国見丘の戦いと忍坂掃討作戦|すごいぞスーパー彦火火出見!敵軍撃破!残党掃討!そのパワーほんと流石な件|分かる!神武東征神話 No.14

神武東征神話を分かりやすく解説するシリーズ

今回は14回目。「国見丘(くにみのおか)の戦いと忍坂掃討作戦」をお届けします。

丹生川上の儀式で超人的パワーをゲットした「スーパー彦火火出見(ひこほほでみ)」こと神武。天神パワーをもって、いよいよ敵の殲滅へ乗り出します。

殲滅にあたっては、大きく2段階で進行。

  1. まずは、国見丘を中心とした八十梟帥(やそたける)を殲滅
  2. その後、磐余(いわれ)にいる兄磯城らを殲滅

高倉山に登って判明した絶望的状況を、2段階でクリアしていった訳です。

今回の神話は、その中でも、国見丘の八十梟帥やそたける殲滅のお話。

  • 絶望的とも思われた状況をどのように克服したのか?

この謎を探る事で、国見丘の戦いと忍坂掃討作戦が伝える意味を読み解きます。

今回も『日本書紀』巻三「神武紀」をもとにお伝えします。ちなみに、前回の内容、これまでの経緯はコチラ↓をご確認ください。

香具土採取と顕斎|天神降臨!守護パワーゲットによりスーパーサイヤ人状態になって敵を撃破しようとした件|分かる!神武東征神話No.13

2016.02.12

 

場所とルートの確認

丹生川上で行った「顕斎(うつしいはい)の儀式」によってスーパー彦火火出見(ひこほほでみ)になった後、国見丘の八十梟帥(やそたける)を攻撃。

「八十梟帥(やそたける)」というのは、

  • 「八十(やそ)=たくさんいる」
  • 「梟帥(たける)=屈強な戦士」

という意味で、国見丘(くにみのおか)を中心として「男坂」「女坂」にたくさんの屈強な敵戦士がひしめいていた、といったニュアンスです。

以下、「八十梟帥(やそたける)」と表記していきますが、そういう名前の敵がいたという訳ではないことにご注意ください。

ちなみに、国見丘の八十梟帥は、男坂、女坂の八十梟帥とセットで考えていいです。

男坂、女坂については、高倉山に登った時の記述1回しかありません。その後、国見丘で殲滅し、忍坂掃討作戦、という流れなので、男坂、女坂の八十梟帥は国見丘とセットで考えておきましょう。

意味合い的には、国見丘を中心とする八十梟帥(男坂、女坂まで幅広く展開していた)といった感じです。

で、

その上でいよいよ討伐実行です。

既に、丹生川上での儀式によって、敵の墨坂パワーは削いであります。

詳しくはこちらで確認いただくとして、

神武東征ルートを行く|墨坂伝承地|墨坂は敵パワーの源泉、火を象徴する場所だった件

2016.02.20

国見丘とは、音羽山の南の経ヶ塚。大宇陀町と桜井市との間の山。

大宇陀盆地から山へ向けて攻め込んでいきました。図示すると以下の通り。

前段の、宇陀朝原での超常現象発生のあと、高倉山付近から国見丘へ。

国見丘攻撃

この攻撃に彦火火出見は「必克(必勝)」を期して臨み、兵士の戦意を最高に高めるべく「御謡(みうた)」を即席でつくり歌いかけます。

ここから有名な「神風」や「撃ちてし止まむ」という言葉が出てくる訳です。それはそれで良かったのですが、後世で政治利用されてしまってからおかしなことになるといった次第。

話を戻して、果たして八十梟帥を打ち破ることに成功するのですが、殲滅はできず。。。

つまり、残党が山のなかへ逃げ込んだのです。

国見丘攻撃2

山に逃げ込んだ奴らも残らず駆逐する必要があり。。。どうするか?

ということで、登場するのが、忍坂(おさか)での残党掃討作戦という訳です。

まず、散り散りになった残党どもを集めるために、盛大な饗宴を催します。その上で、宴もたけなわのときに、一気に襲ってやっつけたわけです。

誘って潰す。結構容赦ないすね。。。(;゚Д゚)

でも、、、天神のパワーをゲットした彦火火出見。向かう所敵無しといった感じで、流石でござる。

 

国見丘の戦いと忍坂掃討作戦|敵軍撃破!残党掃討!すごいぞスーパー彦火火出見!そのパワーほんと流石な件

国見丘の戦いと忍坂掃討作戦

冬、10月1日[1]に、「彦火火出見(ひこほほでみ)」は、その厳瓮(いつへ)に盛った神饌を口にして、兵を整えて出陣した。

まず、敵の主力部隊を国見丘 で攻撃し、打ち破って斬る。

この戦いでは、彦火火出見は必ず勝つという志を持っていた。そこで御謡(みうた)を詠んだ。

神風が吹く伊勢の海の大石に這いまわる細螺(しだたみ)[2]の如き吾が兵士よ、細螺のように国見丘を這いまわって、徹底的に(敵を)撃ちのめしてやれ(撃ちてし止まむ 撃ちてし止まむ)。

歌の意は、国見丘を大石に譬えたものである。

その後でも、打ち破った八十梟帥の残党がなお多数いて、情勢は予断を許さない。

そこで、彦火火出見は振り返って道臣命に命じた。

お前は「大来目部(おおくめら)」を率いて、忍坂邑に大きな家を造り、盛大に饗宴を催し、賊をおびき寄せて討ちとれ。

道臣命はこの密命を受け、忍坂に地面に穴ぐらを掘り、大来目部の勇猛な兵を選び、賊と一緒に混じらせておいた。そして、ひそかに手筈をきめ、命じた。

酒宴が盛りをすぎたあと、わしは立ち上がって歌う。お前たちは私の歌う声を聞いたと同時に、一斉に賊を刺すように。

いよいよ皆が座り酒盛りとなった。賊はわが軍に陰謀があることをも知らず、心にまかせて 酔いしれた。

その時、道臣命は起ち上がって歌った。

忍坂の大きな室屋に、敵の者どもが大勢いても、勇猛な「来目(くめ)」の若者が、 頭槌(くぶつち)の太刀、石槌(いしつつ) の太刀を持って、敵を撃ちのめしてしまおうぞ

来目の戦士たちはこの歌を聞き、一斉に頭槌の剣を抜き、一気に賊を斬り殺す。賊の中に 生き残る者は一人もいなかった。

東征軍は大いに喜び、天を仰いで笑う。そこでこのように歌った。

今はもう、今はもう、ああしやを[3]今だけでも 吾が戦士たちよ 今だけでも 吾が戦士たちよ (大いに笑おう)

来目部が歌った後に大いに口をあけて笑うのは、これがその由縁である。また歌う。

蝦夷(えみし)[4]を一人が百人にあたる(強敵)と人は言うけれども、来目部の戦士の前には手向かいもしないぞ。

これら三首 は、すべて彦火火出見の密命を受けて歌ったもので、自分勝手に歌ったものではない。

その時に彦火火出見が言う。

戦いに勝っても驕ることがないのは、良将の行いだ。今、強力な賊はすでに滅びているが、乱れ騒ぐ悪人どもがまだ数多く残っている。そして、その動向は計り知れない。いつまでも同じところにとどまらず、変化する事態を未然に防ぐ手立てを講じるべきだ。

そこで移動し、陣営を別の所に設けた。

 

注釈

[1]冬十月の癸巳(みずのとみ)が朔(一日)。

[2]小さい巻貝で、強敵に執拗にまとわりついて攻撃する東征軍の比喩。

[3]古事記に、兄宇迦斯(えうかし)を殺した時の天皇の歌に「ああしやごしや、こは、嘲咲(あざわらう)ぞ」とあります。

[4]大和朝廷の支配下に入っていない東国の未開の人々を指す賊称。

 

原文

冬十月癸巳朔、天皇嘗其嚴瓮之粮、勒兵而出。先擊八十梟帥於國見丘、破斬之。是役也、天皇志存必克、乃爲御謠之曰、

「伽牟伽筮能 伊齊能于瀰能 於費異之珥夜 異波臂茂等倍屢 之多儾瀰能 之多儾瀰能 阿誤豫 阿誤豫 之多太瀰能 異波比茂等倍離 于智弖之夜莽務 于智弖之夜莽務」

謠意、以大石喩其國見丘也。

既而餘黨猶繁、其情難測、乃顧勅道臣命「汝、宜帥大來目部、作大室於忍坂邑、盛設宴饗、誘虜而取之。」道臣命、於是奉密旨、掘窨於忍坂而選我猛卒、與虜雜居、陰期之曰「酒酣之後、吾則起歌。汝等聞吾歌聲、則一時刺虜。」已而坐定酒行、虜不知我之有陰謀、任情徑醉。時道臣命、乃起而歌之曰、

於佐箇廼 於朋務露夜珥 比苔瑳破而 異離烏利苔毛 比苔瑳破而 枳伊離烏利苔毛 瀰都瀰都志 倶梅能固邏餓 勾騖都都伊 異志都々伊毛智 于智弖之夜莽務

時、我卒聞歌、倶拔其頭椎劒、一時殺虜、虜無復噍類者。皇軍大悅、仰天而咲、因歌之曰、

伊莽波豫 伊莽波豫 阿阿時夜塢 伊莽儾而毛 阿誤豫 伊莽儾而毛 阿誤豫

今、來目部歌而後大哂、是其緣也。又歌之曰、

愛瀰詩烏 毗儾利 毛々那比苔 比苔破易陪廼毛 多牟伽毗毛勢儒

此皆承密旨而歌之、非敢自專者也。時天皇曰「戰勝而無驕者、良將之行也。今魁賊已滅、而同惡者、匈々十數群、其情不可知。如何久居一處、無以制變。」乃徙營於別處。

『日本書紀』巻三 神武紀より

 

まとめ

国見丘の戦いと忍坂掃討作戦

今回の神話のポイントは大きく2つです。

1つ目。墨坂パワーを遮断し、敵の士気を削いでから殲滅作戦を展開した事。

高倉山に登ったときに絶望的とも言える状況を認識した彦火火出見(ひこほほでみ)。

一晩寝て、じっくり考えて。天神の教えもあって、先手先手で戦況を有利に運びます。

その最たるものが、丹生川上での儀式。

敵パワーの源泉であった墨坂と国見丘の分断に成功します。これで、敵は墨坂パワーを得ることができなくなり、掃討が可能になった訳ですね。

2つ目。山と平地の間に位置する忍坂で敵を殲滅した事。

忍坂の場所がめっちゃ重要です。

宇陀榛原から見ると、この忍坂より西はいよいよ大和平野になる訳で、

その意味で、この忍坂は平地と山間のちょうど間に位置する場所

国見丘の八十梟はじめ、これまで登場した敵はあくまで山の敵

従って、山で決着をつける必要があったのです。

なので、その境界である忍坂で饗宴を催し残党を集め一挙に殲滅したという訳。

担当は、もちろん道臣です。武力の象徴。

山の敵、武力による殲滅

テーマ的に親和性の高いものが選ばれているのが分かりますよね。

ちなみに、この後の兄磯城殲滅の主体は椎根津彦。つまり智略による討伐です。

平地の敵、智略による殲滅

対比構造が非常にしっかり組まれているのが分かります。

もう、こういう細かい裏設定がちょいちょいスゴイので、オモシロいわけですよ。神武東征神話。流石です。

 

あとは、補足として、彦火火出見の歌についても触れておきます。

ここでは、撃ちのめす、撃ち平らげるまで徹底して攻めようと、総大将自ら鼓舞する歌、という意味です。まさに進軍ラッパ高らかに。

日本の軍歌がここから始まるといっても良くて、彦火火出見は兵士達を思いのまま動かす名将であったという事ですね。

歌のなかにある「撃ちてし止まむ」と言う言葉。戦争利用されて別の意味合いになってしまってる感満載ですが、そもそもの意味はココにあって、ま、確かに利用されやすい言葉だなとは思います。が、そのイメージを引きずってしまっている事、それにより過剰反応を生んでしまう感じになっているのはいかがなものかと思う次第です。今こそ本来神話が伝えるメッセージを再解釈すべきなのではないかと思います。

 

次はコチラ!

兄磯城討伐|やっとだよ。。。やっとたどり着いた大和平野(中洲)。感慨に浸る暇なく目の前の敵に集中するでござるの巻|分かる!神武東征神話No.15

2016.03.10

目次はコチラ!

神武東征神話を丸ごと解説!ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

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こんにちは、さるたひこです!読んでいただきありがとうございます。「日本神話をこよなく愛するナビゲーター」として日本神話関連情報、題して「日本神話がおもしろい!」を発信していきます。どうぞよろしくお願いします。ちなみに、ネーミングは、天孫降臨の折、瓊瓊杵尊を道案内した国津神「猿田彦命」にあやからせていただいてます。ただ、神様の名前をそのまま使うのは畏れ多いので「さるたびこ」の「び」を「ひ」に変えております。