お田植え祭|天香久山の御田植神事!お田植え祭当日の様子を詳しくレポ!

お田植神事

 

お田植え祭とは?

神社で斎行される、年間の神事の一環として行われるお祭りで、
春のお田植え祭、秋の抜穂祭と新嘗祭が一連の流れ。

「お田植え祭」の名のとおり、農作業における田植え特化のお祭りで、奉仕員による田植えと豊作を祈念する神事がセットになっています。

今回、

奈良県の天香久山で行われたお田植え祭の様子をもとに、
お田植え祭の全貌を分かりやすくご紹介。毎年やってますので、是非チェックされてください!

 

お田植え祭|天香久山の御田植神事!お田植え祭当日の様子を詳しくレポ!

お田植え祭の様子

まずはお田植え祭ってどんなものなのか、現場の様子をご紹介。

今回、

奈良県橿原市にある、天香久山のふもとに鎮座する
畝尾坐健土安うねをにいますたけはにやす神社」のお田植え祭をピックアップ。

私さるたひこも奉仕員として参加させていただいた経緯もあって、
かなり前のめりにご紹介。特別に、神事の流れや役割も解説いたします。

これをチェックすればお田植え祭がまるっと分かります!

ちなみに、

天香久山で斎行されたお田植え祭のポイントは2つ。地元奈良のPRもかねて。

そもそも論、
お田植え祭が斎行された「畝尾坐健土安神社」がスゴイ!

詳しくはコチラでチェック!

橿原といえば、
日本建国の聖地。

もうそれだけで神話ファン的には足の震えが止まらないのですが、

その建国に深く関わった、
いや、なんなら、神話的には、天香久山の「土」を使った祭祀によって建国を果たせた訳なんで、その超重要な「土」をお祭りする神社の御田植え祭だから!

ちょっと何言ってんの分からない、という方はコチラで。

建国神話において、重要な転機になった「丹生川上祭祀」。

その祭祀に使われた「土」の神様をお祭りしている
すんごい神社が、畝尾坐健土安神社なんです!

その神様に見守っていただきながら斎行したお田植え祭、

コレ、神話ファンとしては鉄板ロマン。ふと見れば、そこには天香久山。。。サイコーすぎでしょ!?

2つめ。

神社を中心とする香久山中心の地域活性化を目指した取り組みです。

古く、天上にある天香具山が地上に降りてきたという神話も伝わる天香久山。

神話の時代から続く天香久山も、
地域の高齢化が進み、神社の護持や、祭りをはじめとする伝統文化の維持継続が難しくなってきている現状がありました。

今回、そうした状況を少しでも変えていこうと、地元の農家さんと一緒に活動を開始。宮司様や区長の皆さん、関係する皆さんと協議を重ね、今回の形になりました。

お米作りに大切な土、その神様をお祀りし、田植え神事の復活を通じて、少しでも天香久山の歴史や伝統を知っていただければと。。

そんな経緯からスタートしたお田植え祭なんです。

しかも!

「奈良の学校給食を考える会(きゅうしょくカンガルー)」さんとのコラボで開催。

こちらの会、
奈良県農民連やコープ自然派などの皆さんがメンバーとなり、おいしい給食と本当の食育をめざして2011年から活動されています。

詳しくはコチラで→「奈良の学校給食を考える会(きゅうしょくカンガルー)

橿原市の小学生を中心に、家族連れの方々が参加するにぎやかな会となりました。

開催概要はこんな感じで。

こちら、私さるたひこ自作のチラシ(結構イイ感じ?)。

会場は、

天香久山のふもと、「天香具山「八釣山」特別栽培米生産事務所」の田んぼ。

農家の山尾さんはココで、農薬・化学肥料を使わない「自然農法」でお米を育ててらっしゃいます。

当日は朝から小雨降る感じで開催が心配されたのですが、開始時間が近づくにつれ雨も上がり晴れ間も見えてきました。これはツイテル♪

朝10時からスタート。

まずは、

参進。

斎場へ、斎主以下奉仕員が参進します。斎主先頭。田主、耕作長、奉仕員・早乙女が続きます。

と、

ココでミニ知識。

お田植え祭は、以下役割分担が基本。

  • 斎主さいしゅ 宮司さん
  • 田主たぬし 田んぼの持ち主(黄装束)
  • 耕作長 奉仕員・早乙女のリーダー(緑装束) 
  • 奉仕員(白装束)と早乙女さおとめ(早乙女装束)

と、基本的には4つの役割を担って「お田植え祭」を実施。

実際の「田植え」を演じるのが耕作長と奉仕員(男性)・早乙女(女性)です。

▲宮司様はじめ、奉仕員の皆さん到着。さー始まります!

祭壇の前では以下の神事を斎行。

奏笛あり。

修祓しゅばつ之儀

お祓いの儀。斎主が、神饌しんせんはじめ、玉串、奉仕員、参列者などをお祓いします。

次に、

降神こうしん之儀 

正面の祭壇上の「神籬ひもろぎ」へ、神々にご降臨いただく儀式です。

警蹕けいひつによって降臨いただく秘儀。天香久山のふもとでこんな事が行われるなんて、、、スゴい神が降臨しそうな気が、、、(((;゜Д゜)))))ガクブル

次に、

献饌けんせん之儀

ご降臨いただいた神々に、祭壇上のお供えを奉る儀式。斎主が、神饌の瓶子へいし、水器のふたを取ります。

そして、

祝詞奏上

斎主が神前にてお辞儀し、祝詞を奏上します。

ということで、

お祓いして、ご降臨いただいて、お供えして、祝詞を奏上する、という分かりやすい流れです。

そして、いよいよ、お田植え祭のメインであります。

流れとしては、

田んぼを清めて、水口へ御幣を立てて、みんなで植える。

まずは、

斎田清祓さいでんきよめはらえ之儀

斎田さいでん神饌田しんせんでん)を祓い清める儀式です。

▲斎主は、田主を供奉ぐぶして、一緒に神饌田しんせんでんをお清めします。

続けて、

水口奉幣みなくちほうべい之儀

斎主が、水口みなくち奉幣ほうべいする儀式。

水口とは、田んぼに水を引く場所、水の入口。美しくよい水に恵まれますように、と、神饌田の水口へ御幣ごへいを差し立てて祈念。

これは、田主と耕作長が協力して刺し立てます。

続いて、いよいよメイン。

御田植おたうえ之儀

田主を筆頭に、耕作長、奉仕員、早乙女が、お田植えを奉仕します。一般的に、お田植え祭のイメージはコレですよね。

まず、ご神前の早苗さなえを、斎主より田主へ撤下てっかします。そして田主から耕作長へ渡す。

実際のお田植え作業は、耕作長をリーダーとして、奉仕員と早乙女が行うので、早苗は耕作長に手渡される訳です。

でもって

早苗をもって、田んぼへ移動。

田んぼに入る手前で、耕作長から一同に早苗が渡され、一同、早苗をもって田へ降り立ちます。

事前に決めておいた立ち位置に立ったら、、、

田主よりお田植え開始宣言。

「本日は最上吉日なれば、御田植はじめせばやと存じ候~」

と。高らかに宣言。

それを一同承って、田主の打つ太鼓に合わせて植えていきます。

▲前日までに、みんなで段取りを打合せしてきました。なかなか揃ってる感じですね。

このあたりは、地域毎に特色がでるところなので、是非いろんなお田植え祭をチェックいただければと思います。

そして、

田植えが終わったら、

鈴祓すずばらえ之儀

玉串拝礼たまぐしはいれい之儀

のあと、

撤饌てっせん之儀

で、神饌の瓶子、水器の蓋を閉じ、

昇神しょうしん之儀 

で、祭壇上の神籬(ひもろぎ)に、御とどまりの神々のご昇神をおこないます。

奏笛があって、

斎主、田主よりご挨拶

そして、

対揖たいゆう

一同礼。

そして

退下

する流れ。

これで、一連の基本的な「お田植え祭」は終了です。

ちなみに、、、、

天香久山のお田植え祭では、この後、、、、

地元の「学校給食を考える会」の皆さんと一緒に、田んぼに入って田植え!!

▲ほんと、いいかんじですよね。泥だらけになりながら、、田んぼの土の感触、稲を植える感覚、貴重な経験になること間違いなしです!

 

▲みんなで植えたからね。このランダム感はご愛嬌♪

 

▲おや!?誰かが紙芝居してるぞ! 天香久山にちなむ神話紙芝居。天岩戸神事の模様をお届け中。

 

▲おおおおお!彩雲が!!!こりゃめでたい!!!!!

 

ということで、

つつがなく終了いたしました。ロマンとか感謝とか、土の感触とか、いろんな意味で胸がいっぱい。ほんと、ありがたいなーと思います。

ということで、現場からのご報告は以上です。

最後に、お田植え祭のアレコレをまとめておきますので、是非チェックされてください。

お田植え祭とは?

改めて、お田植え祭って?

ってところを、まとめてチェック。

「お田植え祭」とは、土の神、田の神を祀って豊穣を祈念するお祭り。

現代では、神社で斎行される年間の神事の一環として行われるのが多く、神社の敷地内外にある「神田・斎田・神饌田」で、奉仕員や早乙女が田植え作業を演じ、豊作・豊穣を祈念します。

初春の播種祭、春のお田植え祭、秋の抜穂祭と新嘗祭、といった一連の流れがベース。

ちなみに、

新春の予祝的な芸能を「田遊び」、春の田植え時期に行われるものを「お田植え祭」と区別して呼ばれることも。

今でこそ、機械化され負担は減ってきていますが、昔は、苗を人手でもって植えていた訳で、その苦しい田植え作業を少しでも楽しくする方法として「田植歌」を歌いながら田植えをする、という風習がありました。

お田植え祭では、この田植歌に合わせて苗を植えていく様子を見るのが楽しみの一つ。地域ごとにさまざまな芸能的要素や特徴があります。

 

お田植え祭の歴史アレコレ

ここでは、そんな「お田植え祭」の歴史をご紹介。

古くは、神話の時代にも「稲」の重要性は伝えられていて、
コレはこれで語り出すと止まらなくなる壮大なストーリーがあります。

一応ご参考までに、関連する記事を。

と、神話から始まり天皇の御代替りまで広がる超絶ロマン発生地帯であります。

お田植え祭自体は、土の神、田の神を祀って豊穣を祈念する農耕儀礼をベースとしており、

その祭り化の経緯は、奈良時代以降の「勧農」という農業振興政策とされています。

食は生活の基本ですから、支配者としては、農業を振興、奨励するのは当たり前の話で。

奈良時代は、律令体制のなかで国司が担当、平安以降は、貴族の荘園とかで推進された「勧農」と、その発展のなかで、お田植え祭として形づくられていきました。

そんな経緯があるので、地域を代表する古くからの寺社の年中行事として伝えられてるケースが多いんですね。

 

代表的な御田植祭

そんなお田植え祭、の有名どころをいくつかご紹介です。

1.日本三大お田植え祭

「日本三大お田植え祭」と呼ばれるカテゴリがあります。

  1. 住吉大社:住吉の御田植(重要無形民俗文化財)(大阪府大阪市住吉区住吉)
  2. 伊雑宮:磯部の御神田(重要無形民俗文化財)(三重県志摩市)
  3. 香取神宮:香取神宮御田植祭(千葉県香取市香取)

いずれも、非常に由緒のある神社です。

他にも、、、

2.国指定重要無形民俗文化財

お田植え祭のなかには「重要無形民俗文化財」として登録されているものがあります。有名どころは以下。

  • 都々古別神社のお田植え祭(福島県東白川郡棚倉町八槻)
  • 慶徳稲荷神社のお田植え祭(福島県喜多方市)
  • 伊佐須美神社のお田植え祭(福島県大沼郡会津美里町)

3.県指定無形民俗文化財等

  • 秩父神社のお田植え祭(埼玉県指定)(埼玉県秩父市番場町)
  • 下村加茂神社のお田植え祭(富山県指定)(富山県射水市下村加茂)
  • 広峯神社のお田植え祭(姫路市指定)(兵庫県姫路市広嶺山)
  • 布施神社のお田植え祭(岡山県指定)(岡山県岡山市東区大多羅町)
  • 若宮八幡社のお田植え祭(大分県指定)(大分県杵築市)

などなど、、、

他にも、お近くの寺社やってないかどうか、是非調べてみてくださいね。

もし近くでやってるところがない、とか、やってみたいという方、いらっしゃれば是非奈良へ。。天香久山の地で起こしいただけるのを心よりお待ち申し上げております。

毎年、

  • 6月下旬にお田植え祭
  • 10月下旬に抜穂祭

をそれぞれ開催しております。当サイトの問い合わせフォームからもお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

「お田植え祭」は、土の神、田の神を祀って豊穣を祈念するお祭り。

現代では、神社で斎行される年間の神事の一環として行われるのが多く、神社の敷地内外にある「神田・斎田・神饌田」で、奉仕員や早乙女が田植え作業を演じ、豊作・豊穣を祈念します。

初春の播種祭、春のお田植え祭、秋の抜穂祭と新嘗祭、といった一連の流れがベース。

今回ご紹介した天香久山でのお田植え祭は、御田植神事と合わせて、田植え体験会とのコラボで開催しています。

古く『日本書紀』、『古事記』、『万葉集』にも登場する天香久山。

天上にある天香具山が地上に降りてきたという神話や、日本建国の神話にも登場する、非常に重要な場所にある、土の神様をお祀りする「畝尾坐健土安うねびにいますたけはにやす神社」。

田植え神事の復活を通じて、少しでも天香具山の歴史や伝統を知っていただきたいですし、神社の維持や地域の活性化へ向けてご理解ご支援をいただけると幸いです。

 

どこよりも分かりやすい日本神話解説シリーズはコチラ!

日本神話とは?多彩で豊かな神々の世界「日本神話」を分かりやすく徹底解説!

日本書紀 現代語訳
『古事記』現代語訳
天地開闢
国生み神話

日本神話編纂の現場!奈良にカマン!

飛鳥浄御原宮
藤原宮跡



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
さるたひこ

日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。
『日本書紀』や『古事記』をもとに、最新の文献学的学術情報を踏まえて、どこよりも分かりやすく&ディープな日本神話の解釈方法をお届けしています。
これまでの「日本神話って分かりにくい。。。」といったイメージを払拭し、「日本神話ってオモシロい!」「こんなスゴイ神話が日本にあったんだ」と感じていただける内容を目指してます。
日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
豊かで多彩な日本神話の世界へ。是非一度、足を踏み入れてみてください。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
error: Content is protected !!