天之忍許呂別(あめのおしころわけ)|天上界と関連のある立派な、威圧的に凝り固まった男神。国生みの3番目に生まれた子(嶋)「隠伎之三子嶋」の別名。

天之忍許呂別

Contents

 

『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。

今回は

天之忍許呂別あめのおしころわけ

です。隠伎之三子嶋おきのみつごのしま(現在の、隠岐の島)の名として、『古事記』上巻、国生み神話で登場します。

 

天之忍許呂別(あめのおしころわけ)|天上界と関連のある立派な、威圧的に凝り固まった男神。国生みの3番目に生まれた子(嶋)「隠伎之三子嶋」の別名。

天之忍許呂別とは?その名義

天之忍許呂別あめのおしころわけ」= 天上界と関連のある立派な、威圧的に凝り固まった男神

隠伎之三子嶋おきのみつごのしま(現在の、隠岐の島)の名。

隠岐の島は、島根半島の北方、40〜80キロの日本海にあり、住民が住んでる4つの大きな島と、他の約180の小島からなる諸島。一番大きな島を島後、西南の西ノ島、中ノ島、知夫里島の3島を島前と呼ばれてます。

『古事記』では、隠伎之三子嶋おきのみつごのしまは3つの嶋から成るとしていますが、これがどれを指すのかは不明。

「天之」は、天上界(高天原)と関係をもつものに冠する美称。 例:「天香久山」。海上交通、その他の要衝という点から、特別の島なので「天之」を冠したものと思われます。

「忍」は、「押えつける」意から、威力あるものの美称に変化。

「許呂」は、「凝る」意。例として「淤能碁呂嶋」の「碁呂」。

「別」は、男子の敬称。古い時代の姓。本来「地方を分け治める者」の意で、5~6世紀の皇族名に多く使われてました。のちに「姓」となっていきますが、「八色の姓』には入ってません。

天之忍許呂別あめのおしころわけ」= 天上界(高天原)と関係をもつものに冠する美称+「押えつける」+「凝る」+男子の敬称= 天上界と関連のある立派な、威圧的に凝り固まった男神

 

天之忍許呂別が登場する日本神話

天之忍許呂別あめのおしころわけ」が登場するのは、『古事記』上巻国生み神話。以下のように伝えてます。

このように言ひ終わって御合みあひして生んだ子は、淡道之穗之狹別嶋あはぢのほのさわけのしま。次に、伊豫之二名嶋いよのふたなのしまを生んだ。此の嶋は、身一つにして顔が四つ有る。顔ごとに名が有る。伊豫国いよのくに愛比売えひめといい、讚岐国さぬきのくに飯依比古いひよりひこといい、粟国あはのくに大宜都比売おほげつひめといい、土左国とさのくに建依別たけよりわけという。次に、隠伎之三子嶋おきのみつごのしまを生んだ。またの名は天之忍許呂別あめのおしころわけ次に、筑紫嶋を生んだ。この嶋もまた、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。筑紫国は白日別しらひわけといい、豊国とよのくに豊日別とよひわけといい、肥国ひのくに建日向日豊久士比泥別たけひむかひとよくじひねわけといい、熊曾国くまそのくに建日別たけひわけという。次に、伊岐嶋いきのしまを生んだ。またの名は天比登都柱あめひとつばしらという。次に、津嶋を生んだ。またの名は天之狹手依比売あめのさでよりひめという。次に、佐度嶋さどのしまを生んだ。次に、大倭豊秋津嶋おほやまととよあきづしまを生んだ。またの名は天御虚空豊秋津根別あまつみそらとよあきづねわけという。ゆえに、この八嶋やしまを先に生んだことに因って、大八嶋国おほやしまくにという。 (引用:『古事記』上巻より一部抜粋

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『古事記』国生みの3番目に生まれた子(嶋)が「隠伎之三子嶋おきのみつごのしま」。で、この諸島を「天之忍許呂別あめのおしころわけ」と名付けて伝えてます。

国生みは、生まれる嶋の順番が結構大事なポイントで、、

『古事記』国生みの順番

大八嶋国おほやしまくにとして、左回りに生んだ8つの島の3番目が「隠伎之三子嶋おきのみつごのしま」。左回りから少しズレてますが、、、

生まれる順番についての突っ込んだ解説はコチラ↓で!

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さらに、

古事記こじき』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化してるのがポイント。

特徴として、男と女の名(比古ひこ比売ひめ等)、四国は穀物系、九州はお日様系、といった感じで。

この理由は、誕生した大八嶋国おほやしまくにが、伊耶那岐いざなき伊耶那美いざなみの子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを明確にするため。

もっというと、

名付け=親権の発生

であり、伊耶那岐いざなき伊耶那美いざなみが親としての責任をもって、それこそ修理固成によって「瑞穂の国」へ仕上げていくことを意味してる訳です。

 

天之忍許呂別を始祖とする氏族

嶋の名なので、氏族の始祖とはなりません。

 

天之忍許呂別が登場する日本神話はコチラ!

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参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)他