「畝尾坐健土安神社」は、奈良県橿原市にある神社。
天香具山の北西麓に鎮座、土の神様をお祭りし、日本の建国神話にも由来する由緒ある神社です。
社名である「畝尾坐健土安神社」の、「畝」は、田んぼの「畝」。うねってるところ。「尾」は、先っぽ。
天香久山から小さな山裾がうねうねと連なってる先っぽのあたりに坐す=鎮座する「健土安神社」、という意味。
実際、地形を俯瞰してみると、たしかに、天香久山から小高い丘のような感じでうねうねと続いてる先っちょのところに鎮座。
で、「健土安神社」の「健土安」が神話的に重要。
「健」は、力強い、といった意味で、「土安」の名称が建国神話に由来。簡単に言うと、この土のパワーで天下が平定された、という経緯。スゴイ神なんです「土の神」。詳細後ほど。
今回は、そんな「畝尾坐健土安神社」について、その神話的背景も含めてご紹介します。
畝尾坐健土安神社|建国神話の事績伝承に由来!土の神様をお祭りする由緒ある畝尾坐健土安神社はかなりスゴイ
目次
「畝尾坐健土安神社」の神話的背景
「畝尾坐健土安神社」の社名で重要なのは、「土安」。
コレ、日本の建国神話である「神武東征神話」に登場するめっちゃ重要ワード。
神武東征神話についてはコチラで!
で、
「土安」が登場するのは、『日本書紀』巻三(神武紀)の最後。
東征にちなむ土地を、「地名の起源伝承」として伝えている箇所あり。
古代において重視された考え方や価値観として、
歴史的事蹟や人々の関心を寄せる事物などを、後の世に語り伝える
というのがあって。
その一環として、東征の過程を振り返り、中でも重要な事績があった場所を、起源伝承として記述する訳です。
それがコチラ。
天皇は前年の秋九月に、ひそかに天香山の埴土を取って八十平瓮を作り、自ら斎戒して諸神を祭り、ついに天下を平定することができた。それゆえ土を取った所を名付けて「埴安」という。
天皇、以前年秋九月、潛取天香山之埴土、以造八十平瓮、躬自齋戒祭諸神、遂得安定區宇、故號取土之處、曰埴安。 (『日本書紀』巻三 神武紀より)
と。
「天香山の埴土を取って八十平瓮を作り、自ら斎戒して諸神を祭り、」の箇所はコチラでチェック↓
要は、
「天香山の埴土」を使った祭祀が非常に重要で、この祭祀によってスーパーパワーをゲット。これにより戦局を一気に逆転、以後連戦連勝によって建国を果たす、というストーリー。
神武紀に伝える、
「遂に区宇を安定むること得たまふ」(原文:遂得安定區宇)
とは、
その意味で、めっちゃ重要で。この土のパワーで天下が平定された、という事。
めちゃんこスゴイ土。それが「土安」の本当の意味なんですね。コレ、しっかりチェック。
「畝尾坐健土安神社」、神話ファンとしては鉄板参拝スポットであります。
ちなみに、
すぐ近くには、「畝尾都多本神社」があり、これまた日本神話に登場する超重要神社。
やっぱ、天香久山周辺は、古来より非常に重要な意味をもつエリアだったって感じですよね。
「畝尾坐健土安神社」の場所
ということで、「畝尾坐健土安神社」の日本神話背景をチェックしたところで、ココからはリアルな現場をご紹介。
「畝尾坐健土安神社」は奈良県橿原市にあります。奈良県橿原市下八釣町138。
▲こちら、神社周辺の様子。近くに奈良文化財研究所。コミュニティバス「別所町」下車徒歩約15分くらいのところにあります。
位置的には、天香久山の西側。
このあたり、大和三山を結ぶ三角形の中にあって、例えば、橿原神宮からの散策コースとして、藤原宮跡とかを回りながら来れたりします。是非。
「畝尾坐健土安神社」の境内
境内といっても、、、現在は非常にさみしい感じになっております。。。
『延喜式』神名帳十市郡の「畝尾坐健土安神社」に比定(大和志)され、旧村社。古くは格式のある神社だった模様。近世には、「天照大神社」と称されたことも。
「畝尾坐健土安神社」の御祭神
埴山姫(健土安比売命)、天児屋根命
『日本書紀』では「埴山姫」。『古事記』では「健土安比売命」と伝えます。
御祭神誕生経緯は、以下。
『日本書紀』第五段〔一書2〕より。
次に、火神軻遇突智を産んだ。しかし、伊奘冉尊はこの時、軻遇突智の火に焼かれ終った。その、まさに臨終する間、倒れ臥し糞尿を垂れ流し、土神埴山姫と水神罔象女を産んだ。
そこで、軻遇突智は埴山姫を娶って稚産霊を産んだ。この神の頭の上に、蚕と桑が生じた。また、臍の中に五穀が生じた。 (『日本書紀』巻一(神代上)第五段〔一書2〕より)
と。
火神に焼かれ臨終する間際、伊奘冉尊が産んだのが、土神と水神。
そして、火神は土神を娶って「稚産霊」を産み、ここから五穀が誕生した、という神話。
つまり、
伊奘冉尊という母なる存在が、
火の神を受け容れる土神と、逆に鎮め止める水神とを生み、
蚕や五穀誕生への道を拓いた、ということでもあって。
母の生んだ土台
そのうえで、
火神が土神を選び取り結婚、それが「稚産霊」の誕生につながり、
さらに、水神のはたらきにより農産物の発生に至る、、、という、穀物の起源譚であります。
確かに、
蚕や五穀の生成には、
肥沃な土と水が必要で。
その「肥沃な土づくり」のために行われるのが焼畑で。
これには、土壌改良としての焼畑が背景にあって。それゆえの火と土と水ってことで伝えています。
詳細はコチラで↓
御祭神誕生にまつわる神話、是非チェックされてください。
ちなみに、、、
「畝尾坐健土安神社」で、お田植神事を開催中。コチラも合わせて是非チェックされてください。
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まとめ
「畝尾坐健土安神社」は、奈良県橿原市にある神社。
天香具山の北西麓に鎮座し、土の神様をお祭りし、日本の建国神話にも由来する由緒ある神社です。
社名である「畝尾坐健土安神社」の、「畝」は、田んぼの「畝」。うねってるところ。「尾」は、先っぽ。
天香久山から小さな山裾がうねうねと連なってる先っぽのあたりに坐す=鎮座する「健土安神社」、という意味。
で、「健土安神社」の「健土安」が神話的に重要。
「健」は、力強い、といった意味で、「土安」の名称が建国神話に由来し、この土のパワーで天下が平定されたという、めちゃんこスゴイ土。それが「土安」の本当の意味であります。
「畝尾坐健土安神社」、神話ファンとしては鉄板チェックの神社。是非ご参拝されてください。
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