『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。
今回は
「大多麻流別」
です。「大嶋(現在の、山口県大島郡周防大島町の屋代島)」の名として、『古事記』上巻、国生み神話で登場。
本エントリでは、「大多麻流別」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
大多麻流別おほたるわけ|偉大な、船が停泊することの男神。大八嶋国を生んだ後、戻る途中で生んだ6嶋のひとつ大嶋を神格化
目次
大多麻流別とは?その名義
「大多麻流別」= 偉大な、船が停泊することの男神
『古事記』では、大八嶋国を生み終えたあと引き返すときに6つの嶋が生まれたと伝えており、その3番目に生まれた嶋が大嶋(現在の、山口県大島郡周防大島町の屋代島)。この嶋の名として「大多麻流別」を伝えます。
古代、大嶋には瀬戸内海航路の寄港地がありました。瀬戸内海航路の渦潮を乗り切るために、この屋代島で船を停泊させていたようで。『万葉集』でも、遣新羅使の歌に「筑紫道の可太の大島しましくも見ねば恋しき妹を置きて来ぬ」(15・3634)と歌われてます。
「大」は美称。
「多麻流」は「溜る」で、ここでは船の停泊の意。瀬戸内海の鳴門の渦潮を乗り切るために、多くの船舶が留まることから。
「別」は、男子の敬称。古い時代の姓。本来「地方を分け治める者」の意で、5~6世紀の皇族名に多く使われてました。のちに「姓」となっていきますが、「八色の姓』には入ってません。
大多麻流別が登場する日本神話
「大多麻流別」が登場するのは、『古事記』上巻、国生み神話。以下のように伝えてます。
その後、還り坐す時、吉備児嶋を生んだ。またの名は建日方別という。次に、小豆嶋を生んだ。またの名は大野手比売という。次に、大嶋を生んだ。またの名は大多麻流別という。次に、女嶋を生んだ。またの名を天一根という。次に、知訶嶋を生んだ。またの名は天之忍男という。次に、両児嶋を生んだ。またの名は天両屋という。またの名は天両屋という。吉備の児島から天両屋の島まで合わせて六つの島である。 (引用:『古事記』上巻より一部抜粋)
「然る後、還り坐す時(然後、還坐之時)」とあり、柱巡りして大八嶋国を生み終え引き返すときに6つの嶋が生まれたようで、その3番目に生まれた嶋が大嶋(現在の、山口県大島郡周防大島町の屋代島)であり、この名として「大多麻流別」を伝えます。
▲青文字が、還り坐す時に誕生した6嶋。③が「大多麻流別」です。
『古事記』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化してるのがポイント。
この理由は、誕生した大八嶋国が、伊耶那岐と伊耶那美の子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを明確にするためです。
ちなみに、、、
大島は、『古事記』では大八嶋国に含まれてないのですが、『日本書紀』第四段〔本伝〕〔一書6、9〕では大八洲国に含まれてます。『日本書紀』〔一書1、7、8、10〕には登場せず。
コレについて、大島が大八洲国に含まれる伝承は、含まれない伝承より古く成立し、その後、大島が大八洲国として含めるのは(その歴史的・地理的重要性からして)どうなのよ?的な話になり、除外された経緯があるんじゃねえかとする説あり。
なので、『古事記』の大島が大八嶋国に含まれてないのも、こういう後代の修正が反映されておるのだと。ただ、一方で、遣唐使の南路航路の開発上、重要な寄港地であることは確かなので、大八嶋国誕生の後に6嶋誕生譚として追加的に伝えてるのだとする説です。
『古事記』で大八嶋国誕生後の6嶋誕生譚には、そんな神話と歴史が交錯するロマンがあったりします。
大多麻流別を始祖とする氏族
嶋の名なので、氏族の始祖とはなりません。
「大多麻流別」が登場する日本神話はコチラ!
「大多麻流別」をお祭りする神社
● 大多満根神社 大島本島の総鎮守&開運の神!!!
参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。
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