角杙神つのぐひのかみ|角状の棒杙の神!国土神として化成した神世七代の第四代。大地の土台を力強い杙がしっかり固定する神

角杙神

Contents

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

角杙神つのぐひのかみ

『古事記』では、天地初発に神世七代の四代目、男女ペアの男神として「角杙神つのぐひのかみ」を伝えます。『日本書紀』では「角樴尊つのぐいのみこと」として登場。

本エントリでは、「角杙神つのぐひのかみ」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。

 

角杙神つのぐひのかみ|角状の棒杙の神!国土神として化成した神世七代の第四代。大地の土台を力強い杙がしっかり固定する神

角杙神とは?その名義

角杙神つのぐひのかみ」・・・つの状の棒杙の神

次に成った「活杙神いくぐひのかみ」(女神)と合わせて、神世七代の第四代。

「角」は、「角状の」の意。

「杙」は、「棒杙=棒状の木のくい」の意。ここでは、力強く霊能をもつ杙のイメージ。

直前に成った「宇比地邇神うひぢにのかみ」「いも 須比智邇神すひちにのかみ」による大地(泥土)の形成をうけて、その大地に目印となる杙を打ち込むことを表象。一緒に成った「いも 活杙神いくぐひのかみ」とあわせて「力強く霊能をもつ杙」の神格化。

ということで、

角杙神つのぐひのかみ」=「角状の」+「力強く霊能をもつ杙」+「神」= つの状の棒杙の神

 

角杙神の活動を伝える日本神話

角杙神つのぐひのかみ」が登場するのは、『古事記』上巻、天地初発の神話。以下のように伝えてます。

 次に、成った神の名は、宇比地邇神うひぢにのかみ。次に、いも 須比智邇神すひちにのかみ次に、角杙神つのぐひのかみ次に、いも 活杙神いくぐひのかみ(二柱)。次に、意富斗能地神おほとのぢのかみ。次にいも 大斗乃辨神おほとのべのかみ。次に、於母陀流神おもだるのかみ。次に、いも 阿夜訶志古泥神あやかしこねのかみ。次に、伊耶那岐神いざなきのかみ。次に、いも 伊耶那美神いざなみのかみ

 かみくだりの、国之常立神くにのとこたちのかみより下、伊耶那美神いざなみのかみより前を、あわせて神世七代かみよななよという。上の二柱の独神ひとりがみは、おのおのも一代という。次にたぐへる十柱とはしらの神は、おのおのも二柱ふたはしらの神を合わせて一代という。

次成神名、宇比地邇神、次妹須比智邇去神此二神名以音、次角杙神、次妹活杙神二柱、次意富斗能地神、次妹大斗乃辨神此二神名亦以音、次於母陀流神、次妹阿夜訶志古泥神此二神名皆以音、次伊邪那岐神、次妹伊邪那美神。此二神名亦以音如上。

上件、自國之常立神以下伊邪那美神以前、幷稱神世七代。上二柱獨神、各云一代。次雙十神、各合二神云一代也。 (『古事記』上巻より一部抜粋)

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ということで。

まず、天地開闢に誕生する神々を整理するとこんな感じ。

『古事記』天地開闢で誕生した神々

▲「角杙神つのぐひのかみ」は、天地開闢のはじめに誕生した神世七代の四代目、男女ペア(双神たぐへるかみ)の男神として位置づけられてます。

ポイント2つ。

独神ひとりがみ」が身を隠すことで「双神たぐへるかみ」が世界を形づくっていく道筋をつけた

角杙神つのぐひのかみ」は双神たぐへるかみ」として位置づけられてるんですが、忘れてはいけないのが、これより前に誕生した独神ひとりがみ」からの流れ。

独神ひとりがみ」はすべて身を隠すのですが、コレ、『古事記』独特の表現で、「双神たぐへるかみ」に彼らの活躍する世界を譲り、自らは立ち退くことをいいます。

言い方を変えると、独神ひとりがみ」が身を隠すことで「双神たぐへるかみ」が世界を形づくっていくことに道筋をつけた、てことで

角杙神つのぐひのかみ」と「活杙神いくぐひのかみ」という双神たぐへるかみ」の誕生にはこうした背景があること、しっかりチェック。

次!

②神世七代の神名を通じて、世界が次々に具体的な形をとって展開するさまを表象している

そして、双神たぐへるかみ」が世界を形づくっていくこと、その具体的な表れは「神世七代」の神名を通じて表現されます。

神世七代の神名の要点をまとめると、以下になります。

神名 表象するもの
国常立 天の常立神に続き、それと対応して成る国の恒常的確立(予祝)
豊雲野 地上世界に豊かな雲のわき立つ野が出現したこと、地上世界の豊穣(予祝)
宇比地&須比地 天→国、雲野→泥砂という対応に即した、地上世界の土台
角杙&活杙 土台としての大地に標識となる「力強く霊能をもつ杙」を打ち込む
意富斗&大斗乃 偉大な、男女両性の部位
於母陀&阿夜訶 男女両性の出現に続き、その男と女をそれぞれ「面足おもたる」「あやかしこね」と称える
伊耶那岐&伊耶那美 男女が完備したあと、その男と女とが互いに結婚・国生みに向け誘いあう

これ、ホントによくできた神名になっていて。

表象しているのは、神の世に、新しく世界が次々に具体的な形をとって展開するさまであり、以下のような物語展開。

  1. 先ずは、国(国土)が恒久的に(永久に)確立することを予祝
  2. その国(国土)に、豊穣を約束する「雲のわき立つ野」が出現することを予祝
  3. そのうえで双神により具体的な表れとして、大地の土台ができ、そこに標識となる杙を打ち込み、戸を造立する
  4. そして、男女の神により、互いにまっとき性を具有することを称えあい、誘い合う、、

、、、

ステキですね。ゾクゾクします。日本的な、極めて日本的な世界創生の物語。。。

そして、最後に誕生した伊耶那岐神と伊耶那美神が結婚し、国生み、神生みを導く、、、壮大な構想をもとにつくられてる。そこへ向けて、土台としての大地に標識となる「力強く霊能をもつ杙」を打ち込む神として「角杙神つのぐひのかみ」が登場してるんですね。

 

角杙神を始祖とする氏族

無し

 

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より 一部分かりやすく現代風修正。

角杙神が登場する日本神話の分かりやすい解説はコチラ!

『日本書紀』神代上: 角樴尊つのぐいのみこと活樴尊いくぐひのみこと

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他