事代主神の子、媛蹈韛五十鈴姫命の出自|フツーではない交わり方で孕んだ子だからこそフツーではないお姫様になった件|分かる!神武東征神話 No.23

『日本書紀』 巻第三(神武紀)

神武東征神話を分かりやすく解説! 

前回のエントリで正妃・媛蹈韛五十鈴姫命たたらいすずひめのみことを取り上げました。

このお方、実は謎深きお姫様であって、その麗しさも手伝って大いに惑わせてくれる訳です。

 

一番は、その出自。

誰の子やねん?

というところ。

 前回、2つの伝承があることをお伝えしました。

  • 大己貴神おおあなむちがみの魂が三諸山に鎮まった、その神(大三輪の神)の子
  • 事代主神ことしろぬしがみがワニに化けて玉櫛媛たまくしひめのもとに通って生まれた子
『日本書紀』 巻第三(神武紀)

正妃蹈韛五十鈴媛命|現妻さしおき新たに正妃をお迎えす。いや、コレには深~い理由(ワケ)があって、、、の件|分かる!神武東征神話 No.22

04/07/2016

 

で、この元ネタは

『日本書紀』第8段一書6の後半、国造り神話の後のところ。

そう、神武紀の最後のところで出てくるお姫様なんですが、神代でその出自が語られているという訳。

前回お出しできなかった部分、第8段一書6は以下。国造り神話後半。現代語訳で抜粋します。

 ~ 「どこに住みたいのか?」と大己貴神が問うと、「幸魂・奇魂」は「私は日本国の三諸山みもろやまに住みたい」と言う。そこでその神の宮殿を三諸山に造営し住まわせた。これが大三輪の神である。この神の子は甘茂君等かものきみたち大三輪君等おおみわのきみたち、また姫蹈韛五十鈴姫命たたらいすずひめのみことである。別伝にいう。事代主神ことしろぬしのかみ八尋熊鰐やひろくまわにに変化して、三島の溝樴姫みぞくひひめの許にお通いになって〔ある伝えに、玉櫛姫たまくしひめという〕、御子姫蹈韛五十鈴姫命を生んだ。これが神日本磐余彦火火出見天皇かむやまといわれびこほほでみのすめらみことの后である。~

『日本書紀』第8段一書6

 と。

今回はココから「事代主の子」という設定を深堀りし、フツーではないお姫様について解説します。

 

事代主神の子、媛蹈韛五十鈴姫命の出自|フツーではない交わり方で孕んだ子だからこそフツーではないお姫様になった件

正妃召喚 神武東征神話1

▲橿原神宮で公開中の「神武天皇御一代記御絵巻」より

 

 まず、確認いただきたいのは、

彦火火出見ひこほほでみは、これから「天皇」になろうとする訳です。「天子」です。

ということは、それにふさわしいお方を妃にすべき、ということになります。

※現妻がいるじゃないか!というのは置いといて!

 

そんな安直に選べない正妃。緊張感たっぷりの局面です。

  • 誰がどう見ても「なるほどですね!」と納得するお方。
  • あの方が選ばれたということで逆に神武の価値が上がるようなお方。

そんな思惑がうごめくわけです。

 

そんな状況の中で選ばれたのが、媛蹈韛五十鈴姫命たたらいすずひめのみこと

当然、上記思惑を完璧なまでに満たすお姫様だった訳。

 

みんな黙りましたよ。あー、確かにね、って思いましたよ。

 

なぜって?

実は、このお姫様、尋常ではない親と通常ではありえない生まれ方をしたのです。

 

それが、通い婚&異類婚という設定。

さらっと読み飛ばしてはいけません。

 

再度以下。

別伝にいう。事代主神ことしろぬしのかみ八尋熊鰐やひろくまわにに変化して、三島の溝樴姫みぞくひひめの許にお通いになって、御子 姫蹈韛五十鈴姫命たたらいすずひめのみことを生んだ。

 

事代主神がバカでかいワニに化けて、三島の溝樴姫みぞくひひめのところに通って、子供ができたんです。

ワニが夜な夜な通ってきて、いろいろ大人なコトがあって子供ができたんです。

これ、尋常ではないでしょう。

 

  • まず、神が通ってきて孕んだという事。つまり正式な結婚ではない中で孕んだ事。
  • そして、ワニ、つまり異類と交わって孕んだという事。

この2点が「フツーではないコト」。

その結果生まれたのが、媛蹈韛五十鈴姫命たたらいすずひめのみことという事です。

 

その肌は、ワニ肌で、、、

いえいえ、この世のものとも思われぬ麗しさをお持ちのお方だったはず。。。

 

ちなみに、

神武紀原文では、

事代主神、三嶋溝橛耳神之女玉櫛媛、所生兒、

「事代主神が、三嶋溝橛耳神之女玉櫛媛と一緒に生んだ子」

とあります。

「共」という漢字が使われています。

よく、この部分、「事代主神が玉櫛媛と結婚して」と訳しているものが多いですが、ハッキリ言って間違いです。し、コトの重要性を理解できていません。

 

初代天皇の御妃は、特別な方でなければならないのです!

フツーではあかんのです!

従って、通常の結婚ではない、通常の親ではない、どえらい背景から生まれてきたお方であるべきで、それが「神の通い婚&異類婚によって生まれた」という設定なのです。

 

いやー、昼間は麗しくてまばゆいばかりに美しいあのお姫様が、なぜか夜になると水を飲みたがり、真夜中になるとあれ?なんだか肌がごつごつに?アレ?デカくなって。。。Σ(||゚Д゚)ヒィィィィ

 

なんて、

 

大いに惑わせてくれるお姫様です。

 

まとめ

事代主神の子、媛蹈韛五十鈴姫命の出自

正妃選びのとき、状況的には、彦火火出見が天皇になろうとしていたとき。

なので、それにふさわしいお方を妃にすべきであり、誰がどう見ても納得するお方であるべきでした。

そんな状況の中で選ばれたのが、媛蹈韛五十鈴姫命たたらいすずひめのみこと

確かにこの御姫様、その出自は、

  • 神が通ってきて孕んだ。つまり正式な結婚ではない中で孕んだ子だった。
  • そして、親がワニ、つまり異類と交わって孕んだ子だった。

という2点で尋常ではありませんでした。

これは、神代の伝承、第8段一書6で伏線が張られており、その設定のなかで神武紀が引き継ぐ形式をとっています。

これを、伏線ととるか、後で書き加えられた、つまり事代主神の位置づけが大きく変わったことがあった、と見るかは、、、ああ、壬申の乱について書けなかったので、別エントリで!

 

次はいよいよ橿原即位です!お楽しみに♪

続きはこちら!

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本記事監修:(一社)日本神話協会理事長、佛教大学名誉教授 榎本福寿氏
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)、他

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    日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
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    参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他