかりチェック。

②伊奘諾尊が単独で生んだ神である。

同様に、朝霧を吹き払ったのは伊奘諾尊なので、つまり、伊奘諾尊=陽神が単独で生んだ神として非常に重要な位置づけになってます。また、〔一書6〕における神生みの一番最初の神でもある。

③男女両性の神??女神的ネーミングと男神的ネーミングが混在!

『日本書紀』では、「名を級長戸辺命しなとべのみことと言う。また級長津彦命しなつひこのみことと言う。」とあり、最初に伝える「級長戸辺」の「ベ」は女性を意味する語と解されており、女神として伝えてる。しかも、直後に、またの名を「級長津彦」としており、「ひこ」とあるので男神。つまり、男女両性の神???くらいの勢いになってます。

ということで。

『古事記』では、このあたりを整理して、変字法もいれながら「志那都比古神しなつひこのかみ」として、男神として位置づけてる訳ですね。

 

志那都比古神しなつひこのかみを始祖とする氏族

なし

 

志那都比古神しなつひこのかみ」が登場する日本神話はコチラ!

『古事記』上巻神生み

『古事記』神生みの原文と現代語訳|神生みの果てに誕生する火神と伊耶那美の死

11/08/2021

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。

 

志那都比古神しなつひこのかみ」をお祭りする神社

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● 志那都彦神社(風の森神社) 高鴨神社と一対。「風の森峠」の頂上に位置

住所:奈良県御所市鴨神

 

● 科長神社 級長津彦命と級長津姫命を合祀

住所:大阪府南河内郡太子町山田3778

 

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日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他