『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。
今回は
「天之狹手依比売」
です。津嶋(現在の、長崎県対馬)の名として、『古事記』上巻、国生み神話で登場。
本エントリでは、「天之狹手依比売」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
天之狹手依比売あめのさでよりひめ|天上界と関連のある立派な、叉手網に霊が依り憑く女神。国生みの6番目に生まれた子、津嶋を神格化
目次
天之狹手依比売とは?その名義
「天之狹手依比売」= 天上界と関連のある立派な、叉手網に霊が依り憑く女神
『古事記』では、6番目に生まれた嶋が津嶋(現在の、長崎県対馬)であり、この名として「天之狹手依比売」を伝えます。『古事記』上巻、国生み神話で登場。
「天之」は、天上界(高天原)と関係をもつものに冠する美称。 例:「天香久山」。海上交通、その他の要衝という点から、特別の島なので「天之」を冠したものと思われます。
「狭手」は、叉手網で魚を取る道具の意。『和名抄』には「縄」を「さで」と訓み、「網は箕の形の如し。後を狭くし、前を広くせるものなり」とあり。
「依」は、「依つく」の意。
「比売」は、もともとは「霊女」の意だったのが、女性一般をさすようになりました。
対馬 (長崎県)は「津(船着き場)の島」の意で、壱岐から韓国へ渡る海路の要衝の島。 『魏志』倭人伝によれば「対馬国」とあり、「良田無く海物を食して自活し、船に乗りて南北に市す」とあるように、海人の業を専らとしていたようです。そこで、叉手網を神格化する命名となったと思われます。
「天之狹手依比売」=天上界(高天原)と関係をもつものに冠する美称+叉手網で魚を取る道具+「依つく」+「霊女(女性)」= 天上界と関連のある立派な、叉手網に霊が依り憑く女神
天之狹手依比売が登場する日本神話
「天之狹手依比売」が登場するのは、『古事記』上巻、国生み神話。以下のように伝えてます。
このように言ひ終わって御合して生んだ子は、淡道之穗之狹別嶋。次に、伊豫之二名嶋を生んだ。此の嶋は、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。伊豫国を愛比売といい、讚岐国を飯依比古といい、粟国を大宜都比売といい、土左国を建依別という。次に、隠伎之三子嶋を生んだ。またの名は天之忍許呂別。次に、筑紫嶋を生んだ。この嶋もまた、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。筑紫国は白日別といい、豊国は豊日別といい、肥国は建日向日豊久士比泥別といい、熊曾国を建日別という。次に、伊岐嶋を生んだ。またの名は天比登都柱という。次に、津嶋を生んだ。またの名は天之狹手依比売という。次に、佐度嶋を生んだ。次に、大倭豊秋津嶋を生んだ。またの名は天御虚空豊秋津根別という。ゆえに、この八嶋を先に生んだことに因って、大八嶋国という。 (引用:『古事記』上巻より一部抜粋)
『古事記』国生みの6番目に生まれた子(嶋)が「津嶋」で、「天之狹手依比売」と名付けて伝えてます。
国生みは、生まれる嶋の順番が結構大事なポイントで、、
▲大八嶋国として、左回りに生んだ8つの島の6番目が「津嶋」。
生まれる順番についての突っ込んだ解説はコチラ↓で!
さらに、
『古事記』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化してるのがポイント。
特徴として、男と女の名(比古、比売等)、四国は穀物系、九州はお日様系、といった感じで。
この理由は、誕生した大八嶋国が、伊耶那岐と伊耶那美の子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを明確にするため。
もっというと、
名付け=親権の発生
であり、伊耶那岐と伊耶那美が親としての責任をもって、それこそ修理固成によって「瑞穂の国」へ仕上げていくことを意味してる訳です。
天之狹手依比売を始祖とする氏族
嶋の名なので、氏族の始祖とはなりません。
参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。
「天之狹手依比売」が登場する日本神話はコチラ!
「天之狹手依比売」をお祭りする神社
● 國本神社 対馬にある神社。對馬国の根本(国本)??
● 嶋大國魂神社 対馬にある神社。素盞嗚尊が五十猛命とともに曾尺茂梨の地へ渡った時の行宮の跡ともされる!?
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