大野手比売(おほのでひめ)|大きな野の女神。大八嶋国を生んだ後、戻る途中で生んだ6嶋のひとつ小豆嶋を神格化

大野手比売

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『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

大野手比売おほのでひめ

です。「小豆嶋あづきしま(現在の、香川県の小豆島)」の名として、『古事記』上巻、国生み神話で登場。

 

大野手比売(おほのでひめ)|大きな野の女神。大八嶋国を生んだ後、戻る途中で生んだ6嶋のひとつ小豆嶋を神格化

大野手比売おほのでひめとは?その名義

大野手比売おほのでひめ」= 大きな野の女神

『古事記』では、大八嶋国を生み終えたあと引き返すときに6つの嶋が生まれたと伝えており、その2番目に生まれた嶋が小豆嶋あづきしま(現在の、香川県の小豆島しょうどしま)。この嶋の名として「大野手比売おほのでひめ」を伝えます。

古代、瀬戸内海航路の寄港地があったとされ、その反映と思われます。

「手」は、地形・方面・側面であることを表す接尾語。

「比売」は、もともとは「霊女」の意だったのが、女性一般をさすようになりました。

 

大野手比売おほのでひめが登場する日本神話

大野手比売おほのでひめ」が登場するのは、『古事記』上巻国生み神話。以下のように伝えてます。

その後、還りす時、吉備児嶋きびのこしまを生んだ。またの名は建日方別たけひかたわけという。次に、小豆嶋あづきしまを生んだ。またの名は大野手比売おほのでひめという。次に、大嶋を生んだ。またの名は大多麻流別おほたるわけという。次に、女嶋ひめしまを生んだ。またの名を天一根あめひとつねという。次に、知訶嶋ちかのしまを生んだ。またの名は天之忍男あめのおしをという。次に、両児嶋ふたごのしまを生んだ。またの名は天両屋あめふたやという。吉備の児島から天両屋の島まで合わせて六つの島である。 (引用:『古事記』上巻より一部抜粋

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然る後、還りす時(然後、還坐之時)」とあり、柱巡りして大八嶋国おほやしまくにを生み終え引き返すときに6つの嶋が生まれたようで、その2番目に生まれた嶋が小豆嶋あづきしま(現在の、香川県の小豆島しょうどしま)であり、この名として「大野手比売おほのでひめ」を伝えます。

『古事記』国生みの順番2

▲青文字が、還りす時に誕生した6嶋。②が「大野手比売おほのでひめ」です。

古事記こじき』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化してるのがポイント。

この理由は、誕生した大八嶋国おほやしまくにが、伊耶那岐いざなき伊耶那美いざなみの子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを明確にするためです。

ちなみに、、、

小豆嶋あづきしまについては、吉備児嶋きびのこしま(児島半島。古代、島でした)との関連が指摘されます。

小豆島は、児島半島(岡山県)の東にあるのですが、『古事記』の国生みが大きく東から西に進んでいるのに対して、児島半島の次に小豆島だと逆行してるよねと。この理由が何なのか?というのが論点だったりします。

説としては、古代は小豆島は児島郡に属していたから児島を先に挙げたんだ、とか、児島は東南の風が激しく吹きつける場所にあったので、瀬戸内海航路の正式な寄港地は児島なんだけど、小豆島は予備港としてあったからだ、といったものがあります。

さらに、、

小豆嶋あづきしまは、古代は備前国児嶋郡に属していたとされてるところから、もともとは、中央に反抗を続けていた吉備の勢力があり、それを支配下に組み込んだ歴史があって、、吉備児島を拠点としつつ、小豆嶋あづきしま含めて瀬戸内海航路の要衝として重視した歴史が反映されてるんじゃないか、という説もあったりします。

『古事記』で大八嶋国おほやしまくに誕生の後に、追加的に伝えてる6嶋誕生譚には、そんな神話と歴史が交錯するロマンがあったりします。

 

大野手比売おほのでひめを始祖とする氏族

嶋の名なので、氏族の始祖とはなりません。

 

参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。

大野手比売おほのでひめ」が登場する日本神話はコチラ!

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大野手比売おほのでひめ」をお祭りする神社

● 大野手比売神社 銚子渓お猿の国自然動物公園の中にある神社というか祠というか、、、

 

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