『日本書紀』巻第一(神代上)第二段 本伝 ~男女耦生の八神~

 

多彩で豊かな日本神話の世界へようこそ!

正史『日本書紀』をもとに、最新の学術成果も取り入れながら、どこよりも分かりやすい解説をお届けします。題して、おもしろ日本神話シリーズ。

今回は、『日本書紀』巻第一(神代上)第二段の本伝。

第一段で誕生した「三柱みはしらの神」の流れを受けて、いよいよ男女の対となる神々が誕生。

ここでは合計四組、計8神が誕生します。

概要で物語の全体像をつかんで、ポイントを把握してから本文へ。最後に、解説をお届けしてまとめていきます。

現代の私たちにも多くの学びをもらえる内容。日本神話から学ぶ。日本の神髄がここにあります。

それでは行ってみましょう!

 

『日本書紀』巻第一(神代上)第二段 本伝 ~男女耦生の八神~

『日本書紀』巻第一(神代上)第二段 本伝の概要

今回お届けする内容は、前段である第一段を踏まえてから。コチラ↓を再チェック!

『日本書紀』巻第一(神代上)第一段 本伝 ~天地開闢と三柱の神の化生~

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で、今回ご紹介するのは全体像で言うとココ(赤枠部分)

天地開闢の続き。前段の第一段では、「純粋な男の神様」が誕生するだけでしたが、今回、第二段ではここから展開して「男女ペアの神様」が登場。コレ、神話的に初、ニュージェネレーション。
この大転換発生スポットが第二段ということで、大きなうねりを感じながら読み進めてくださいね。

 

『日本書紀』巻第一(神代上)第二段 本伝のポイント

ポイントは、3つ。

  1. 「次有神」という言葉で前段を引き継ぎ、続く第三段へつなぐ
  2. 初めて、男女神が誕生する
  3. 神の名前にストーリーらしきものがある

以下、順に解説。

①「次有神」という言葉で前段を引き継ぎ、続く第三段へつなぐ

まず、第二段〔本伝〕。冒頭の「次有神」という言葉からスタート。これにより、第一段をひき継いで展開することを表します。

で、そのあと、

男女四組の「耦生之神ぐうせいのかみ」を列挙するごとに、この表現を前置き。要は、引き継いでるよ、つながってるよ、ということ。
ちなみに「耦生ぐうせい」とは、「 二人(またはそれ以上)が同時に生まれること」。

第二段は、第一段の流れを引き継いでいる事をことさら強調、
そして、それは続く第三段で「神世七代かみよななよ」と一括するところへつながっていく、、、

まずこの流れをチェックです。

 

①初めて、男女神が誕生する

第一段では「純男三神」だったのが、第二段になって初めて登場、「男女一組のセット神」。

初登場、ニュージェネレーション。

こ、これは革命だ。。。((((;゚Д゚))))ガクブル

第一段でことさら「純粋な男の神」と強調していたのが、第二段になると「男女ペアの神神」へと劇的な転換を果たす。これを革命と言わず何と言おうか?

第二段は、この大転換をビリビリ感じながら読み進めるのが○

 

③神の名前にストーリーらしきものがある

誕生する男女ペアの神神には、どうやらストーリーらしきものが存在します。それが

土台→家→互いに賛美→誘い合う

という「結婚の物語」。「進化の物語」とも言える。これが神名に付与されてる訳です。

当サイトとしては、原則、神名については詳細の解説は行いません。ですが、ココだけは特別。こんなのもあるんだ、ということで後程チェックです。

まとめます。

  1. 第二段は、冒頭の「次有神」という言葉からスタート。これにより、第一段をひき継いで展開することを表す。男女四組の「耦生之神ぐうせいのかみ」を列挙するごとに、この表現を前置き。要は、引き継いでるよ、という明示。

  2. 初めて、男女ペア神が誕生。男女で一組のセット神。コレ神話的大転換。さらっと流すのはNG!

  3. 神の名前にストーリーがある。土台→家→互いに賛美→誘い合う、という流れ。これは結婚を表象。

以上の3点をチェックして本伝へ。

 

『日本書紀』巻第一 第二段 本伝

次に現れた神は、泥土煑尊うひぢにのみこと※1沙土煑すひぢに※2。次に現れた神は、大戸之道尊おほとのぢのみこと※3大苫辺尊おほとまべのみこと※4。次に現れた神は、面足尊おもだるのみこと惶根尊かしこねのみこと※5。次に現れた神は、伊奘諾尊いざなきのみこと伊奘冉尊いざなみのみこと

※1:土、これを「うひぢ」と読む。
※2:沙土、これを「すひぢ」と読む。別名は、泥土根尊うひぢねのみこと沙土根尊すひぢねのみこと
※3:ある書では、大戸之辺おほとのべと言う。
※4:または大戸摩彦尊おほとまひこのみこと大戸摩姫尊おほとまひめのみこと大富道尊おほとまぢのみこと大富辺尊おほとまべのみこととも言う。
※5:または吾屋惶根尊あやかしこねのみこと忌橿城尊いむかしきのみこと青橿城根尊あをかしきねのみこと)吾屋橿城尊あやかしきのみことと言う。

有神。泥土煑尊〈泥土、此云于毘尼。〉・沙土煑尊〈沙土、此云須毘尼。亦曰泥土根尊、沙土根尊。〉。次有神。大戸之道尊〈一云、大戸之辺。〉・大苫辺尊〈亦曰大戸摩彦尊、大戸摩姫尊。亦曰大富道尊、大富辺尊。〉。次有神。面足尊・惶根尊〈亦曰吾屋惶根尊。亦曰忌橿城尊。亦曰青橿城根尊。亦曰吾屋橿城尊。〉。次有神。伊弉諾尊・伊弉冊尊。

『日本書紀』巻第一(神代上)第二段 本伝

 

短っ!

これだけ?

はい。これだけです。

『日本書紀』巻第一 第二段 本伝 解説

以下、3つ解説。一つ目

①「次有神」が引き継ぎと区切りの役目をもっている

第二段読み解きにあたっては、「次有神つぎにかみあり」にまず着目。

コレ、ポイント2つ。

  • 冒頭に「次有神」を配置することで、第一段をひき継いで展開することを明示する
  • 男女四組の「耦生之神ぐうせいのかみ」を列挙するつど「次有神」を前置き、「男女ペア神=神世一代」として区切る

そんな役目を「次有神」は持ってます。

第二段では登場しないのですが、続く第三段で、つまりあとになって、男女ペアの神は「神世の一代」としてカテゴリされることが分かるようになってます。

引き継ぎ役と区切り役、2つの役割を持っていること、まずチェック。

続いて2つめ。

②男女一対の四世代、合計8神

先ほども触れましたが、第二段のあとの第三段〔本伝〕で、第二段で登場する神神は、第一段の三神とあわせて「神世七代かみよななよ」と一括されるようになります。

これにより、男女一組みのセットは、それぞれ「神世の一代」にあたることが分かるようになる。

あとで分かる感じなんです。

分かりやすく

  • 第一段:三世代(=三神)。「乾道独化、所以成此純男」という純男神の化成
  • 第二段:四世代。男女で一対の神様が四世代、合計8神。
  • 第三段:解説。3(純男神)+4(男女神)=7代(神世七代)

といった流れ。神様を一覧化すると、

神世 神名 誕生方法 登場場所
一代 国常立尊 乾道独化
(純男の神)
第一段
二代 国狭槌尊
三代 豊斟渟尊
四代 泥土煑尊 乾坤之道、相参而化
(男女一対の神)
第二段
沙土煑尊
五代 大戸之道尊
大苫辺尊
六代 面足尊
惶根尊
七代 伊奘諾尊
伊奘冉尊

と、まースゴイ合理的に組まれてる。もともとあった伝承をまとめました的なものではなく、しっかり創られてる感じがしますよね。

乾道独化けんどうどっか」した「純男の神」は、最も尊い存在。なので「3」という陽数設定。
一方の「男女ペアの神」は、次順じじゅんの存在。なので「4」という陰数設定。

第一段をチェックいただければ、古代の聖数概念のことだとピンとくるはず!

合理的で数学的にも美しい世界、それが天地開闢にまつわる神様誕生の神話観です。

 

③神の名前にストーリーらしきものがある

最後3つめ。

ストーリーとは、「土台→家→互いに賛美→誘い合う」、要は「結婚の物語」です。

当サイトでは神名については詳細の解説は行いません。これには深~い訳があって、背景には正訓字表記で読むか、音仮名表記で読むか、という問題があるのです。詳細は別稿で。ここでは、ストーリーにスポットを当てます。

最初に
「泥土」と「沙土」を名に組み込んだ「泥土煑尊うひぢにのみこと沙土煑すひぢに」が、まず土壌の出現を表象。

このあと
大戸之道尊おほとのぢのみこと大苫辺尊おほとまべのみこと」。自然の土壌をかたどる表象から、人文の建造物、工作物をかたどる表象に転じます。要はお家を建てたわけです。

そして、
面足尊おもだるのみこと惶根尊かしこねのみこと」。こちらは、「おもだる(りっぱなお顔ね)」、「あやかしこね(かわいいね)」、と、たがいに称えあう関係にある訳です。盛り上がってきました。

そして最後の、
伊奘諾尊いざなきのみこと伊奘冉尊いざなみのみこと」。これは、「いざなふ」の語をもとに成りたつ神名とみるのが通例。要はベッドインへ向けて誘いあってるということです。

第四段でいよいよ国生みが登場する訳で、その前段として神名を通じて結婚ストーリーを表現したという訳ですね。

「土台→戸(家)→互いに賛美→誘い合う」結婚ストーリー。

すごいよくできた神話、、、((((;゚Д゚))))ガクブル

コレ、言い方を変えると、
土台→家に続き、二神がたがいに称えあうという表象を承け、まさにその称辞のとおり出現した二神(伊弉諾・伊弉冉)が誘いあう。それが、結婚、国生みを導く、とも言えて。
神話世界の大きな大きな流れを、神名を通じて表現していると言える訳ですね。

まとめます。

  1. 「次有神」が引き継ぎと区切りの役目をもっている
  2. 男女一対の四世代、合計8神。第一段の「純男神」に対して、「男女ペアの神」は次順の存在。なので「4」という陰数設定
  3. 神の名前にストーリーあり。「土台→家→互いに賛美→誘い合う」という「結婚の物語」。これが、続く第四段の結婚、国生みを導く

『日本書紀』編纂当時の、東アジアの最先端知識、宇宙理論をもとに、単に真似で終わるのではなく、日本独自に組み合わせ、工夫し、新しく生み出している。第二段も同じく、超絶クリエイティブ発揮。こちらもあわせてチェックされてください。

 

まとめ

『日本書紀』巻第一(神代上)第二段の本伝

第一段で誕生した「三柱みはしらの神」の流れを受けて、いよいよ男女の対となる神々が誕生。第二段では合計四組、計8神が誕生します。

ポイントは、

①「次有神」という言葉によって、第一段を引き継ぐことを明示。本文では男女ペア神を一代として区切る役目発揮。

①初めて、男女神が誕生。男女で一組のセット神。コレは神話的には革命とも言える大転換。さらっと流すのNG!

②神の名前に結婚ストーリーが。土台→家→互いに賛美→誘い合う、という流れ。

③男女神の登場、そして神名を通じた結婚ストーリー。それが第四段での国生みを導く。

以上のポイントをチェックいただければと思います。

『日本書紀』編纂当時の、東アジアの最先端知識、宇宙理論をもとに、日本独自に組み合わせ、工夫し、新しく生み出している感じ。ホントスゴイよジャパーン的超絶クリエイティブ。

続きはコチラで!

『日本書紀』巻第一(神代上)第二段 一書第1,2 親が子を生みなすニュージェネレーション登場

05/04/2019

本シリーズの目次はコチラ!

『日本書紀』とは?『日本書紀』が伝える日本神話を分かりやすく解説!

05/06/2019

日本神話とは

本記事監修:(一社)日本神話協会理事長、佛教大学名誉教授 榎本福寿氏
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)

 

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さるたひこ

こんにちは、さるたひこです! 日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。 「日本神話をこよなく愛するナビゲーター」として日本神話関連情報、題して「日本神話がおもしろい!」を発信中。最新の学術情報を踏まえしっかりとした日本神話解釈をお届け。是非チェックしてくださいね。