多彩で豊かな日本神話の世界へようこそ!
正史『日本書紀』をもとに、
最新の学術成果も取り入れながら、どこよりも分かりやすい解説をお届けします。
今回は、
『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝
テーマは
「天照大神と素戔嗚尊の誓約」
素戔嗚尊の狂言回し的立ち回りにより物語が大きく展開していきます。
誓約を通じて、天照大神の子が誕生し、素戔嗚尊の潔白が証明される。これが、七段以降の展開へつながっていく。
今回も、概要で全体像をつかみ、ポイント把握してから本文へ。最後に、解説をお届けしてまとめ。
現代の私たちにも多くの学びをもらえる内容。日本神話から学ぶ。日本の神髄がここにあります。それでは行ってみましょう!
- 日本神話研究の第一人者である榎本先生監修。確かな学術成果に基づく記事です
- 日本神話全体の流れや構造を解き明かしながら解説。他には無い分かりやすい記事です
- 現代語訳のほか原文も掲載。日本神話編纂当時の雰囲気を感じてもらえます
- 登場する神様や重要ワードへのリンク付き。より深く知りたい方にもオススメです
天照大神と素戔嗚尊の誓約|『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝
目次
天照大神と素戔嗚尊の誓約|『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝の位置づけ
まずは、『日本書紀』巻第一(神代上)第六段が神話全体の中でどのような位置付けや意味を持ってるのか?について解説。
その前に、これまでの経緯を簡単に確認。
第一段から第五段までのテーマは一言で言うと「誕生の物語」でした。
| 大テーマ | 小テーマ | 内容 | 段 |
| 誕生の物語 | 道による化生 | 乾による純男神 | 第一段 |
| 乾と坤による男女対耦神 | 第二段 | ||
| 神世七代として一括化 | 第三段 | ||
| 男女の性の営みによる出産 | 国生み | 第四段 | |
| 神生み | 第五段 |
これを承けて、
ここ第六段からは「統治の物語」が展開します。これ、続く第七段、八段と合わせて1つのかたまり。
| 大テーマ | 内容 | 段 |
| 統治の物語 | 誓約と天照の子誕生 | 第六段 |
| 勝ちさびと石窟幽居 | 第七段 | |
| 大蛇退治と神剣献上 | 第八段 |
第五段で誕生した日神(天照大神)が本格的に活動開始。高天原の統治者としての役割機能、系統づくり、地上支配の様子を伝えます。
で、この展開を生み出しているのが影の主人公、素戔嗚尊。狂言まわし的役割を遺憾無く発揮しながら天照大神のお人柄や役割や恩恵やらを炙り出していく。。ほんと、よく練られた展開です。
上記枠組みの中で、今回お届けするのが第六段〔本伝〕。下図、赤枠部分。
第六段では、
第五段〔本伝〕のほか〔一書6〕や〔一書11〕も取り込みながら組み合わせ展開。内容としては、天照大神と素戔嗚尊との誓約儀式を通じて、天照大神の子が誕生する神話を伝えます。
天照大神と素戔嗚尊の誓約|『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝の概要とポイント
第六段は、第五段を踏まえての展開。
ポイント5つ。
①第五段で準備された「設定」をもとに展開する第六段。メインテーマは「天照大神の子の誕生」
第五段で準備された「設定」とは、、天照大神について、
- 〔本伝〕で、日神として誕生。光り輝くこと明るく色とりどりで、世界の内を隅々まで照らす性質もち。なので、天送。
- 〔一書6〕で、禊祓を通じて天照大神として誕生。高天原の統治を勅任される。
- 〔一書11〕で、天照大神による高天原統治開始。その第一歩目として、人民の食認定と農業開始。
てことで、上記流れ、設定を承けての第六段。大きな枠組は「統治の物語」であり、その中で、まずは後継者誕生(天照の子誕生)!! お世継ぎ誕生にみんなホッと胸を撫で下ろすのであります。
次!
②第六段〔本伝〕でついに伊奘諾尊が引退。以後、日本神話の主役は天照大神へ。天照を中心とした統治の物語が展開
第六段では、「神世七代」という至尊の世代たる伊奘諾尊がついに引退。。幽宮を構えて永久に隠れるお疲れっした!一つの大きな時代が終わった。。これにより、日本神話の主役は天照大神へ完全に切り替わることになります。
以後、第七段、第八段を通じて、天照大神を中心とした「統治の物語」が展開。テーマは大きく3つ
- 天照大神の子誕生(皇統形成)
- 統治者の役割機能と社会形成
- 高天原と地上との関係明示
であります。
なんせ、天照大神自身は第五段で生まれたばかり。活動といえば、第五段〔一書11〕で農業開始したくらいなんで、どんなお方なのか、お世継ぎはどうするのか、統治形態は?など明確になってないことだらけなんです。そのための「統治の物語」。
なので、第六段はコレ単体ではなく、第七、八段と合わせて俯瞰的に捉えていただけると◎!
ということで、そのきっかけとなる伊奘諾尊の引退、それは一つの大きな時代の終了なんだぞと、いうことで全員敬礼!!
次!
③影の主役は素戔嗚尊。素戔嗚による狂言まわし的役割、やらかし行動により神話が豊かに展開していく
表側の主役は天照大神で間違いないのだが、実は、影の主役とも言うべきお方がいらっしゃいまして、、、それが素戔嗚さんであります。この素戔嗚尊の狂言回し的役割や振る舞いによって日本神話が豊かに展開していくようになる。
「狂言まわし」とは、物語や演劇において、筋の運びや主題の解説を担い、物語の進行を円滑にする役割・人物のこと。単なる進行役(ナレーター)だけでなく、ストーリーの核心に触れる重要な役柄を担う。今回の素戔嗚尊がまさにそれ。
これは、第六段のみならず、第七段、第八段と続いていく構造で。素戔嗚尊がいなければ天照大神の系統形成は無かったし、統治者の役割機能とか恩恵も分からなかった、さらに高天原と地上との関係も分からない。。その意味で、非常に重要な立ち回りであり、神なんです。
次!
④傍流(異伝)が本流(本伝)へ取って代わる、日本神話的ダイナミックな転換が発生
第六段は「天照大神の子誕生」がテーマなんだが、ちょっと待って、その前に、、そもそも天照大神ってどこで誕生してたっけ? それって異伝たる〔一書6〕でしたよね?
てことは、異伝で誕生した天照大神が、つまり傍流で誕生した天照大神が、本伝、つまり本流へ取って代わった、ってことで、、ココ、日本神話的に地味にダイナミックな転換が発生中なとこなんす。
で、これ、
実は、日本神話が持つ重要な構造=〔本伝〕と〔一書〕が縦軸・横軸に絡み合うダイナミックな構造によるもの。本伝から異伝へ、異伝から本伝へ。踏まえあって取って代わって多彩で豊かな神話世界を構築してる。
で、最終的に、
第六段を通じて日神から天照大神へ段階的に切り替わっていく。さらに第七段を経て、第八段以降、天照大神として一貫して活動展開するようになります。
なので、第六段では、日本神話の絡み合いダイナミック構造をもとに、日神から天照大神へ切り替わりが発生中ってこと、チェック。
最後!
⑤神話展開の原動力は「原理(道の働き)」から「情動(人間モデル神)」へ。神の情動に着目すると日本神話が豊かにオモロー!に見えてくる。
「神世七代」世代の伊奘諾尊引退はホントに象徴的なイベントで。天地開闢から続いてきた乾や坤といった道の働きによる神話展開の終焉を意味。代わって、新世代、新神類たる人間モデル神が活動し神話を展開させていく、、、これ、構造的には「原理による神話展開」から「情動による神話展開」への転換とも言えて、超重要事項。
さらに、世界秩序やルールも「尊卑先後の序」から「天照大神を中心とした秩序」へ転換する訳で、世界を動かすルールが変わった。。大きな時代の転換を感じていただければと思います。
まとめます。
- 第五段で準備された「設定」をもとに展開する第六段。メインテーマは「天照大神の子の誕生」
- 第六段〔本伝〕でついに伊奘諾尊が引退。以後、日本神話の主役は天照大神へ。天照を中心とした統治の物語が展開
- 影の主役は素戔嗚尊。素戔嗚による狂言まわし的役割、振る舞いにより神話が豊かに展開していく
- 傍流(異伝)が本流(本伝)へ取って代わるダイナミックな転換発生
- 神話展開の原動力は「原理(道の働き)」から「情動(人間モデル神)」へ。神の情動に着目すると日本神話が豊かにオモロー!に見えてくる。
以上5点、チェックした上で、本文をどうぞ!
天照大神と素戔嗚尊の誓約|『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝の本文と現代語訳
『日本書紀』国立国会図書館デジタルコレクションより慶長4(1599)刊版 ここにおいて、素戔嗚尊が請うて「私はいま勅命を承って根国に行こうと思います。なので、しばらく高天原に出向き、姉上と会って、その後に永久に退去します」と言い、これを許した。そこで天に昇り詣でた。
この後、伊弉諾尊は、神としての功績をすでに全て終えて、霊妙な命運がまさに遷ろうとしていた。そこで、幽宮を淡路洲に構え、ひっそりととこしえに身を隠した。またこうも伝えている。伊弉諾尊は、神としての功績がすでに頂点に達し、神德もまた偉大であった。そこで、天に登り天神に報告した。これにより、日の少宮に留まり住んだという。少宮、ここでは「倭柯美野」と云う。
はじめ、素戔嗚尊が天に昇る時、大海原がこれによって激しく波打ちぶつかりあい、山々はそのために山なりが響きとどろいた。これは、神性の雄々しく猛々しいことがそうさせたのである。
天照大神は、もとよりその神の暴悪を知っていて、参上しに来るさまを聞くに及んで、にわかに驚き、「私の弟が来るのは、よもや善意ではあるまい。思うに、きっと国を奪う意志があるのだろう。そもそも父母が既にそれぞれの子に委任しそれぞれが統治する境界をもっている。それなのにどうして赴くべき国を棄て置き此処を狙おうとするのか」と言った。そこで、髪を結って髻にし、裳を縛って袴にして、八坂瓊の五百箇御統を(御統 ここでは「みすまる」と云う)髻・鬘や腕に巻きつけ、また背には千箭の靫(千箭 ここでは「ちのり」と云う)と五百箭の靫を負い、臂には稜威の髙鞆(稜威 ここでは「いつ」と云う。)をつけ、弓彇を振りたて、剣の柄を力強く握りしめて、大地を踏んで股までのめり込ませて淡雪のように蹴散らかし(蹴散 ここでは「くゑはららかす」と云う)、稜威の雄詰をし(雄詰 ここでは「をたけび」と云う)、稜威の嘖譲を発して(嘖讓、ここでは「ころひ」と云う)、直ちに問い詰めた。
素戔嗚尊はこれに対して「私にはもともと邪悪な心はありません。ただ、父母の厳しい勅命が既にあり、永久に根国に行こうとしているのです。それで、もし姉にお会いしなければ私はどうして去くことができましょうか。それですから、雲や霧を踏み越えて遠路はるばる参り来たのです。姉上が反対に厳しいお怒りの顔をなさるとは思いもしませんでした」と答えた。
その時、天照大神がまた問うて「もしそうだとしたら、何をもってお前の潔白な心を明らかにするか」と言うと、答えて「姉上と共に誓することをお願いします。この誓約の中では、(誓約之中 ここでは「うけひのみなか」と云う)必ず子を生むことにしましょう。もし私の生むのが女であれば邪心があるとしてください。もし男であれば清き心があるとしてください」と言った。
そこで、天照大神が素戔嗚尊の十握剣を求め取り、打ち折って三段にして、天真名井で濯いで、がりがりと噛み砕き(○然咀嚼 ここでは「佐さがみにかむ」と云う)、吹き棄てた息吹の細かな霧で(吹棄気噴之狭霧 ここでは「ふきうつるいふきのさぎり」と云う)生んだ神を、名付けて田心姫と言う。次に、湍津姫、次に、市杵嶋姫。合わせて三女である。
そうしてのち、素戔嗚尊が天照大神の髻・鬘および腕に纏いている八坂瓊の五百箇御統を乞い取り、天真名井に濯いで、がりがりと噛み砕き、吹き棄てた息吹の細かな霧で生んだ神を、名付けて正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊と言う。次に、天穂日命これは出雲臣・土師連等の祖である。次に、天津彦根命。これは凡川内直・山代直等の祖である。次に、活津彦根命。次に、熊野櫲樟日命。合わせて五男である。
この時、天照大神は勅して「その物根をたどると、八坂瓊の五百箇御統は私の物である。だから五男神はすべて私の子である」と言い、引き取って子として養育した。また勅して「その十握剣は素戔嗚尊の物である。だからこの三女神はすべてお前の子である」と言い、素戔嗚尊に授けた。これは、筑紫胸肩君等が祭る神である。
於是、素戔嗚尊請曰「吾今奉教、將就根國。故欲暫向高天原、與姉相見而、後永退矣。」勅許之。乃昇詣之於天也。是後、伊弉諾尊、神功既畢、靈運當遷、是以、構幽宮於淡路之洲、寂然長隱者矣。亦曰、伊弉諾尊、功既至矣、德亦大矣、於是、登天報命、仍留宅於日之少宮矣。少宮、此云倭柯美野。
始、素戔嗚尊昇天之時、溟渤以之鼓盪、山岳爲之鳴呴、此則神性雄健使之然也。天照大神、素知其神暴惡、至聞來詣之狀、乃勃然而驚曰「吾弟之來、豈以善意乎。謂當有奪國之志歟。夫父母既任諸子各有其境、如何棄置當就之國而敢窺窬此處乎」乃結髮爲髻、縛裳爲袴、便以八坂瓊之五百箇御統御統、此云美須磨屢纒其髻鬘及腕、又背負千箭之靫千箭、此云知能梨與五百箭之靫、臂著稜威之高鞆稜威、此云伊都振起弓彇、急握劒柄、蹈堅庭而陷股、若沫雪以蹴散蹴散、此云倶穢簸邏邏箇須、奮稜威之雄誥雄誥、此云鳥多稽眉、發稜威之嘖讓嘖讓、此云舉廬毗、而俓詰問焉。
素戔嗚尊對曰「吾元無黑心。但父母已有嚴勅、將永就乎根國。如不與姉相見、吾何能敢去。是以、跋渉雲霧、遠自來參。不意、阿姉翻起嚴顏。」于時、天照大神復問曰「若然者、將何以明爾之赤心也。」對曰「請與姉共誓。夫誓約之中誓約之中、此云宇氣譬能美儺箇必當生子。如吾所生是女者則可以爲有濁心、若是男者則可以爲有淸心。」於是、天照大神、乃索取素戔嗚尊十握劒、打折爲三段、濯於天眞名井、𪗾然咀嚼𪗾然咀嚼、此云佐我彌爾加武而吹棄氣噴之狹霧吹棄氣噴之狹霧、此云浮枳于都屢伊浮岐能佐擬理所生神、號曰田心姬。次湍津姬、次市杵嶋姬、凡三女矣。
既而、素戔嗚尊、乞取天照大神髻鬘及腕所纒八坂瓊之五百箇御統、濯於天眞名井、𪗾然咀嚼、而吹棄氣噴之狹霧所生神、號曰正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊。次天穗日命是出雲臣・土師連等祖也、次天津彥根命是凡川內直・山代直等祖也、次活津彥根命、次熊野櫲樟日命、凡五男矣。
是時、天照大神勅曰「原其物根、則八坂瓊之五百箇御統者是吾物也。故、彼五男神、悉是吾兒。」乃取而子養焉。又勅曰「其十握劒者、是素戔嗚尊物也。故、此三女神、悉是爾兒。」便授之素戔嗚尊、此則筑紫胸肩君等所祭神是也。(『日本書紀』巻第一(神代上)第六段〔本伝〕より)
天照大神と素戔嗚尊の誓約|『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝の解説
第六段の〔本伝〕、いかがでしたでしょうか?
天照大神と素戔嗚尊の意味不明なやり取り、掛け合い、からの、神が誕生したようだが、、、??
と、初めて読まれた方はきっと理解が難しかったかと思いますが、、ご安心ください。そのための日本神話.com。以下、まるっと分かりやすく解説します。
〔一書11〕で登場した神々
【三女神】田心姫/湍津姫/市杵嶋姫、【五男神】正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊/天穂日命/天津彦根命/活津彦根命/熊野櫲樟日命
天照大神と素戔嗚尊の誓約|『日本書紀』巻第一(神代上)第六段 本伝 まとめ
天照大神と素戔嗚尊の誓約
だーっと解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
第五段までの「誕生の物語」から「統治の物語」へ。
以後、第七段、第八段を通じて、
- 天照大神の系統形成
- 統治者の役割機能と社会形成
- 高天原と地上との関係明示
を伝える神話が展開していきます。
その中で、第六段〔本伝〕でついに伊奘諾尊が引退。以後、日本神話の主役は天照大神へ。天照を中心とした統治の物語が展開していきます。
影の主役は素戔嗚尊。素戔嗚による狂言まわし的役割、振る舞いにより神話が豊かに展開していきます。
古代日本人の叡智、構想力がほんとスゴイ。そして、それを物語として落とし込む力というか、実現力も超絶であります。現代の私たちにも多くの学びになるかと思います。
ということで、次回は第六段〔一書1〕!お楽しみに!!
神話を持って旅に出よう!
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佛教大学名誉教授 日本神話協会理事長 榎本福寿
埼玉県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程国語学国文学(S53)。佛教大学助教授(S58)。中華人民共和国西安外国語学院(現西安外国語大学)文教専家(H1)。佛教大学教授(H6)。中華人民共和国北京大学高級訪問学者(H13)。東京大学大学院総合文化研究科私学研修員(H21)。主な書籍に『古代神話の文献学 神代を中心とした記紀の成りたち及び相関を読む』がある。『日本書紀』『古事記』を中心に上代文学における文献学的研究成果多数。
参考文献:『古代神話の文献学』(塙書房)、『新編日本古典文学全集 日本書紀』(小学館)、『日本書紀史注』(風人社)、『日本古典文学大系『日本書紀 上』(岩波書店)
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本文解説に入る前に、改めて背景とか設定を確認。
第六段以降、第七段、第八段を通じて、天照大神を中心とした「統治の物語」が展開していきます。
なんせ、天照大神自身は第五段で生まれたばかり。活動といえば、第五段〔一書11〕で農業開始したくらいなんで、どんなお方なのか、お世継ぎはどうするのか、統治形態は?など明確になってないことだらけなんです。
だからこその「統治」をテーマにした神話。そのテーマは大きく3つ
であります。
まずは天照大神の子=皇統を引き継ぐ神が誕生(①)。良かった、、これで次の世代への継承も安心だ。そして、統治者ってどんな存在なの?って疑問も、石窟幽居イベントによって明らかに(②)。天照がいないとやっぱり困るし生きていけないぞ、、そして、地上の八岐大蛇とかいう化け物退治によってゲットした神剣を天上に献上いたしますイベントによって地上世界は高天原の支配下にあることを明示(③)といった流れ。
これらを通じて、天照大神による高天原統治の実態が明らかになっていく訳です。
その中で、
めっちゃ重要なのが、狂言まわし素戔嗚尊であります。彼のやらかし行為が神話展開を生んでいく。逆に言うと、素戔嗚尊がいなかったら上記3つのイベントも発生してないし、伝えたいこともわからない訳で。
表側の主役は当然、天照大神なんだが、影の主役として素戔嗚尊がいて、彼の狂言まわし的な立ち回りによって主役が輝く、どんな存在なのか明確になる。。その意味で、激しく重要な神。また、そういう観点で素戔嗚尊の行動とか立ち回りを見ていくと分かりやすくなるんじゃないかなと思います。
と言うことで、
そんな全体感をもとに、以下詳細解説。
→素戔嗚尊の暇乞いからスタート。姉ちゃんにご挨拶!
ポイント3つ。
①第六段〔本伝〕は、第五段〔本伝〕を引き継ぎながらも、そこに〔一書6〕を交えて展開する
「素戔嗚尊が請うて「私はいま勅命を承って根国に行こうと思います。」とあります。
「素戔嗚尊請曰」にある「請う」相手とは伊奘諾尊。伊奘諾に請うた。これ、根拠は2つ。1つは、第五段で伊奘冉尊は神避り&完全なお別れを果たしてるから。そして、もう一つは、この後に伊奘諾尊の引退を伝えるだけで、やはり伊奘冉尊は登場しないから。
ポイントは「吾今奉教、將就根國」の「教」。これ、教え、告げのことで、第五段で素戔嗚尊に対して下された「勅命」の言い換え。
で、その勅命が下ったのが第五段〔本伝〕。以下内容でした。
ということで、
「父母の二神は素戔嗚尊に勅して」とあり、勅命にて根国行きが下されてます。なので、基本は、第五段〔本伝〕を引き継いでるって体(体裁)。
なんだが、、
第五段〔本伝〕では伊奘諾尊と伊奘冉尊の二神による勅命。一方で、ココ第六段〔本伝〕では、素戔嗚尊が請うて許しを得た相手は伊奘諾尊。繰り返しますが、伊奘冉尊はいない訳です。で、伊奘冉無しで伊奘諾尊が素戔嗚尊に根国行きの話をしたのは、、、
そう、第五段〔一書6〕!!
〔一書6〕では以下内容で伝えてました。
ということで、
素戔嗚尊の「私はいま勅命を承って根国に行こうと思います」という「勅命」だけを考えると伊奘諾尊と伊奘冉尊が登場してた第五段〔本伝〕になるんだが、素戔嗚尊が請うた相手は伊奘諾尊だけってことを考えると第五段〔一書6〕になるってことで。くどいか。。
で、改めて考えてみると、冒頭の「吾今奉教、將就根國」の「教」。これ、「命」とか「勅」といった言葉が使われてないのは、〔本伝〕の勅命だけでなく〔一書6〕の行ってしまえ的内容も含めるためと言えて。あえて幅広く捉えられる漢字が設定されてるんだなぁ。
結局、何が言いたいかというと、
第六段〔本伝〕は、第五段〔本伝〕を引き継ぎながらも、そこに〔一書6〕も交えて展開するってこと。これは、この後の解説の前提となる話なのでしっかりチェック。この後もちょいちょい出てきます。
そして!
②天照大神=姉。女性であることが本文で明示される
「しばらく高天原に出向き、姉上と会って、その後に永久に退去します」と言った」とあります。
ココ、素戔嗚尊が天照大神について語ってる箇所で、天照大神を姉だと。つまり、女性神であることが明示されてる箇所なんです。
思い起こせば第五段〔本伝〕。天照大神誕生は以下内容で伝えてました。
ということで、
で、ポイントは、本文で伝える神名の「大日孁貴」。この「孁」という漢字。
これ、実は「霝」と「女」を組み合わせた会意文字で。「大日孁貴」って神名でサラッと女性神であることを匂わせてた訳です。これを承けて、ここで姉としての表現に繋がってるんです。
ということで、天照大神=姉。女性神であることがココで明示された、ってことチェック。
最後!
③天照大神の高天原統治を前提とした関係、神話展開
「そこで天に昇り詣でた」とあります。原文「詣」は、高い場所や目上のお方のところに参上する時に使う言葉。
つまり、素戔嗚尊にとっては天照は目上の存在であり、それはつまり、高天原の統治者という位置にあることを示してるってことなんす。
天照大神と素戔嗚尊とは、姉と弟ではあっても、実質は君臣相当の関係にあって、高天原における天照大神の統治を前提にした上で、昇り詣でたという表現になってる。コレ、地味に重要なんでしっかりチェック。
次!
→突然ではございますが、「神世七代」という至尊の世代たる伊奘諾尊がついに引退、、、大変お疲れ様でございました。
先に言葉の解説を少し。
「神功」は、「神としての功業」「功績」「仕事」の意。
「畢」は、物事が「おわる」「終える」の意。あるいは「ことごとく、すべて、すっかり」の意。鳥を捕らえる網の形から派生し、「畢竟」とか「畢生」のように物事の締めくくりや全期間を指して使われます。
「靈運」は、「神の霊的な命運・時節」の意。
「遷」は、「移る」意。フェーズが変わった、お役目が済んだ。
「幽宮」について、「幽」は奥深く暗いところに隠れる意で、『篆隷万象名義』に「深也、遠暗貌也、隠也」とあり、「深也」は奥深い、「遠暗貌也」はは遠く、暗い様子、「隠也」は隠れる、目に見えない意。その上での「宮」なので、隠退して住むべき所を宮殿に見立てて「幽宮」とした。比定地は、兵庫県淡路市多賀にある伊弉諾神宮。
「寂然長隱者矣」について。「寂然」は、ひっそりとして、静かな様子。「長隠」は、長い間、長久に、隠れる。「者矣」は、強調・詠嘆・過去の完了を意味する漢文の助字。「〜ましき/〜き」。合わせて「ひっそりととこしえに身を隠した」。
「功既至矣」は、神としての功績がすでに至る=極限(頂点)に達した意。
その上で、、
ポイント4つ。
①第六段〔本伝〕でついに伊奘諾尊が引退。以後、日本神話の主役は天照大神へ。天照を中心とした統治の物語が展開
第六段では、「神世七代」という至尊の世代たる伊奘諾尊がついに引退。。「神としての功績をすでに全て終えて、」とあり、「畢」という漢字が使われてるので、お役目の全てを、ことごとく、すっかり終えた感、締めくくり的な意味合いも含めて。
思い起こせば、、
い〜つ〜の〜ことだか、思い出してごらん、あんなことこんなことあったでしょう、、、
と、、まーいろいろあったよね。。。これら全てのことが「神功」であった訳で、、、あなたの大きすぎる存在と時に勝手気ままな言動は今なお私たちの胸をアツくしてくれる。本当に、、お疲れした!!!
これにより、日本神話の主役は天照大神へ完全に切り替わる訳ですね。
そして!
②隠れる先は、、、幽の世界?「幽宮」の背景にある日本神話的世界構造
「幽宮を淡路洲に構え、ひっそりととこしえに身を隠した。」とあります。ポイントは「幽宮」「身を隠した」。
「幽宮」の「幽」については、国譲り神話でも登場する重要概念。「大己貴神(=大国主神)」が国を譲り、退くときに同じ「幽」という言葉が登場。コチラ。
ということで、ココでは、
という、2項対立の世界観が伝えられてます。
「顕露事」とは、目に見える(顕露)世界のこと。高天原から地上の葦原中国を含む世界であり、治政を含む意味アリ。
一方、「幽事」とは、目に見えない神の世界(身を隠した神々のいる世界)のことで、一般的には「神事」のことを言います。
日本神話には、このように、「目に見える世界(顕露)」と「目に見えない世界(幽冥)」の2つがあり、今回、伊奘諾尊が隠居した「幽宮」も、目に見える世界から退去し、目に見えない世界へ入ることを踏まえた内容だということ、しっかりチェック。
これらを踏まえ、日本神話的世界構造というか、世界設定てやつを図示するとこんな感じ!
いかがですか皆さん!!!スゴくないっすか??コレ!!
「顕世」と「幽世」という2つの世界があるという日本神話的設定。目に見える世界のとなりに、目に見えない世界がある。神はそれを行ったり来たりできるらしい。大己貴神(大国主神)も、国譲りに際して「隠れる」。伊奘諾尊もココで隠れる。それは、まさに「幽世」へのトランスファー!!
てことで、「幽宮を淡路洲に構え、ひっそりととこしえに身を隠した。」という伝承の背景にはこうした日本神話的世界設定があるってことをまずチェック。
そのうえで、
伊奘諾尊が宮を構えて身を隠したのは、神は鎮座する場所が必要だから。祀りを受ける場所な訳です。今回はそれが「幽宮」だったってこと。
ちなみに、、
「淡路洲」になってるのは、第四段〔本伝〕を踏まえてと考えられて、、第四段〔本伝〕では以下のように伝えてました。
てことで、
確かに、国生みの時は使えなかったのだけど、それでも、伊奘冉尊と初めて交合し夫婦になって出産で使おうとした洲だったんで、伊奘諾尊的に格別なる思い入れがあったのかもしれませぬ、。、。第五段〔一書6〕であれだけヒドい別れ方をしたけれど、それでも忘れられないメモリアル、、、??
そしてそして!!
③別伝で伝える報命は、天神ミッションを踏襲。準備作業は一応コンプリート??
伊奘諾尊引退には異伝があって、それが「またこうも伝えている(原文:亦曰)」以後。
「天に登り天神に報告した」とあります。これ、第四段〔一書1〕の天神ミッションを踏まえたものと考えられます。
ということで、
第四段〔一書1〕では、天神から直々にミッションを下されてました。この天神ミッション、当然、勅命と同じくらい重いものだと考えられ、てことは報告義務が発生する訳です。
今回、
「天に登り天神に報告した(原文:報命)」は、そうした経緯をうけて、天神に事業完了報告を行ったってことなんすね。てか、、前段の異伝たる〔一書〕を自在に取り込んでつながりをつけていく、、その自由な感じがスゴい、、
ということで、別伝で伝える報命は、天神ミッションを踏襲。「神としての功績がすでに頂点に達し、神德もまた偉大であった。」と伝えてることから、準備作業は一応コンプリートしたんじゃないか説、、ということでチェック。
ちなみに、、
留まり住んだとされる「日の少宮」とは、日は夜沈んで翌朝蘇生復活して東天に昇るといった信仰が背景にあると言われてます。さらに、伊奘諾尊がそこに常住するというのは、復活する若い男性の太陽神であることを意味するとかしないとか。。。
最後!
④神話展開の原動力は「原理(道の働き)」から「情動(人間モデル神)」へ。神の情動に着目すると日本神話が豊かにオモロー!に見えてくる。
「神世七代」世代の伊奘諾尊引退はホントに象徴的なイベントで。天地開闢から続いてきた乾や坤といった道の働きによる神話展開の終焉を意味。代わって、新世代、新神類たる人間モデル神が活動し神話を展開させていく、、、
これ、構造的には「原理による神話展開」から「情動による神話展開」への転換とも言えて、超重要事項。
さらに、世界秩序やルールも「尊卑先後の序」から「天照大神を中心とした秩序」へ転換する訳で、世界を動かすルールが変わった。。大きな時代の転換を感じていただければと思います。
いずれにせよ、、まとめとして、ここでの伊奘諾尊の引退は、一つの大きな時代の終了なんだぞと、日本神話的にも大きな区切りになってること、しっかりチェック。それら含めて引退された伊奘諾に全員敬礼!!
次!
→第五段で伝える素戔嗚尊の神性を踏襲した表現。
先に言葉の解説を少し。
「溟渤」は、大きな海。大海原。「溟」は、海、おおうなばら、薄暗い様子を指します。「渤」は、大きな海、水が湧き立つ、水勢が盛んの意。
「鼓盪」は、波が激しくぶつかり合うこと、激しく揺れ動くこと。「鼓」は、つづみを鳴らず。「盪」は、揺れ動く。
「鳴呴」は、鳴り響く、大声をあげる。山なりが響く。
その上で、、
ポイント2つ。
①海が大荒れ山なりが響き渡るのは素戔嗚尊の神性によるもの。そこに悪意は・・・??
「素戔嗚尊が天に昇る時、大海原がこれによって激しく波打ちぶつかりあい、山々はそのために山なりが響きとどろいた」とあります。コレ、第五段〔本伝〕を承けての内容。以下。
ということで、
「勇悍」や「哭泣」といった凶暴性は、素戔嗚尊が本来、神性として持つ生まれながらの性質として描かれてましたよね。外的要因によって怒ってる訳でもなく、不満がある訳でもなく、生まれつき凶暴な性質をもってた。無垢。ナチュラルボーン。
第六段〔本伝〕では、直後に「神性の雄々しく猛々しいことがそうさせたのである。」という説明も付いてるので、暇乞いしに天上へ昇る素戔嗚尊には悪気がある訳ではない、あくまで神の性質として出ちゃってるってことでチェック。
そして!
②影の主役は素戔嗚尊。素戔嗚による狂言まわし的役割、やらかし行動により神話が豊かに展開していく
第六段から、影の主役とも言うべき役割を担うのが素戔嗚尊。この素戔嗚尊の狂言回し的役割や振る舞いによって日本神話が豊かに展開していくようになる。
「狂言まわし」とは、物語や演劇において、筋の運びや主題の解説を担い、物語の進行を円滑にする役割・人物のこと。単なる進行役(ナレーター)だけでなく、ストーリーの核心に触れる重要な役柄を担う。
今回で言うと、「素戔嗚尊が天に昇る時、大海原がこれによって激しく波打ちぶつかりあい、山々はそのために山なりが響きとどろいた」と言う昇天がきっかけとなって天照の嫌疑を生んで、誓約儀式へつながっていく。それが天照大神の子誕生という展開を生んでいく訳です。
素戔嗚尊きっかけによる新たな神話展開という構造。超重要事項としてしっかりチェック。
次!
→地味に「参上しに来るさまを聞くに及んで」って大事なところ。つまり、臣下から報告を受けたってことで、コレ、統治機構が確立されてる証だったりして。。その上で、報告を聞いて天照さん、ぶったまげる。アイツ国を奪いに来やがった、、、
先に言葉の解説を少し。
「窺窬」は、隙(すき)をうかがって狙うこと。「窺」のぞく、うかがう。「窬」あな、のぞく。の意。
その上で、、、
ポイント3つ。
①傍流(異伝)が本流(本伝)へ取って代わる、日本神話的ダイナミックな転換が発生
「天照大神」として登場する第六段。なんだけど、そもそも天照ってどこで誕生してたっけ? それって第五段の異伝たる〔一書6〕でしたよね(本伝では日神として誕生)。
てことは、
第五段〔一書6〕で誕生した天照大神が、なんなら第五段〔一書11〕を経て、ココ第六段〔本伝〕で登場してるってことで。
言い方を変えると、
〔一書〕という異伝、つまり傍流で誕生した「天照大神」が、〔本伝〕、つまり本流へ取って代わったとも言えて、、日本神話的に地味にダイナミックな転換が発生してるってことなんす。
これ、日本神話が持つ重要な特性というか構造の一つで、〔本伝〕と〔一書〕が縦軸横軸に絡み合うダイナミック展開。本伝から異伝へ、異伝から本伝へ。踏まえあって取って代わって多彩で豊かな日本神話を構築してる世界線。
で、第六段を通じて
日神から天照大神へ段階的に切り替わっていく。第七段を経て第八段以降、天照大神として一貫して活動展開。
ということで、
ここで登場してる天照大神は、傍流(異伝)が本流(本伝)へ取って代わった初出であり、日本神話的ダイナミックな転換が発生中ってことでチェック。
そして!
②天照大神の過剰反応?のベースには、第五段〔一書6〕が関係してる
天照大神の「私の弟が来るのは、よもや善意ではあるまい。思うに、きっと国を奪う意志があるのだろう」について。姉ちゃん、、ちょっと過剰反応なのでは?? って、、実はココ、よく考えると謎な箇所だったりします。
先ほどの解説の通り、直前の本文でわざわざ「神性の雄々しく猛々しいことがそうさせたのである」とあった訳で、、つまり山海鳴動は素戔嗚の神性によるものでありイノセンス。
それに対して「天照大神は、もとよりその神の暴悪を知っていて」とあり「暴悪」って、、ちょっと言いすぎな感じから始まって、「きっと国を奪う意志があるのだろう」とまでエスカレート。。過剰反応と感じるのはまさにココで。。ま、確かに山海鳴動は良くなかったかも知らんが。。
これ、結論から言うと、
第六段は、第五段〔本伝〕を踏襲しつつ、そこに〔一書6〕も取り込んで成立させているから、ってことなんす。
どういうことかと言うと、まず、着目すべきは天照の言う「父母が既にそれぞれの子に委任しそれぞれが統治する境界をもっている。」のところ。
「父母」とあるのは伊奘諾尊と伊奘冉尊であり、統治領域設定の話なので、第五段〔本伝〕のことだと考えられます。
そこで、第五段〔本伝〕を確認してみると、、
確かに、父母による主者生み、日神や月神の天送はあるが、一方で、蛭子は放棄、素戔嗚尊は根国追放で、、「それぞれの子に委任」とか「それぞれが統治する境界をもっている」に相当する内容が無いんです。
子として天照大神や素戔嗚尊がいて、かつ統治領域の任命を伝えるのは、、、そう〔一書6〕だ!!
で、確かに、第五段〔一書6〕では、
「伊奘諾尊は三子に勅して「天照大神は高天原を治めよ。月読尊は青海原の潮が幾重にも重なっているところを治めなさい。素戔嗚尊は天下を治めなさい。」と任命した。」と伝えてました。ま、ココでは父母ではなく父のみなんだが、、、
このことから、
第六段は、もっと言うと、天照大神的には、第五段〔本伝〕を踏襲しつつ、そこに〔一書6〕も取り込んで成立させていると考えられる訳です。
その上で、、忘れちゃいけない、
第五段〔一書6〕の素戔嗚尊は、「私は根国で母に従いたいのです。だから、哭いているだけなのです。」と、母=伊奘冉(死の側)に従う、つまり「謀反」に相当する内容を言い放ってました。だからこそ、伊奘諾尊(生の側)はブチギレして根国に追放した。。当然、天照もこうした経緯を知っていたと見るべきで、そうなると、辻褄が合ってくるようになるんです。
つまり、
まず、構造として、第六段は(もっと言うと天照大神的には)、第五段〔本伝〕を踏襲しつつ、そこに〔一書6〕も取り込んで成立してる、ってのがあって。それを踏まえての「父母が既にそれぞれの子に委任しそれぞれが統治する境界をもっている」。で、その「それぞれの子に委任」の時に、素戔嗚尊が母=伊奘冉尊(死の側)に従うと謀反的内容を言い放ち、伊奘諾(生の側)のブチギレによって根国追放されたことを踏まえてる、ってことなんす。
そうすると、暇乞いに来たとは言いつつ、謀反の心があるんじゃないか疑惑が付きまとう。だからこそ、天照としては、山海鳴動が神性によるものとは分かっていつつも、嫌疑をかける訳です。それが「私の弟が来るのは、よもや善意ではあるまい。思うに、きっと国を奪う意志があるのだろう(だって、アイツ、母(=伊奘冉=死の側)に従うって言ってたしな)」ってことで、過剰反応のように見えるのはこうした背景設定があるからなんすよ皆さん!
さらに!
③天照大神の奪國嫌疑には、古代の律令「謀反」の考え方が反映されている
「どうして赴くべき国を棄て置き此処を狙おうとするのか」とあります。ポイントは、「狙おうとする(原文:窺窬)」。
で、実はココ、古代律令の規定が絡んでいて、それを踏まえるとコトの重大性が理解できるようになる。それが「謀反」の規定。
古代律令の規定では「謀反は、反を謀る――予備・陰謀――だけで極刑に問われ、実行の着手があった(真反)か否かは問題とされない。(『譯註日本律令七』(唐律疏議譯註篇三、律令研究会編。62頁。昭和六二年六月。東京堂出版)の注より)」とされてました。ここの、反を謀るだけで極刑に問われ、実行があったかどうかは関係ない、というのがポイントで。
これを踏まえると、山海鳴動の勢いをもって昇天する行動が、それの向かう相手にとって、つまり天照大神にとって脅威にならないはずはなく、、さらに、母(=死)に従うと言い放った素戔嗚尊に対して、天照が国を奪いに来たと嫌疑をかけるのは当然の話とも言えて。それが「窺窬」に集約されてる。つまり、極刑に問われる案件、、だからこそ、この後の天照の武装と激しい威圧につながっていく訳です。
次!
→めちゃめちゃ武装する天照、、威圧する行動もスゴすぎて、むしろオモロい世界に突入???
先に言葉の解説を少し。
「髻」は、男の髪型。髪の毛を両耳のところや頭の上に束ねたもの。
「裳」は、女性の腰から下をおおう衣服。スカートみたいなの。を縛って袴とした=男装したということ。
「八坂瓊の五百箇御統」は、たくさんの大きな玉を紐で通して輪にしたもの。「坂」は「尺」の当て字で長さの単位、「八坂瓊」で大きい玉。
「鬘」は、蔓草などの髪飾り。
「千箭」は、千本もの矢、数え切れないくらいたくさんの矢。
「靫」は、矢を入れる武具。
「稜威」は、相手を恐れさせる強盛な威力。神や天皇の力を示す際に使われ、「威勢が激しいこと」や「強い天の威光」を指す。
「髙鞆」は、弓を射る時に弦が左肘に当たるのを防ぐ道具。高い音を立てる鞘。
「弓彇」は、弦をかける弓の両端部。上端を末弭、下端を本弭という。
「雄詰」は、相手を威圧する雄壮な声。
「嘖譲」は、責め叱りたてる言葉。
その上で、、
整理してみると、
【武装】
【行動】
と言うことで、、
怖っ!!
ポイントは、先ほど解説した「謀反」の規定。反を謀るだけで極刑に問われる訳で、母(=死)に従うと言い放ち、山海鳴動ビリビリさせて昇天してくる相手だもの、武装して威圧してするのも当然といえば当然、、、
いや、それはどうなんだ??
次!
→暇乞いにきただけの素戔嗚尊からしたら逆にビックリ!!??「姉上が反対に厳しいお怒りの顔をなさるとは思いもしませんでした」と、、、
先に言葉の解説を少し。
「黑心」は、邪悪、邪曲の心。対義語は「赤心」。
「阿姉」は、俗語的、口語的表現。例、「阿父」で「父、オヤジ」、「阿女」で「むすめ」など。
「跋渉雲霧」について。「跋渉」は、山をふみこえ、水を渡ること。転じて、方々を歩きめぐること。なので、霧や雲が立ち込める険しい山道や遠い道のりを、困難を乗り越えて踏み越える様子。
その上で、、
「私にはもともと邪悪な心はありません。ただ、父母の厳しい勅命が既にあり、永久に根国に行こうとしているのです。」とあります。ここで、素戔嗚尊の背景が明確になる。父母による勅命、つまり、第五段〔本伝〕を踏襲。
第五段〔本伝〕は、ナチュラルボーン暴悪な素戔嗚尊パターン。ゆえに伊奘諾尊と伊奘冉尊が勅命によって根国に追放。
なので、構造的に整理すると、素戔嗚尊は〔本伝〕を踏襲する一方、天照大神は〔本伝〕+〔一書6〕を踏襲。これにより、踏まえてる背景の違いが発生し、そのギャップが「嫌疑」を誘発する訳です。で、それが誓約につながり、天照の子誕生へ着地する。。と言う流れ。これはこれで、めっちゃよく考えられてる。この構想力がスゴい!
次!
→口だけでは信用ならんと、、証明しろと、、姉ちゃんの圧がスゴい、、
先に言葉の解説を少し。
「赤心」は、潔白の心、清き心。例えば「赤子」とかも、生まれたままの汚れのない心を持った子的な意味合いで使われますよね。対義語は「黑心」。
その上で、、
ポイント4つ。
①誓、誓約は、事前に決めておいた通りの結果になるか否かをもって神意を判定する占いのこと
今回登場する「誓約」は儀式として実施。オモロいですよね。神様なのに分からないこと、今回でいえば素戔嗚尊の本心を、占いで決めると言う価値観。。神って何??
2つあって。日本の神様はこういうゆるさがあるってこと。絶対神のような全知全能ではない前提がある。そして、神なのに人間のように表と裏がある。口で言うことと本心は別という構造を前提にしてる。これはこれで、まさに人間モデル神。ニュージェネレーションならではの挙動。
誓約儀式の手順としては以下、
ということで、事前に決めておいた通りの結果になるか否かをもって神意を判定する占い。それを儀式として実施してます。
ちなみに、
誓約儀式は日本神話の中で2箇所で登場。ココ、天照と素戔嗚の誓約が一番有名ですが、他にも、鹿葦津姫の出産でも行われてます。また、漢字と枠組みが違うのですが同じ占いという意味では「祈」として神武東征神話の天香山土採取でも登場。ただ、いずれも単独での占い儀式で、条件設定の宣言後すぐに宣言した当人が占い実施して判定が出る、という流れ。
今回の、天照と素戔嗚の誓約のように「共に」行う形式、さらに、条件設定した直後に別の神が占いする形式はレアケースだったりします。で、実は、ここがポイントなので後ほど詳しく解説します。
そして!
②素戔嗚尊の設定した条件は国生みの設定と重なる??そのベースにあるのは尊卑先後の序!!
「もし私の生むのが女であれば邪心があるとしてください。もし男であれば清き心があるとしてください」とあります。
この、生む子をめぐって、女を濁心、男を清心とする設定は、先行する第四段〔一書1〕の国生みの設定と重なってたりします。以下。
第四段〔書一〕
第六段〔本伝〕
ということで、同じ枠組みが使われてる訳です。
第四段の先唱後和の順番を支えていたのは「尊卑先後の序」でした。なので、ここでも「尊卑先後の序」をベースに設定されてるってことでチェック。
そして!
③今回の誓約儀式には、嫌疑をかけられた者による潔白証明という構図あり
今回は、単に誓約儀式やりましょうだけでなく、疑う者と疑われる者と言う関係があり、さらに、疑う者は主権者側であり、疑われる者は従属側という「縦の関係」も含まれてる。
天照大神からしたら、国を奪いに来たのだと嫌疑を持ってる、かけてる。一方の、素戔嗚尊は国を奪うなんて邪心はなく、あくまで暇乞いにきただけだと潔白を証明する必要がある訳です。
先ほど解説した律令の謀反規定、反を謀るだけで極刑に問われ、実行があったかどうかは関係ない、てところからすると、ココでの素戔嗚尊はなんとしても潔白を証明しないといけない局面。
その上で、
④素戔嗚尊が「共に誓」を持ちかけたのは、天照の嫌疑へ反駁を加えようとしたから
「姉上と共に誓することをお願いします」とあります。先ほど解説した通り、誓約儀式を「共に」行おうぜってのはどちらかというとイレギュラー。そこには、素戔嗚尊の狙いとか特別な意図があると考えられる。。
それを解明するために、改めて、素戔嗚の立場からこれまでの経緯を整理すると、、
素戔嗚尊じしんは、暇乞いのため立ち寄ることに伊奘諾尊の「勅許」を得ていた。なので、潔白の確信がある訳です。そんな中で、天照大神の嫌疑は、「不意、阿姉翻起厳顔」という不意を突かれた言葉どおり、唐突かつビックリ。なんでやねん案件であって。。ひいては、素戔嗚にとっては不当なものに映り、敵愾心さえ感じさせたんじゃないかと。。
だからこそ、素戔嗚的には、誓を単独で行うのではなく、あえて「共に」することで、みずからの潔白を証明することの裏に、天照の嫌疑に反駁を加えようとした、、と考えられる訳です。びっくりなんでやねんからざけんなへ。そのために、領域展開「共に誓」のなかに巻き込もうとした。。
ということで、「共」に込められた素戔嗚的な「たくらみ」を人間モデル神ならではの挙動としてチェック。
次!
→っと、いきなり天照が剣を??しかもガリガリ噛み砕いた、、だと?? それ、どんな状態??
先に言葉の解説を。
「十握剣」は、1mくらいの大振りの剣。「握」は拳(こぶし)一つの幅。
「天眞名井」は、天上界にある神聖な井戸。清らかな水が湧いている。
「𪗾(齒+吉)然咀嚼」は、よく噛むこと。噛みに噛むこと。
なお、誓約に使われる物を「物根」といいます。今回、「十握剣」が「物根」。
その上で、、
ポイント3つ。
①素戔嗚から仕掛けられた「共に誓」提案。対して、天照は争うことを周到に避けつつ主導権は握ろうとする
先ほど解説した通り、誓約の流れは条件設定宣言のあと当人が占いを実施して結果判定するのがオーソドックスな流れ。それに対して、今回はいきなり天照が占い実施。どちらかというと、機先を制するような形で天照が実行、、、
これが何故なのか?がめっちゃ重要なポイントで、、
それを解明するために、天照からの目線で解釈してみます。
報告を聞いて「国を奪いにきた」と疑ってる天照からしたら、素戔嗚尊が「誓約」を提案してきた時点で、あらっ?ってなった。多分。なんだか、、勝算あり?もしかして、潔白?? しかも「共に」とか言って仕掛けてきた、、何かたくらみが?? って、もし、このまま素戔嗚が男を生んでしまうと、自分の負けか、少なくとも奪国嫌疑の不当が暴き出されてしまう、、これはマズイ。。 一方で、すでにワイ天照の統治下では、たとえ「生む子が、女であれば濁心、男であれば清心」と原理をもとに条件設定したとて所詮は素戔嗚尊の独善でしかないよねってのもあり。。 可能性とかリスクとか武装して激しく威圧しちゃったとかいろいろ踏まえると、ここは、弟の「たくらみ」は承知した上で、これ以上の争いならないように、とは言え、負けにもならないようにマネジメント入れつつ主導権は握るべき、、、と。
これ、まさに人間モデル神ならではの駆け引きとか画策とか。。
そのために、
もしかすると素戔嗚が男を生む可能性(リスク)を踏まえ、男が生まれても負けたことにならないようにマネジメントすべく「物根交換」を着想。むしろ素戔嗚が提案してきた「共に」を縛りとして逆に利用し、自分と同じ儀式を相手に強いることで打破できるんじゃねえかと。。
いうことで、機先を制する形で天照が先に占いを始めた訳です。ここでのポイントと効果は3つあって
てことなんすよ皆さん!!天照、めっちゃ考えてる。一瞬で、可能性とかリスクとか武装して激しく威圧しちゃった経緯踏まえて状況判断してるんですね。
色々言えてしまうんですが、
もう一つあるとすれば、天照が物根交換したのは、「物根」には本質が宿っているという考え方から、素戔嗚の本質を暴き出そうとしたからから、とも考えられて。誓約条件はあくまで生んだ子が男か女かなんですが、素戔嗚の所持品を使って女神を生むことで、お前の本性は女=潔白ではないと言えるようにした?
いずれにしても、
あくまで統治者としての立場からの対応、かつ、素戔嗚との争いにならないように、かつ、ワイの負けみたいな形にならないようにマネジメントしてる天照大神。このあたり、人間モデル神ならではの「かけ引き」であり「画策」であり、非常にオモロー!なところかと思います。
最後!
③誓約=スゴイ儀式。だからこそ、単独による神化成イベントが発生
忘れちゃいけない、大きな時代変化のただ中にあって、本来であれば出産による神誕生であるべきなんですが、
この3つに限って、単独による神化成イベントが発生。
①の場合は、化出させる神自身の神威を根拠として。②の場合は、その事件の激烈さ・劇的さを根拠として。③の場合は、その儀式の神聖さを根拠として、それぞれ単独神化成。
要は、それだけ特別で重要だということを強調してる、ってことでチェック。
今回でいえば、③に該当。ま、天照と素戔嗚なんで①も混じってるかもですが、、いずれにせよ、「素戔嗚尊の十握剣を求め取り、打ち折って三段にして、天真名井で濯いで、がりがりと噛み砕き、吹き棄てた息吹の細かな霧で生んだ」ってのは、結構スゴいよね。。剣をチョップで三段に打ち折る、剣をガリガリ噛み砕く、それは霧になるくらい細かくガリガリ君。それをプシャー!!って。。。汗
一応、整理すると以下の通り。
三女神の「三」は聖数。宗像大社の御祭神として有名。三女神については、次回、〔一書1〜3〕解説で詳しく取り上げます。
次!
→素戔嗚も天照と同じくガリガリ君、、。
ポイント2つ。
①素戔嗚尊の誓約は、天照大神が先に行った方法を踏襲。これにより、、、??
天照に続いて「素戔嗚尊が天照大神の髻・鬘および腕に纏いている八坂瓊の五百箇御統を乞い取り〜」と、天照が先例として示した方法を踏襲し、天照の五百箇御統で子を生む。ココがポイントで。
フツーに読むと、まぁ、天照がやってたからねという処理で終わるんだけど、先ほど解説した通り、これは天照先行による縛りによるもの。素戔嗚が自ら設定した「共に」提案が逆に縛りとなって、天照と同じ方法でやらざるを得なかった訳です。
繰り返しになりますが、素戔嗚は単独で誓約を実施して男を生んで潔白証明できた訳です。ところが、天照が先にやったもんだから、、物根交換による誓約となり、素戔嗚が男を生んだとはいえ、それは天照の物根を使ったからと言える余地が残ってしまった、、
素戔嗚の画策した「共に」提案が仇となる、、、むしろ、逆手に取った天照あっぱれ、、って私は何様でしょうか??
その上で、
②基本は、素戔嗚の潔白が証明されたんだが、、とは言え、100%勝ち、完全に素戔嗚が正しい、という着地にならないようになっとる。。
素戔嗚尊が設定した誓約条件「もし私の生むのが女であれば邪心があるとしてください。もし男であれば清き心があるとしてください」からすると、男が誕生したので、素戔嗚の清き心が証明された訳です。
ですが、、〔本伝〕では、ことさらそれを強調するようには伝えてない。しかも、物根交換があったので、素戔嗚が男を生んだとはいえ、完全に素戔嗚が正しい、100%勝ち!みたいな着地にならないようになっとる。。
コレ、天照が争いを避けつつ一方で負けにもならないよう周到な対処を入れてきたことによるもの。「共に」提案を逆手にとって&機先を制して&素戔嗚の物根を使ったことがココで効いてる。コレ、激しくチェック。
一応、誕生した神を整理しておきます。
一応、五男神の「五」は奇数なので聖数。かつ、「三」に対する「五」で、勝ちを強調する設定になってます。
次!
→潔白証明の行方はどうなった???明確にしないまま本伝終了、、
ポイント2つ。
①最後は天照の勅命でケリをつける!誓約の着地は「物根を根拠とした子の処遇」??
最後は天照が主導。てか絶対命令の勅!しかも、誓約の結果については、素戔嗚の潔白ではなく子の処遇に着地させてる。。あれ??濁心とか清心とかどこ行った??
天照大神の「勅」は、「五男神」と「三女神」とをそれぞれ天照大神の子、素戔嗚尊の子として認知したものであり、認知する上に、その根拠としたのが「物根」。
と言うことで、
勅命=絶対命令発動によって強制的に子の処遇を決定。五男神はワイの子な、三女神はオマの子な。以上。
素戔嗚尊的には、、誓約を仕掛け、領域展開「共に誓」で巻き込もうとした目論見はうち砕かれ、、、しかも、ワイ男生みましたやん、潔白ですやん、は主張できずに終わってしまった。。 こんな状況を承服できるはずはなく。行動をいよいよエスカレートさせていく訳です。これが、次に続く第七段で、天照大神の権威を否定する意図的な行動に出ていくところに繋がっていきます。その意味で、激しく重要なポイント。しっかりチェック。
さらに!
②男を天上、女を地へそれぞれ振り分ける措置は「尊卑先後の序」がベース
子の処遇について、五男神は天照が引き取って養育、三女神は「此則筑紫胸肩君等所祭神是也」という地に降したことを示唆してます。
これら、五男神、三女神をめぐる、男を天上、女を地へそれぞれ振り分ける措置は、「尊卑先後の序」をベースにしたもの。
結果的に、「誓」に際して素戔嗚尊が提案した子生みに拠りどころとした「尊卑先後の序(生む子が、女であれば濁心、男であれば清心)」を逆手にとって、その「卑」は素戔嗚尊が根源であり本質なのだと烙印を押したも同然で。。この辺りも天照、流石でござる。
最後!
③天照大神の勅は、天照大神が伊奘諾尊を引き継ぐことを示唆する
せっかくなんで、最後は、隠居された伊奘諾にも触れながら解説しておきます。敬意を払いつつ、、
子の帰属および処遇を定める天照大神の「勅」は、天照大神を始めとする三子に高天原ほか三領域の統治を任じた伊奘諾尊の「勅任」第五段〔一書6〕〔一書11〕を踏まえるものであります。
これはつまり、天照大神が伊奘諾尊を引き継ぐことを、同じ「勅」という言葉が使われてることやその内容が示唆してる訳で。伊奘諾さん、あなたが生んだ子はしっかりあなたの後を引き継がれておられますよということで締めたいと思います。
なお、
最後に、一覧としてまとめておきます。
と、まー、いろんな駆け引きがありつつも、、
いずれにしても、天照大神の子(お世継ぎ)が誕生したので良かった良かった、、一同ほっと胸をなでおろしましたとさ。。
ちなみに、
天照大神の子となり養育された「正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊」は、第九段〔本伝〕で「天照大神の子の正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊は、高皇産霊尊の娘の栲幡千千姫を娶り、天津彦彦火瓊瓊杵尊を生んだ」と伝え、高皇産霊尊の娘の栲幡千千姫と結婚して天津彦彦火瓊瓊杵尊が生まれる系譜につながっていきます。