東征発議と旅立ち|東征の動機とか意義とか建国の決意とかをアツく語った件|分かる!神武東征神話No.2

 神武東征神話を分かりやすく解説するシリーズ

シリーズでお伝えしている神武東征神話。今回は2回目。

日本神話.comでは、天地開闢てんちかいびゃくから橿原即位までを「日本神話」として定義。東征神話は、その中で最大のクライマックスを彩るアツく奥ゆかしい建国神話であります。

言うと、
これを知らずして、日本も神話も語れない!m9( ゚Д゚) ドーン!

ということで、2回目。今回は東征発議とうせいほつぎし旅立つまでの神話をお届けします。

 

東征発議と旅立ち|東征の動機とか意義とか建国の決意とかをアツく語った件

東征発議を読むにあたって

東征するにあたって、「彦火火出見ひこほほでみ=神武」は、兄達や子供、臣下を集め「発議ほつぎ」を行います。

いきなり出発しちゃうのではなく、しっかり企画提案・動機づけを行なう訳ですね。

自身の生い立ちとこれまでの経緯をふまえて
東征の意義と建国の決意をアツく語ります。

コチラ、実は「日本最古の演説」ながら、素晴らしい仕上がりになっております。現在のビジネスでも十分活用できる内容であり、非常に参考になると思います。

  • 彦火火出見ひこほほでみはどのようにして東征の意義を語ったのか?どのように動機づけを行ったのか?

ここから東征発議の意味を考えていきます。

今回も『日本書紀』巻三「神武紀」をもとにお伝え。
ちなみに、前回の内容、これまでの経緯はコチラ↓をご確認ください。

分かる!神武東征神話|神武の生い立ち|天照大神の第五世代 子孫(来孫・らいそん))であり、海神の孫でもある件

2016.01.20

 

東征発議と旅立ち

彦火火出見ひこほほでみ」が四十五歳になったとき、兄達や子供等に建国の決意を語った。

昔、我が天神あまつかみの「高皇産霊尊たかみむすひのみこと」・「大日孁尊おおひるめのみこと」は、この「豊葦原瑞穂とよあしはらのみずほの国」のすべてを我が天祖である「彦火瓊瓊杵尊ひこ ほのににぎ の みこと」にさずけた。

そこで我が天祖てんそは、天のせきをひらき、雲の路をおしわけ、日臣命ひのおみのみことらの先ばらいを駆りたてながらこの国へ来たり至った。

これは、遙か大昔のことであり、世界のはじめであって暗闇の状態であった。それゆえ諸事に暗く分からない事も多かったので、物事の道理を養い、西のはずれの地を治めることとした。

我が先祖と父は「霊妙な神」であって「物事の道理に精通した聖」であった。彼らは素晴らしい「まつりごと」により慶事けいじを重ね、その徳を輝かせてきた。そして多くの歳月が経過した。

天祖が天から降ってからこのかた今日まで、179万2470有余年が過ぎたが、遠く遥かな地は、いまだ王の徳のもたらす恵みとその恩恵をうけていない。その結果、国には「君」が有り、村には「長」がいて、各自が支配地を分け、互いにしのぎを削って争う始末だ。

さて、一方で「塩土老翁しおつちのおじ」 からはこんな話を聞いた。『東に、美しい土地があって、青く美しい山が四方を囲んでいる。そこに「天磐船あまのいわふね」に乗って天から飛びった者がいる。』と。

私が思うに、かの地は豊葦原瑞穂とよあしはらのみずほの国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けるのにふさわしい場所に違いない。きっとそこが「世界の中心」[1]だろう。その天から飛び降った者は、「饒速日にぎはやひ[2]ではないだろうか。私はそこへ行き都としたい。

諸々の皇子は、

なるほど、建国の道理は明白です。我らも常々同じ想いを持っていました。さっそく実行すべきです。

と賛同した。この年は、太歳たいさい)甲寅きのえとら[3]であった。

その年の冬、10月5日[4]に「彦火火出見ひこほほでみ」は、自ら諸皇子や水軍を率いて、東征へと出発した。

 注釈

[1]原文「六合之中心」。「六合りくごう」とは、天地(上下)と四方(東西南北)をいいます。「世界の中心」の地で、ここに都を置く事を想定しています。

[2]神武天皇の東征に先だって大和に天降った神様。大和の地を支配する「長髄彦ながすねびこ」の妹をめとり、子供をもうけていたことが東征神話の後半になって判明します。最終的には、「長髄彦」を見限り「彦火火出見」に帰順することになります。ちなみに、「長髄彦」は最強の敵として神武東征軍の前に立ちはだかり、大和の初戦である「孔舎衛坂くさえさかの戦い」で東征軍を敗戦へ追い込みます。

[3] 「太歳たいさい」とは、木星の別称で、年を太歳干支たいさいえとで記したもの。年紀干支えとの初出。「甲寅きのえとら 」とは、「甲」が干支の最初に、「寅」が十二支の最初に於かれている事をいいます。

[4]原文「丁巳(ひのとみ)が朔(ついたち)にあたる辛酉(かのととり)」

※写真は、橿原神宮で公開中の「神武天皇御東征絵巻」より。

 原文

及年卌五歲、謂諸兄及子等曰

「昔我天神、高皇産靈尊・大日孁尊、舉此豐葦原瑞穗國而授我天祖彥火瓊々杵尊。於是火瓊々杵尊、闢天關披雲路、驅仙蹕以戻止。是時、運屬鴻荒、時鍾草昧、故蒙以養正、治此西偏。皇祖皇考、乃神乃聖、積慶重暉、多歷年所。自天祖降跡以逮于今一百七十九萬二千四百七十餘歲。而遼邈之地、猶未霑於王澤、遂使邑有君・村有長・各自分疆用相凌躒。抑又聞於鹽土老翁、曰『東有美地、靑山四周、其中亦有乘天磐船而飛降者。』余謂、彼地必當足以恢弘大業・光宅天下、蓋六合之中心乎。厥飛降者、謂是饒速日歟。何不就而都之乎。」

諸皇子對曰「理實灼然、我亦恆以爲念。宜早行之。」是年也、太歲甲寅。

其年冬十月丁巳朔辛酉、天皇親帥諸皇子舟師東征。

『日本書紀』巻三 神武紀より

 

まとめ

東征発議と旅立ち

リーダーとして、兄達や子供ら、そして臣下たちに東征の意義と建国の決意を語るシーンは、東征神話の中でも非常に重要な位置づけです。

ポイントを整理すると以下の通り。

経緯

・遥か昔、神武の祖先である天神あまつかみの「高皇産霊尊たかみむすひのみこと」・「大日孁尊おおひるめのみこと」が、「豊葦原瑞穂とよあしはらのみずほの国」を神武の「天祖」である「彦火瓊瓊杵尊ひこ ほのににぎ の みこと」にさずけた。

・神武の「天祖てんそ彦火瓊瓊杵尊ひこ ほのににぎ の みこと」は天孫降臨し、この国へ至り、西のはずれの地を治めることとした。

・神武の先祖と父は素晴らしい「まつりごと」により慶事けいじを重ね、その徳を輝かせてきた。そして、天孫降臨から今日まで、179万2470有余年が過ぎた。

現状認識

・遠く遥かな地は、いまだ王の徳のもたらす恵みとその恩恵をうけていない。その結果、争いが耐えない。→なんとかしなければならない。

目的
(ゴール設定①)

・「世界の中心」へ行き「都」としたい。

・国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けたい(=人々が安心して豊かに暮らせる国をつくりたい)。

目標
(ゴール設定②)

「世界の中心」=中州
・東に、美しい土地があって、青く美しい山が四方を囲んでいる。かの地は豊葦原瑞穂とよあしはらのみずほの国の平定と統治の偉業を大きく広げ、王の徳を天下のすみずみまで届けるのにふさわしい場所
・そして、その昔、天神である「饒速日にぎはやひ」が天から飛び降った地。

と、

ま、後付け整理になるかもしれませんが、それでも、自らの出自とあわせて、これまでの経緯、現状認識、建国によるメリット(王の徳による民が受ける恩恵)を分かりやすく語っていますよね。

当時の理想的指導者が
「事を成す」必要性、必然性、適時性を丁寧に説明し、
問題を明確にして一丸となって事にあたる。

「日本最古の演説」ながら、そのレベルの高さにビックリです。1つの演説として、動機づけの方法としても非常に参考になると思います。

あと、

見逃せないのは、時間表現が初めて登場すること。本件、本シリーズ第一回目で触れました。

ココでは、

  • 彦火火出見ひこほほでみ」が四十五歳になったとき、兄達や子供等に建国の決意を語った。
  • 天祖が天から降ってからこのかた今日まで、179万2470有余年が過ぎた。
  • この年は、太歳たいさい)甲寅きのえとらであった。

という伝承がみられます。

これら時間表現は、神代のあとを引き継ぐ神武紀の重要な特徴の一つ。

神代には時間概念がありません。

神代から神武紀へ、
「継起性で展開する世界」から「時間の世界」へ。

神武紀の最後は、橿原即位であり、以降、人の時代が続く展開になっています。

その意味で、神から人へ、時間概念の導入を通じてブリッジをかける役割を果たしていると言えます。この点はしっかり押さえておきましょう。

時間設定の詳細はコチラも参考にされてください。

十干・十二支を使った暦日と神武東征神話|暦の最初は「甲寅」。そして「辛酉」の年には革命が起きると考えた件|分かる!神武東征神話 No.24

2016.04.11

 

以上、まとめると、

東征発議と旅立ちのポイント

  • 東征の発議にあたっては、自らの出自とあわせて、これまでの経緯、現状認識、建国によるメリット(王の徳による民が受ける恩恵)を分かりやすく語っています。
  • 東征発議部分から時間表現が登場。これは、神武紀が、神代から人代へブリッジをかける役割を果たしていると言えます。

ということで、是非チェックされてください。

いやー、神武東征神話、深すぎです。どこまでも広がる神話ロマン。サイコーだ!

 

つづきはコチラ!

東征順風・戦闘準備(日向~高嶋宮)|半年かけて岡山まで移動して3年じっくり準備した件|分かる!神武東征神話No.3

2016.01.20

目次はコチラ!

神武東征神話を丸ごと解説!ルートと地図でたどる日本最古の英雄譚。シリーズ形式で分かりやすくまとめ!

2016.01.13

 

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さるたひこ

こんにちは、さるたひこです!読んでいただきありがとうございます。「日本神話をこよなく愛するナビゲーター」として日本神話関連情報、題して「日本神話がおもしろい!」を発信していきます。どうぞよろしくお願いします。ちなみに、ネーミングは、天孫降臨の折、瓊瓊杵尊を道案内した国津神「猿田彦命」にあやからせていただいてます。ただ、神様の名前をそのまま使うのは畏れ多いので「さるたびこ」の「び」を「ひ」に変えております。