多彩で豊かな日本神話の世界へようこそ!
日本最古の書『古事記』をもとに、
最新の文献学的学術成果も取り入れながら、どこよりも分かりやすい解説をお届けします。
今回は、『古事記』上巻から、
国生み
『古事記』神話の国生みは、天神の指令により伊耶那岐命・伊耶那美命の二神が結婚し、国を生む神話。
ポイントは、天神の関与と神聖な大八嶋国の誕生。
今回も、概要で全体像をつかみ、ポイント把握してから本文へ。最後に、解説をお届けしてまとめ。
現代の私たちにも多くの学びをもらえる内容。日本神話から学ぶ。日本の神髄がここにあります。それでは行ってみましょう!
- 日本神話研究の第一人者である榎本先生監修。確かな学術成果に基づく記事です
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
『古事記』国生み原文と現代語訳と解説!伊耶那岐命と伊耶那美命の聖婚と大八嶋国誕生の物語
目次
『古事記』国生みのポイント
『古事記』の国生みは、『古事記』上巻に伝えます。
経緯としては、天地が初めて發り、高天原に造化三神ほか、別天神、神世七代という非常に尊貴な神々が誕生した、、ってところから。
↑経緯しっかり確認。
で、本文に入る前に、まずは押さえておきたいポイント、概要をチェック。
全部で5つ。
- 天神関与。国生みを指令し、是正する天神。コレ、大八嶋国の尊貴化の仕掛け
- 結婚=神聖な儀礼。きちんとした手順を踏むことで、よい結果が得られます
- 神をも従う絶対原理が存在。天神さえも分からないことがある!?
- 国生みの順番はおおむね左回り。ただし例外アリ
- 『日本書紀』をベースに?第四段〔一書1〕とほぼ同じ伝承になってる!?
ということで、以下、順に解説。
1つ目。
①天神関与。国生みを指令し是正する天神。コレ、「大八嶋国」尊貴化の仕掛け
『古事記』版の国生みは、天神が深く関与する形式になってます。
ココで言う「天神」とは、これまでの経緯を踏まえると、天地初発に誕生した「別天神」を中心とする尊貴な神々と想定されます。伊耶那岐命と伊耶那美命に命令することができるくらい格が高い神様群。
この天神が、最初の「国の修理固成」を指令、さらに、国生み途中の二神の過誤を是正指導する。と、まー、いろいろ関与。
この理由、一言で言うと、大八嶋国の尊貴化のため。
『古事記』では、伊耶那岐命や伊耶那美命よりさらに尊貴な神々である「天神」が、直接指令を下す、国生みに関与する、という形にすることで、結果的に、誕生する大八嶋国=日本を「尊貴な国」として位置づけようとしてるんです。
次!
②結婚=神聖な儀礼。きちんとした手順を踏むことで、よい結果が得られます
国生みにおける大前提として押さえておきたいポイント。それは、、、
結婚=儀礼
であること。ココしっかりチェック。儀礼には、きちんとした手順、ルールがある。
で、ココでいう手順、ルールとは、
- 身体問答
- 左旋右旋
- 先唱後和
- 交合結婚
のことで。『古事記』でも「結婚=儀礼」なんで、踏むべき手順(①〜④)がある、てことになってます。
全体にただよう手続き臭さは、そのためで。意味があってわざわざやってる、ってことでチェック。
次!
③神をも従う絶対原理が存在。天神さえも分からないことがある!?
国生みの途中で、伊耶那岐命と伊耶那美命は手順を間違えるという過誤。ミステイクを犯す。それにより、淡嶋や水蛭子が誕生してしまう。。。
そこで二神は、天神にお伺いをたてに行くのですが、、、
なんと、、国生みを指示した天神さんですら理由が分からない、、、ので、占いで答えをだす、という不思議対応。、
天神さん? 高天原に坐す尊貴な神なのに知らないの!?? と、観客総立ちの局面。なんですが、、実はコレ、
天神にも分からないこと、それは易の理論、宇宙法則的なものだったりするわけですが、、そうした易の理論や法則にお伺いし、それによって修正され、ちゃんとした手続きを経て誕生した「大八嶋国」は、それこそ、まさしく、「神聖な国」なんだよ、と伝えようとしてる、ってことなんです。ダブルで尊貴化。後ほど解説。
次!
④国生みの順番はおおむね左回り。ただし例外あり
『古事記』の国生みも、柱巡りの運動を踏襲し、おおむね左回りに生んでいきます。現場目線がポイント。
↑こちらの「陽」の動きをもとに、、、
隠岐など例外はありつつ、おおむね左回りで国を生んでます。
最後!
⑤『日本書紀』をベースに?第四段〔一書1〕とほぼ同じ伝承になってる!?
実は、『古事記』版の国生みは、『日本書紀』第四段〔一書1〕とほぼ同じ伝承になってます。
『日本書紀』から眺めると、『古事記』は数ある異伝の一つ的な位置づけ。
もともと『日本書紀』では、第四段の〔本伝〕をもとに〔一書〕を通じて差異化、バリエーション化をしている経緯があり、『古事記』版国生みもその一環。
『日本書紀』が理論ガチガチで組まれていることを踏まえると、当然、『古事記』も同様の思想とか理論的なものがベースになってると考えるべきで。
一方の『古事記』から眺めると、『日本書紀』をもとに、理論とかよりも、より尊貴に、なんなら国内の豪族・氏族に配慮した形にしようとしてる。
こうした背景をもとに国生み神話を、もっというと、日本神話全体を捉え始めるとめっちゃオモロー!な世界が立ち上がってきます。激しくオススメです。
以上の5つ、
- 天神関与。国生みを指令し、是正する天神。コレ、大八嶋国の尊貴化の仕掛け
- 結婚=神聖な儀礼。きちんとした手順を踏むことで、よい結果が得られます
- 神をも従う絶対原理が存在。天神さえも分からないことがある!?
- 国生みの順番はおおむね左回り。ただし例外アリ
- 『日本書紀』をベースに?第四段〔一書1〕とほぼ同じ伝承になってる!?
しっかりチェック。
その上で、『古事記』国生みの現場をどうぞ!
『古事記』国生み原文と現代語訳
ここにおいて、天神諸々の命をもって、伊耶那岐命・伊耶那美命の二柱の神に詔して「この漂っている国を修理め固め成せ」と、天沼矛を授けてご委任なさった。
そこで、二柱の神は天浮橋に立ち、その沼矛を指し下ろしてかき回し、海水をこをろこをろと搔き鳴らして引き上げた時、その矛の末より垂り落ちる塩が累なり積もって嶋と成った。これが淤能碁呂嶋である。
その嶋に天降り坐して、天御柱を見立て、八尋殿を見立てた。ここに、その妹伊耶那美命に「汝の身はどのように成っているのか。」と問うと、「私の身は、出来上がっていって出来きらないところが一つあります」と答えた。ここに伊耶那岐命は詔して「私の身は、出来上がっていって出来すぎたところが一つある。ゆえに、この私の身の出来すぎたところをもって、汝の身の出来きらないところに刺し塞いで、国土を生み成そうとおもう。生むことはどうだろうか」と言うと、伊耶那美命は「それが善いでしょう」と答えた。
そこで伊耶那岐命は詔して「それならば、私と汝とでこの天御柱を行き廻り逢って、みとのまぐはいをしよう。」と言った。このように期って、さっそく「汝は右より廻り逢いなさい。私は左より廻り逢おう。」と言い、約り終えて廻った時、伊耶那美命が先に「ほんとうにまあ、いとしいお方ですことよ。」と言い、その後で伊耶那岐命が「なんとまあ、かわいい娘だろうか。」と言った。
各が言い終えた後、(伊耶那岐命は)その妹に「女人が先に言ったのは良くない。」と告げた。しかし、寝床で事を始め、子の水蛭子を生んだ。この子は葦船に入れて流し去てた。次に、淡嶋を生んだ。これもまた子の例には入れなかった。
ここに、二柱の神は議って「今、私が生んだ子は良くない。やはり天神の御所に白しあげるのがよい。」と言い、すぐに共に參上って、天神の命を仰いだ。そこで天神の命をもって、太占に卜相ない「女の言葉が先立ったことに因り良くないのである。再び還り降って改めて言いなさい。」と仰せになった。
ゆえに反り降りて、更にその天の御柱を先のように往き廻った。ここに、伊耶那岐命が先に「なんとまあ、かわいい娘だろうか。」と言い、その後に妹伊耶那美命が「なんとまあ、いとしいお方ですこと。」と言った。
このように言ひ終わって御合して生んだ子は、淡道之穗之狹別嶋。次に、伊豫之二名嶋を生んだ。此の嶋は、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。伊豫国を愛比売といい、讚岐国を飯依比古といい、粟国を大宜都比売といい、土左国を建依別という。次に、隠伎之三子嶋を生んだ。またの名は天之忍許呂別。次に、筑紫嶋を生んだ。この嶋もまた、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。筑紫国は白日別といい、豊国は豊日別といい、肥国は建日向日豊久士比泥別といい、熊曾国を建日別という。次に、伊岐嶋を生んだ。またの名は天比登都柱という。次に、津嶋を生んだ。またの名は天之狹手依比売という。次に、佐度嶋を生んだ。次に、大倭豊秋津嶋を生んだ。またの名は天御虚空豊秋津根別という。ゆえに、この八嶋を先に生んだことに因って、大八嶋国という。
その後、還り坐す時、吉備児嶋を生んだ。またの名は建日方別という。次に、小豆嶋を生んだ。またの名は大野手比売という。次に、大嶋を生んだ。またの名は大多麻流別という。次に、女嶋を生んだ。またの名を天一根という。次に、知訶嶋を生んだ。またの名は天之忍男という。次に、両児嶋を生んだ。またの名は天両屋という。吉備の児島から天両屋の島まで合わせて六つの島である。
於是天神、諸命以、詔伊耶那岐命・伊耶那美命二柱神「修理固成是多陀用幣流之國。」賜天沼矛而言依賜也。
故、二柱神、立訓立云多多志天浮橋而指下其沼矛以畫者、鹽許々袁々呂々邇此七字以音畫鳴訓鳴云那志而引上時、自其矛末垂落之鹽累積、成嶋、是淤能碁呂嶋。自淤以下四字以音。
於其嶋天降坐而、見立天之御柱、見立八尋殿。於是、問其妹伊耶那美命曰「汝身者、如何成。」答曰「吾身者、成成不成合處一處在。」爾伊耶那岐命詔「我身者、成成而成餘處一處在。故以此吾身成餘處、刺塞汝身不成合處而、以爲生成國土、生奈何。」訓生、云宇牟。下效此。伊耶那美命答曰「然善。」爾伊耶那岐命詔「然者、吾與汝行廻逢是天之御柱而、爲美斗能麻具波比此七字以音。」 如此之期、乃詔「汝者自右廻逢、我者自左廻逢。」約竟廻時、伊耶那美命、先言「阿那邇夜志愛上袁登古袁。此十字以音、下效此。」後伊耶那岐命言「阿那邇夜志愛上袁登賣袁。」各言竟之後、告其妹曰「女人先言、不良。」雖然、久美度邇此四字以音興而生子、水蛭子、此子者入葦船而流去。次生淡嶋、是亦不入子之例。
於是、二柱神議云「今吾所生之子、不良。猶宜白天神之御所。」卽共參上、請天神之命、爾天神之命以、布斗麻邇爾上此五字以音ト相而詔之「因女先言而不良、亦還降改言。」故爾反降、更往廻其天之御柱如先、於是伊耶那岐命先言「阿那邇夜志愛袁登賣袁。」後妹伊耶那美命言「阿那邇夜志愛袁登古袁。」
如此言竟而御合生子、淡道之穗之狹別嶋。訓別、云和氣。下效此。次生伊豫之二名嶋、此嶋者、身一而有面四、毎面有名、故、伊豫國謂愛上比賣此三字以音、下效此也、讚岐國謂飯依比古、粟國謂大宜都比賣此四字以音、土左國謂建依別。 次生隱伎之三子嶋、亦名天之忍許呂別。許呂二字以音。次生筑紫嶋、此嶋亦、身一而有面四、毎面有名、故、筑紫國謂白日別、豐國謂豐日別、肥國謂建日向日豐久士比泥別自久至泥、以音、熊曾國謂建日別。曾字以音。次生伊伎嶋、亦名謂天比登都柱。自比至都以音、訓天如天。次生津嶋、亦名謂天之狹手依比賣。次生佐度嶋。次生大倭豐秋津嶋、亦名謂天御虛空豐秋津根別。故、因此八嶋先所生、謂大八嶋國。
然後、還坐之時、生吉備兒嶋、亦名謂建日方別。次生小豆嶋、亦名謂大野手上比賣。次生大嶋、亦名謂大多麻上流別。自多至流以音。次生女嶋、亦名謂天一根。訓天如天。次生知訶嶋、亦名謂天之忍男。次生兩兒嶋、亦名謂天兩屋。自吉備兒嶋至天兩屋嶋、幷六嶋。 (引用:『古事記』上巻より)
『古事記』国生みの解説
『古事記』の国生み、いかがでしたでしょうか?
いきなり登場の天神、そして天神による「修理固成」指令からの、やけに儀式臭い国生み結婚譚。。
ただ、まだ『古事記』はやさしい感じ?がします。『日本書紀』のように、神聖化っ!とか、儀式っ!とか、ガチガチな感じがあんまりしない。。より日本的な感じに寄せてる空気。
『古事記』国生みは、2つの構成で読み解くのが◎
- 前半:天神指令から子を生む
- 後半:天神お伺いから大八嶋国を生む
ポイントは、「天神関与」と「過ちのビフォーアフター」。
前半は、天神による修理固成指令。後半は天神による改善指令。いずれも、起点となっているのは天神。『古事記』版は天神関与による国生みを全面に出しています。
そして、過ちのビフォーアフター。コレ、柱巡り後の会合時に、どっちが先に声をあげるべきか?という問題で。女神が先に声をあげるのはNG。前半はこの過誤により水蛭子や淡嶋が生まれます。後半は、是正され、男神が先に声をあげて大八嶋国が生まれます。
ということで、
さっそく、前半から解説を。
前半:天神指令から子を生むまで
次!
- そこで、二柱の神は天浮橋に立ち、その沼矛を指し下ろしてかき回し、海水をこをろこをろと搔き鳴らして引き上げた時、その矛の末より垂り落ちる海の水が、累なり積もって嶋と成った。これが淤能碁呂嶋である。
- 故、二柱神、立訓立云多多志天浮橋而指下其沼矛以畫者、鹽許々袁々呂々邇此七字以音畫鳴訓鳴云那志而引上時、自其矛末垂落之鹽累積、成嶋、是淤能碁呂嶋。自淤以下四字以音。
→天浮橋から天沼矛を指しおろして海をかき混ぜる。
ポイント4つ。
- 天浮橋は、天空に浮かぶ橋。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋
- 『古事記』独特の擬音語・反復法「こをろこをろ」
- 海、いつからできてた??多分、最初から。
- 不思議の島の「淤能碁呂嶋」。矛の特別なパワー発動??
てことで、以下順に解説。
①天浮橋は、天空に浮かぶ橋。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋
伊耶那岐命と伊耶那美命が立った「天浮橋」について、詳細はコチラで→ 天浮橋とは? 天にあって下界全体が見渡せる橋
コレ、「天空に浮かぶ橋」のことで、ここから地上世界の様子がまー良く見えるらしい。
天界と下界をつなぐ橋、といった説もありますが、文献的には、天浮橋はあくまで天空にあり、天神が天上から下界の様子を察知する場合のみ登場。尊いお方は、まずこういうところから下界を見渡すわけです。
②『古事記』独特の擬音語・反復法「こをろこをろ」
「こをろこをろに(鹽許々袁々呂邇)」とあります。
コレ、『古事記』が文学的と言われる所以の箇所。
雄大、写実的
天から長大な矛を指しおろし、こをろこをろと海をかき混ぜる。。。なんて文学的なんだ!!!
文体として、擬音語と反復法を用いて写実的に描写。とくに反復技法については、『古事記』が古代の口誦性の復元を意図していることに起因してます。
現代では、同じ言葉や単調な反復は避けるのが常識なのですが、古代ではあたりまえだったようで。そんな背景から「こをろこをろに」が使用されてること、チェック。
次!
③海、いつからできてた??多分、最初から。
原文では「鹽」。語訳として「海水」、つまり海としています。
コレ、先ほど解説した「修理固成」の箇所と同様、天地のはじまりにおける描写がもとになってます。
国が未成熟で、浮いてる脂のようで、クラゲみたいにふよふよ漂っていた状態。この浮いてるところって、、、やっぱり海。「鹽」=塩という漢字が使用されているところから。
『日本書紀』ではより具体的に「天之瓊矛を指し下ろして探ってみると海を獲た。(廼以天之瓊矛、指下而探之。是獲滄溟。)第四段〔本伝〕」と伝えてます。これも海の根拠になってます。
てことで、突然登場してる感じの「海水」。辿っていくと、天地のはじまりのときにできてたんだろう、、、ということで。地ができたってことは海もできてた?的な感じでチェック。
④不思議の島の「淤能碁呂嶋」。矛の特別なパワー発動??
「其の矛の末より垂り落ちる海の水が、累なり積もって嶋と成った。是れ淤能碁呂島ぞ。(自其矛末垂落之鹽累積、成嶋、是淤能碁呂嶋。)」
と、いうことで。どうやら、海をかき混ぜた矛から滴り落ちた海水=潮=塩が累積して嶋に成ったらしい。
コレ、ま、神なんで、そういうこともできるんでしょう、と処理も可能ですが、、、もう少し文献学的に深めてみます。
『古事記』には登場しないのですが、『日本書紀』ではいわゆる「矛の功」というべき、古代の思想とか考え方を伝えてます。
「矛」については、例えば、『日本書紀』第九段で登場。葦原中国平定の際、大己貴神が経津主神と武甕槌神に「広矛」を授けます。その際、大己貴神は、その「広矛」を「平国(国を平定する)」に功があり、さらに「治国(国を治める)」にも効果を発揮するとつたえます。
コレが「矛の功」。
つまり、
矛を使うことで功を収める、
矛を使うことで平定や統治という功績をあげることができる、という考え方です。
矛にはそうした特別な力がある、ってこと。コレ、古代における思想的なものとしてチェック。
なお、ここでは矛の「功」は「淤能碁呂嶋」そのものになります。矛の持つ特別な力、矛の功、チェックです。
次!
- その嶋に天降り坐して、天御柱を見立て、八尋殿を見立てた。
- 於其嶋天降坐而、見立天之御柱、見立八尋殿。
→淤能碁呂嶋に天降って、天の御柱と八尋殿を見立てたと。。
ポイント3つ。
- 見立てる=見る事によって現前させる。『古事記』的意訳
- 天の御柱=もともとは国の中心である柱=地の中央であり天と通う場所
- 八尋殿=もともとは、新たに足を踏み入れた地に居住し、結婚し、出産する一連の展開~という神様特有の行動特性の一環から
1つ目。
①見立てる=見る事によって現前させる。『古事記』的意訳
「見立てる(原文:見立)」とあります。が、これ単品では解釈がむずかしい。。
そこで登場、『日本書紀』第四段〔一書1〕。
ここでは、同様の場面で、
「八尋之殿を作った。また天柱を立てた(原文: 化作八尋之殿。又化竪天柱。)」と伝えます。
八尋之殿を化し作った。また天柱を化し立てた。と。
ポイントは「化作、化堅」。化し作る、化し竪てる。
「化(かす)」は『日本書紀』ならではの表現で、自動詞的用法。例えば、神の誕生が「化生」という方法(第一段)。天と地の間に「もの」ができて、この「もの」が化すことで神が生まれる。つまり変化して生まれる、化けるイメージ。
ただ、「化作」「化竪」は、他動詞的用法での「化(かす)」使用。
そして、「作」は御殿を作るので作。「堅」は柱を立てるので竪。
まとめると、
「化作」「化竪」は、~を化し作る、化し竪てる。つまり、二神の意欲ないし念慮のようなものが八尋殿や天柱を出現させた、実体化させた、ということになります。
まさに神業。
で、『古事記』ではこれを意訳して、「見立てる」としてる訳です。『日本書紀』「化作」、からの『古事記』「見立」。見ることによって現前させる、まさに神業的作業としてチェック。
次!
②天の御柱=もともとは国の中心である柱=地の中央であり天と通う場所
「天の御柱を見立てた。(見立天之御柱)」とあります。
「天之御柱」は、神仙の山として名高い崑崙山を天柱とみなす説がよく知られてます。
一例を挙げれば、
- 「崑崙山、天中柱也」(『芸文類聚』巻七「崑崙山」所引「龍魚河図」)
- 「崑崙山為天柱」(『初学記』巻五「総戴地第一」所引「河図括地象」)など
なお、
②の背景設定としては、「天柱の崑崙山から気が上昇して天に通い、そこが地の中央に当たる」とする思想あり。
分かってる人には分かる、そういう設定。ま、これまでご紹介してきたポイント全てにそういう漢籍をベースにした創意工夫があるんです。
ちなみに、、、
『日本書紀』第四段〔一書1〕では、「天柱」として登場。コレ、天や天神とのつながりを確保する柱として位置づけられてます。
実際、『日本書紀』第四段に続く第五段〔本伝〕では、これを「天柱を使って(日神を)天上に送り挙げたのである。(故、以天柱挙於天上也)」と日神を天上に挙げる手段として使用しています。
これを踏まえると「天御柱」を登場させたのは、このあと、天神への報告シーンがあるので、自分たちが天上世界へ帰るための手段、経路を確保するためだった、と考えられます。
そもそも天神指令から始まってますから。報告・連絡・相談は欠かせません、ってことでチェック。
次!
③八尋殿=もともとは、新たに足を踏み入れた地に居住し、結婚し、出産する一連の展開~という神様特有の行動特性の一環から
「八尋殿を見立てた。(見立八尋殿)」とあります。
結婚と国生みですから!新婚さんのラブホーム。盛り上がって参りました。的な処理でもいいのですが、ここではもう少し深く解釈を。
つまり、なんで殿建てた。。。?ってこと。
コレ、実は、神様行動特性(神様コンピテンシー)の一つで。、
題して、
「新たに足を踏み入れた地に居住し、結婚し、出産する、一連の展開の巻」。
コレ、特に理論ガチガチの『日本書紀』で分かりやすく表現されていて、例えば、
- 素戔嗚尊の「建宮」(第八段本伝)
- 皇孫の「立宮殿」(第九段一書2)
と、
新たに踏み入れた出雲の地で、素戔嗚尊の場合は、奇稲田姫と過ごす宮を、ラブを。
新たに踏み入れた葦原中国で、瓊瓊杵尊の場合は、鹿葦津姫を召した宮殿を、ラブを。
といった具合で同じフレームで伝えてます。
今回も、新たに踏み入れた(天降った)地上で、二神が見立てた八尋殿であり。もちろんラブであり。
同じ構造を持ってますよね。新たに足を踏み入れた地では、まず宮をつくる。そして住む。コレ神様特有の行動特性。神様コンピテンシー。
いいじゃないですか、八尋殿を見立てて一緒に住んでラブなことをしようとした訳ですよ。激しく盛り上がって参りました。
次!
- ここに、その妹伊耶那美命に問うて「汝の身はどのように成っているのか。」と言うと、「私の身は、出来上がっていって出来きらないところが一つあります」とお答白えになった。ここに伊耶那岐命は詔して「私の身は、出来上がっていって出来すぎたところが一つある。ゆえに、この私の身の出来すぎたところをもって、汝の身の出来きらないところに刺し塞いで、国土を生み成そうとおもう。生むことはどうだろうか」と言うと、伊耶那美命は「それが善いでしょう」と答えた。
- 於是、問其妹伊耶那美命曰「汝身者、如何成。」答曰「吾身者、成成不成合處一處在。」爾伊耶那岐命詔「我身者、成成而成餘處一處在。故以此吾身成餘處、刺塞汝身不成合處而、以爲生成國土、生奈何。」訓生、云宇牟。下效此。伊耶那美命答曰「然善。」
→身体問答=男女の形状の違いを、互いに言い合って確かめ合う。
これ、なんでこんなことやってるか?というと、「言表」という神様固有の行動特性があるからです。
言表とは、言い表すこと。神様は「まず言表し、そして行為に及ぶ。」コレが、神様行動特性(神コン)であります。
●必読→ 言表と行為|神様の行動パターン。神はまず、言表し、そして行為に及ぶ。
なので、ココでは、
性別による男女のありかたの違いを、それぞれの形状をたがいに言表することによって、確かめあってるという次第。
この後からです。二神が怪しくなってくるのは。。。
御殿を作ってさー夫婦になるぞと、盛り上がって参りましたねと、ラブな雰囲気が高まるに従っておかしなことをやり始める、、、
次!
- そこで伊耶那岐命は詔して「それならば、私と汝でこの天の御柱を行き廻り逢って、みとのまぐはいをしよう。」と言った。このように期って、さっそく「汝は右より廻り逢へ。私は左より廻り逢おう。」と言い、約り終えて廻った時、伊耶那美命が先に「ほんとうにまあ、いとしいお方ですことよ。」と言い、その後で伊耶那岐命が「なんとまあ、かわいい娘だろうか。」と言った。
- 各が言い終えた後、その妹に「女人が先に言ったのは良くない。」と告げた。しかし、寝床で事を始め、子の水蛭子を生んだ。この子は葦船に入れて流し去てた。次に、淡嶋を生んだ。これもまた子の例には入れなかった。
- 爾伊耶那岐命詔「然者、吾與汝行廻逢是天之御柱而、爲美斗能麻具波比此七字以音。」 如此之期、乃詔「汝者自右廻逢、我者自左廻逢。」約竟廻時、伊耶那美命、先言「阿那邇夜志愛上袁登古袁。此十字以音、下效此。」後伊耶那岐命言「阿那邇夜志愛上袁登賣袁。」各言竟之後、告其妹曰「女人先言、不良。」雖然、久美度邇此四字以音興而生子、水蛭子、此子者入葦船而流去。次生淡嶋、是亦不入子之例。
→柱巡りの重要局面。
先に重要ワードをチェック。
「みとのまぐはい(美斗能麻具波比)」の、「美斗」は「御所」のことで寝所をいいます。「麻具波比」は「交合」のこと。「爲美斗能麻具波比」で、寝所での交合を為す、交合しよう、という意味になります。
「寝床で事を始め子を生んだ(久美度邇興而生子)」の、「久美度」は「隠み処」のことで寝所を言い換えたもの。「興」は、はじめる、さかんになる、の意味。勃興とか興隆とか。なので、「久美度邇興而生子」で、寝所に(事を)はじめて子を生んだ、という意味になります。
「阿那迩夜志愛上袁登古袁[此十字以音下效此]」は、音注の「此十字以音」が付いてるので、音で読めということで「あなにやしえをとこを」となり、意味としては「あらまあ、愛しい男だわ」。さらに、声注の「上」が付いてるので強調され、「ほんとうにまあ、愛しい男(お方)ですことよ!」というトーンになります。めっちゃ盛り上がってるのを感じて。。
その上で、ここでのポイント3つ。
- 結婚=儀礼。きちんとした手順やルールを踏まえることが大事
- 間違いがあるからこそ、分かることがある。伝えられることがある
- 水蛭子、淡嶋の処遇=社会の成熟度という観点で解釈
1つ目。
①結婚=儀礼。きちんとした手順やルールを踏まえることが大事
結婚=儀礼ですから、きちんとした手順を踏むことが重要です。
きちんとした手順とは、陽主導であること、陽が先であること。易の概念がベース。
●必読→ 日本神話的易の概念|二項対立の根源とその働きによって宇宙はつくられ動いている
●必読→ 尊卑先後の序|日本神話を貫く超重要な原理原則!世界の創生当初から存在する原理的次序で、天→地→神という成りたちを導く
『古事記』では明記はされてませんが、ここでいう「陽」とは伊耶那岐命であり、「陰」は伊耶那美命。
これをもとに、結婚=儀礼の具体的方法とは、
- 伊耶那岐命が左旋、伊耶那美命が右旋
- 伊耶那岐命が先唱、伊耶那美命が後和
という流れになります。
イメージ化するとこんな感じ。
で、陽主導であること、陽が先であることがポイントで。
これによって、この儀式が正当なものである、神聖なものであるとみなされ、その結果である、国生みが正当化される、成果物としての大八嶋国が神聖化される、というロジック。コレ、しっかりチェック。
●参考→ 日本神話的時間発生起源|伊奘諾尊・伊奘冉尊の柱巡りが時間の推移や季節を生みだした件
次!
②間違いがあるからこそ、分かることがある。伝えられることがある
そんな儀式手順がありつつ、、
今回、途中で伊耶那美命が先に声をあげてしまいます。
「伊耶那美命が先に「ほんとうにまあ、いとしいお方ですことよ。」と言ひ、後に伊耶那岐命「なんとまあ、かわいい娘だろうか。」と言った。」と。。盛り上がりすぎたか、、、
つまり、
- 伊耶那岐命が左旋、伊耶那美命が右旋
- 伊耶那美命が先唱、伊耶那岐命が後和
ということで、①はよかったんだけど、②で間違えた、ってことです。ココ、しっかりチェック。
で、
意外にも、伊耶那岐命は分かってるようです。「女人が先に言ったのは良くない。」とお告げになった。と。コレ、陽主導の残り香。。
でも、、、誘惑に克てなかったのか、、、然れども、寝床で事を始めて子の水蛭子を生む。と。。
、、、克てなかったらしい。。
そこで誕生したのが、水蛭子と淡嶋。いずれも、流したり子の例には入れなかった。とあります。
コレ、要は、
手順を間違えたことで、良くない結果を生んだ、ってことですよね。
言い方を変えると、
表側では華やかなウェディングイベントが進行しているのですが、
裏側では神さえも従わなければならない絶対ルールが働いていたってことなんです。それが易をもとにした宇宙法則。。。
でも、、、
この間違いがあるからこそ、分かることがある。伝えられることがあるんです。
ルールを破るとどうなるか?
それは、ルールを破ってみないと本当のところは分からない。
「間違い+結果(代償)」のセットは必須の展開だとも言えて。
間違いがあるから学びがある。深く伝えられる。
その意味では、非常によく練られた構成としてチェック。決して、二神とも誘惑に克てませんでした、という話ではございません!
次!
③水蛭子、淡嶋の処遇=社会の成熟度という観点で解釈
「此の子は葦船に入れて流し去てた。次に淡島を生んだ。是も亦、子の例には入れなかった。」とあります。
水蛭子は、蛭(ひる)のように手足の萎えた子。葦船は、葦を編んで造った船。葦は邪気を払うという思想があり、葦船で水蛭子の邪気を流し捨てる、、、的な意味あいもあるようなないような。。。
ちなみに、遺棄された水蛭子ですが、例えば兵庫県の西宮神社では、水蛭子はその後、西宮に漂着し、「夷三郎殿」と呼ばれ大事に育てられた、といった伝承あり。流されたものの、今では日本に約3500社ある、えびす総本社のご祭神として人々の崇敬を集めています。これはこれで良いお話かも。
それはさておき、神話の話。
この、流し去てる、子の数には入れない、という対応。単にヒドイ!ってことじゃなくて、もう少し深く捉えたい。
コレはこれで、神代における社会の未熟さという事で解釈。
神様だって社会を構成します。
天地開闢からの国生みの時代はまだ色んなことが未成熟だったんす。だからこそ、二神は流したり認知しなかったりする。現代の感覚からすると違和感があるのは当然で。
社会の成熟度合いは、「個別的に長期生存が不可能な個体(弱者)」を生き延びさせる考え方や仕組みの出来具合に比例します。どれだけの個体が生き延びられるか、どれだけの「弱者」を生かすことが出来るかは、その社会の持つ力に比例する訳ですよね。
神様の織りなす世界も、社会として機能してくるのは岩戸神話あたりから。それまでは、まだまだ未成熟な感じを引きずってたんすね、って私は何様でしょうか?
水蛭子や淡嶋の「流す」とか「子への不算入」といった事、それ自体の良し悪しを議論するのは稚拙で。それよりも社会の成熟度合いといった観点から考えてみると深みがでてくると思います。
ということで、
二神としては結局、命を下した当の天神を頼るほかない。。。ということで天上へ。天神ホウレンソウ(報告・連絡・相談)。仕事の基本を実践。
続いて後半に突入!
後半:天神お伺いから大八嶋国を生む
- ここに、二柱の神は議って「今、私が生んだ子は良くない。やはり天神の御所に白しあげるのがよい。」と言い、すぐに共に參上って、天神の命を仰いだ。そこで天神の命をもって、太占に卜相ない「女の言葉が先立ったことに因り良くないのである。再び還り降って改めて言いなさい。」と仰せになった。
- ゆえに反り降りて、更にその天の御柱を先のように往き廻った。ここに、伊耶那岐命が先に「なんとまあ、かわいい娘だろうか。」と言い、その後に妹伊耶那美命が「なんとまあ、いとしいお方ですこと。」と言った。
- 於是、二柱神議云「今吾所生之子、不良。猶宜白天神之御所。」卽共參上、請天神之命、爾天神之命以、布斗麻邇爾上此五字以音ト相而詔之「因女先言而不良、亦還降改言。」故爾反降、更往廻其天之御柱如先、於是伊耶那岐命先言「阿那邇夜志愛袁登賣袁。」後妹伊耶那美命言「阿那邇夜志愛袁登古袁。」
→天神に報告相談の巻。
ポイント2つ。
- 天神による占いの意味=より尊貴に、より高く
- 天神の太占=天神さえ服従する「超絶的な働き=神意」を知るための儀式
1つ目。
①天神による占いの意味=より尊貴に、より高く
生み損ないの原因・理由不明状態で天神へホウレンソウ。
ココでオモシロいのが、
最後の砦、天神でさえ、原因が分からない!??
、、残念です。
天神さん、卜占を頼みとして宇宙メッセージを受信しはじめるの巻。ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ
で、
占いの結果、「先唱後和の順序に問題があった」ことが判明。再下降を命じる流れに。
コレ、構造的に解説すると、、、
最終的には大八嶋国の尊貴化、神聖化につなげるための仕掛け、という事。
『古事記』は、二神より尊貴な存在である天神を登場させ、天神ミッションという形によって大八嶋国を尊貴化しようとしてるわけで。
この占いエピソードは、これをさらに格上げしようとするためのものなんす。
二神より尊貴な天神よりさらに尊貴な宇宙的存在があるんだと。このメッセージを卜占によって受信したんだと。それによって誕生したのが大八嶋国なんだと、ダブルで尊いんだと。二神入れたらトリプル尊いんだと。
ま、そういう話です!!!、。
より尊貴に、より高く、、、
この上方向へ一段ずつ上げていく指向性は、『古事記』の造化三神、別天神といった神様カテゴリの設定と共通するものがあります。
より尊貴に、より高く、、、なればなるほど説明は無くなっていく。よく分からない雰囲気。良くいえば、奥ゆかしい存在になっていく。
まさに、
「なにごとの おはしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる (作:西行)」の境地であります。よー分からんのであります。それがなんかスゴいんす。
次!
②天神の太占=天神さえ服従する「超絶的な働き=神意」を知るための儀式
天神が占いをする、、、
何度聞いても、スゴイ違和感。。。天神が占いをする、、、あの、、、天神って何なんでしょうか?
太占については、『古事記』の一説を参照するのが例。
天照大御神が天岩屋に隠れた際に行った神事のなかに
「天香山の真男鹿の肩を内抜きに抜きて、天香山の天のははかを取りて卜合ひまかなはしむ」(『古事記』)
とあり、
要は、鹿の骨を使って占いをするんだと。
これ、どうやるかというと、
天香山の「ははかの木」の枝を採ってきて、先っちょを焼きます。オレンジ色に焼けた「ははかの木」の枝の先っちょを鹿の骨にぎゅーっと押しつけます。これを何度か繰り返すと、ポクってヒビが入ります。このヒビのでき方によって吉凶を占うという訳です。この割れる「ポクっ」という音をもとに「卜」という漢字ができてたりします。
占いというと、亀の甲羅のイメージが強いかと思いますが、神話世界では鹿なんすね。
しかも、コレ、現代の大嘗祭関連の儀式でも行われているという、、、スゴ
二神の報告に際して天神の行った太占も、この卜占に通じる訳で。実際に天神がやってるところをイメージ。ポクってね。
で、
天神が占ったのは何か?
については、天神が二神に伝えた「女の言葉が先立ったことに因り良くないのである。」という言葉に答えあり。
占いの結果、「女が先に言葉を発したから(良くない結果がうまれた)」と。コレ、つまり、物事には順番があるよと。儀式だよと。そういうことで。
厳粛なる儀礼上、尊卑先後の序は揺るぎなく働いている、従って、男が先に声をあげないとダメ。儀礼=きちんとした手順、ルールがある。と。
占いの結果、それを違えたことが原因だと分かった訳ですね。
一同、せーので「なるほどー!!!」と。
そういうことか、と。そりゃそうだよね。占いでようやっと分かった。よかったよかった。。。って、この展開。。天神も二神もみんな大丈夫でしょうか?
天神さえ分からないことがある、それは占いという儀式を通じてでないと分からない。でも、絶対的に働いている法則であり、原理である。
これは、言い方を変えると、天神さえ服従する超絶的な働きがある、ということでもあって。占いによって判明する神意を、そういう形で描いてるんですね。
一方で、
天神を絶対視しない、あるいは、神を絶対者としない思想は、
多神教的思想、またはアニミズム(自然界のそれぞれに固有の霊が宿るという信仰)に根ざす思惟とも言えて、すでにココに「兆し」として表現されてる!と言えます。
次!
-
このように言ひ終わって御合して生んだ子は、淡道之穗之狹別嶋。次に、伊豫之二名嶋を生んだ。此の嶋は、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。伊豫国を愛比売といい、讚岐国を飯依比古といい、粟国を大宜都比売といい、土左国を建依別という。次に、隠伎之三子嶋を生んだ。またの名は天之忍許呂別。次に、筑紫嶋を生んだ。この嶋もまた、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。筑紫国は白日別といい、豊国は豊日別といい、肥国は建日向日豊久士比泥別といい、熊曾国を建日別という。次に、伊岐嶋を生んだ。またの名は天比登都柱という。次に、津嶋を生んだ。またの名は天之狹手依比売という。次に、佐度嶋を生んだ。次に、大倭豊秋津嶋を生んだ。またの名は天御虚空豊秋津根別という。ゆえに、この八嶋を先に生んだことに因って、大八嶋国という。
-
如此言竟而御合生子、淡道之穗之狹別嶋。訓別、云和氣。下效此。次生伊豫之二名嶋、此嶋者、身一而有面四、毎面有名、故、伊豫國謂愛上比賣此三字以音、下效此也、讚岐國謂飯依比古、粟國謂大宜都比賣此四字以音、土左國謂建依別。 次生隱伎之三子嶋、亦名天之忍許呂別。許呂二字以音。次生筑紫嶋、此嶋亦、身一而有面四、毎面有名、故、筑紫國謂白日別、豐國謂豐日別、肥國謂建日向日豐久士比泥別自久至泥、以音、熊曾國謂建日別。曾字以音。次生伊伎嶋、亦名謂天比登都柱。自比至都以音、訓天如天。次生津嶋、亦名謂天之狹手依比賣。次生佐度嶋。次生大倭豐秋津嶋、亦名謂天御虛空豐秋津根別。故、因此八嶋先所生、謂大八嶋國。
→正しい手順を踏まえて結婚し、生んだ「淡道之穗之狹別嶋」以下、8つの嶋。
「八」は多数あるいは聖数を表します。
神代紀に散見する例は他にも、、「八雷(八色雷公)」「八十万神」「八箇少女」「八丘八谷」「八十木種」「八日八夜」「八重雲」「百不足之八十隈」、またあるいは「八咫鏡」「八坂瓊曲玉」など(紀バージョン)。
『古事記』版の、生んだ島は以下の通り。
1 | 淡道之穗之狹別嶋 | 淡路島 |
2 | 伊豫之二名嶋(伊豫国を愛比売、讚岐国を飯依比古、粟国を大宜都比売、土左国を建依別) | 四国 |
3 | 隠伎之三子嶋(天之忍許呂別) | 隠岐島 |
4 | 筑紫嶋(筑紫国は白日別、豊国は豊日別、肥国は建日向日豊久士比泥別、熊曾国を建日別) | 九州 |
5 | 伊岐嶋(天比登都柱) | 壱岐 |
6 | 津嶋(天之狹手依比売) | 対馬 |
7 | 佐度嶋 | 佐渡 |
8 | 大倭豊秋津嶋(天御虚空豊秋津根別) | 本州 |
『古事記』も、隠岐など例外はありつつ、おおむね左回りで国を生んでます。まさに、島国って雰囲気が伝わってきますよね。
この「おおむね左回り」で嶋を生んでいく運動はもちろん、柱巡りの延長から。
からの、、、
で、これら、8つの嶋を一括して「大八嶋国」としています。
『古事記』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化してるのがポイント。
特徴として、男と女の名(比古、比売等)、四国は穀物系、九州はお日様系、といった感じ。
コレ、
生まれた大八島国が、伊耶那岐と伊耶那美の子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを伝えてる、てこと。
もっというと、
名付け=親権の発生
であり、伊耶那岐と伊耶那美が親としての責任をもって、それこそ修理固成によって「瑞穂の国」へ仕上げていくことを意味してる訳です。
一方、別の言い方をすると、『古事記』が天皇家の皇太子教育のテキストだったこともふまえると、名づけにより領有権の発生、つまり、日本の国土であることを明確にしているとも言えますね。
そして、、
-
その後、還り坐す時、吉備児嶋を生んだ。またの名は建日方別という。次に、小豆嶋を生んだ。またの名は大野手比売という。次に、大嶋を生んだ。またの名は大多麻流別という。次に、女嶋を生んだ。またの名を天一根という。次に、知訶嶋を生んだ。またの名は天之忍男という。次に、両児嶋を生んだ。またの名は天両屋という。吉備の児島から天両屋の島まで合わせて六つの島である。
- 然後、還坐之時、生吉備兒嶋、亦名謂建日方別。次生小豆嶋、亦名謂大野手上比賣。次生大嶋、亦名謂大多麻上流別。自多至流以音。次生女嶋、亦名謂天一根。訓天如天。次生知訶嶋、亦名謂天之忍男。次生兩兒嶋、亦名謂天兩屋。自吉備兒嶋至天兩屋嶋、幷六嶋。
→「然る後、還り坐す時(然後、還坐之時)」とあり、どうやら、柱巡りして反対側で大八嶋国を生み終え、そこからは復路にあたり、引き返すときに嶋が生まれたようです。
1 | 吉備児嶋(建日方別) | 岡山県児島半島 |
2 | 小豆嶋(大野手比売) | 小豆島 |
3 | 大嶋(大多麻流別) | 山口県大島郡屋代島と推定 |
4 | 女嶋(天一根) | 大分県の姫島 |
5 | 知訶嶋(天之忍男) | 長崎県五島列島 |
6 | 両児嶋(天両屋) | 長崎県 男島、女島と推定 |
地図上のプロットは以下の通り。
一説には、これら追加で生んだ6つの嶋は、瀬戸内海航路および遣唐使の寄港地として重要な場所が選ばれている、とされてます。
『古事記』国生み まとめ
『古事記』の国生みを原文、語訳を通じて解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
『古事記』の国生みで押さえておきたいポイントは以下の通り。
- 天神指令は、「命以―言依」がセット。言葉によって委任する。意味は、一種の「天神ギャランティー」
- 国の修理固成。国のあり方や形成を象徴する超重要語、そこには「瑞穂の国」へ仕上げていくことが意味として含まれてる。
- 天神からの矛の下賜は、ミッション+グッズ=重要指令発令時の、神話世界の掟として。
- 天浮橋は、天空に浮かぶ橋。天上から地上世界へ降りてくる途中にある橋。尊いお方はここから下界を見渡す。
- 不思議の島の「淤能碁呂嶋」。『古事記』独特の擬音語・反復法「こをろこをろ」。矛の特別なパワー発動??
- まさに神業!見立てる=見る事によって現前させる。『古事記』的意訳。
- 天の御柱=もともとは国の中心である柱=地の中央であり天と通う場所としての位置づけ。
- 八尋殿を建てたのは、新たに足を踏み入れた地に居住し、結婚し、出産する一連の展開~という神様特有の行動特性から
- 身体問答は、「言表」という神様固有の行動特性があるから。神様は「まず言表し、そして行為に及ぶ。」
- 結婚=儀礼。きちんとした手順やルールを踏まえることが大事。そして、間違いがあるからこそ、分かることがある。伝えられることがある。
- 水蛭子、淡嶋の処遇=社会の成熟度という観点で解釈しよう。
- 天神による占いの意味=より尊貴に、より高次の存在とか法則とかも使って誕生する国を尊貴化したい。
- 天神の太占=天神さえ服従する「超絶的な働き=神意」を知るための儀式。
- 『古事記』も、隠岐など例外はありつつ、おおむね左回りで国を生んでいる。左回り運動は柱巡りの陽神の動きの延長から。
- 『古事記』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化。生まれた大八島国が、伊耶那岐と伊耶那美の子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを伝えてる。
- 名付け=親権の発生であり、伊耶那岐と伊耶那美が親としての責任をもって、それこそ修理固成によって「瑞穂の国」へ仕上げていくことを意味してる。
ということで、
それぞれに非常に深い意味を持たせてること、しっかりチェックされてください。
全般を通してみると、
やはり、冒頭、いきなり登場の「天神」の存在がめっちゃ重要ってこと。。
天神プロデュース
天神ミッションをもとに二神が活動。間違いを犯し、結果の理由を天神に聞きに行く。間違うから分かることがある。で、天神が答えを占いで出す。ここで天神以上の存在というか宇宙法則が意識され、さらに格上げされる。そうした雰囲気の中で今度は正しい手続き、儀礼によって大八嶋国が誕生する。
非常に練られた、緻密に設計、構築された神話世界が展開しています。
一つひとつに当時の最先端知識をもとにした創意工夫を盛り込んでつくられている日本神話の世界。多彩で豊かな世界観は古代日本人の智恵の結晶なんですね。
続けて神生み!ガンガン生もうぜ!?
『日本書紀』との比較を通じて、国生み神話をより立体的に捉えるのだ!必読!
神話を持って旅に出よう!
国生み神話のもう一つの楽しみ方、それが伝承地を巡る旅です。以下いくつかご紹介!
●上立神岩:伊奘諾尊と伊奘冉尊が柱巡りをした伝承地
●自凝神社(おのころ神社):伊奘諾尊と伊奘冉尊の聖婚の地??
●絵島:国生み神話の舞台と伝えられるすっごい小さい島。。
●神島:国生み神話の舞台と伝えられるこちらも小さな島。。
佛教大学名誉教授 日本神話協会理事長 榎本福寿
埼玉県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程国語学国文学(S53)。佛教大学助教授(S58)。中華人民共和国西安外国語学院(現西安外国語大学)文教専家(H1)。佛教大学教授(H6)。中華人民共和国北京大学高級訪問学者(H13)。東京大学大学院総合文化研究科私学研修員(H21)。主な書籍に『古代神話の文献学 神代を中心とした記紀の成りたち及び相関を読む』がある。『日本書紀』『古事記』を中心に上代文学における文献学的研究成果多数。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)
どこよりも分かりやすい日本神話解説シリーズはコチラ!
ついでに日本の建国神話もチェック!
日本神話編纂の現場!奈良にカマン!
→天神による、二神への国修理固成指令。
ポイント4つ。
以下、順に解説。
①天神指令は一種の「天神ギャランティー」
「天神諸々の命をもって(天神諸命以)」とあります。
経緯を踏まえると、ココで言う「天神諸」とは、天地のはじまりに誕生した「別天神」を中心とする尊貴な神々と想定されます。。伊耶那岐命と伊耶那美命に命令することができるくらい格が高い神様群。
●必読→ 別天神(ことあまつかみ)|天地のはじまりに誕生した独神で身を隠す五柱の神々。
●必読→ 『古事記』の天地開闢|原文、語訳とポイント解説!神名を連ねる手法で天地初発を物語る。
で、「天神諸々の命をもって」とあるように、皆さん勢揃いで命令を下したって。。結構、力入ってます。。
ポイントは、天神指令という体(体裁)になってること。
コレ、『日本書紀』と比較するとかなり明確で。『日本書紀』の場合、〔本伝〕では、天神は登場せず、伊奘諾尊と伊奘冉尊が(自主的に)国生みをする、という体(体裁)。二神が「創生神」としてかなり尊貴な位置づけになってる。
一方の『古事記』は、伊耶那岐命と伊耶那美命は天神の指示命令によって動かされる存在であり、天神より下の位置づけ。
コレ、言い方を変えると、『古事記』は『日本書紀』以上に尊貴な存在(天神)を想定し、その指示、関与を通じて国が生まれた、という形にしてるってこと。
コレ、理由は、
国生みの成果物である「大八嶋国」を尊貴化するため。
『古事記』では、そもそもが「別天神」のように、『日本書紀』の「神世七代」よりも尊貴な神様カテゴリを設定してる。この構造をもとに、伊耶那岐命や伊耶那美命よりさらに尊貴な神々、つまり天神が直接指令を下す、国生みに深く関与する形をとることで、結果的に誕生する大八嶋国=日本を尊貴な国として位置づけようとしてる訳ですね。
『日本書紀』を向こうに回してもっと尊貴に、もっとスゴイ感じを伝えようとしてるのが『古事記』であります。
ちなみに、、、
『日本書紀』第四段の異伝である〔一書1〕は、『古事記』と同じながら、より予祝感を全面に出した感じになってます。コチラ!
ということで。
あの天神が言ったんですよ。天神が。
豊かな葦の茂る原でめっちゃ大量にずーっと稲穂が収穫できるみずみずしくてすばらしい地(豊葦原千五百秋瑞穂之地)があるよと、予祝的に言ったんです。
コレ、天神ギャランティー。要は、天神の「お墨付き」というやつで。保証付き。
その価値、その意味を、全身で感じていただきたい!
私たちはなんて素晴らしい場所で生かさせていただいてるんでしょうか! ってなる仕掛け。『古事記』も同様で。『古事記』の場合は、それが「国の修理固成」という訳。
天神関与、天神ギャランティー、かなり重要な位置づけになってます。
次!
②「命以―言依」がセット。言葉によって委任する
「天神諸々の命をもって ~ ご委任なさった。」(天神諸命以 ~ 言依賜也。)とあります。
まず、「命以」は「命令をもって、言葉で」の意味。「言依」は「ことよさす」と読ませ「委任する」という意味。
ココでは、天神による「命以―言依」がセットになって、言葉によって命令的に委任する形で使われてます。
特に、「命以」は、『古事記』独特の表現で、基本的には天照大御神や高御産巣日神による命令、指令の時だけ使用。結構、重たい言葉なんですよね。
「伊耶那岐命」「伊耶那美命」も、そもそも天地のはじまり、神世七代として成りました時は「伊耶那岐神」「伊耶那美神」だったのが、ココ「命以」以降は「伊耶那岐命」「伊耶那美命」として活動。つまり、命=ミッションを持つ存在として位置づけられてるんです。
恐らく、「命」というのが高天原のヒエラルキー、秩序の根拠となっており、その意味で、天神は二神に「命」を下せるほどの尊い存在、格が上の存在。
なお、委任された側は、委任した側と同じ立場・権限を持って行動する、と考えられます。もっと言うと、委任した存在(天神)が行動してるとみなされる、ってことで。
国生みを、天神関与、もっと言うと、なんなら天神が国生みをしたくらいの勢いで位置づけようとしてる『古事記』。もちろん、狙いは国生みの成果物として誕生する大八嶋国=日本の尊貴化であります。
次!
③国の修理固成。国のあり方や形成を象徴する超重要語
天神による「この漂っている国を修理め固め成せ。」という指令。「修理」=整えること、「固成」=固めること。
『古事記』における、初の、神が発した言葉。この意味、超重要。「詔」なんで、絶対命令。
●参考→ 勅命 受けたらどうするよ?律令に規定する専念&復命義務を分かりやすくまとめ!
この「修理固成」は、先ほど同様、天地のはじまりにおける描写がもとになってます。別天神の4,5番目誕生時、
とあり、
要は、このころ、国はまだ未成熟で、水(想定としては海)に浮いてる脂のようで、クラゲみたいにふよふよ漂っていた状態。
そんなんで、人民の住む国がつくれるわけがないっ!!
「修理固成」、ふよふよ状態の未成熟な国を整えて固めなさい、てことです。
で、
実は、この「修理固成」。『古事記』における国のあり方や、その形成を象徴する超重要語として古くから議論百出。
大きく。1つは、この国を、天神が想定している本来のあるべき姿に整えること。先ほどの、ふよふよ状態をなんとかしろと、いうもの。2つ目は、建て直し、作り直し、と捉えるもの。ただよへる国を、ことよさし通りに大規模に作り直す、とする。
いずれも、ポイントは、『古事記』の元ネタたる『日本書紀』を踏まえる事。
つまり、『日本書紀』第四段の異伝である〔一書1〕のコチラ!
を踏まえて整理。
つまり、「修理固成」には、ただよへる国を、瑞穂の地から「瑞穂の国」へ仕上げていくことが含まれてる、ってこと。それこそ、天神が想定したとおりの、あるべき姿に整えることをいう訳です。
実際に、天神指令の修理固成を、伊耶那岐命・伊耶那美命の二神がどこまで解釈してたか?ってことについて。
単に、国を(形状的に)整え固めるだけなら、大八嶋国を生むだけでよかったはず。しかし、二神はこの後、続けて神生みへ突入していきます。
てことは、やはり、修理固成とは、単なる整え固めるってだけでなく、ただよへる国を「瑞穂の国」へ仕上げていく意味を込めてるってこと。神々を生み、それこそ土や風や野や食物の神を生むことで、「瑞穂の国」に向けた土壌をつくっていく、ということでチェック。
ちなみに、、
この「修理固成」、位置付けとしては、今後の神話的展開のとっかかりになってることも確認しておきましょう。
物語として、コレまではただ単に、神々が次々と誕生しましたーってことしか語ってなかった訳で。神話的に、どこに進むのかよく分からない状態だったのが、ここでようやく、テーマ設定がされたんです。方向性が示され、ついでに言うと、神話を展開させるエンジンを獲得した訳です。その意味で、非常に重要な言葉なんす。
次!
④ミッション+グッズ=重要指令発令時の神様コンピテンシー
天神が「天沼矛を授けて、ご委任なさった。(賜天沼矛而言依賜也。)」と。
コレ、神話世界では、何らかの重要指令を下すときは「ミッション(命)+グッズ」のセットがパターン。神様的行動特性。
例:
といった感じ。
ちなみに、天照ミッションによって下賜された「三種の神器」を引き継いでいるのが天皇という事。神話を引き継ぐ天皇陛下。神話が今と繋がってる例でもあります。奥ゆかしい日本ならでは。
とにかく、ここでは、
重要指令が出されるときは、「ミッション+グッズのセット」というのが神様行動特性(神様コンピテンシー)。ということで、今に繋がる重要テーマを含むことも合わせてチェックです。
なお、
「天沼矛」については詳細コチラで→ 天之瓊矛/天沼矛|矛で嶋を成す?国生みで二神が使用した特殊な矛「天之瓊矛/天沼矛」を徹底解説!
『日本書紀』では「天之瓊矛」。「天之」は美称。「瓊」は玉飾りのこと。麗しい玉飾りのついた矛。
これをベースに、『古事記』では「天沼矛」。「沼」は「瓊」の訓仮名として。『日本書紀』では「瓊」を「努」と読めと注しており、この「努」の音を「沼」で表現してるからです。