『古事記』を中心に登場する神様をご紹介します。今回は「神産巣日神」です。
『古事記』では「神産巣日神」、『日本書紀』では「神皇産霊尊」として登場。
名義
神々しく神聖な生成の霊力
「神」は、神の事物や行為につける接頭語。
「産巣日」の「産巣」は「苔が生す」などの「むす」で、「生成する」意味の自動詞。
「日」は「霊的なはたらき」を意味する語で、神名の接尾語としてよく用いられます。
以上のことから、この神名の中核は、「高御産巣日神」と同様、「産す」にあると言えますが、一方で、「日」に中核があると考えることもでき、その場合は「高く神聖な、生成して止まぬ太陽」の意味となります。
→参考:「高御産巣日神|造化三神の一柱で、天之御中主神に次いで二番目に化成した独神で別天つ神。「産霊」ならびに「産日」の霊能を発動」
「神産巣日神」と「高御産巣日神」。
もともとは、「産霊・産日」の霊能をもつ一つの神であったのが、古代人の二元論的な思考方法から、修飾語を付けて「高御産巣日」と「神産巣日」の2つの神格として分離したものと考えられます。
以下、少々マニアックですが、論考をご紹介します。
「高御産巣日神」との対応からみると、「神産巣日神」の正式な名前は「神御産巣日神」であったと考えられます。
確かに、『日本書紀』神代紀上にも「神皇産霊」とあります。
ただ、「かむみむすひ」となると同じ音が重なるので「み」を脱落させて発音していたようです。それを文字化して「神産巣日」と書いたとすると、神名であることを踏まえると「御」を補って解釈する形になり、それが「神御産巣日神」になる、という訳です。このあたりはぐるぐるですが、へーという感じで押さえておいていただければと。
また、この神名の核が「日」にあるとする場合は、「産日むすひ」=太陽神と解釈できるため、「高御産巣日神」の霊能と同じになります。
いずれにしても、「生成・日=至上神」という「産霊・産日」の霊能をもつ一つの神であったのが、修飾語を付けて「高御産巣日」と「神産巣日」の2つの神格として分離したと考えられることはチェックしておいてください。
活動と位置づけ
造化三神の一柱で、天之御中主神、高御産巣日神に次いで3番目に高天の原に化成した独神で、身を隠している別天つ神。
⇒「造化三神(ぞうかさんしん)|天と地ができたその原初の時に、高天原に成りました三柱の神神。あとに誕生する神神に、彼らが活躍する世界を譲り、自らは立ち退く立場を取る奥ゆかしすぎる神神。」
⇒「独神(ひとりがみ)|単独で誕生し、男女の対偶神「双神」と対応する神。双神が生みなしたこの世界と神々とに関わり、その活躍を導き助力する存在」
⇒「別天神(ことあまつかみ)|神世七代に先立って特別に誕生した五柱の神々。『日本書紀』との比較から眺めることで、その位置づけや解釈に奥行きや深みがでてきます。」
生命体の蘇生復活を掌る至上神として重要な働きをします。
- 「五穀の起源」:「神産巣日の御祖の命」の名で、五穀の生みの御祖となります。
- 「大穴牟遅神の受難」:謀殺された大穴牟遅神を蘇生させます。これは、「産霊」の霊能によるものです。なので、冥界から顕界への転換を実現するくすしき神として位置づけられます。
- 「大国主神による国造り」:常世国の少名毘古那神の御祖として登場し、行き詰まる国造りに活を与えています。
- 「大国主神の国譲り」:「この、あが燧る火は、高天の原には、神産巣日の御祖の命の、とだる天の新巣の凝烟の」云々とあり、ここにおいても、この神を通じて高天の原が観念されており、「御祖の命」と呼ばれています。
このように、地上の人々の回生を希求する心理が、この神を母なる「御祖の命」と表現させたのだと推測されます。
ちなみに、この神は、のちに女神として信仰されるようになります。一方、高御産巣日神は男神です。『古語拾遺』
始祖とする氏族
- 「宿禰」姓:県犬養、間人、三島、滋野
- 「連」姓:委文、田辺、多米、竹田、爪工、天語、若倭部、屋。
- 「首おびと」姓:今木連、多米連、爪工連、物部連、和山守、和田、高家。
等々、、、この他にもあって非常に多い氏族展開。『新撰姓氏録』より。
登場箇所
『日本書紀』神代上:神皇産霊尊
『古事記』上:神産巣日神
参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より 一部分かりやすく現代風修正
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