頬那芸神つらなぎのかみ|水門の水面が凪いでいることの神。速秋津日子神と速秋津比売神が持ち場を分担して生んだ子

頬那芸神

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

頬那芸神つらなぎのかみ

です。速秋津日子神はやあきつひこのかみ速秋津比売神はやあきつひめのかみの二柱の神が生んだ神として、『古事記』上巻、神生み神話で登場。

本エントリでは、頬那芸神つらなぎのかみの神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。

 

本記事の独自性

  • 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
  • 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
  • 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです

 

頬那芸神つらなぎのかみ|水門の水面が凪いでいることの神。速秋津日子神と速秋津比売神が持ち場を分担して生んだ子

頬那芸神つらなぎのかみとは?その名義

頬那芸神つらなぎのかみ」= 水門の水面みなもが凪いでいることの神

『古事記』では、伊耶那岐命いざなきのみこと伊耶那美命いざなみのみことによる神生みで、速秋津日子神はやあきつひこのかみ速秋津比売神はやあきつひめのかみの二柱の神が生まれ、この、速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめの生んだ神として、「頬那芸神つらなぎのかみ」を伝えます。

つら」は、「つら」で、物の表面。ここでは「水面」の意。

「那芸」は、「和ぎ(凪)」の意。

そもそもは、「次に水戸神みなとのかみ、名は速秋津日子神はやあきつひこのかみ、次に妹速秋津比売神いもはやあきつひめのかみを生んだ。」とあり、「頬那芸神つらなぎのかみ」の親である速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめの二柱は、水戸(水門)の神として伝えてます。

なので、「頬那芸神つらなぎのかみ」も、直後に誕生する「頬那美神つらなみのかみ」とともに、水戸(水門)の水面みなもの様子を神格化したものとされてます。

  • 頬那芸神つらなぎのかみ・・・水面みなもが凪ぐ
  • 頬那美神つらなみのかみ・・・水面みなもが波立つ

二項対立で整理されてる。合理的でロジカルな神様設定です。

 

頬那芸神つらなぎのかみが登場する日本神話

頬那芸神つらなぎのかみ」が登場するのは、『古事記』上巻、神生み神話。以下のように伝えてます。

此の速秋津日子、速秋津比売の二柱の神、かはうみによって場所を分けて生んだ神の名は、沫那芸神あわなぎのかみ、次に沫那美神あわなみのかみ、次に頬那芸神つらなぎのかみ、次に頬那美神つらなみのかみ、次に天之水分神あめのみくまりのかみ、次に国之水分神くにのみくまりのかみ、次に天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ、次に国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみ(沫那藝神より國之久比奢母智神に至るまで、幷せて八神ぞ。)

此速秋津日子・速秋津比賣二神、因河海、持別而生神名、沫那藝神(那藝二字以音、下效此)、次沫那美神(那美二字以音、下效此)、次頰那藝神、次頰那美神、次天之水分神(訓分云久麻理、下效此)、次國之水分神、次天之久比奢母智神(自久以下五字以音、下效此)、次國之久比奢母智神。自沫那藝神至國之久比奢母智神、幷八神。 (引用:『古事記』上巻の神生みより一部抜粋)

『古事記』上巻神生み

ということで。

かはうみを分担して生んだ」とあり、速秋津日子、速秋津比売の二柱の神が、持ち場を分担して神を生んだと伝えてます。コレ、『古事記』独特の表現。

系譜は以下の通り。

頬那芸神

▲「頬那芸神つらなぎのかみ」の親である速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめの二柱は、水戸(水門)の神。この二神が、持ち場を分担して生んでいきましたの系譜。水門の男女神についてなぜ系譜を??って、コレ、実は正直よく分かっていません。

ココでのポイントは、『古事記こじき』神生みの特徴である「持別」。つまり分担して生む、という内容。

速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめが、それぞれの持ち場を分担して神を生んでいくのです。

N 神名 どんな神?
沫那芸神あわなぎのかみ沫那美神あわなみのかみ 水戸(水門)にたつ泡の、男女神
頬那芸神つらなぎのかみ頬那美神つらなみのかみ 水戸(水門)の水面の、男女神
天之水分神あめのみくまりのかみ国之水分神くにのみくまりのかみ 水の分配の、天と地の神
天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみ 水の分配の容器をもつ、天と地の神

と、

一覧整理はしてみたものの、、、男神と女神、天と国など、対比構造的なものはあるようですが、かといって、なぜこういう神が誕生してるのかは、実際は不明。

水門からの水の分配という流れになってることから、人間の生命維持に必要不可欠な水の重要性を伝えてる、、と解釈できなくもないのですが、、、

あるいは、河と海があわさるところに生じる泡とその水面、からの、、水が蒸発して天へ、そして雨となって国土に降り注ぎ、湧き出す、、といったプロセスを天之水分神・国之水分神が司り、天之久比奢母智神・国之久比奢母智神がそれを補助して水を分かち与える、という水の恵みを讃えたものとする説も。。

 

頬那芸神つらなぎのかみを始祖とする氏族

なし

 

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。

頬那芸神つらなぎのかみ」が登場する日本神話はコチラ!

『古事記』上巻神生み

コチラも是非!日本神話の流れに沿って分かりやすくまとめてます!

日本神話の神様一覧|『古事記』をもとに日本神話に登場し活躍する神様を一覧にしてまとめ!

 

どこよりも分かりやすい日本神話解説シリーズはコチラ!

日本神話とは?多彩で豊かな神々の世界「日本神話」を分かりやすく解説!

日本書紀 現代語訳
『古事記』現代語訳
天地開闢
国生み神話

ついでに日本の建国神話もチェック!

神武東征神話1
神武天皇

日本神話編纂の現場!奈良にカマン!

飛鳥浄御原宮
藤原宮跡

 



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
さるたひこ

日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。
『日本書紀』や『古事記』をもとに、最新の文献学的学術情報を踏まえて、どこよりも分かりやすく&ディープな日本神話の解釈方法をお届けしています。
これまでの「日本神話って分かりにくい。。。」といったイメージを払拭し、「日本神話ってオモシロい!」「こんなスゴイ神話が日本にあったんだ」と感じていただける内容を目指してます。
日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
豊かで多彩な日本神話の世界へ。是非一度、足を踏み入れてみてください。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
error: Content is protected !!