天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ|天の水を汲む杓持ちの神。速秋津日子神と速秋津比売神が持ち場を分担して生んだ子

天之久比奢母智神

Contents

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ

です。速秋津日子神はやあきつひこのかみ速秋津比売神はやあきつひめのかみの二柱の神が生んだ神として、『古事記』上巻、神生み神話で登場。

 

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ|天の水を汲む杓持ちの神。速秋津日子神と速秋津比売神が持ち場を分担して生んだ子

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみとは?その名義

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」= 天の水を汲むひしゃく持ちの神

『古事記』では、伊耶那岐命いざなきのみこと伊耶那美命いざなみのみことによる神生みで、速秋津日子神はやあきつひこのかみ速秋津比売神はやあきつひめのかみの二柱の神が生まれ、この、速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめの生んだ神として、配水の神「天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」を伝えます。

「天之」は、水が天から降ってくる意。

「久比奢母智」は、「汲(くみ)瓠(ひさご)持(もち)」の組み合わせから。

ひさご」は水を汲む器。多くの場合、柄のついたひょうたん。柄杓。

鎮火祭祝詞に「更に生める子、水の神・ひさご・川菜・埴山姫、四種の物を生み給ひて、此の心悪しき子の心荒びるは、水・匏・埴山姫・川菜を持ちて鎮め奉れと、事教へ悟し給ひき」とあり、火神を鎮める具の一つとして「匏」が位置づけられてます。神楽の採物にも「杓(ひさご)」があり、祭具にも用いられました。

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」は、直前に誕生した「天之水分神あめのみくまりのかみ」とともに、水の分配を神格化したものとされてます。

  • 天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ・・・天からの水を柄杓で汲み持つ
  • 国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみ・・・国土(地上)の水を柄杓で汲み持つ

二項対立で整理されてる。合理的でロジカルな神様設定です。

 

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみが登場する日本神話

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」が登場するのは、『古事記』上巻、神生み神話。以下のように伝えてます。

此の速秋津日子、速秋津比売の二柱の神、かはうみによって場所を分けて生んだ神の名は、沫那芸神あわなぎのかみ、次に沫那美神あわなみのかみ、次に頬那芸神つらなぎのかみ、次に頬那美神つらなみのかみ、次に天之水分神あめのみくまりのかみ、次に国之水分神くにのみくまりのかみ次に天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ、次に国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみ(沫那藝神より國之久比奢母智神に至るまで、幷せて八神ぞ。)

此速秋津日子・速秋津比賣二神、因河海、持別而生神名、沫那藝神(那藝二字以音、下效此)、次沫那美神(那美二字以音、下效此)、次頰那藝神、次頰那美神、次天之水分神(訓分云久麻理、下效此)、次國之水分神、次天之久比奢母智神(自久以下五字以音、下效此)、次國之久比奢母智神。自沫那藝神至國之久比奢母智神、幷八神。 (引用:『古事記』上巻の神生みより一部抜粋)

『古事記』上巻神生み

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ということで。

かはうみを分担して生んだ」とあり、速秋津日子、速秋津比売の二柱の神が、持ち場を分担して神を生んだと伝えてます。コレ、『古事記』独特の表現。

系譜は以下の通り。

天之久比奢母智神

▲「天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」の親である速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめの二柱は水戸(水門)の神。この二神が、持ち場を分担して生んでいきましたの系譜。水門の男女神についてなぜ系譜を??って、コレ、実は正直よく分かっていません。

ココでのポイントは、『古事記こじき』神生みの特徴である「持別」。つまり分担して生む、という内容。

速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめが、それぞれの持ち場を分担して神を生んでいく。

N 神名 どんな神?
沫那芸神あわなぎのかみ沫那美神あわなみのかみ 水戸(水門)にたつ泡の、男女神
頬那芸神つらなぎのかみ頬那美神つらなみのかみ 水戸(水門)の水面の、男女神
天之水分神あめのみくまりのかみ国之水分神くにのみくまりのかみ 水の分配の、天と地の神
天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみ 水の分配の容器をもつ、天と地の神

と、

一覧整理はしてみたものの、、、男神と女神、天と国など、対比構造的なものはあるようですが、かといって、なぜこういう神が誕生してるのかは、実際は不明。

水門からの水の分配という流れになってることから、人間の生命維持に必要不可欠な水の重要性を伝えてる、、と解釈できなくもないのですが、、、

あるいは、河と海があわさるところに生じる泡とその水面、からの、、水が蒸発して天へ、そして雨となって国土に降り注ぎ、湧き出す、、といったプロセスを天之水分神・国之水分神が司り、天之久比奢母智神・国之久比奢母智神がそれを補助して水を分かち与える、という水の恵みを讃えたものとする説も。。

 

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみを始祖とする氏族

なし

 

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。

天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」が登場する日本神話はコチラ!

『古事記』上巻神生み

『古事記』神生みの原文と現代語訳|神生みの果てに誕生する火神と伊耶那美の死

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天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ」をお祭りする神社

奢母智しゃもち神社 国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみとともに海と河を司る神としてお祭り中

住所:島根県松江市美保関町諸喰644

 

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他