『古事記』神話をもとに、日本神話に登場する神様を分かりやすく解説します。
今回は
「大宜都比売・大気津比売神」
伊豫之二名嶋(現在の、四国)の4つある国の一つ、粟国(阿波国。現在の、徳島県)の名として、『古事記』上巻、国生み神話で登場。その後、神生みで出生を伝え、食物神として活動します。
本エントリでは、「大宜都比売・大気津比売神」の神名の名義、誕生にまつわる神話を分かりやすく解説します。
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
大宜都比売(おほげつひめ)・大気津比売神|偉大な、食物の女神。粟国(徳島県)の名として登場し、神生みで出生を伝え、のちに食物神として活動
目次
大宜都比売とは?その名義
「大宜都比売・大気津比売神」= 偉大な、食物の女神
伊豫之二名嶋(現在の、四国)の4つある国の一つ、粟国(阿波国。現在の、徳島県)の名。
『古事記』では、伊豫之二名嶋は「身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る」として、この顔(国)ごとの名として「大宜都比売」を伝えます。
「大」は、「偉大な」の意。
「宜」は、「食」が連濁を起した形を表します。
「都」は、連体助詞。
「比売」は、もともとは「霊女」の意だったのが、女性一般をさすようになりました。
少し補足解説。
文字を変えるのを「変字法」と言います。「大宜都比売」は、他にも「大気津比売神」「大氣都比賣神」として伝えており、特に、「宜」については「気」や「氣」に変えてます。
最初は、「(八百万神が)食物を大気津比売神に乞うた。」とあり、食にそくしてまず「大食つ」と語形を表示。次に、「大けつ」が「大(おお)」と「食(け)」の結びつきによって、つまり、「おお+け」の複合語を連濁によって一語化して「おおげ」としてるのです。
連濁とは、二つの語が結びついて一語になる(複合語)際に、後ろの語の語頭の清音が濁音に変化すること。日本語における連音現象。例えば、「青(あお)」と「蛙(かえる)」があわさると「青蛙(あおがえる)」に変化。
変字法を巧みに利用した例です。
「大宜都比売」=「偉大な」+「食」が連濁を起した形+連体助詞+「霊女(女性一般)」= 偉大な、食物の女神 |
大宜都比売が登場する日本神話
「大宜都比売」が登場するのは、『古事記』上巻、国生み神話。以下のように伝えてます。
このように言ひ終わって御合して生んだ子は、淡道之穗之狹別嶋。次に、伊豫之二名嶋を生んだ。此の嶋は、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。伊豫国を愛比売といい、讚岐国を飯依比古といい、粟国を大宜都比売といい、土左国を建依別という。次に、隠伎之三子嶋を生んだ。またの名は天之忍許呂別。次に、筑紫嶋を生んだ。この嶋もまた、身一つにして顔が四つ有る。顔毎に名が有る。筑紫国は白日別といい、豊国は豊日別といい、肥国は建日向日豊久士比泥別といい、熊曾国を建日別という。次に、伊岐嶋を生んだ。またの名は天比登都柱という。次に、津嶋を生んだ。またの名は天之狹手依比売という。次に、佐度嶋を生んだ。次に、大倭豊秋津嶋を生んだ。またの名は天御虚空豊秋津根別という。ゆえに、この八嶋を先に生んだことに因って、大八嶋国という。 (引用:『古事記』上巻より一部抜粋)
『古事記』国生みの2番目に生まれた子(嶋)が「伊豫之二名嶋」。で、この嶋には、顔が4つあり、顔ごとに名前があると。そのなかで、粟国に相当する部分(顔)を「大宜都比売」と名付けて伝えてます。
阿波国の「阿波」に「栗」を付けあわせて、あとで食物神として命名したものと思われます。
国生みは、生まれる嶋の順番が結構大事なポイントで、、
▲大八嶋国として、左回りに生んだ8つの島の2番目が「伊豫之二名嶋」。その4つある顔の一つが「大宜都比売」。
生まれる順番についての突っ込んだ解説はコチラ↓で!
さらに、
『古事記』は、生んだ嶋に神名をつけることで神格化してるのがポイント。
特徴として、男と女の名(比古、比売等)、四国は穀物系、九州はお日様系、といった感じで。
この理由は、誕生した大八嶋国が、伊耶那岐と伊耶那美の子供であること、血縁関係にあること、生まれた島々が血脈によるつながりをもっていることを明確にするため。
もっというと、
名付け=親権の発生
であり、伊耶那岐と伊耶那美が親としての責任をもって、それこそ修理固成によって「瑞穂の国」へ仕上げていくことを意味してる訳です。
ちなみに、、、
国生みのあとに続く神生みにおいても「大宜都比売神」の出生を伝えます。
次に生んだ神の名は、鳥之石楠船神、亦の名は天之鳥船という。次に大宜都比売神を生んだ。次に火之夜芸速男神を生んだ。
大宜都比売のその後の活動
①五穀の起源における「大気津比売神」
(八百万神が)食物を大気津比売神に乞うた。爾に大気都比売が鼻、口、尻から様々な味物を取り出して、いろいろに作り具へて奉ったところ、速須佐之男命は其の態を立ち伺っていて、穢汚して奉進っているとして、乃ち其の大宜津比売神を殺してしまわれた。これにより、殺された神の身に生った物は、頭に蚕が生り、二つの目に稻種が生り、二つの耳に粟が生り、鼻に小豆が生り、陰に麦が生り、尻に大豆が生った。ゆえに、是に神産巣日御祖命がこれらを取らせて、種となされた。
八百万の神が食物を「大気都比売神」に乞うたので、鼻・口・尻から種々の味物を出して進上したところ、須佐之男命がそれを汚い行為と考えてその神を殺すと、その死体から、蚕・稲種・小豆・麦・大豆ができた、とあります。
②大年神の子孫「羽山戸神」の妻となり農耕文化表象の神を生む
羽山戸神、大氣都比賣神を娶って生みませる子、若山咋神、次に若年神、次に妹若沙那賣神、次に彌豆麻岐神、次に夏高津日神、亦の名は夏之賣神、次に秋毘賣神、次に久久年神、次に久久紀若室葛根神。
大宜都比売を始祖とする氏族
嶋の名なので、氏族の始祖とはなりません。
「大宜都比売」が登場する日本神話はコチラ!
参考文献:新潮日本古典集成 『古事記』より一部分かりやすく現代風に修正。
「大宜都比売」お祭りする神社はコチラ!
「阿波国の祖神」ゆえに、徳島県!
● 一宮神社 阿波国一之宮!
● 上一宮大粟神社 古くは上一宮大粟神社が阿波の一之宮でした
● 阿波井神社 未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選選定
ちなみに、、、「豊受大神」と同神とされており、豊受大神は伊勢神宮の外宮にお祀りされて天照大神の食事を司ってます。
コチラも是非!日本神話の流れに沿って分かりやすくまとめてます!
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