和歌浦は、『万葉集』にも詠まれた古代からの風光明媚な景勝地。
和歌山県和歌山市の南西部にあり、国指定の名勝(2011年)です。
こちら、狭義と広義の和歌浦があります。
狭義では、玉津島と片男波(海浜公園)周辺一帯を指すのに対し、
広義では、それらに加え、新和歌浦、田野、浪早崎から雑賀崎一帯のこと。
ちなみに、雑賀崎周辺は自然海岸を残し「瀬戸内海国立公園の特別地域」に指定されてもいます。
今回は、『万葉集』にも詠まれた古からの美しい景勝地、和歌浦をその歴史と合わせてご紹介します。
和歌浦おススメスポットまとめ|『万葉集』にも詠まれた古代からの風光明媚な景勝地!
和歌浦の歴史とおススメスポット
▲和歌浦の全域マップ。こちら、塩竃神社のすぐそば三断橋の目の前にあります。
マップ左手、ちょっと突き出た雑賀崎周辺から右手、玉津島と片男波(海浜公園)周辺一帯が広義の和歌浦です。
和歌浦が歴史の表舞台に登場するのは聖武天皇の時代。
神亀元年(724年)、聖武天皇が初めて玉津島に行幸し、その美しい景観を絶賛。景観保全のための番人を置き、地霊祭祀の制度を定めます。
その行幸のお供をしていたのが山部赤人で、そのとき詠んだ歌が有名になるきっかけとなりました。
なので、和歌浦を語る最初は、赤人さんの和歌と石碑からスタートするようにしましょう。
▲こちら、山部赤人の歌を刻んだ石碑。後でご紹介する三断橋の目の前にあります。塩竃神社右手。
改めて、
山部赤人は奈良時代の宮廷歌人。万葉集の第三期を代表する歌人。三十六歌仙の一人ですね。
若浦爾 鹽滿來者 滷乎無美 葦邊乎指天 多頭鳴渡
若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴き渡る
→若の浦に潮が満ちてくると、干潟がなくなるので、葦の生えている岸辺に向かって鶴が鳴きながら渡っていく(干潟で餌をあさる鶴が満ち潮になったときに移動する光景を絵画風に詠んだ歌)
『万葉集』巻六 919番
ちなみに、現在海浜公園になっている「片男波」という地名は、この「潟をなみ」という句から生まれたそうで。当時は鶴が飛んでいたんですね。美しい風景に鶴、ベストマッチ。
当時、紀ノ川は河口をが和歌浦まで大きく開いていて、そこに小島が6つ浮かんでいる状態だったようです。
それらをまとめて「玉津島」と呼んでいた訳で。
後で出てくる玉津嶋神社の「たまつしま」というのはココから。潮の満ち引きによって景観が大きく変化、その表情を刻々と変えていくさまはまさにビューティフルの一言。
だったんでしょうね。
現在、6つの島は、それぞれ、妹背山、鏡山、奠供山、雲蓋院山、妙見山、船頭山の名前で呼ばれ、妹背山一つを海上に残してすべて陸地になっております。
奠供山
そんな和歌浦でまずご紹介したいのが、コチラの奠供山。
和歌浦は都に近いこともあって多くの文人、貴族らに愛されてきた歴史を持ちます。
特に、聖武天皇は特にお気に入りだったようで、何度も行幸されました。陽が射した景観の美しさから「明光浦」と改めたと伝えます。また、この風致を維持するために、「守戸」と呼ばれる監視役を配置させました。
それを伝えるのが奠供山。和歌浦を語るうえで必須のスポットです。
⇒「奠供山|聖武天皇が和歌浦の景観に感動し明光浦と名付けた地!山頂からの景色は息をのむほどの美しさだった件』
玉津嶋神社
奈良から平安へ。
このころになると、和歌浦は歌枕の地として知られるようになり、中でも玉津島神社は「詠歌上達の神」として崇敬をあつめるように。
平安の和歌ブームもそれを後押し。また、赤人が詠んだ「若の浦」から「和歌浦」に改められたのもこの頃。
先ほどご紹介した奠供山のふもとにある神社です。コチラ、セットでチェックです。
平安時代、和歌浦の中心的存在は、先ほどご紹介した「玉津島」でした。当時の玉津島は海上に浮かぶ6つの小島で、潮の干満で陸と続いたり離れたりしていたとか。
その神聖さから丹生より稚日女尊、息長足姫尊(神功皇后)らを勧請し、玉津島神社が設けられた経緯があるのです。
⇒「玉津嶋神社|和歌三神の社!「和歌の守護神」として古来より和歌の上達御利益で篤い信仰を集めていた神社は朝日に照らされ美しく輝いていた件」
和歌浦天満宮
平安時代の和歌浦を代表するスポットとして、和歌浦天満宮も要チェック。
こちら、平安の康保年間に、道真公神霊の勧請を受けて天満宮が建設されてます。
これは菅原道真左遷の際に、風避けの際に和歌浦に立ち寄ったことがご縁。玉津嶋神社から徒歩5分。こちらも合わせてチェックです。作り的にもとってもユニークで参拝の価値ありです。
⇒「和歌浦天満宮|日本三菅廟の一つ!学業成就ご利益満載の神社は和歌浦の美しい眺めが最高だった件」
紀州東照宮
時代は少し進んで、江戸時代。
和歌山は御三家である「紀州徳川家」の城下町として賑わうようになります。その際に建てられたのが紀州東照宮。
初代紀州藩主の徳川頼宣が実父である東照大権現(徳川家康)を勧請し、正式に東照宮から遷宮を行った神社です。その例祭である「和歌祭」は、今日に至るまで和歌浦を代表する祭礼として伝わってます。
和歌浦天満宮のすぐ近く。こちらもセットでチェックです。
⇒「紀州東照宮|心願成就と病気平癒ご利益は徳川の実績が保証!煩悩108段の侍坂を登った先、和歌浦の眺めが素敵な神社」
さらに、紀州東照宮のお祭りである「和歌祭」と関連が深いのがコチラ。
不老橋
徳川家康を祀る紀州東照宮の祭礼である「和歌祭」の時に、徳川家の皆さんや東照宮関係の人々が「御旅所」に向かうために通行した「お成り道」に架けられたもの。
アーチ型の石橋は、雲を文様化した勾欄のレリーフが特徴的で、その佇まいは美しい和歌浦に絶妙にマッチしています。
⇒「不老橋|和歌浦の象徴!?江戸時代にアーチ型石橋は超レア!雲を文様化した勾欄のレリーフが特徴的な橋」
ということで、まずは、
メインどころとして、奠供山、玉津嶋神社、和歌浦天満宮、紀州東照宮+不老橋の5つは歴史の流れと合わせて要チェック。
和歌からはじまり和歌を通じて発展してきた和歌浦。実際に行ってみると確かに山海絶妙。言葉にならない美しい景色に感動します。
以下、そのほかのスポットもご紹介。
三断橋と妹背山
和歌浦にある橋と小島。妹背山は、和歌川河口に浮かぶ島で、周囲250m程。実はココ。相模の江ノ島、近江の竹生島、安芸の厳島と並ぶ水辺の名勝だったこともあるとか。中国の景勝地である西湖をモデルに造られた景観はまさに、言葉に尽くしがたいほどの美しさです。
玉津嶋神社のすぐそば。是非チェックされてください。
⇒「三断橋と妹背山|山水絶妙。かゝるやんごとなき美しき地にて朝の静謐な空気を感じる至福たるやまさに言語に絶えたるが如しな件」
鹽竃神社
ご祭神の鹽稚神は全国を回り製塩の方法を伝えたとか。この地はその一つで、大正後期まで製塩が盛んに行われていました。コレが神社の名前の由来になった訳ですね。
玉津嶋神社の隣。岩穴の奥に鎮座しているユニークな神社です。
⇒「鹽竃神社|安産・子授けの御利益で信仰をあつめる「しおがまさん」は岩穴「輿の窟」に鎮座している件」
鏡山
そして、この神社の背後にある岩山=鏡山は、和歌浦の美しい景色を一望できる超おススメスポットです。
見てください!この美しさ!
和歌浦にある小さな山。塩竃神社の背後の山で、石の階段を上っていった先、山頂からは和歌の浦が一望できます。ココ、多分和歌浦の美しい景観を一番感じられるところだと思います。
⇒「鏡山|山頂から和歌浦を一望!和歌浦の美しさを一番感じられる超おススメスポット!」
そして、忘れてならない片男波!
片男波海水浴場と和歌公園
和歌浦湾に注ぐ和歌川の河口部に沿うようにできた延長1km以上の細長い砂州半島にあります。とにかく形が独特。。。細長い半島を縦に2分割、半分がビーチ、半分が和歌公園という感じ。
和歌山をはじめ大阪や奈良などから毎年約30万人が訪れる人気の海水浴場ですが、当サイト的には、その裏手から眺める名草山ビューが激しくおススメであります!
⇒「片男波海水浴場と和歌公園、からの名草山ビュー|美しいビーチと公園!ここから眺める名草山は湾に映って美しすぎる件」
そして、少し離れますが、こちらも。広義の和歌浦に属する皆さんです。
まずは、こちら!
名草山
和歌山県和歌山市にある山。標高228.7m。中腹には西国二番札所の紀三井寺があります。まろやかにやさしい山容は、美しい和歌浦の一部として是非チェックしていただきたいスポット。桜の季節の咲き乱れる桜とともに是非チェック。
⇒「名草山|春の名草山は「関西一の早咲き桜」が満開!咲き誇る桜と紀三井寺とを合わせてご紹介!」
浪早崎
浪早崎は、和歌山県和歌山市にある岬。そう、読みは、「ナンパざき」。。。かなり刺激的な岬名。
実は、今回の和歌浦も、神武東征神話を巡る旅の途上に立ち寄った次第で。そんな背景からして、この浪早崎は竈山で長兄を亡くし、腹いせに名草戸畔を誅した前後で通りがかった場所ということで、どちらかと言うと決意の朝。それは、紀伊半島を大きく迂回して中洲を目指そうという事であります。←何を言ってるんでしょうね。
⇒「和歌の浦海岸の浪早崎すぐそばからの朝日が美しすぎて感動・・・神武もこんな日の出を見たに違いない件」
雑賀崎
ただいま準備中です。
おまけ!
⇒「漁火の宿 シーサイド観潮|雑賀崎が一望!新鮮な海鮮料理!素敵な温泉!3拍子揃ったゆっくり落ち着ける隠れ家的なお宿」
ということで、狭義・広義にわたる和歌浦をお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
と、ここで、せっかくなので私、さるたひこも和歌を一句。
うつくしい あさひがのぼる あけのうら みとれすぎてや ごはんにちこく
美しい朝日が昇る和歌の浦は、その昔あけのうらって呼ばれてたっけ。山河絶妙、その美しさに見とれすぎてホテルの朝ごはんに遅れちゃったよ。ありつけなかったよ。
和歌浦だけに!お粗末様でした!
まとめ
和歌浦
和歌浦は、『万葉集』にも詠まれた古代からの風光明媚な景勝地。
和歌山県和歌山市の南西部にあり、国指定の名勝(2011年)です。
こちら、狭義と広義の和歌浦があって、
- 狭義では、玉津島と片男波(海浜公園)周辺一帯
- 広義ではそれらに加え、新和歌浦、田野、浪早崎から雑賀崎一帯
歴史をみても地名をみても、とにかく和歌和歌してる感じで、その美しい景色を是非ご堪能いただければと思います。
和歌山にお立ち寄りの際はコチラも是非!
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