神武東征神話を分かりやすく解説するシリーズ
日本神話.comでは、天地開闢から橿原即位までを「日本神話」として定義。東征神話は、その中で最大のクライマックスを彩るアツく奥ゆかしい建国神話であります。
言うと、
これを知らずして日本も神話も語れない!m9( ゚Д゚) ドーン!
ということで、今回は「兄磯城(えしき)討伐と磐余(いわれ)制圧」の2回目をお届けします。次回に本文をご紹介。
この神話、とても重要な意味を持っています。
兄磯城に勝利することで大和の東側全体の制圧が完了。これはデカイ。
その上で、最大の敵、長髄彦(ながすねびこ)との最終決戦へ挑む流れ。
高倉山で現状認識した絶望的状況をひっくり返して大和制圧へ向かっていく訳ですね。東征神話的にも超重要なポイントであります。
今回は、そんな重要ポイントの攻略をどのように成し遂げたのか?そのルートや場所を中心にお伝えします。
兄磯城討伐・磐余制圧②|これで大和の東を全て制圧!日を背に戦うと不思議なくらい勝ててしまう件
前回の内容はコチラ。
↑ここで確認したポイントは以下。
- 丹生川上(にふかわかみ)で「スーパー彦火火出見(ひこほほでみ)」になった神武。
- 高倉山で現状認識した敵殲滅にあたっては2段階でクリア。国見丘+磐余。
- 「兄磯城」は敵の名前で、実は兄弟。弟は「弟磯城(おとしき)」。二人合わせて「磯城彦(しきひこ)」。この兄弟も、「兄弟譚(きょうだいたん)」の類型が用いられている。兄反抗、弟帰順。
- ようやっとたどり着いた「中洲(ちゅうしゅう)=世界の中心地」における最初の敵が兄磯城。絶対に負けられない戦いがココにはある!
ということで、実際の戦闘・物語の展開を確認してみましょう。
高倉山に登った時、「磐余には敵があふれるほど集まっていた」ことが判明しているわけで、
しかも、コチラ↓のエントリで解説しましたが、敵は墨坂パワーを得てテンションをアゲまくってる。。。
さてどうするか?
神武の採った戦術は以下3点。
- まず、強敵「磯城彦(しきひこ)」兄弟に帰順の意思確認を行う。 →兄反抗、弟帰順。これにより、兄と弟を分断。敵を兄磯城に絞り込みます。
- 次に、磐余の敵パワーの源泉である墨坂の火を消す。 →これにより敵のアゲ目なテンションをサゲまくる。
- 最後に、囮の軍を派遣し敵をおびき寄せ、主力軍と挟み撃ちにして殲滅する。 ←これは臣下である「椎根津彦(しいねつひこ)」の献策によるもの。
なんか、イイ感じですよね?戦い方が上手くなってるような。。。
ちなみに、ココで言う「囮の軍」を本文では「女軍(めいくさ)」、主力軍を「男軍(おいくさ)」と表記しています。
これは、高倉山のシーンで八十梟帥らの布陣を説明する箇所でも使われた表現と同じ。
- 男軍:強力な精鋭部隊
- 女軍:力の劣る雑兵部隊
という事です。そういう名前の軍隊がいたわけではありません。
流れは3つで、
- 力の劣る雑兵部隊(女軍)を派遣し、敵主力部隊をおびき寄せる。
- と同時に、精鋭部隊(男軍)を派遣し、墨坂の火を消す。不意を衝く。
- その流れで、男軍は墨坂を越え敵の背後から攻撃し、先発の女軍と挟み撃ちで殲滅する。
なので、それを地図上でプロットするとこんなイメージになります。
より詳しく拡大すると、、、
何と言っても、「挟み撃ちにして殲滅した」と伝えてるので、「挟み撃ち」にするためには、前と後ろを取る必要があって。
忍坂から女軍を出して、そのあと、墨坂を越えてきた男軍とで挟み撃ちにするためには、どう考えても上記のような位置関係になる訳です。
- 女軍 雑兵部隊を派遣し、磐余の敵主力部隊をおびき寄せる。166号線上。
- 敵主力 女軍に誘われて忍坂の方へ入ってくる。←そうしないと後で挟み撃ちできない
- 男軍 墨坂を越え165号線経由で敵の背後から攻撃し、先発の女軍と挟み撃ちで殲滅する。
ちょうど、「外山(とび)」交差点を起点として、165号線と166号線が分岐します。
- 165号線は、長谷寺の方向、西峠を経て榛原へ続きます。
- 166号線は忍坂を経て、雨師、榛原へ続きます。
で、2つは墨坂≒榛原で合流するわけですね。
外山(とび)交差点はこんな感じです。
▲左が165号線→長谷寺・西峠へ。右が166号線→忍坂→雨師へ。
▲外山(とび)周辺写真。山が切れて、平地になるところです。
なので、きっと外山(とび)周辺、または、外山から忍坂の方面へ少し入った所で、挟み撃ちし、兄磯城を殲滅したのでしょう。
上記位置関係を頭に入れつつ、本文を読み進めると整理しやすいと思います。
さて、
この戦闘による勝利の結果、磐余も手中に収めました。
宇陀に入ったばかりのころ、つまり、熊野の山を頭八咫烏の導きで越えてきた当初はこんな感じ。
それがあれよこれよと紆余曲折を経て、、、
大和の東を全て制圧!
流石です。彦火火出見。
やはり、孔舎衛坂敗戦で学び、神策どおりに日を背に戦っている、つまり東から西へ攻め込んでいるからでしょう。負け知らず。
ここまでスゴイとは、むしろあっぱれ。
まとめ
「兄磯城(えしき)討伐と磐余(いわれ)制圧」
兄磯城に勝利することで大和の東側全体の制圧が完了。コレ、やっぱデカイ。
高倉山で現状認識した絶望的状況をひっくり返した訳です。東征神話的にも重要なポイントであります。
位置関係を押さえながら読み進めると理解がぐっと進むと思います。次はいよいよ本文と全体のポイントを解説します。
続きはコチラ!
目次はコチラ!
本記事監修:(一社)日本神話協会理事長、佛教大学名誉教授 榎本福寿氏
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)、他
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