黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地|あの世への入口!?黄泉比良坂伝説地を日本神話と合わせてディープにご紹介!

 

黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂伝説地」は、島根県松江市にある日本神話伝承地。

ココ、この世から黄泉国(死の国)へ至るとされる坂で、ココから先は死者の世界が広がる、、それはそれは恐ろしいスポット。

現地は、人気のない山の中にあって、ひんやりとした空気がただよっています。

黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂」は、日本最古の書物『古事記』に登場。伊邪那岐命が、死んだ伊邪那美命を追って黄泉国へ入る神話の中で伝えられてます。

今回は、日本神話ファンとしては絶対に外しちゃならない鉄板おススメスポットについて、現地の様子のほか、『古事記』の原文と詳しい解説付きでご紹介します!

 

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地|あの世の入口??この世から黄泉国へ至る坂の伝説地はおどろおどろしい空気が流れ込んでくるような気がした件

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地への道

黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂伝説地」は島根県松江市にある神話伝承地。

出雲は、出雲神話と呼ばれる独自の神話があります。対する日本神話の中でも出雲が登場するのですが、どちらかというと伊奘冉系の神々やそれにまつわる神話伝承地が多くあります。

今回ご紹介する「黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂伝説地」もその一つで、近くには揖夜神社があったりなど、このエリア一帯が伊奘冉系の死の匂いを発するミステリアスゾーンになってます。

揖夜神社|黄泉国の入口近くに鎮座し「死」を司る伊奘冉尊を祭る!なにかと死と関連するディープな神社。黄泉比良坂伝承地と合わせて要チェックなスポットデス

11/01/2016

場所は、島根県松江市東出雲町揖屋2407。

山陰道、9号線から山に入っていきます。

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地への道

▲9号線から松江方面を臨む。右手の山をぐるっと回っていく感じで、途中から山道らしき道を登っていきます。

 

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地2

▲若干不安になるような細い道ですが、気にせずどんどんゴー!でも黄泉の入口が近いから気をつけて。。。

 

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地3

▲こちら、「黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂伝説地」の駐車場。4~5台が停められるくらいのコンパクトパーキング。黄泉の入口近くにパーキングがあるなんて!便利な世の中になったもんだ!

 

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地4

▲駐車場右手に、「黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂伝説地」へ入っていく道があります。コンパクトパーキングをぐるっと迂回する感じで伝説地に入っていきます。

 

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地5

▲沼の主が棲んでいそうな雰囲気。。。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

そして、

こちらが黄泉の国への入口!!!

黄泉比良伊賦夜坂伝説地

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地6

おおおおおお!!!キタ━ヽ(゚∀゚ )ノ━━!!!!

黄泉の入口!!!

なんて恐ろしい場所なんだ!!!

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地7

? どこが入口? どれが塞いだ岩??

ちょっとよくわからない、、、涙

他、、、

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地8

昭和15年、「神蹟黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地」と刻んだ石碑が設立されました。昭和15年、何かと日本神話的に大きな転機となった年ですね。

●必読→ 神武天皇聖蹟調査(昭和15年)による「聖蹟顕彰碑」まとめ|大人の事情満載だけど確かなものもきっとある件 (マニア限定)

 

黄泉比良伊賦夜坂伝説地にまつわる日本神話

現地の状況はともかく、『古事記』で伝える日本神話をチェックしておきましょう。

 是に、(伊邪那岐命いざなきのみことは)其のいも伊邪那美命をその目で見ようとおもって、黄泉国よみのくにに追っていった。

 そうして、伊邪那美命いざなみのみことが)御殿の戸口から出て迎えた時、伊邪那岐命は語らひ「うつくしき我が妹のみこといましと作った国は、未だ作りえていない。だから還ろう。」と仰せになった。

 ここに伊邪那美命は答えて「残念なことです。早くいらっしゃらなくて。吾は黄泉戸喫よもつへぐひをしてしまいました。けれども、愛しき我が夫様よ、この国に入り来られた事は恐れ多いことです。なので、還ろうと欲いますが、しばら黄泉神よもつかみと相談します。を絶対に見ないでください。」と申し上げた。

 このようにまをして其の殿の内に還り入った間、とても長くて待ち切れなくなった。そこで、左の御美豆良みみづらに刺している湯津爪櫛ゆつつまぐし男柱をばしら一箇を取り折って、一つ火を灯して入り、ご覧になったところ、蛆がたかってごろごろ音をたて、かしらには大雷おほいかづちり、胸には火雷ほのいかづちが居り、腹には黒雷くろいかづちが居り、ほとには拆雷さくいかづちが居り、左の手には若雷わかいかづちが居り、右の手には土雷つちいかづちが居り、左の足には鳴雷なりいかづちが居り、右の足には伏雷ふしいかづちが居り、あはせて八の雷神いかづちがみが成り居た。

 是に伊邪那岐命、見畏みかしこみて逃げ還る時、其の妹伊邪那美命が、「に辱をかかせましたね。」と言って、即ち豫母都志許賣よもつしこめを遣わして追わせた。爾に伊邪那岐命、黒御縵くろみかづらを取って投げ棄てれば、乃ちえびかづらった。(豫母都志許賣よもつしこめが)是をひろってむ間に、逃げ行くのを、なおも追ってくる。また、其の右の御美豆良に刺せる湯津爪櫛を引き折って投げ棄てれば、乃ちたけのこが生えた。(豫母都志許賣よもつしこめが)是を拔き食む間に、逃げて行った。また、その後には、八くさの雷神に、千五百ちいほ黄泉軍よもついくさえて追わせた。そこで身に帯びていた十拳劒とつかのつるぎを拔いて、後手しりえでに振りながら逃げ来るのを、なおも追いかけて、黄泉比良坂よもつひらさか坂本さかもとに到った時、其の坂本に在る桃子もものみ三箇を取って、待ち撃ったところ、ことごとに逃げ返った。そこで伊邪那岐命は、其の桃子もものみに「なれ、吾を助けたように、葦原中国あしはらのなかつくにに生きているあらゆる青人草あをひとくさ(人民)が苦しい目にあってうれい困る時に助けるがよい。」と告げて、意富加牟豆美命おほかむづみのみことという名を授けた。

 最後いやはてに、其の妹伊邪那美命が身自みづから追って来た。ここに千引ちびきいはを其の黄泉比良坂よもつひらさかに引きふさいで、其の石を中に置きて、各対おのおのむかい立って、事戸ことどを度す(離縁を言い渡す)時、伊邪那美命が「うつくしき我が夫よ、このように離縁されるならば、いましの国の人草、一日に千人くびり殺しましょう。」と言った。ここに伊邪那岐命は「愛しき我が妻の命よ、汝がそのようにするならば、吾、一日に千五百の産屋うぶやを立てよう。」と詔された。是をもって、一日に必ず千人ちたり死に、一日に必ず千五百人ちいほたり生まれるのである。

 ゆえに、其の伊邪那美命をなづけて黄泉津大神よもつおおかみという。また言うには、其の追って来たのをもって道敷大神ちしきのおおかみというと伝える。また、其の黄泉の坂に塞いだ石は、道反之大神ちかえしのおおかみと名付け、また塞り黄泉戸大神よみどのおおかみともいう。故に、其のいわゆる黄泉比良坂は、今、出雲国の伊賦夜坂いふやさかという。

詳細を解説。

  • 黄泉国よみのくにに追っていった。

→日本神話では、この世とあの世はつながってる設定。なので、死者を追っていくとそのまま黄泉国に辿り着けるんです。

  • 伊邪那美命いざなみのみことが)御殿の戸口から出て迎えた時

→御殿あり。この御殿は『古事記』では、異界を象徴するもの

この象徴する建物、実は、日本神話に登場する「異界」によって設定が違います。

  • 黄泉・・・殿
  • 根国・・・室
  • 海神国・・・魚鱗のごと造れる客室

この黄泉国の「殿」は、志怪小説の世界を反映。街があり、役所があり、貴人の住む住居が「殿」。もちろん、従者も大勢いるらしい、、、

  • 伊邪那岐命は語らひ「うつくしき我が妹のみこといましと作った国は、未だ作りえていない。だから還ろう。」と仰せになった。

→『古事記』黄泉譚の前段で、伊邪那岐命と伊邪那美命が二神で「国生み」をしていた経緯のことを言います。伊邪那岐命は未完の事業を完遂するために、伊邪那美を迎えにきたんです。いや、多分愛情もあったとは思うけど、。。

  • 残念なことです。早くいらっしゃらなくて。吾は黄泉戸喫よもつへぐひをしてしまいました。

→伊邪那美命としては、愛する夫が来るのを待ち焦がれていた。でも、待っている間に黄泉の国の食べ物を食べてしまった(黄泉戸喫よもつへぐひをしてしまいました)。

「同じ釜の飯を食う」という言葉があるように、ある共同体への帰属、一員になるかどうかは、その共同体で食されてる物を食べるかどうかだったりします。てことは、伊邪那美命が「もう食べちゃったよ」と言ってるってことは、黄泉国の住人になった、つまり元には戻れない、、、といった意味も含むようになってくるのです。

  • 黄泉神よもつかみと相談します。

→「還ろう」という旦那の誘いに対して「黄泉神に相談します」との回答。元の世界に還るには相談、そして許可が必要だってことですよね。めっちゃオモロー!な世界観です。

黄泉国には統治者がいる。その統治者とは「黄泉神」であり、黄泉の長官。後で解説しますが、その原型は「泰山府君」。唐代以降「裁き」が追加されて「閻魔大王」になっていくお話。だからこそ、統治ルール上、黄泉国を出るときには長官の許可が必要という事。国としての世界観が設定されてることをチェック。

  • 殿の内に還り入った ~中略~ 蛆がたかってごろごろ音をたて~

→「殿」の内に伊邪那美命が入っていく。この「殿」は古代の「殯宮もがりのみや」に相当。屍体の安置所です。まースゴイ世界観。ほぼ真っ暗ななかで蛆がごろごろと音を立てるくらい這いまわる、しかも雷の神まで生まれている。。。なんて恐ろしいんだ!

  • 見畏みかしこみて逃げ還る

→「見畏みて」、コレ結構大事な強調ワード。類例として。降臨した天孫「瓊瓊杵尊」に大山津見神が献上した女の石長比売を、天孫は「甚凶醜に因りて、見畏みて返し送りき」と、「凶醜」であるが故につき返しています。つまり、「見畏」には、畏怖嫌厭の情が伴うってこと。見た目でヤバい感じ、しっかりチェック。

  • 豫母都志許賣よもつしこめを遣はして追わしめた。~中略~ 八くさの雷神に、千五百ちいほ黄泉軍よもついくさて追わしめた。

→設定が「黄泉国」ですから。領域、人民、主権(統治者)があって、それらを守る軍隊が存在するのは当然であります。

  • 黄泉比良坂よもつひらさか坂本さかもとに到った時、其の坂本に在る桃子もものみ三箇を取って、待ち撃ったところ、ことごとに逃げ返った。

→「坂本」=この世とあの世の境界。坂は、境の意味。桃には悪霊退散の呪力があると信じられていたことが伺えます。

  • 千引ちびきいはを其の黄泉比良坂よもつひらさかに引きふさいで

→千人がかりで引っ張るくらい巨大な岩。「石」って書いてあるけど。。。石レベルの話ではございません。

  • 伊邪那美命が「うつくしき我が夫よ、このように離縁されるならば、いましの国の人草、一日に千人くびり殺しましょう。」と言った。ここに伊邪那岐命は「愛しき我が妻の命よ、汝がそのようにするならば、吾、一日に千五百の産屋うぶやを立てよう。」と詔された。是をもって、一日に必ず千人ちたり死に、一日に必ず千五百人ちいほたり生まれるのである。

→泥沼離婚劇。。。ここでの二神の掛け合いは「死に対する生の優位」が、枠組みとして設定されてて、それは数字の大小で明確に表現されてます。

  • :伊邪那美命:伊邪那岐の世界の国民(人草)を1日1,000人くびり殺す
  • :伊邪那岐命:自分の世界の国民を1日1,500人産ませる

これにより、生が死よりも優位にあることを伝えてるんですね。生と死の別離、人口増、男女の離婚(離縁)の起源譚でもあります。

ということで、『古事記』伝承とその解説をお届けいたしました。現場と合わせて是非チェックされてください。

 

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地から続く山の中

黄泉比良よもつひら伊賦夜いふや坂伝説地」から右手へ、山道が続きますが、これが「伊賦夜坂」と言われていて、途中に「塞の神」が祀ってあります。この道を通るときは「塞の神」に小石を積んで通るという風習があるそうで、今でも小さな石が積まれています。

『日本書紀』では「そこで「これよりは出て来るな。」と言って、さっと杖を投げた。これを岐神ふなとのかみと言う。」と、「伊奘諾尊」が投げた杖から誕生した神として伝えてます。

他にも、伊邪那岐が黄泉国から逃げ帰る時に、黄泉比良坂のふもとに生えていた桃の実を3つ取り、追いかけて来た黄泉の軍に投げつけたと伝える桃の木もあります!

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地9

そこで伊邪那岐命は、其の桃子もものみに「なれ、吾を助けたように、葦原中国あしはらのなかつくにに生きているあらゆる青人草あをひとくさ(人民)が苦しい目にあってうれい困る時に助けるがよい。」と告げて、意富加牟豆美命おほかむづみのみことという名を授けた。と伝えます。

ということで現場からは以上です。

 

まとめ

黄泉比良坂伊賦夜坂伝説地

島根県松江市にある神話伝承地で、日本神話において「この世から黄泉国(死の国)へ至るとされる坂」。それはそれは恐ろしいスポット。

山の中にあって、ひんやりとした空気がただよっていて、なしか背筋が寒くなるよな心地になれます。

現地を訪れる際には、是非日本神話とご一緒に。物語があると楽しみ方にぐっと奥行きが出てきます。

日本神話ファンとしては絶対に外しちゃならないスポット、是非訪ねてみてくださいね。

 

島根県松江市東出雲町揖屋2407

住所:島根県松江市東出雲町揖屋2407

駐車場:あり(6台分)無料

トイレ:なし

 

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    参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他