金山毘売神かなやまびめのかみ|鉱山の女の神!伊耶那美命が火神を生み病臥して嘔吐したときに生んだ神

金山毘売神

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

金山毘売神かなやまびめのかみ

『古事記』では、伊耶那美命いざなみのみことが火神を生み病臥して嘔吐したときに生んだ神として「金山毘売神かなやまびめのかみ」を伝えます。

本エントリでは、「金山毘売神かなやまびめのかみ」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。

 

本記事の独自性

  • 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
  • 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
  • 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです

 

金山毘売神かなやまびめのかみ|鉱山の女の神!伊耶那美命が火神を生み病臥して嘔吐したときに化成した神

金山毘売神とは?その名義

金山毘売神かなやまびめのかみ」= 鉱山の女の神

『古事記』では、伊耶那美命いざなみのみことが火神を生んだことによて、みほとを焼かれ病み臥せ、嘔吐したときに生んだ神として「金山毘売神かなやまびめのかみ」を伝えます。

「金山」は、「鉱山」の意。

用例としては『古事記』天照大御神の天の石屋戸ごもりのところで、「天の金山のくろがねを取りて、鍛人天津麻羅かぬちあまつまらを求ぎて」 とあり、「金山」は鉱山と解されてます。

「毘売(比売)」は、もともとは「霊女」の意だったのが、女性一般をさすようになりました。直前に生まれた「金山毘古神かなやまびこのかみ」と対になってます。

鉱石を火で熔かしたさまが嘔吐に似ていることからの連想と考えられます。

ということで、

金山毘売神かなやまびめのかみ」=「鉱山」+「女」+「神」= 鉱山の女の神

 

金山毘売神が登場する日本神話

金山毘売神かなやまびめのかみ」が登場するのは、『古事記』上巻、神生み神話。以下のように伝えてます。

 この子を生んだことにって、みほとをかれて病みこやせになった。嘔吐に生んだ神の名は、金山毘古神かなやまびこのかみ次に金山毘売神かなやまびめのかみ次にくそった神の名は、波迩夜須毘古神はにやすびこのかみ、次に波迩夜須毘売神はにやすびめのかみ。次に尿ゆまりった神の名は、彌都波能売神みつはのめのかみ、次に和久産巣日神わくむすひのかみ。この神の子は、豊宇氣毘売神とようけびめのかみという。ゆえに、伊耶那美神は火の神を生んだことにって、遂に神避かむさった。

 因生此子、美蕃登(此三字以音)見炙而病臥在。多具理邇(此四字以音)生神名、金山毘古神(訓金云迦那、下效此)、次金山毘賣神。次於屎成神名、波邇夜須毘古神(此神名以音)、次波邇夜須毘賣神(此神名亦以音)。次於尿成神名、彌都波能賣神、次和久產巢日神、此神之子、謂豐宇氣毘賣神(自宇以下四字以音)。故、伊耶那美神者、因生火神、遂神避坐也。自天鳥船至豐宇氣毘賣神、幷八神。 (引用:『古事記』上巻の神生みより一部抜粋)

『古事記』上巻神生み

ということで、

細かいですが、原文、最初に嘔吐物から生んだ時は「生」という漢字が使われてます。次いで、屎や尿は「成」という漢字。

コレ、いずれも伊耶那美命いざなみのみことの排泄物に生んだ→排泄物に成った、ということで親子の関係は同じ。初めに「生」を使い、以降は「成」を使うことで、神の成りまし方を実態に近いかたちに表現を変えていく『古事記こじき』的用字であります。

神生みからの系譜は以下の通り。

金山毘売神の系譜

▲「金山毘売神かなやまびめのかみ」は、伊耶那美命いざなみのみことが火神を生み病臥して嘔吐したときに生んだ神として登場。

金山毘売神かなやまびめのかみ」は、直前に誕生した「金山毘古神かなやまびこのかみ」と合わせて諸説あり。

  1. 火山噴火の表象とする説。嘔吐が溶岩の流出を、その中に鉱石が存在することを金山の二神が表しているとする。
  2. 鎮火祭にちなむ神話とする説。火を鎮める刀剣系の神が次に生まれてくるのに先立ち、刀剣の材料としての鉄を表しているとする。
  3. 金属の中でも生活に重要な鍬を司る神とする説。
  4. 誕生した神々がみな火の効用を表すとする説。この神は冶金のための火の効用を表しているとする。
  5. 伊耶那美神の復活を祈る神招ぎの香具山祭祀における一連の呪具の神格化とする説。天の石屋の段で呪具の材料の拠り所となる「天の金山」と対応した神名とみる。

など。

ポイントは、やはり背景・経緯を踏まえることで、、、それは、

修理固成という壮大な構想のなかで「神生み」があるってこと。さまざまな神が誕生するなかで、自然現象が具体的な表れをしていく、、

大事忍男神おおことおしをのかみから、さー大事業が始まるぞ、と。石土毘古神いわつちびこのかみから徐々に大自然系へと移行し、大綿津見神おおわたつみのかみから始まり、海 →水門 →風 →木 →山 →野 →船 →食 →火 といった流れ。。。そんな経緯がありました。

この流れはつまり、将来的には「瑞穂みずほのくに」になるのに必要な神の誕生プロセスであり、これにより、実は、人間が誕生!!していて、なんなら生活も始まってた、、ってことなんです。(そう解釈しないと次の黄泉譚につながらない。。。)

そんな経緯背景の中で、火神ひのかみを生んだことにって6柱の神が誕生してるんです。

N 成った場所 成った神 どんな神?
嘔吐たぐり 金山毘古神かなやまびこのかみ
次に金山毘売神かなやまびめのかみ
嘔吐に成った、溶けた鉱石(製鉄)の男と女の神
くそ 波迩夜須毘古神はにやすびこのかみ
次に波迩夜須毘売神はにやすびめのかみ
屎に成った、祭器の土器をつくる粘土の男と女の神
尿ゆまり 彌都波能売神みつはのめのかみ
次に和久産巣日神わくむすひのかみ。その子「豊宇気毘売神とようけびめのかみ
尿に成った、水の神と生成霊の神

てことで、つまり、、

ここで生まれた6神は、それこそ、(「瑞穂みずほのくに」へ向けた準備として&黄泉譚につながる前フリとして)人民の生活をみすえ、火を通じて、溶けた鉱石(製鉄など)、土器(祭器)、水、五穀生成の神が生まれてる、てことで。

つまり、伊耶那美命いざなみのみことを「大地母的神格」として位置づけ、火を通じて生活に必要なもの(製鉄、祭祀土器や農業生産)が生まれている、と考えられます。

 

金山毘売神を始祖とする氏族

なし

 

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。

金山毘売神が登場する日本神話の詳しい解説はコチラ!

『古事記』上巻神生み

 

金山毘売神をお祭りする神社はコチラ!

● 金山媛神社 雁多尾畑地区の上手の山からは鉄滓が発見されており、古代、この地域に製鉄の活動があったとされてます

住所:大阪府柏原市雁多尾畑4828

 

金山毘売神ではないですが、全国の鉱山・金属業の総本宮といえばコチラ!

● 南宮大社(仲山金山彦神社) 特殊神事 御鎮座金山祭(通称ふいご祭)11月8日が有名!

住所:岐阜県不破郡垂井町宮代1734−1

 

コチラも是非!日本神話の流れに沿って分かりやすくまとめてます!

日本神話の神様一覧|『古事記』をもとに日本神話に登場し活躍する神様を一覧にしてまとめ!

 

どこよりも分かりやすい日本神話解説シリーズはコチラ!

日本神話とは?多彩で豊かな神々の世界「日本神話」を分かりやすく解説!

日本書紀 現代語訳
『古事記』現代語訳
天地開闢
国生み神話

ついでに日本の建国神話もチェック!

神武東征神話1
神武天皇

日本神話編纂の現場!奈良にカマン!

飛鳥浄御原宮
藤原宮跡

 



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
さるたひこ

日本神話.comへお越しいただきありがとうございます。
『日本書紀』や『古事記』をもとに、最新の文献学的学術情報を踏まえて、どこよりも分かりやすく&ディープな日本神話の解釈方法をお届けしています。
これまでの「日本神話って分かりにくい。。。」といったイメージを払拭し、「日本神話ってオモシロい!」「こんなスゴイ神話が日本にあったんだ」と感じていただける内容を目指してます。
日本神話研究の第一人者である佛教大学名誉教授の榎本先生の監修もいただいているので情報の確かさは保証付き!文献に即して忠実に読み解きます。
豊かで多彩な日本神話の世界へ。是非一度、足を踏み入れてみてください。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他
error: Content is protected !!