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月讀宮は、三重県伊勢市にある神社。
ここは、日本神話を代表する神様である「3貴神(天照大神、月読尊、素戔嗚尊)」のうちの一神、月読尊を祭る神社です。
ポイントは2つで、
- 日本神話において、天照大神の弟神的立ち位置の「月読尊」を祭っていること。
- 伊勢神宮=皇大神宮(内宮)の「別宮」として位置づけられていること。
境内は、深い木々に囲まれた静謐な空間が広がり、社殿が4つ並列している独特のスタイル。
今回は、日本神話とあわせて伊勢観光には鉄板の要チェック神社をご紹介します。
月讀宮(皇大神宮別宮)|簡素明澄にして清純な四宮が並列する独特なスタイル!厄除け、心身浄化、開運招福、安産・子授けご利益で信仰を集める宮では参拝順番にご注意を。
日本神話で伝えるご祭神誕生経緯
当サイトならではの日本神話をディープにご紹介。まずは神話を理解してリアルな現場をチェック。
日本神話自体は『日本書紀』『古事記』に記載されてます。今回はその中から、正史『日本書紀』から以下ご紹介。
当社のご祭神「月読尊」は、神社的には「つきよみのみこと」ですが、文献上「つくよみのみこと」で表記。『日本書紀』神代紀 第五段で登場します。
第五段のテーマは、「天照大神、月読尊、素戔嗚尊の3貴神の誕生」。
ちなみに、第五段は、神代紀において最も異伝が多い段で。本伝とはべつに、全部で11の異伝をもっている難解な箇所であります。コチラ参考に⇒「『日本書紀』と『古事記』の違いに見る「日本神話」の豊かさとか奥ゆかしさとか」
そんななか、「つくよみのみこと」も、「月読尊」という表記と、「月夜見尊」という表記の2つが存在します。今回はそのなかで「月読尊」バージョンをお届け。
『日本書紀』神代紀 第五段(一書の第六)「月読尊」
当社のご祭神、「月読尊」として登場するのは『日本書紀』第五段にある一書の第六。少々長くなりますが、経緯としては、
- 「伊奘諾尊(♂)」と「伊奘冉尊(♀)」は、大八洲国を生み、その他様々な神を生んでいった。ところが、火神「軻遇突智」を生んだときに、「伊奘冉」はその火に焼かれて死んでしまう。
- 愛する伊奘冉を追って「黄泉の国」へ行った「伊奘諾」は、「見るなの禁」を犯し伊奘冉の姿を見てしまう。伊奘冉の体は、膿が湧き蛆が流れていた(←だって死んで黄泉の国の食べ物を食べてしまったから)。
- びっくりした伊奘諾は逃げかえるが、怒った伊奘冉が追いかけてくる。手下どもを繰り出す。なんて恐ろしい。
- ついに、こちらの世界と黄泉の国の境界である「泉津平坂」までたどり着いたとき、伊奘諾は、この坂を巨岩でふさぎ、岩の向こうにいる伊奘冉に今生の別れを言い渡す。
- すると、伊奘冉は「お前の国の人民を1日千人縊り殺してやろう」と呪ったのに対し、伊奘諾は「それなら私は1日千五百人生もう」と言い渡した。てか、言い返した。
- その後、筑紫の日向の小戸の橘の檍原で、黄泉の穢れ=死の穢れを払うため禊を行なう
そのときに、右目を洗って、これにより神を生んだのが「月読尊」という次第。
あー、長い。。。
以下、その部分を現代語訳。
そうして後に(伊奘諾尊は)左の眼を洗われた。これによって神をお生みになり、名付けて天照大神と申す。また右の眼を洗われた。これによって神をお生みになり、名付けて月読尊と申す。また鼻を洗われた。これによって神をお生みになり、名付けて素妻鳴尊と申す。合せて三柱の神である。
伊奘諾尊は三柱の御子に命じられて、「天照大神は高天原を治めなさい。月読尊は潮が幾重にも重なる青海原を治めなさい。素妻鳴尊は天下を治めなさい。」と仰せられた。
然後洗左眼。因以生神、号曰天照大神。復洗右眼。因以生神、号曰月読尊。復洗鼻。因以生神、号曰素戔鳴尊。凡三神矣。已而伊奘諾尊勅任三子曰。天照大神者可以治高天原也。月読尊者可以治滄海原潮之八百重也。素戔鳴尊者可以治天下也。
『日本書紀』第五段(一書の第六)
ポイントは、
- 伊奘諾尊が、三貴神をつうじて統治領域の明確化を行なった事。
- 統治はそれぞれ、天照=高天原、月読=青海原、素戔嗚=天下(=葦原中國が念頭にあり)。
です。
当社のご祭神である月読尊は、一書の第六においては「青海原担当」だったんですね。
これが、月と海の満ち引きとの関連がベースになって「月読尊」という神名になってると言われる所以。さらに、「読む」=「暦を読む」=「太陰暦=月」といった展開もあります。
それにしても、
まー、大変な経緯を経て誕生した月読尊です。
で、後ほど境内をご紹介しますが、伊奘諾に対して「縊り殺してやる」とまで言い放った伊奘冉を、当社は同じ境内に祭っているところがスゴイ。。。汗
親子で祭ってますとかそんな平和な話ではございません。緊張感あふれる局面であることをチェック。
尚、伊勢市には同じ「月読尊」をまつる「月夜見宮」があります。こちら別伝もご紹介しているので合わせてチェックされてください⇒「月夜見宮(豊受大神宮別宮)|清々しさとシンプルさを兼ね備えた社殿が美しい!天照大神の弟的立ち位置の月夜見尊を祭る神社」
同じご祭神を祭る二つの宮。まとめるとこんな感じです。

日本神話をもとに眺めてみると、神社ご参拝に奥行きが出てきますよ!
月讀宮の創建経緯
さて、日本神話にもとづくご祭神の誕生経緯をゲットしたところで、創建経緯もチェックしておきましょう。
詳細不明。最初から現在のような4つの宮が独立した形式ではなく、時代とともに変化してきた経緯アリ。
初出は、第50代桓武天皇代(737~806年)。このころ編纂された『皇太神宮儀式帳』には、「月読宮一院、正殿四区」と記され、一囲いの瑞垣内に祀られていたようです。
瑞垣とは、神社・宮殿の垣根のこと。
この書物、神宮における行事・儀式など23か条を記した文書。伊勢神宮で有名な式年遷宮のことも記載されてます。
もともとは、1つの囲いの中にあったのが、第60代醍醐天皇代(885~930年)には、伊佐奈岐宮と伊佐奈弥宮が一院、月読宮と月読荒御魂宮が一院として合計2院の形式に。これは、第56代清和天皇代(850~881年)に、伊佐奈岐宮と伊佐奈弥宮に「宮号」が宣下されたことが背景にあります。
現在のように、四宮それぞれが瑞垣をめぐらした形になったのは、意外にも明治6年から。結構最近なんですね。 ん?最近?
- ご祭神「月読尊」は、伊奘諾尊が黄泉の国から帰還し、死の穢れを祓うとき、右眼を洗うことで誕生。
- 統治領域は青海原。月と海の満ち引きとの関連がベースになって「月読尊」という神名になってます。
- 当宮の歴史上の初出は、第50代桓武天皇代。当初は一囲いの瑞垣内に祀られていましたが、時代の流れの中で現在のような四宮制になりました。
月讀宮の場所
さて、日本神話にもとづくご祭神の誕生経緯ならびに創建経緯をゲットしたところで、リアルな現場をチェックです。
場所は、伊勢市中村町。伊勢神宮(内宮)から車で10分ほどのところ。

▲月讀宮を背後にして、23号線を望む。ココから伊勢神宮まで、まっすぐつながってる感じです。正面の山は鼓ヶ岳。
月讀宮自体は、伊勢神宮の「別宮」として位置づけられてます。
実は、伊勢神宮は、「皇大神宮(内宮)」と「豊受大神宮(外宮)」の2つの「正宮」を中心として、14か所の別宮、109か所の摂社・末社・所管社、計125の宮社の総称。
スゴイですよね。125社もある神宮系列ということで、、、当社はその中でも、中心的な2つの正宮の一つ「皇大神宮(内宮)」の「別宮」として位置づけ。
「別宮」とは、正宮(本宮)に次ぐ重要なお宮のこと。
古くは、天皇の勅書によって「宮号」を宣下された神社だけが「宮」の名前を持つことができました。現在も、年間行事や式年遷宮は正宮に準じて行われているという次第。
内宮の境外にある別宮では最上位らしく、結構重要な神社です。
伊勢神宮近辺には重要な神社が点在しているので、神宮参拝の際には是非チェックしていただければと思います。
さて、
境内には、表参道と裏参道があります。駐車場から近いのが裏参道。


▲裏参道の入り口はシンプルな作りですね。
今回は、表参道を中心にご紹介。

▲23号から分岐した、12号線に面したところに表参道の入口があります。

▲本殿へ続く参道。深い樹木に囲われて、ひんやりした空気が流れています。伊勢神宮もそうですが、太古からの杜が守られているような感じがして、とても心地良いのです。

▲表参道の先、手水舎があります。右手が裏参道から続く道で、ココで合流。

▲手水舎。もう、このへんからしてシンプルかつ清々しい造り。雰囲気が違いますね。

そのまま進むと、、、

▲見えてきました! 正面に、4つの宮が並列の月読宮です!
しかも!入口の立て札にはなんと、この順番で参拝せよと指令が下っております。

こ、こんなの初めて。。。
御祭神とご利益
- 月讀宮 ・・・月読尊
- 月読荒御魂宮 ・・・月読尊荒御魂
- 伊佐奈岐宮 ・・・伊奘諾尊
- 伊佐奈弥宮 ・・・伊奘冉尊
↑上記、参拝順番順。
「荒御魂」とは、神様の魂のことで、格別なご神威を表すマインドと表出(あるいは働き)のことを言います。一方、穏やかなマインドと表出を「和御魂」と言います。
ご利益:厄除け、心身浄化、開運招福、安産・子授け
日本神話的背景を理解された読者の皆さんならお分かりいただけるはず!禊祓いの中で誕生した神、浄化パワーは超絶モノ。さらに、海担当というところから、近年では安産・子授けご利益でも人気です。

▲写真手前から、月読宮①、月読荒御魂宮②。

▲写真手前から、伊佐奈岐宮③、伊佐奈弥宮④
みんな揃って、、、

▲美しいけど、4宮並列はカメラに入りきりません!!!
日本神話経緯のところで、触れた「緊張感あふれる局面」というのは上記配置の事。
伊奘諾と伊奘冉の絶縁という大変な経緯を経て誕生した月読尊。
伊奘諾に対して「縊り殺してやる」とまで言い放った伊奘冉を、当社は同じ境内に祭っているところがやっぱりスゴイ。。。親子で祭ってますとかそんな平和な話ではございません。。。ま、そんなことはいいか。
- 伊勢神宮である「内宮」の境外にある「別宮」の中では最上位。結構重要な神社です。
- 4つの宮が並列する独特なスタイルを採用。参拝順番が決められてますのでしっかりチェック。
- 日本神話経緯から、厄除け、心身浄化、開運招福、安産・子授けなどのご利益満載の神社です。
葭原神社

月読宮の域内、裏参道の入口近くにひっそりと鎮座する内宮の末社です。

ご祭神:
- 佐佐津比古命
- 宇加乃御玉御祖命
- 伊加利比売命
ご利益:田や畑を守護する五穀豊穣の神をお祭りしてます。
こちらもお忘れなくご参拝されてください。
まとめ
月讀宮
三重県伊勢市中村町にある神社で、日本神話を代表する神様である「3貴神」のうちの一神、「月読尊」を祭ります。伊勢神宮=皇大神宮(内宮)の別宮として位置づけられていて、内宮の境外にある別宮では最上位。
境内は、深い木々に囲まれた静謐な空間が広がり、社殿も4つが並列している独特のスタイルです。
伊勢観光には鉄板の要チェック神社、是非ご参拝されてください。
住所:三重県伊勢市中村町742-1
近鉄五十鈴川駅より徒歩10分
駐車場あり トイレあり
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