中洲(なかつしま)|葦原中国の中心となる地!東征の目的地「中洲」まとめ

 

日本神話に登場する、重要ワード、重要エピソードをディープに掘り下げる「日本神話解説シリーズ」。

今回は、

中洲なかつしま

をテーマにお届けします。

神武じんむ東征とうせい神話に登場する言葉で、東征とうせいの目的地。日本建国の地。

天地開闢てんちかいびゃくから日本建国までを伝えるのが日本神話。そのエンディングを飾る場所、すべてはココに繋がるために用意された物語。。そう考えると非常に重要な場所だったりします。

今回は、そんな「中洲なかつしま」について神武じんむ東征とうせい神話をもとにディープに掘り下げます。

 

中洲(なかつしま)|葦原中国の中心となる地。東征の目的地「中洲」まとめ

中洲が登場する日本神話

まずは、「中洲なかつしま」が登場する現場をチェック。

こちら、『日本書紀にほんしょき』巻三(神武じんむ紀)、通称「神武じんむ東征とうせい神話」で伝えます。

神武じんむ東征とうせい神話は、日本の建国神話。日本神話のなかで最大のクライマックスを彩るアツく奥ゆかしい建国譚であります。

【保存版】神武東征神話を丸ごと解説!東征ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

01/13/2016

この中で、中洲なかつしま」は東征とうせいの目的地として登場。

最初は、「胆駒山いこまやま」越えルートを行こうとする時、

改めて、東方、胆駒山いこまやまを越えて中洲なかつしまに入ろうとした。(更欲東踰膽駒山而入中洲)」とあり、東大阪ひがしおおさかから「胆駒山いこまやま(現在の生駒山いこまやま)」を越えたところに「中洲なかつしま」があると想定されてます。

孔舎衛坂激戦、敗退

神武紀|孔舎衛坂激戦、敗退|スネの長い関西人に初戦敗退。神策めぐらし紀伊半島を迂回することにした件|分かる!神武東征神話No.5

01/22/2016

次に登場するのは、熊野荒坂津くまのあらさかのつ。ココから熊野くまのの山を越えて行こうとする時、

東征一行は中洲なかつしまに向かおうとした。しかし、山中は険しく、進むべき道もなかった。進退窮まり、踏みわたるべきところも分からない。(既而皇師、欲趣中洲、而山中嶮絶、無復可行之路、乃棲遑不知其所跋渉」とあり、山を越えていった先にあることが想定されてます。

神武紀|八咫烏の導きと熊野越え|山で迷って進退窮まる!?天照による2度目の救援は「天孫降臨」の再現だった件|分かる!神武東征神話No.9

01/26/2016

最後に登場するのは、橿原かしはら即位の時、

遠く辺境の地はいまだ静まらず、人を惑わす妖怪はなお勢いが強いが、中洲なかつしまの地は少しも騒乱がない。(雖邊土未淸餘妖尚梗、而中洲之地無復風塵)」とあり、平定した大和やまとの地が平和になったことを伝えてます。

『日本書紀』 巻第三(神武紀)

橿原宮造営と八紘一宇|東征開始から6年が経過した今、天照から始まる神々の系譜や政治を踏まえ素晴らしい国をつくろうとした件|分かる!神武東征神話 No.21

04/06/2016

いずれも、現在の大和やまと平野へいや奈良盆地ならぼんち)が「中洲なかつしま」として位置づけられてます。

 

中洲とは、中央の地。地域。

ここからは、そんな「中洲なかつしま」を具体的に解説。ポイント2つ。

  • 葦原中国あしはらのなかつくにという日本全体を指す言葉より小さい、その中心となる地域である
  • 国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けるのにふさわしい場所である

1つめ。

葦原中国あしはらのなかつくにという日本全体を指す言葉より小さい、その中心となる地域である

中洲なかつしま」、意味的には、真ん中のしま、ということ。その大きさやイメージが分かるのがコチラ。

東征とうせい成就後、これを総括した言葉に、

「遠く辺境の地はいまだ静まらず、人を惑わす妖怪はなお勢いが強いが、中洲の地は少しも騒乱がない。(雖邊土未淸餘妖尚梗、而中洲之地無復風塵)」とありました。

ココでは、辺土へんど(周辺の地)」と対応する形で、「中央、中心の地」として位置づけられてます。

そして、「中洲なかつしま」の「しま」は、伊奘諾尊いざなきのみこと伊奘冉尊いざなみのみことが生んだ「大八洲国おおやしまぐに」の「しま」。

「国」としての実質はなく、それより小さい単位の地域的な意味合いが強い言葉です。

また、

熊野くまの遭難そうなんの際、天照大神あまてらすおおかみが救援する言葉に「それ葦原中国はさやげりなり」とあり、遭難そうなんから回復した後に「既にして皇師、中洲に趣かむとす」とあり、ココから、葦原中国あしはらのなかつくにという日本全体を指す言葉より小さい、その中心となる地域をいうことが分かります。

まとめると、

  • 辺土へんど(周辺の地)」と対応し、「中央、中心の地」である。
  • 葦原中国あしはらのなかつくにという日本全体を指す言葉より小さい、その中心となる地域をいう。

ことが分かります。

ちなみに、、

東征とうせい成就後の神武じんむの言葉には、「あの畝傍山うねびやまの東南の橿原の地は、思うに国の奥深くにある安住の地であろう(夫畝傍山東南橿原地者、蓋國之墺區乎)」とあり、ココでは、橿原かしはらの地を、国の奥深くにある安住の地「墺區もなか」として伝えてます。

つまり、「中洲なかつしま」が地域的な大きさだとすると、「墺區もなか」は一つの場所的な大きさ。

全部まとめると

葦原中国あしはらのなかつくに中洲なかつしま墺區もなか

こんな感じのイメージで整理できます。

2つ目。

②国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けるのにふさわしい場所である

中洲なかつしま」がどんな意味を持っているのか、それが分かるのがコチラ。

東征とうせい神話の最初、東征とうせい発議ほつぎを行うのですが、そこで神武じんむが語る言葉に、

かの地は豊葦原瑞穂とよあしはらのみずほの国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けるのにふさわしい場所に違いない。きっとそこが天地四方の中心だろう。(彼地必當足以恢弘大業・光宅天下、蓋六合之中心乎)」とあります。

「恢弘大業・光宅天下」とは、王としての業績(事業、制度、教え等)を広く大きくしていくこと、天下にみちゆきわたらせることを言います。

広く、瓊々杵尊ににぎのみこと以来受け継いできた地上統治の「わざ」を広げていくこと、さらにその先には、豊葦原瑞穂とよあしはらのみずほの国の平定と統治が見据えられてる訳で。。結構壮大な、そして重い言葉なんですよね。もちろん、そこには人々が安心して豊かに暮らせる国をつくりたいという熱い想いがある訳で。

そうした大業を成す場所こそが「六合りくごう之中心」。

六合りくごう」とは、天地てんち(上下)+四方しほう(東西南北)をいいます。いわば「世界の中心」であり、ここに都を置く事が想定されてます。

要は、この六合りくごう之中心」が「中洲なかつしま」であり、その地は大業を成すに相応しい場所として位置づけられてるんです。

日本建国にふさわしい場所として選ばれたのが「中洲なかつしま」であり、ここから日本を、なんなら世界を見据えて統治を広げていくことが想定されてる訳です。非常に重要な言葉です。

 

まとめ

中洲なかつしま

神武じんむ東征とうせい神話に登場する言葉で、東征とうせいの目的地。日本建国の地。

天地開闢てんちかいびゃくから日本建国までを伝えるのが日本神話。そのエンディングを飾る場所、すべてはココに繋がるために用意された物語。

ポイントは2つ。

  • 葦原中国あしはらのなかつくにという日本全体を指す言葉より小さい、その中心となる地域である
  • 国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けるのにふさわしい場所である

葦原中国あしはらのなかつくに中洲なかつしま墺區もなか

大きさのイメージとあわせて、この地こそが、大業を成すに相応しい場所として位置づけられてること、しっかりチェックです。

 

東征神話はコチラから!必読です!

【保存版】神武東征神話を丸ごと解説!東征ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

01/13/2016

本記事監修:(一社)日本神話協会理事長、佛教大学名誉教授 榎本福寿氏
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)、他

こちらの記事もどうぞ。オススメ関連エントリー

橿原神宮|日本建国の地!初代「神武天皇」が即位した地「橿原神宮」を徹底解説!

01/18/2016

神武天皇聖蹟顕彰碑・伝承碑まとめ|実際に行ってみて、確かめてみたところを全部まとめてみた!(マニア限定)

02/22/2016
『古事記』 中巻

『古事記』神武東征神話|東征発議から吉備「高嶋の宮」までの神話を現代語訳付きで分かりやすく解説!

10/03/2016
神武東征神話

読み聞かせ 無料 絵本 日本神話 日本の建国神話である神武東征神話を『日本書紀』をもとにつくりました

12/25/2020

どこよりも分かりやすい日本神話解説シリーズはコチラ!

日本神話とは?多彩で豊かな神々の世界「日本神話」を分かりやすく徹底解説!

日本書紀 現代語訳

日本書紀 現代語訳 天地開闢から日本建国までの日本神話

11/04/2021
古事記 現代語訳

古事記 現代語訳 天地開闢から日本建国までの日本神話

11/04/2021
天地開闢

天地開闢とは? 日本神話が伝える天地開闢を日本書紀や古事記から徹底解説!

01/07/2016
国生み神話

国生み神話とは?伊奘諾尊・伊奘冉尊の聖婚と大八洲国(日本)誕生の物語!国生み神話を分かりやすくまとめ!

09/04/2021

日本神話編纂の現場!奈良にカマン!

飛鳥浄御原宮

【保存版】飛鳥浄御原宮|日本神話編纂のふるさと!歴史書の編纂というビッグプロジェクトがスタートした超重要スポット

05/18/2019
藤原宮跡

【保存版】藤原宮跡|藤原京の中心施設「藤原宮」の跡地!周辺施設や跡地も含めて藤原宮跡の全貌まとめ!

09/11/2020

平城宮跡歴史公園|日本神話完成の地!歴史と神話ロマンを存分に味わえる平城宮跡歴史公園の全貌をまとめてご紹介!

10/14/2021

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人


日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。
『日本書紀』や『古事記』をもとに、最新の文献学的学術情報を踏まえて、どこよりも分かりやすく&ディープな日本神話の解釈方法をお届けしています。
これまでの「日本神話って分かりにくい。。。」といったイメージを払拭し、「日本神話ってオモシロい!」「こんなスゴイ神話が日本にあったんだ」と感じていただける内容を目指してます。
日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
豊かで多彩な日本神話の世界へ。是非一度、足を踏み入れてみてください。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他